2012年12月27日

2012年上半期 読んで面白かった本ベスト10 (下)


本来だとこの稿は30日に掲載する予定。
しかし、ほとんどの事業所は28日までだと思う。もし本を買われるなら なるべく早く掲載した方がお役に立つ可能が…。 ということで、今回に限り3日早く掲載することにしました。

先週上げた102冊の中から選抜した ベスト10候補作品の■印が48冊。
その中から、勝手に選んだ独善的ベスト10が以下。
いつものことながら写真の写りが悪いのは、ご容赦あれ。

◆10位

ナンイデイ.JPG

かたつむり写真.JPG

企業小説ではなく、「社会派小説」とでも言うべき中から2つ。
「ナインデイズ」 は、「岩手県災害対策本部の闘い」という副題がついているように3.11から9日間の災害対策本部の内幕を見事に描きだした好著。 と言うと これは小説ではなく、県の役人が書いた堅苦しいノンフェクションではないかと考えられがち。 そうではなく、3.11という悲惨な舞台を背景に奮闘した 秋富という救急医の物語。 自費でアメリカ、イギリスのレスキューの実践トレーニングを受けて資格を取り、救急医でありながら県庁の災害対策本部へ潜り込んで、全幅の信頼を得て大活躍した異色作品。(10月12日付、独善的書評364号参照)

「上海、かたつむりの家」は、12月20日のこの欄で紹介済み。残念ながら小説としてイマイチ。上海の住宅事情の掘り下げも不足。そして、後進国のワイロ体質から考えて上海の上級官僚の悪質ぶりも想定内。 だか、一応読んでおくだけの話題性が…。

◆9位

移民の宴.JPG

この作者は、アジアやアフリカなどを旅行して、多くの旅行記を発表している。
そして面白かったのは7年前に出版された「アジア新聞 屋台村」(2011/4/13、週評338号参照)。
今回は、講談社系の月刊誌に12回に亘って、日本へ移民したタイ、イラン、パキスタン、フィリピン、フランス、中国、イスラエル、ブラジル、インド、韓国、スーダンからの、移民者の食生活を取り上げている。 しかし、故国の食事を主とするか、日本化されたものを好むかは個人によって大きな差がある。 そこで各国のコミュニティを訪ね、どのような生活習慣を維持し、どのような平均的な食生活を続けているかをリポートしたもの。 取材中に、3.11事件にぶつかり、多くの移民は故国の家族などからワイノワイノの催促で やむなく帰国。取材が出来ない時もあった。
その中にあって、南三陸に住む15人のフィリピン妻たちのコミュニティは見事。 1人は残念ながら行方不明になったが、誰一人として帰国しなかった。 彼女等は日本やフィリピンよりも、南三陸を故郷として親しみ、愛しているから…。

◆8位 

表紙写真.JPG

この本については、9月5日のこの欄で紹介しているので省略する。(カテゴリの《書評(その他)》から入られたし)
今回は、このブログ欄で取り上げた本でベスト10入りをしたものが、なんと7冊にも及ぶ。それだけ、この欄で紹介する書籍のレベルが、向上した証と言えるのだろうが…。 

この「ザ・ラストバンカー」は、文字通りバンカーのトップとして、その伝記を後世に残す価値ある最後のものになる可能性が高い。 業績不振と社会的な名誉棄損事件。さらにリストラに次ぐリストラの時代を ブレなく生き抜いた貴重なバンカーマンの記録。

◆7位

渚の著書.JPG

これは8月10日に、この欄で紹介済み。
宇宙旅行に行ける人間は、当初は軍人と技術者に限られていた。
日本人の医師として最初に宇宙を経験したのが古川聡氏。 無重力の宇宙から帰還した暫くの間は自分の身体の芯がどこにあるか分からず、フニャフニャの軟体動物化した生々しい体験報告が「宇宙へ出張してきます」(毎日新聞刊) に掲載されている。これほど納得させられた話はない。
そうした医師としての体験談以外に、古川氏は数々の科学的の成果も上げている。 なかでも、地上400キロメートルの世界で、ハイビジョンカメラが捉えた様々な現象の初めての謎解きに参加。 
想い出す度に、今でもワクワクさせられ謎解き。

