2011年01月01日

売上高ではなく35%の粗利で量販店に挑戦  地場電化店の戦略


今年も宜しくお願い申し上げます。

暮れに紀伊国屋に行き、地場ビルダーが今年どのように生きてゆけばよいのか、その方向を示唆してくれる本はないかと懸命に探しました。もちろん住宅関連本の売場には、まともな本はありません。
しかし3時間粘って、なんとか面白そうな本5冊をゲットしました。
内容が良ければ、順次紹介してゆきたいと考えております。
その中で、いの一番に読んだのが下記。 電化のヤマグチについては、若干の予備知識があったから。 だがこの本には、地場ビルダーに役立つヒントがこれほど満載されていようとは・・・。
まさかの、想定外の出来ごと。

山口勉著「でんかのヤマグチさんが 《安売り》 をやめたワケ」 (宝島社 1238円+税)

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同社は45年前、東京・町田でナショナル系列の販売店として家電の小売業を始めています。
バブルの頃は、10坪の店舗を6店まで拡大。 社員はパートを含めると50人程度にまで膨らみました。
そして、バブルがハジケル直前に10坪の店舗では魅力的な品揃いが出来ないと多店舗化をやめ、1店舗に集約してなんとか頑張っていました。
ところが、心配していた家電の大型量販店が、低金利でダブついているカネを銀行が貸してくれるから、「拡張競争に乗り遅れてはならず」 とわれもわれもと町田へ進出。

最初に、ヤマグチの店から車で2〜3分のところにコジマが出てきました。
そしたら、「コジマの近くにヤマダあり」 という定説に通りにコジマから1キロ圏内にヤマダがオープン。
さらには神奈川の雄・ノジマが、コジマとヤマダの中間にオープンし、サトームセンも2店舗をオープン。ダメ押しとして町田の駅前にヨドバシカメラがオープン。
あっという間に大型量販店が6店舗も町田に出現したのです。

地場ビルダーの中には、「そんなの驚くことはない。うちの街にはセキスイ、ダイワをはじめナショナル、ハイム、旭化成、トヨタ、一条、三井、住林など10数社が進出してきている。6店舗なんか珍しいことではない」 と考える方があるかもしれません。
しかし、大手プレハブメーカーと家電の量販店では怖さがまるきり違います。
大手プレハブメーカーは、確かにネームバリューはありますが、省エネ性能などの基本性能はいたって低い。 セントラル空調換気システムさえも備えていない。 そして、価格はフル装備だと坪70万円から80万円以上と、地場ビルダーに比べると2割は高い。これは、人件費をはじめとして経費がやたらとかかっているから・・・。

したがって、その総合展示場へ地場ビルダーがデザインと性能の優れた商品で、設計力のある機動部隊と責任体制が整えた直施工部隊を用意して出展したら・・・。性能、デザイン、価格面で大手プレハブメーカーに負けるワケがありません。
ただし、あなたの会社が初めて展示場に出展した場合は、2年間くらいは大手メーカーの営業マンから 「あの会社はいつ潰れるかわからない。そんな信用の出来ない会社と付き合ってはいけない」 という、しつっこい囁き戦術に悩まされます。
この期間を 「技術と誠意と信頼」 という強いポリシーでクリアーすることが出来れば、大手プレハブメーカーは怖くはありません。

よく、「総合展示場へモデルを出すのは、不必要な経費がかかるからやめた方がよい」 と、もの知り顔で話す人がいます。
まともな意見のようですが、これは実態を知らない人のタワゴトという面が。
確かに集客力に見合わない高すぎる出展料をとっているところや、急激に集客力を落としている総合展示場があるのは事実。
しかし一般の展示場は、それなりに新規客を集客してくれています。
下手に個別展示場を持つよりも有効な場合が多いのです。
そして、第一線の設計士などの社員の居場所と駐車場を確保してくれ、さらにお客さん用の広大な無料駐車場とトイレも用意しています。
個別展示場よりも広い商圏をマーケットにすることも出来ます。
もっとも、35kuの横浜・青葉区だけで、月3棟強の受注をこなしているエコハウスという特例がありますが・・・。

