2011年01月05日

暴論? 正論? 「1人に25万円配ってデフレ渦から脱却を!」


今から1年半前、「脱官僚で政治主導を!」と叫び、「4500の法人に2万5000人の天下りがあり、12兆円投入されている国費を切って児童手当を増やし、高校の授業料と高速道路をタダにし、農家に個別補償を行う」と大風呂敷を広げた民主党が天下をとった。
森、額賀、古賀、山崎、伊吹などのボス連中が支配している自民党の体質に愛想を尽かした人々は、しがらみのない新政権が新しい日本を打ち立ててくれるのではないかと大きな期待を抱いた。
「2020年までにCO2を25%削減する」と打ち上げた国際公約の大花火。オバマ大統領とタッグを組んで実現してくれるかもしれないとの甘い夢も抱かせた。

しかし、民主党には自民党以上の大ボスがいた。解党を重ねる度に政党助成金を独り占めして何億円と言う不動産を貯め込んだフィクサー。政界裏街道の帝王。
そして選挙で国民は民主党を選んだが、国民新党や社民党は選ばなかった。
それなのに、大ボスの命令で国民新党の亀井氏を金融担当大臣に任命し、日本郵政社の民間社長を放擲し、元大蔵事務次官で天下り先を渡り歩いてきた斉藤氏を社長に、同じく大蔵省OBで渡り歩きの達人・坂氏を筆頭副社長に据えた。
この国民新党の暴挙を食い止められなかったことで、天下りを追放すると言っていた民主党の公約は完全に反故となった。 国民を見事に裏切った。
また、鳩山首相は社民党と口裏を合わせて沖縄から米軍基地を撤退させると妄言し、日米関係を決定的に悪化させ、沖縄国民に幻想と失望を与えて失脚。

そして、脱官僚の旗頭であると考えられていた菅内閣は、発足早々にいとも簡単に財務省に丸め込まれて「消費税引き上げ」を叫んだ。
消費税の増税問題は、自民党と公明党が先鞭を切った。
「財政赤字のツケを子どもに回してはならない。日本はヨーロッパに比べると消費税が低すぎる。われわれ政治家は責任を持ってこの解決に当たらねばならない」
このため多くの国民は、消費税増税を叫ぶ政治家は、「逃げない政治家」「正直な政治家」 だとの印象を持っている。消費税容認論も多くなってきている。
これに便乗しようとした菅総理。
だが、しっかりとした理論武装がなされていなかったために、途中でボロを出し続けて選挙に大敗。
それ以降の民主党は、醜い内紛ばかり。

官僚制度のムダを省き、国民生活を向上させてくれるという期待。
それは淡雪のように消えてしまい、もうどこを探しても影も形もない。
この結果、誰一人として民主党の菅総理や小沢、鳩山などの寝言に耳を傾けようとは考えなくなった。
そして、最近の新聞論調を見ると、消費税の増税だけが確実に忍び寄ってきている。
「日本の未来を救うには、消費税の増税しかない」 という雰囲気。
だが、消費税を上げれば、それで日本は本当に救われるのだろうか?
この大きな疑問に対して、真正面から取り組み、増税以外の解決策を提示してくれているのが下記著書。

P1030932.JPG
高橋洋一著「消費税『増税』はいらない!」(講談社 1200円+税)


最初に、著者の考えを要約しておく。

国の財政再建は絶対に必要。しかし、それが第一義の目的になってはならない。
(1) まずやらねばならないのはデフレから脱却して名目成長力を先進国並みの4%にして日本経済に活力を取り戻すこと。
その次は、(2) 政府資産を売却して圧縮すること
(3) 公務員の給料カットや各種の議員定数の削減と歳費のカットをすること。
その上で増税が必要なら、(4) 景気動向を見て個人所得などで行い、(5) 消費税は道州制の導入とともに地方に任せるべき。

この10年間のOECD(経済協力開発機構) 30カ国の名目成長率は平均5.3%。
ブービー賞は東ドイツ問題のハンデを背負ったドイツで2.4%。そしてみっともないビリが0%の日本。世界経済が発展を続けているのに、なぜ日本だけがこんな惨めな状況に置かれているのか。
その最大の責任は、世界の中央銀行が1〜3%のインフレ化を目指しているのに、日本だけが0%の成長の 「反インフレ政策」 を掲げてきた日銀にある。
この日銀批判の詳細は、昨年とりあげているので、今回は省かせていただく。

名目成長率が0%の日本は、2000年代に入って深刻なデフレスパイラルに陥っている。これが、日本経済を大きく歪めている。
デフレは、なぜ経済にとって有害なのか?
デフレ下では企業の売り上げが減り、賃金が下がる。
高すぎる実質金利やバランスシートの悪化で、企業は生産を縮小し、設備投資を抑えようとする。
金利は1%であっても、1年後に物価が5%下がるとしたら実質金利は6%。しかも、生産した商品や提供するサービスが下がり続けるので、金利の負担が重くのしかかってくる。これではカネを借りてまで投資をしょうとは考えない。
そして、デフレが続く限りイノベーションが起こらず、次代を担う新しい産業が起こらない。
もともと手持ち資金が少ない起業家は、とても新たに会社を起こす気になれない。
したがって、新規参入はほとんどなく、成長産業も育たない。
新規産業が育たないと縮小した既存の企業から放り出された失業者や建物、土地の引き取り手がない。失業者が増えるだけで、これが消費のさらなる停滞につながってゆく。