◆6位 

4093882487[1].jpg

この著作も、9月25日のこの欄で紹介している。
世の中には、発見と発明がある。 今年ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥氏が、皮膚細胞からips 細胞を生成する技術を解明したのが発見。 この発見に基づき、これから ips 細胞を医療の現場で実用化して人々に供して行くのが発明。 
産業界に身を置く人間として必要な能力は、イノベーション力である発明力。 例えばデシカを どのようにして家庭で使いこなしてゆくか という現場での発明力が大きくものを言う。
この著者の塚本氏は、ダチョウの生命力の強さに気付き、偶然にもその卵から大量の抗体が安く作れることを発見した。 それだけではなく、苦心して作った抗体を使ったインフルエンザ用マスクだけでなく、アトピー対策用やニキビ対策用の化粧品など、様々な商品を発明している。 
発見から発明までのベンチャー。 だからこの本はやたらに面白く、身体の芯まで燃えてくる。

◆5位

魁夷の表紙.jpg

この本は、上記のダチョウに続いて9月30日に紹介済み。
東山魁夷のドイツとオーストリアのスケッチ旅行を追い、それぞれの作品がどの位置と どのアングルから捉えた風景かを探ることを目的にした旅行記。 前例を見ない著作。
たまたま4年前に、パッシブハウスの現状を調査するためにドイツとオーストリアを訪れた。
絵心がないので魁夷のようなスケッチは残せなかったが、魁夷の絵をはるかに上回る素晴らしい街並みや美しい住宅の写真は腐るほど撮ってきた。 したがって、魁夷にもう少し建築や住宅の知識があったなら、もっと素晴らしい作品が残せただろうと惜しまれる。
しかし、この本は建築的に見ても面白くて価値がある。 

◆4位 

リベンジ.JPG

ランウェイ.JPG

ロスジェネ.JPG

待合室.JPG

下半期には、私が好きな4人の作家の企業小説がそろい踏み。 そこで、企業小説4点をまとめて4位とした。 
まず、江上剛の「リベンジ・ホテル」。 主人公々今までのようなベテランの経済人ではない。 主役は東京の2.5流大学を卒業した社会人一年生。卒業はしたけど極端な就職氷河期。200社ぐらい応募したが内定は一つもなし。やっと郊外のちっぽけなホテルに就職が決まったが、入社式もなし。最近数年間に新卒を採用したことのない斜陽企業。救いは年老いた社長に変わって若い孫娘が社長に就任したこと。 新人ながら宿泊客のため渾身のサービスに勤め、ニーズを取り上げて女子のランチ会を計画したり、空いている宴会場を地元の同好会に貸したりしているうちに、地元の支援を得て最大の難局を突破するヒヨコ企業家の物語。気負いもなく、淡々と読ませてくれるのがよい。

幸田真音の「ランウェイ」。 この物語の主人公は女性。ファッション業界のバイヤーの世界に飛び込んだ。だが、元々は男の世界だっただけに一刻の平穏も訪れない。 妬みや陰謀が渦巻いている。 しかし、ミラノ、パリ、ニューヨークなどを訪れているうちに、次第に実力を付けてくる。 だが、ファッション界の執拗な女性の争い耐えられず、アメリカに渡って細々と仕事を始める。そして、バイヤーの世界ではなく、女性衣装のデザイン開発の分野に活路を拓いてゆく。
華やかなファッション産業界の舞台裏を眺めながら、女性企業家の成長が楽しめる好著。

池井戸潤の「ロスジェネの逆襲」。 親会社の東京中央銀行の子会社のセントラル証券は、鳴かず飛ばず。誰もが早く銀行へ戻りたいと画策を始めて足の引っ張り合いばかり。 そんなセントラル証券に、IT関連の電脳社の社長から ライバル社の買収話が持ちかけられる。久しぶりの儲け話に会社は沸き立つ。ところが、いつの間にか親会社の銀行が、その仕事の横取りを画策していることが発覚。主人公の半沢部長はロスジェネの若い部下と組んで、なぜ電脳社が最初にセントラルへ話を持ちこんだのかという裏を探って行く。そして、電脳社の陰謀を暴き、銀行とライバル社を助ける。「客のためではなく、自分のために仕事をすると 人と組織が腐る」ことを実証する小説。