展示場をもっていない時は、施主の寒い家へ出向いて打ち合わせをする往復の時間のムダ。
快適なモデルハウスを持てば、施主が足を運んでくれ、素晴らしい空気質を実感してもらいながら打ち合わせが出来ます。この効率の良さとこちらの土俵で話が進められるのが最大のメリット。
展示場があるのと無いのとでは、まさに月とスッポン・・・。
しかし個別展示場だと、築1年もたたないうちに古く感じられ、新規客がほとんど訪ねてこなくなります。 継続的にイベントを開いて集客を確保するのは、容易なことではありません。 ほとんどのビルダーが有効な企画を用意することができず、尻つぼみに・・・。

そして総合展示場の場合には、最初の商品企画さえしっかりしておれば10数年も建て替えずに、「10数年たってもこのように造作材の収縮がなく、新品と変わらない美しさと性能が維持できます」 と高らかに謳うことも可能。
マイスターハウス前橋展示場のR-2000住宅モデルは、築21年目に入っているのに、未だに現役で頑張っています。 20年先の需要を考えて練り上げたプランだと、このような芸当が出来るのです。 ビルダーの負担は個別展示場よりはるかに些細。
したがって場所にもよりますが、年間最低15戸の受注を総合展示場であげることが出来れば十分にペイしますから、出展可能なビルダーは出展した方がベター。もっとも経費率が低く、粗利が25%確保できるという条件を満たせねばなりませんが・・・。

この総合住宅展示場に対して、個店だが家電量販店の怖いところは、品揃いがやたらと豊富で、価格がベラボウに安いこと。
プレハブ住宅に譬えて言うならば、地場の工務店よりも低価格の坪40〜50万円台かそれ以下の価格帯で商売をしています。
しかも、大型量販店で売っている商品も、地場の小売店で売っている商品も全く同じメーカー品。
ナショナル、シャープ、あるいはソニーのテレビであり、誰もが知っているメーカーの冷蔵庫であり、エアコンであり、デジカメ。
したがって、大型家電量販店1ヶ所が、総合住宅展示場1カ所に匹敵するほどの影響力を地場企業に与えます。
軍艦のような大型量販店が6店も出現したということは、町田に総合住宅展示場が一気に6ヶ所もオープンしたのと同じこと。
なにしろ、プレハブメーカーと家電量販店では、シェアに雲泥の差があります。

今から15年前のヤマグチは、それこそ連合艦隊のなかに紛れ込んだ小型の釣り舟。
荒波でもみくちゃにされてしまいました。
売り上げはストップ。
だからといって折角集めた社員をリストラするだけの勇気と費用もない。そんな不義理なことは恥ずかしくて出来ず、モタモタしているうちに赤字は嵩んでゆく一方。
この大ピンチの中で、ヤマグチは一大経営転換をしました。いや、せざるを得なかった。
それは、「安売りはしない。売上高は考えない」 というもの。つまり、「売上主義から粗利主義」 への転換です。
この転換を、口で言うのは簡単。
しからば具体的に、どんなことをやったのでしょうか?

最初に取り組んだのが、「顧客の削減」。
1996年当時、営業マン1人につき最高で800人のお客を抱えていました。これでは行き届いたサービスは出来ません。何度もシミュレーションをした結果1人当たり500〜600世帯に絞ることにしました。
まず、過去5年間に取引のない顧客をリストから除外。
そして、残ったお客をランクづけしたのです。
過去5年間で100万円以上を買い上げてくれたお客をAランクとし、それをさらに3段階にわけました。
A1は1年未満で100万円購入者。A2は1〜3年での購入者。A3は3〜5年での購入者。
Bは30〜100万円の購入者で、B1、B2、B3の分類はAと同じ。
Cは30万円未満の購入者で、分類は上に準じます。
つまり、都合9グループに分けたということ。
そして売上高の比率を見たらA1=20.9%、A2=10.1%。  B1=12.3%、B2=11.1%。    C1=11.0%、C2=13.2%。  
そして1年未満の購入者の比率は44.2%で、 1〜3年は34.4%、 3〜5年は21.4%。

このデータが基本になり、作戦が練られ、サービスの重点的投入先を明確にしたのです。
そして、お客ごとに所有する家電の種類とメーカー名、購入先、価格、購入年月と担当者をデータ化しました。
それだけではなく、家族構成、ペット、誕生日、趣味、家の築年数、浴室など設備品など顧客の個人情報もデータ化しています。
こうしたデータの整備によって、「かゆいところに手が届くサービス」 から 「かゆくなる前に手が届くサービス」 が出来るようになったのです。

