2011年02月01日

Q値0.69Wで坪62.5万円!!  BIBシステムの衝撃


私が信越ビーアイビー社と初めて付き合ったのは23年前。
東京・立川で、関東地域で初めてR-2000住宅のモデル棟を建てる時。
断熱・気密工事を北海道のBIB社に依頼した。そしたら信越BIBを紹介してくれた。
立川のモデル棟と関東第一号実用邸の玉置宏邸の断熱・気密工事は、信越BIBの手による。
同社は、その後信州大の山下恭弘先生を担ぎ出して「信州の快適住まいを考える会」を組織。
数年前のハンスさんの講演で突然目覚めて、
「無暖房住宅」では、信州・考える会のメンバーが全国のトップを突っ走った。
しかし、山下先生が定年で退任し、若い助手や生徒などによるデータ取りが思うように進まないこともあって、信州勢にはかつての勢いがない。

その信州BIBが、NEDOの「高エネシステム促進事業補助金」に申し込んだら、
ラッキーにも採択となり、昨年秋よりT邸を「BIBエコシステム」の名で建築していた。
このNEDOの補助金は、次世代省エネより優れた住宅を建てるに要した差額の1/3を補助するもの。
次世代省エネ基準のQ値2.7Wが、BIBシステムだと0.69Wと約4倍の性能に。
それなのに、差額は700万円強で上がる計算。このため、約240万円の補助金が施主に渡される。
この制度はなかなか優れた制度だが、応募の期間が短く、申請が突発的。
したがって、誰もが活用できるというわけにはゆかない。
たまたまタイミングよくT氏が、「一切合財を含めて3300万円で上がるのなら、やってほしい」 
とBIBの社長に一任したとこから、このプロジェクトがスタート。

困ったことは、最初から予算が限られていること。
しかも0.69Wというすごい絵を書いたものだから、おいそれと引き受けてくれる工務店がない。
つまり、労多くして儲からない仕事。
そこで、地元のガンバ建築設計を口説き落として設計管理を引き受けてもらい、
元請け制度ではなく分離発注制度で、価格に見合わせて発注するしかなかった。

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このT邸は2世帯住宅で、延べ面積は55坪。他に4坪の低い小屋裏があるので、実質56坪の住宅と考えてよい。
この住宅の基礎をはじめとした躯体および仕上げ工事費が、設計管理費を含めて2600万円。

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この躯体の木工事がすさまじい。
無垢の地スギを使ったプレカットによる軸組工法。金物工法より耐震性が落ちるが、見た目はよい。
柱は4寸でそれほどでもないが、梁セイがやたらと大きく、2階天井で210ミリ、2階床には330ミリものがふんだんに使われている。
正直言って、スパン計算をすれば構造的には不必要と思われるものが多々ある。
このため、材積は普段の2倍近いと推測された。
材積面では手抜きは皆無。


そして、分離発注の各項目の内容が、これまたけたたましい。
断熱・気密工事は、外壁が高性能グラスウールで外がKMブラケット採用で100ミリ、充填120ミリ、
それに配線工事を終えた上に105ミリのBIB35キロの吹き込みで、計325ミリ。
天井がグラスウールの吹き込みで350ミリ。
気密性能はC値では0.3cm2、漏気回数では0.56回/50P。

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開口部は、サッシがトリプルのダブルアルゴン、ダブルLow-Eの1.0Wで、玄関ドアも1.0W。
ただし、1階の和室の南面は、お年寄りのたっての願いでPVCの引き違いが2本。この大きな開口部のQ値は1.8Wと低い

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太陽熱集熱器は寺田鉄工の真空管方式で6m2。これに小さな太陽光発電が付いている。
貯湯タンクは500リッターのROTEX社の遮熱仕様で、補助ボイラーが付いている。

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これで、給湯と15ヶ所のパネルヒーターでの暖房を行っている。
ヒートポンプ式蓄熱システムでないのがやや残念。

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熱交は83%熱回収するスウェーデン製のロータリー式全熱交。これは、台所の換気扇も兼ねている。


このような断熱・気密、開口部、太陽熱温水器と貯湯、パネルラジエーター、換気を含めた一切の分離発注工事が900万円。
合計、3500万円で一切を仕上げているのはご立派。
施主の3300万円の予算からは200万円オーバーしているが、NEDOから約240万円の補助が得られるので、予算内にぴったり収まる。