江波戸哲夫の「定年待合室」。 妻のガンを知って大手百貨店を早期退職した主人公。妻に先立たれて生きる望みを失った。 その時、行きつけの安バーのママさんから、今までの経験を活かして、「お世話人」「解決人」になったら、と言われて目覚める。さっそく、「百貨店から大口の記念品の注文があったのがキャンセルになった。なんとかならないか」との相談が持ち込まれた。今まで構築したいろんなツテを辿ってゆくと、解決の方法が見つかった。そのほかに、自動車販売店から売上回収の相談。売れ残りマンションの処分。買物難民が困窮している難問を、定年退職のグループが次々に解決してゆく。少し話が甘すぎるとは思うが、元気がもらえる著。

◆3位

あの日建築.JPG

宣言しているように、私が日本で一番尊敬している建築家は伊東豊雄氏と隈研吾氏。
とくに3.11以降の伊東氏の行動は、尊敬に値する。
「建築家は今のままで良いのか。 建築家に何が出来るのか」 という大テーマを掲げて東北の各地を訪れ、避難所や仮設住宅はもとより、公聴会で真剣に本音を探る行動を続けた唯一の建築家。
この著書では、氏がアドバイザーとして釜石市に提案した斜面地型集合住宅や、中央にコミュニティ広場を持った合掌造型の集合住宅が紹介されている。 平地が少なく、急峻な山が迫っている釜石には、大都市型の集合住宅は相応しくない。
さらに、仙台・宮城野区と釜石・平田地区での「みんなの家」の建築実例。さらには、ヴェネチア国際建築展と同時進行で金獅子賞をとった陸前高田の「みんなの家」や、仮想商店街、ラグビースタジアム構想など、具体的な提案がなされている。
一方、戦後のデモクラシー時代には建築家と社会との融和があったが、最近は社会から建築家が期待されない存在になってきている。その背景の分析もしっかり行っていて、納得させられる。
それと、氏が昨年5月に開校して力を入れている伊東建築塾。 土曜日に各界の講師からレクチュアーを受ける講座A。 専門家対象の講座B。 小学校高学年を対象にした講座C。
いずれも頭でっかちな人間を育てるのではなく、東北の被災地や今治のアートミュージアムでの現場実践を踏まえた上での人づくりの実態報告。
全体の完成度はまだまだ低いが、氏の意欲には圧倒される。

◆2位
 
震える学校.JPG

これも、11月25日に紹介している。
この本を読むまでは、インターネットや携帯電話の普及が、これほどまで子供たちの人間関係、信頼関係を破壊しているとは知らなかった。
たしかに、大人の社会でも2チャンネルとか各社の書き込み欄を見ると、匿名を良いことにして悪口の書き放題が目に付く。 そんな欄を見ているとヘドが出るので私はなるべく避けている。
たしかに、私も国交省や大手プレハブメーカーの悪口を何回も書いている。
しかし、あくまでも名前を出しての悪口。 匿名での言いたい放題、書きたい放題ではない。
悪口を書けば、その分返り血が身に降りかかってくる。それを覚悟しての年配者の戯言にすぎないが、それなりに勇気を持たないと出来ない発言。 本来、発言とはかくあるべき。

ところが、匿名だと自制心が失われ、何を書いても咎められないのでエスカレートする。
しかし、2チャンネルなどで匿名のターゲットになるのは著名人か企業。
ある程度は、「有名税」 と言うことで我慢すべきかもしれない。
ところが、子供のネットや携帯の匿名の対象になるのは、あくまでも仲間であり、時には先生がターゲットに。
面と向かっては何も言わないが、匿名だとあることないこと、好き勝手なことが書き込める。
そして、発言に対しては一切責任が問われない。
このため、子供たちは、いくら親しい仲間であっても決して本音は晒さないと言う。どんなに親しげに振舞っていても、うっかり本音を言うと、何時書きこまれるかわかったものではない。
このため、人と人、心と心の繋がりを子供たちは結べなくなってきているという。
そんな、恐ろしい実態を知らせてくれた貴重な書。