当然、社員の給料も売上高ではなく、粗利高に準じて支払われるようになりました。
それぞれの商品の仕入れ単価がオープンにされています。
原価を知らされていて自分の粗利が分かるから、社員はやたらな値引きはしない。
そして、どれだけの粗利があったかが日次決算で分かるだけでなく、社員の給料や粗利率も日次で誰にも分かるようになった。完全に 「見える化」 されてきました。 
社員だけでなく、お客ごとの粗利高も、はっきり分かってきています。それだけに個々のお客に対するサービス密度を濃く出来ます。

技術に明るい若い人は、最新の機器であっても大概のことは取扱説明書を読めば分かります。
しかし私などは、細かい文字で専門用語を羅列した取説を、まともに読んだことがありません。
そしてパソコンにしても、プリンターにしても、デジカメにしても、光通信やFAXにしても、往々にしてとまどってしまいます。
そして、メーカーが指定している問い合わせ先へ電話をします。
長く待たされた挙句に、「○○○の場合は何番を押して下さい」 に振り回され、やっと辿りついても要件が果たせないことがしばしば。
そして、パソコンの場合などは保障期間が切れたら持参し、長く待たされた上での有料修理。または、部品や商品を取り換えさせられます。
自宅への出張サービスもありますが、FAXの修理でも1〜2日は待たされ、1回に7000円前後の費用がかかります。

ところがヤマグチは、最初は量販店よりは価格が高いが、問題があれば無料ですぐ飛んできてくれます。 そして、例えばメーカーの保障期間が5年間でも、問題があれば直してくれるだけでなく、場合によっては保障期間が過ぎていても引き取ってくれる。
そうしたトータルのサービスを含めて、販売価格が構成されているのです。
そして、このサービスの有難さが分かったお客は、いくら価格が安くてもメーカーや量販店へは足を運ばない。 年配者であればあるほど、なまじっかの性能云々や価格よりもサービスの占める比重の大切さと、その有難さを実感しています。
もっとも、この家電のヤマグチを上回るビルダーが存在しています。マイスターハウスで、メーカーに変わって全部品・全設備の10年間無償メンテナンスを実行しています。

最近、量販店の社員がヤマグチへ転職することが多いそうです。
その最大の理由は量販店では一日中苦情処理の電話に追われているから。
それも、最初は使い方の質問なのですが、電話ではなかなか説明できない。 理解できないからイライラして、次第に苦情に変わる。 
訪問すれば1分間で済む話が、電話だと30分もかかった上でクレームになってしまう。
本当のサービスとは何かを、ヤマグチは考えさせてくれます。

ヤマグチでは、頼まれれば家具の配置換えも手伝う。 時には旅行中の観葉植物への水やり、あるいはペットの世話までも頼まれる。
どんな依頼でも、快く引き受けている。
信じられないことだが、留守宅へ泊まり込んでほしいという依頼もあるというから驚きです。 家族が居ない自宅へ他人を入れるということは考えられない。 親戚以上の信頼関係が構築されているということ・・・。
こうした、なんでも相談出来るという信頼関係の延長線上で、最近ではオール電化によるリフォーム工事の受注が増えてきているそうです。
つまり、工務店が電気屋の下請けになってきているという図。

そして、お客様を招待してのイベントを毎月行っています。昨年の内容は下記のとおり。
1月  被害で困って駆除した北海道のエゾ鹿肉まつり
2月  同じく エゾ鹿肉まつり
3月  ホタテ貝まつり 
4月  漬物まつり
5月  チーズケーキまつり
6月  カツオまつり
7月  たまごまつり
8月  うなぎまつり
9月  サンマまつり
10月  パインジュースまつり
11月  男爵イモまつり
12月  鶏肉、年越しそばまつり