家を建てようと考えている人は、デフレで地価が下がるとわかっているから、なかなか行動を起こさない。長期のローンを組んだら、いつリストラされるか分からないという心配もある。
しかし、建築費は一向に安くならない。
デフレを見越して、資材メーカーは生産量と人員を調整し、削除している。このため、需要減の中の資材高という奇妙な現象が起きている。このデフレのややこしい波が、新設住宅着工に微妙な影響を及ぼしている。

デフレが続けば不良債権の処理も進まず、優良債権も不良化する。このため、金融システムが不安定になる。銀行は貸し渋りや貸し剥がしをするようになり、資金繰りで行き詰まる中小企業が続出し、黒字倒産が増える。
銀行も収益体制を改善するどころか悪化する危険性が高まる。金利の引き上げが難しいので貸し出しを抑制して安全な国債などを増やすしかない。それでは十分な利益が上げられず、銀行危機が深まってゆく。

財政危機も深刻化する。デフレが続く限り賃金や企業業績が伸びないので税収が減る。そこで財政赤字が増大しないように歳出を削減すれば、それがデフレを加速化させる。そしてまた税収が落ちるという悪循環に・・・。財政は再建されるどころか破綻への道を歩むことになる。
公的年金制度も危うくなる。所得が下がれば、支給額を減額するしかない。株価の低迷で年金が保有する株の含み損も拡大する。
このように、デフレスパイラルは、玉突き現象を起こし、経済の立ち直りを大変難しくしている。

日本の政治の政策目標は、何をさておいてもこのデフレスパイラルからの脱却であらねばならない。しかし、この問題にまともに取り組んだのは小泉内閣だけで、あとは財務省の間違えたリークに政治家が踊らされている。
財務省は、「経済成長が上がれば、財政再建は出来ない」 と本気で考えている。
成長率が上がると、金利も上昇する。そのため利払いが嵩んで財政再建が遠のくという理論。
たしかに2〜3年の短期的なスパンで見ればそのような現象は起こりうる。しかし、金利の上昇はやがて頭打ちになり、税収の自然増が財政を再建してくれる。
この財政学の常識が、せいぜい3年間のスパンでしか物事を考えない財務省は頑固な 「財政原理主義」 に陥り、マクロ経済を無視しているのが大問題。
財務省がひたすらに考えているのは、消費税の 「増税」 によって、自分たちの「財布」 がふくれ、予算の差配権が強化されること。そうすれば、永田町も霞ヶ関も牛耳ることが出来る。
したがって、財務省はOBの藤井裕久、与謝野薫をはじめ総動員して、「消費税増税」 に的を絞って洗脳活動。
菅総理も、完全に篭絡された。
民主党の幹部には、マクロ経済が分かる者が一人もいない。
小沢ブレーンと言われる榊原氏は、フランス型の大きな政府派であって、財務省の間違いを糺せる器ではない。ここに根本的な悲劇がある。

そこで著者は、GDPの需給ギャップが30兆円あるなら、何もしない日銀に変わって政府が 「政府紙幣」 を30兆円刷って、一番良いのは減税だが、それが難しいなら一人当たり25万円ずつを給付すべきだと書いている。
4人家族なら100万円。
大変に大胆な提案。思わず眉にツバを付けたくなる。
しかし、これくらいのことをやらないと、10年以上続いているデフレスパイラルから脱出すかることが出来ないと説く。
私を含めて、ほとんどの日本人はそれほどの切迫感を持っていない。とくにひどいのが政府や日銀。
だから、世界で日本だけが長期のデフレスパイラルと円高に苦しめられている。
そして、政府が30兆円の紙幣を発行する具体的な手法も述べている。

それだけではない。
民主党の枝野、蓮舫などが行った事業仕分け以上の埋蔵金の実態や、特別会計の洗い出しの手法を具体的に教えてくれている。
そして、現在の1府11省から1府6省へスリム化する方法と、現在いる国家公務員30万人、都道府県公務員33万人、市町村100万人を、国家公務員10万人、道州府15万人、市町村20万人と1/へ3削減する提案も行っている。
その上での増税の手順も示している。
最初に述べたように、消費税は財務省の管轄にしてはならず、10兆円は道州制へのための財源にすべきだと提案している。

つまり、デフレ脱却から道州制に至るまで、一連の改革の具体的な手法と手順を示してくれている。今の民主党や自民党に欠けているものは、こうした長期的に日本の未来を見据えた鳥瞰図。
著者の提案が全て正しいとは思わない。
しかし著者のような頭脳を、今の政治家が活用していないことが、本当にもったいない。
内容は少し難解だが、心ある方はご一読を。



posted by uno at 15:01| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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