◆1位 

巨大地震.JPG

今回は、文句なくこの著作をトップとしたい。
3.11で、日本国民からの信頼を完全に落としたものの代表が原子力関係の学者先生。
ついで危機対応力が全く欠けていた政治家と経済産業省のお役人、東京電力の幹部がある。 かつての銀行と一緒で、誰も彼らの言うことを信用しなくなった。
それと、もう一つ忘れてはならないものに東大を中心とする地震学会の信用失墜がある。
地震は予測出来るという仮定のもとに、厖大な国費を湯水のように使ってきた。
明日にでも起こる確率が高いと喧伝された東南海地震。 その発生は完全に予測出来ると断言。
学界の権威が集まって会議を開き、総理大臣を中心とする緊急対策会議が開かれ、事前に対策がとられ、被害は最小限に抑えられる。この平成のイソップ物語を愚かにも信じさせられてきた。
ところが、権威があるはずの地震学会は、震度7の直下型の阪神淡路大震災や中越地震に対しては、何一つ予知出来なかった。
そして、マグネチュード9.0という未曽有の3.11に対して、学会は全く無能のデクノボウ。
「こんな地震学会など いらない!!」 多くの国民が腹の底で叫んだ。 それに、原発立地に対する甘すぎた過去の意見具申に対する怒り。ついでに国交省べったりの建築学会に対する怒り。

その中にあって、阪神淡路、中越地震を予測しただけでなく、07年の太平洋学術会議で、古川雅英、小川進氏とともに「2010年頃までに、M8以上の巨大地震が東北太平洋沖で起こる可能性が非常に高い」と問題を提起したのが筆者。実際の発生は筆者の指摘から3ヶ月遅れだったが、政府がこの提起を真剣に取り上げていたら、被害は半分以下で済んでいたであろう。
氏の5段階に及ぶ地震予知の方法には説得力がある。 そして、日本列島の何ヶ所かでの巨大地震の発生を予言している。 私はどこまでも素人。しかし地震予知で、これほどまで具体的で、かつ説得力を持った著書に出会ったのは初めて。 一読の価値があると断言したい。


















posted by uno at 04:50| Comment(0) | 半年間の面白本ベスト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月25日

2012年下半期 読んで面白かった本のベスト10 (上)


恒例・独善的面白本のベスト10。
現役時代に、きちんとした情報が欲しいために暇があると書店へ行った。
しかし、あまりにも多くの本が出版されており、いつも戸惑った。せいぜい読めるのは年間100冊。何万冊の中から100冊に絞るのが容易ではない。そして、読むべき多くの情報を見逃した。
その経験から、現役で経済活動をやっている皆さんに、なるべく必要な本を選びやすいようにという目的でこの欄を開設。
しかし、私の関心や好みは皆さんとは違う。どこまでも独善的。 また、いろんな書評にも目を通すようにしているが、見逃している好著も多い。 ただ、出来るだけ広い範囲を網羅して、皆さんが選択する場合にお役に立ちたいと考えているのだが…。

下半期に読んだ冊数は424冊。ちょっと読み過ぎ。
さて、この中で一次審査をパスした本は102冊と上期に比べると2割減。
これは、今まで30冊近くノミネートしていた経済・経営・政治が17冊。 環境・農林水産・食料・医療が13冊と大幅に減ったため。
逆に増えたのが科学・技術・教育が5割増の22冊。この欄からベスト10入りしたのが4冊もあり、充実していた。
次いで小説が前期の13冊から20冊に躍進。私の好きな企業小説に面白いものが揃っていたし、古い企業小説を意識的に探したら この数字になった。
また、不作が続いていた住宅・建築も前期の11冊から15冊へ。 しかし、ベスト10入りをしたのはたった1冊だけ。豊作というには ほど遠い。

この一次審査を通った102冊の中で、前々回からベスト10入り候補作品には■印をつけることにしている。 この方が、10冊ではなく気に入った本が48冊もあると分かり、参考にしていただける範囲が拡がるから。
△印は、1年以上前に出版された著書。