家電は、住宅のように耐用年数が50年とか100年という耐久消費財ではありません。
最長のエアコンや冷蔵庫でも10年から15年の消費財にすぎません。
このため、店とお客との接触頻度は高く、買い替え需要も多い。
したがって、家電のヤマグチの手法を、そのまま地場ビルダーの商売に応用することは出来ません。
また地場ビルダーには、各職種の技術力と雇用を維持するために、コンスタントに一定の仕事量を確保しなければならない・・・という社会的な義務というか責任があります。
その責任が果たせないと技術レベルが維持できず、性能保証が出来ない。
1棟のモデルハウスを建てる時は、誰でも高い性能が出せます。 問題は、全ての住宅でコンスタントに超高性能が出せ続けられるかどうかです。

よく言うQ値とかC値という性能。
家電販売には取り付け工事はあるけれども、性能はどこまでもメーカーが保障してくれる。
ところが大手住宅メーカーは、このQ値とかC値という性能を保証することが出来ないことがR-2000住宅で判明しました。
施工代理店制度を採用している大手の場合は、とくにC値という気密性能の保証ができない。
そこで何をやったか。
三井ホームの元F常務は自分らの能力のなさを隠ぺいするため、建設省から出向していたツーバィフォー協会の元専務理事をたらしこんで、R-2000住宅認定制度を廃止に持っていったのです。 カナダ政府と日本政府との信頼関係で締結していた国際技術協力を破棄させたのです。
大手メーカーのサラリーマン重役と天下り役人というのは、国際条約を破棄するということさえも平気でやるということを見せつけてくれました。
もちろん、そのような暴挙を阻止出来なかった私どもビルダー側に、守りの甘さという責任があったのは事実ですが・・・。

そして今、国交省と大手住宅メーカーは、EUの全建築物の省エネ性能表示の義務化とパッシブハウス制度の標準化という画期的な動きを知っていながら、最初から敬遠して知らないフリをしています。 
近寄ろうとはしません。
これは、パッシブハウスがR-2000住宅を上回る気密性能を求めているからです。
この性能保証は、鉄骨プレハブでは逆立ちしても出来ません。2.0cuの気密性能を1/10の0.2cuにしろというのですから、とてもじゃないがムリな相談。
前歴のある三井ホームはともかくとして、三菱、東急、スウェーデンハウスまでがダンマリを決め込んでいます。
世界の住宅水準に比べて日本の住宅は、気密性能と換気性能で決定的な欠陥を持っています。
恥ずかしいほどの低レベルで、大げさに表現するならば《気密性能欠陥住宅》。
この大手の弱点が明確になっているのに、その弱点を突いて行こうという元気な地場ビルダーが少なすぎます。
大手に出来ないことをやり抜くところにこそ、地場ビルダーの存在価値があるのです。
安売りに気を取られて、この肝心の点を見失ってはなりません。

電化のヤマグチはここまでお客へのサービスを徹底しているため、リーマンショックによる不況の影響は全然なかったと断言しています。
そして、売り上げは12億円強と変わらないが、最近では粗利が40%近くにもなってきているとのこと。
戦時中に唄われた隣組の歌があります。
トン トン トンカラリと隣組
あれこれ面倒 ミソ ショウユ
ご飯の炊きかた垣根越し 教えられたり 教えたり・・・ 

この大切な隣組というコミュニティが失われてきています。
それを補っているのが、電化のヤマグチの、「なんでもありのサービス」。
このサービスを、あの中国のハイアールが、かなり本気で学ぼうとしているらしい・・・。 
儲けさえすればよいという思想一辺倒だったはずの中国人が、ヤマグチイズムで脱皮をはかろうと同社へ講演を依頼し、研修社員の派遣を継続している・・・?!
世の中、大きく変わろうとしています。
地場ビルダーよりも地場電化店の方が、グローバル化しているというこの事実。
目を覚ます必要があるようです。

『ヤマグチには本社ビルなんかいらない。私が持っているのは健康な身体と社員とお客さん。地域の電気屋として、地域のお客に喜んでいただければそれでいいのです!』

この家電のヤマグチに匹敵するビルダーとして、かつては住宅専業のナカジマホームがありました。現在は東北の北洲ハウジング、群馬のマイスターハウス、青葉区のエコハウスをはじめ北海道など地方に多くの仲間が存在しています。
だが、もっともっとすべての地場に元気な地場ビルダーが出現して欲しいと、新春に当たって心の底から願わずにはおれません。

大切なヒントとポリシーを再確認させてくれる税込1299円の本。 是非ご一読を。



posted by uno at 08:16| Comment(0) | 経営・ビルダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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