2世帯のため56坪と大きいが、坪単価で言うならば62.5万円。
ともかく、私の知っている範囲では、Q値が0.69Wでありながら、内地では初めて到達した坪60万円台の超高性能住宅。
確かに、ヒノキなどの高級材木は使われていない。
しかし、材積は見てきたようにたっぷりすぎるほどたっぷり。
そして、熱損失率係数を良くするための断熱・気密、サッシ、換気、給湯と暖房では、ほぼ最高級品に近いものを採用している。
それで、坪62.5万円で引き渡しをしている事実を直視したい。

さて、ここで私は深い反省を込めて皆さんにお詫びしなければならないことがある。
それは、一条工務店の i-cube を、メーカーの言う通りに 「Q値が0.76Wで、坪単価は50坪で53万円」 ということを受け売りし、強調してきたこと。
この 「50坪で53万円」 というのは、それほど間違っていない。
0.76Wという表示に疑問符が付いてきた。
同社はカネカからバー材を購入してPVCサッシを自社生産していた。
これはペアーであって、それほど特出した性能を持っているわけではない。
そして同時に、同社はダブルハニカムのハニカムシェードを自社生産している。
これを併用すると、開口部のU値は限りなく1.0Wに近づく。
その数値をもとに0.76WのQ値を表現しているはず。
しかし、ダブルハニカムを装備すると、関東以北では冬期に結露が生じる。
このため、入居者から下部を開けて空気が通るようにしておかねばならず、
冬期のQ値は0.76Wに到達していないというメールを数通頂いた。
そのほかにも、90%の熱回収というが、トイレと浴室からは熱回収をやっておらず、90%の熱回収という表示にも疑問があるというメールも頂いた。

残念ながら、私は i-cube のQ値が実質何Wであるかという正確なデータを持っていない。
セキスイハイムのシェダンが、トリプルガラスを使い、しかもダブルLow-Eで、ダブルクリプトンガスを注入したサッシを使いながらQ値が0.99Wと表示している。ハニカムサーモ使用の表示がない。
このことを考えると、i-cube の0.76Wという表示方法には、いささか疑問が出る。
各ダブルハニカムの下部にhiroさんのようにヒーターを設置しない限りは、
結露の問題から0.76Wと表示するにはムリがあるのではなかろうか。
つまり、ダブルハニカムを使って1.0Wという表示は、これからはカウントしてはならない。
サッシの性能だけで1.0W以上のものだけをカウントしてゆく必要があるのだと思う。

2009年7月5日のこの欄で、「i-cubeが50坪で53万円と言っているなら、われわれは45坪で53万円の0.8Wを上回る住宅を供給する義務がある」 という札幌の仲間の声を伝えた。
しかし、i-cube のQ値がハイムのシェダンと変わらないとするなら、地場ビルダーの目標値は、もう少し変えても良いのではないかと思う。
そして、これはあくまでも私見に過ぎないが、以下のようなQ値(熱損失係数)と坪単価を当面の目標にすべきではないかと考えた。

寒冷地は、Q値は0.8W以上で、坪単価は45坪で55万円。

内地は、Q値は0.9W以上で、坪単価は45坪で65万円。

そして、内地の除加湿機能付きセントラル空調換気システムの場合は、Q値が0.8〜0.9W
以上で、45坪で坪単価は70万円。

あまり、はっきりした根拠があるわけではない。
これだと普及するという数値。
それにはサッシや熱回収換気、断熱・気密システムがリーズナブルな価格で入手出来ねばならないが・・・。
どこまでも、長野の現場でBIBエコシステムを見ていて閃いた感想にすぎない。
それほどの強いインパクトを受けた。

そして欲張った注文だが、BIBシステムには夏の除湿対策、直下型の震度7の地震対策にもう少し配慮がほしいという残像が残った。



この記事へのコメント
ご存じかもしれませんが、45坪、Q値0.69、坪60万を切っているビルダーがあります。しかも耐震3、太陽光発電、蓄電池、全館蓄熱床暖房等フル装備での価格です。アルファウッドテクと言います。http://www.biwa.ne.jp/~woodtec/smartstaycyzero.html 他にも民の住まいというところがQ値1くらいを坪54万円http://taminosumai.com/target_price.htm
鵜野さんの考える性能と価格はもう少し下げてもいいのではないでしょうか。
Posted by 高林修一 at 2012年03月20日 21:24
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