【環境・農業・食品・医療】 13冊
・わが家のエネルギー自給作戦                枝廣淳子 エネフォーラム新書
・生物の多様性を考える                     池田清彦   中公新社
■女性のいない世界                   マーラ・ヴィステンドール 講談社
・大人になった虫とり少年                    宮沢輝夫    朝日出版
■命を燃やせ                             吉岡秀人 講談社
■50と呼ばれたトキ                        小野智美  羽島書店
■ロラン島のエコチャレンジ                  北村朋子    野草社
■世界一長寿な都市はどこにある?            家森幸男     岩波書店 
・極みのローカルグルメ旅                    柏井 壽   光文社新書
・あかちゃんのママが本当の気持ちを喋ったら?        ナオミ・スタドレン ポプラ社
■ボクらのエネルギーって、どうなるの!?            岸田一隆 エクスナレッジ    
△ハチはなぜ大量死したのか              ローワン・ジェイコブセン 文春文庫
■△生きもの豊かな自然耕                      岩澤信夫  創森社


【技術・科学・教育】  22冊
・災害とロボット                       井上猛雄  オーム社
・宇宙へ「出張」してきます                古川 聡    毎日新聞社
・IDの秘密                          佐藤一郎 丸善ライブラリ 
・ゼロから見直すエネルギー              化学工業会緊急提言委員会 丸善出版
■宇宙の渚  上空4000km              NHK取材班  NHK出版
・図解 新エネルギー                  大和総研調査部 アスキーメディア
・光触媒の基本と仕組み                   指宿堯嗣   秀和システム
■地熱エネルギー                        江原幸雄   オーム社
・東京で地熱発電                        清水政彦   並木書店
・金メダルの遺伝子を探せ                  善家 賢   角川文庫
■ダチョウの卵で、人類を救います           塚本康浩    小学館
・現代科学の大発明・大発見                大宮信光   ソフトバンク
■毒になるテクノロジー iDisorder        ラリー・ローゼン他  東洋経済
■巨大地震は連鎖する                    木村政昭  角川学芸出版
■ナビゲーション 位置情報が世界を変える       山本 昇  集英社新書
・教育の豊かさ、学校のチカラ               瀬川正仁  岩波新書
・とことんやさしいレアアースの本             藤田和男監修  日刊工業
■震える学校                           山脇由貴子 ポプラ社
・ウナギの博物誌                        黒木真理  化学同人
■大学教授という仕事                     杉原厚吉   水曜社
■検索エンジンに上位表示する法             宮崎敬士  東京図書出版
・本当に怖い電磁波の話                植田武智・加藤やすこ  金曜日


【経営・経済・政治】  17冊
・オリンパス症候群                 チームFACTA   平凡社
・戦後復興秘話 世銀に学ぶ日本再生      太田康夫ほか   日経出版
・未知なるミャンマー                    春日孝之   毎日新聞                
・自 由                      アウンサン・スーチー  角川文庫
■ザ・ラストバンカー                     西川善文   講談社
・新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮         小倉紀蔵編   角川書店
・現代がトヨタを越えるとき             小林英夫・金英善  ちくま新書
■サムライと愚か者 暗闘のオリンパス事件      山口義正   講談社
・原発と日本はこうなる                  河野太郎   講談社
・原発も温暖化もない未来を創る           平田仁子   コモンズ
・市民がつくった電力会社                田口理穂   大月書店
・司法殺人                          森  炎  講談社
■MIT メディア ラボ                フランク・モス   早川書店
■最もリアルなアメリカ入門             原田武夫    かんき出版
■2050 老人大国の現実              小笠原康、渡辺智之  東洋経済
・マグロ船で学んだ ダメな自分の活し方     齊藤正明   学研
■△ヤマダ電機の暴走                    立石泰則   草思社
           

【小説】  20冊
■ランウェイ                       幸田真音   集英社
■うま味を発見した男・小説池田菊苗      上山明博   PHP研
・シャイン                         原 宏一   集英社文庫
■定年待合室                       江波戸哲夫   潮出版
・震災キャラバン                    高嶋哲夫   集英社文庫
■ナインデイズ・岩手県災害対策本部の闘い   河原れん  幻冬社
■リベンジ・ホテル                   江上 剛   講談社文庫
■ロスジェネの逆襲                  池井戸潤  ダイヤモンド
■上海、かたつむりの家                六  六   プレジデント
△美味しいんぼ探偵局                 雁屋 哲   角川文庫
△月華の銀橋                        高任和夫  講談社
△星雲の梯                          高任和夫  講談社
■△ゼフィラム                        楡 周平  朝日新聞出版
■△やっさん                         原 宏一   双葉社
■△再起・総会屋勇次                   江上 剛   講談社文庫
■△希望退職者を募る                   江波戸哲夫  講談社文庫
■△不祥事                          江波戸哲夫  講談社文庫
■△偽造証券                        幸田真音   新潮文庫
■△虚構金融                        高嶋哲夫   文春文庫
■△日々これ夢・小説小林一三           邦光史郎   集英社文庫


【ノンフィクション・旅行】 15冊
■シニアネット・やってみっか            荒明成忠    幻冬舎
・真相開封                          文春編集部編  文春文庫
・0点主義                         荒俣 宏   講談社                  
■東山魁夷と旅するドイツ、オーストリア       松本 猛   日経出版
・Google Earthでゆく火星旅行           後藤和久、小松吾郎  岩波書店
・サンディアゴ巡礼へ行こう!               中谷光月子   彩流社
■移民の宴                         高野秀行   講談社
△日本美術観光団            赤瀬川原平、山下裕二   朝日新聞
△雲の上で暮らす                    山本紀夫  ナカニシヤ出版
△中卒の組立工、NYの億万長者になる       大根田勝美   角川書店
△アマゾン源流生活                  高野 潤   平凡社
△日本の島で驚いた               カベルナリア吉田   交通新聞
■△農家の嫁の事件簿                三上亜希子   小学館
■△暮らしてみたら魔法の里            つるたとよ子   恒文社
■△絵本たんけん隊                  椎名 誠    角川文庫


【建築・住宅】 15冊
■大震災で住宅ローンはどうなるの          島本慈子   筑摩書店
・建築と言葉                     小池昌代、塚本由晴   河出書房
・間取りにこだわればいい住宅になる        上田康允   ナツメ社
■世界の民家園                       岩本 章   鹿島出版
・決定版2×4材木工                       学研パブリッシング
■21世紀の名建築1088             ファイドン・アトラス  エクスナレッジ
■ゼロエネルギー住宅とパッシブハウス    新住宅ジャーナル編  エルエル出版
■あの日からの建築                    伊東豊雄  集英社新書
・耐震、制震、免震の科学              高層住宅研究会  日刊工業新聞
・地震による液状化とその対策            液状化研究会   オーム社
・東京高級住宅地探訪                  三浦 展   晶文社
・家を建てるときに一番大切なこと          森下誉樹   ダイヤモンド社
△奇跡の団地  阿佐ヶ谷住宅            三浦 展他   王国社
△イギリスの田舎のホテル              旅名人ブックス  日経BP
■△建築史的モンダイ                   藤森照信   ちくま新書

posted by uno at 07:53| Comment(0) | 半年間の面白本ベスト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月20日

小説としてはダメ。 だが上海住宅事情ルポとしては一読の価値。


六 六 著 「上海、かたつむりの家」 (プレジデント社 1900円+税)

かたつむり写真.JPG

日経新聞の書評欄にこの本が取り上げられていた。
単なる書評だったら、わざわざ買いに行こうとは考えなかった。
この本がテレビ化され、北京で放映され、大好評を博した。当然、首都でヒットしたテレビドラマは、中国全土のテレビ局に売られ、順次放映される。
このドラマが、上海東方衛生テレビが放送を開始したと思ったら、たった一週間で放映中止になった。
放送が中止になった理由の説明は、一切なし。
書評家は、このドラマがあまりにも中国の住宅事情や、官僚のワイロ行政の様子をリアルに書いているので、当局の手によって放映差止め措置が取られたのだろうと書いていた。

さて、こうなれば住宅に携わる人間として、なんとしてでも読まねばならない。
小説としての良し悪しは何にも書かれていなかった。
「当局から放映中止の命令が出されるほど、現代中国の住宅事情に深くメスが入った優れた作品に違いない。この小説は見逃せない」 と、おっちょこちょいの私は考え、紀伊国屋書店へ走った。

この小説の主人公は、大学を出て大都市の戸籍を持った幼い男の子ホワンホワンの母親・海萍とその夫の蘇淳。
それと海萍の妹の海藻。 その海藻を若い恋人から奪いとり、妾のように飼い慣らしている高級官僚の宋思明の4人。

海萍が住んでいるのは10u (3坪、6帖) という、それこそかたつむりの家。もちろん、台所、トイレが共同という 古ぼけた安アパート。家賃は月650元 (約8450円)。
この小さな安アパートを独身時代の海萍は借りていた。もちろん一時的なはずだった。
ところが蘇淳と結婚し、転職もし、出産もここでして 5年間も住みつくことになろうとは考えていなかった。
3年前、海萍が妊娠5ヶ月に入った時、夫婦は不動産購入計画を立て、上海市内の中古物件を見て回ったことがある。
海萍の年収は4.2万元 (約55万円)。夜中の2時まで勉強した大学出の年収がこの程度。
田舎へ行けば、広い家が安く手に入る。しかし、大卒の資格でやっと手に入れた大都市戸籍は50万元 (650万円) はする。 したがって、どんなに苦しくても二人はこの戸籍を失うことは絶対にしたくないと考えている。
夫の蘇淳は世界でもトップ500にランクインする船舶会社の技術屋で、年収は7万元 (約91万円)。 しかし、若い夫婦の手元には4万元 (約52万円) の貯金しかなかった。双方の実家から援助金を得たにしても、二人が買えるのは小さな中古物件しかなかった。しかも市内ではなく、上海郊外で…。

初めて見た家は90年代の初期に建てられた古くさい感じの設計。
台所、トイレ、2つの寝室のいずれもがドアはリビングに向かって開いている。つまり、リビングは廊下替わりで家具どころかパソコンも テレビも置く場所がない。もっとましな家を夢見ていた海萍は、こんな築10年の住宅が30万元 (約390万円) もすることに狂っているとしか考えられず、「買いません」と即座に断った。それが、3年後の今では3倍以上の100万元はしている。当時は住宅価格の狂乱時代がくることを海萍は予想出来ず、不労所得の権利を自ら放棄してしまった。
しかし、いくつかの物件を下見している間に、二人は経験を積んでいった。
そして、ある物件で4万元 (約52万円) を上乗せすることで権利を獲得した。
「ついに勝利のカードを得た。これで私も資産階級の一員になれた」 と海萍は嬉しくなった。
4000元 (5万2000円) の手付金を払った時、最初に見た家よりも狭いことが悔やまれた。しかし、海萍のお腹は気球のように大きくふくらんでいて、もう他を当たることは出来なかった。
しかし、まさかという事態が生じた。
手付金を払った3日後に、家主から、「申し訳ないけど、手付金は500元上乗せしてお返しするからキャンセルしてほしい」 という電話が入った。2万5000元上乗せする買い手が現れたのである。
海萍は電話で言った。
「いいですよ。あんなあばら家で、家主が信用できないということだと、こちらからお断りします。ほほほほ…。実は実家の親が生まれる子に別荘を買ってやれと、現金を送ってくれたのです。こちらからお断りしょうと思っていたところです…」

生まれたホワンホワンは、海萍の生活を混乱に陥れた。 望んだ子供だったが、ここまでお金がかかるとは思わなかった。赤ん坊の食費は大人の二人よりも多くかかった。輸入品の粉ミルクは1缶100元以上するし、紙オムツも100元以上。
預金通帳上に描かれていた家の青写真は、1u、1uと消えて無くなって行く。
しかも、産後の手伝いで実家の母親がきてくれていたので、狭い部屋は一層狭くなった。実家の母親と新しいママは幼児を抱いてベッドで寝る。夫は床に布団を敷いて寝る。赤ん坊は3時間ごとに泣きだす。
オムツの臭いと大人の汗の臭い。子供の泣き声と大人の怒声。
とても6帖の家の中にいるわけにはゆかない。
そして、赤ん坊が生まれて3ヶ月たったとき、海萍は家族に宣言した。
「仕事に戻ることにする。お金を稼いでこの狭い家から抜けださないと、生きてゆけない。 お母さん。ホワンホワンを家に連れて帰って、しばらく面倒をみてくれない?」

倹約、倹約、倹約…。
これが海萍の生活目標になった。
子供が去ったばかりの頃は、海萍は夜9時になると電話した。しかし、市外電話の請求書を見て、夫が「こんなに電話をかけていたら、直ぐ数uがなくなるよ」 といった。
変わりにビデオカメラを買い、母親にパソコンを買って送れば、と考えた。
「パソコンの回線代も高い。長く使うと都度1u。それよりもミルク代を送れば…」と夫に言われると海萍は涙すら出なくなった。

不動産価格は3段跳びで高くなってゆく。貯金通帳が増える速度に比べて、住宅の価格の上昇速度は速すぎる。永遠に追いつかないだけではなく、ますますその距離が大きく開いてゆく。
年に二回の実家訪問で、このままではホワンホワンは完全に自分から離れて行くということを海萍は実感した。
「何が何でも家を買うことを決めました。貴方は私の言う通りにしてくれればいいわ。 価格はだいたい80万元 (1040万円) 。頭金を20%として16万元。貯金と積立金は8万元しかないから、あと8万元を借りなければならない。貴方の任務は、親から4万元借りて下さい。 私は親から2万元と、妹の結婚資金から2万元を借ります」

蘇淳の親は、4万元を用意できる状態ではないことを蘇淳は知っていた。
そこで、蘇淳は取引先から仕事を受けて、アルバイトを始めた。そして、1万元単位で海萍にカネを渡した。 ところが、この行為が守秘義務を逸脱した行為だと公安局に逮捕され、蘇淳は牢屋へぶち込まれてしまった。再起が不可能なような事件が起きてしまった。
それだけではない。会社は損失金として2400万元 (3120万円) の請求訴訟を起こしていた。

一方、妹の海藻は、「姉のためなら死んでもよい」 と言うほどの覚悟を持っていた。
それは、海藻の命は海萍によって与えられたものだったから。
それは、中国が一人っ子政策を厳格に実行していた時代。 両親は避妊リンクを使っていたのだが、想定外の妊娠を親が知ったのは4ヶ月を過ぎてから。当然、堕すしかなかった。しかし、海萍が弟の誕生を強く望んだ。処置が手遅れとなり、父親の月収は2等級下がり、母親は昇級資格を5年間失った結果として生まれてきたのが男の子ではなく海藻。 両親は泣いた。
しかし、海萍だけは妹の誕生を喜び、可愛がって勉強を見てくれ、食事の面倒を見た上で、夜は添え寝をしてくれた。
このため、海藻は、「お姉ちゃんのためなら心臓をあげてもよい」 とまで考えていた。
その姉から、「結婚資金はどれだけ貯まっているの?」 と聞かれた時、「8000元」 と正直に答えた。
しかし、2万元が必要だと分かり、若い恋人といろんな葛藤と別れと再会の挙句に、結局は宋思明に身体を売ることになってしまった。
海萍の「家」に対する執念が、周りを不幸に陥れた。

ところが、これは小説。
結末は意外な展開を見せる。
しかし、正直言って、これは小説としては面白味が欠ける。
現代上海の一風俗として、あるいは世俗の一断面として、その住宅問題のルポは面白いけれども、正しくルポされているのは前半のほんの一部。私が紹介した範囲。
したがって、共産党の当局が、このドラマの放映を中止させたほどの内容は ほとんどないと言っても過言ではない。

「日経新聞がヨイショしていたほどの価値がなく、買って読むほどのものではないですよ」 と言うのが私の寸評。



posted by uno at 08:41| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。