2011年02月11日

LCCM住宅に疑問あり!  イノベーションを失った住宅・建材業界


住宅の性能と生産性を高め、強い国際競争力を持続するには、
住宅そのものと、建材、部品、設備機器で、
絶えざるイノベーションを継続するしかない。


熱損失係数(Q値)は、北海道では北方型エコを中心に1.3Wが常識になってきつつある。
だが、内地では2.7Wという次世代省エネ基準すら超えられない工務店住宅が未だに多い。
大手分譲住宅業者の「トップランナー方式」と呼ばれる1.9Wのものですらギリギリ到達という低水準。
世界から見れば周回遅れのトップランナー。
そして、坪単価がやたらに高い。
こんな状態だから、日本の住宅は当然のことながら国際競争力を持っていない。
輸入住宅が住宅雑誌を賑わすことはあっても、
輸出住宅が新聞や経済雑誌で取り上げられることはほとんどない。
時折、海外での分譲計画が発表される程度。

数年前、経済産業省の住宅産業フロンティア創造ワーキンググループで、日本の住宅関連技術の国際競争力について検討を加えている。
その時、国際競争力の高い技術として ◇免震・制震 ◇防汚・高耐久コンクリート ◇潜熱蓄熱材利用 ◇燃料電池 ◇ヒートポンプなどとともに ◇断熱 ◇工業化住宅などを挙げていた。
たしかにエアコンやウォッシュレットは世界で頑張っている。

イノベーションがなく国際競争力の乏しい住宅・建材業界は、
09年4月から10年7月までの15ヶ月に及およぶリーマンショックによる30%もの新設住宅着工量減に併せて、
生産設備と人員を大幅に縮小する縮小再生産化でやっと生存権を確保。
このため、最近の一時的需要増に対応することが出来ず、
断熱材の払底に代表されるように商社が輸入をすると、
その輸入がさらに国内の断熱材メーカーのシェアを落とすという悪循環に陥っている。

同じ現象が、これからサッシ業界でも起こってこよう。
世界一のガラスメーカー、仏サンゴバン社の南京工場で
高性能ガラスが生産されようとしている。
日本のU値2.3Wのアルブラに変わって
0.8Wの中国産ガラスや1.0W強のウッドサッシが日本の市場を席巻する可能性が高まっている。
これに危機感を持った旭硝子などは躍起になっているが、
イノベーションを忘れたサッシメーカー、住宅会社、役所の反応は
信じられないほど鈍感。
このままでは国内サッシの空洞化が進み、
メーカーは単なる輸入販売業者化する懸念が高い。

そして日本では省エネ基準適合義務化の動きはあるが、
ECのような「全建築物の省エネ性能表示の義務化」を推進する意欲が希薄。
また、住宅そのものの「Q値やC値を画期的に引き上げて省エネ化を図る」という政策を
菅内閣に期待することは出来ない。
つまり、省エネ資材や部品、設備機器のイノベーションを推進させるインセンティブが、
国交省の政策にはない。

そして、今年は3つの横文字が日本の住宅業界を掻き回わすかもしれない。
LCCM住宅、HEMS、CASBEEがそれ。
LCCMとはライフサイクル・カーボンマイナス住宅のことで、
国交省の資金援助を得て2009年度から3ヶ年計画で進められているもの。
つくばの建研内に建築中のモデル棟が3月には完成し、
6月頃にはその研究成果が発表される。
その発表に併せて、LCCM住宅の認証制度も発表される予定。
しからば、このLCCM住宅とはどんなものなのか。
ネット上に発表されている研究の途中経過を見るとあまり期待出来ないどころか、
私にはマイナス効果の方が懸念される。

CO2の削減を、単に出来あがった住宅だけで判断するのではなく、
資材の生産、建築中、メンテナンス、解体時までの
トータルで考えるというのは非常に正しい。
その代表的なシステムがCASBEE(カスベ)という「建築環境総合性能評価システム」。
ビル建築では、かなり広範囲に採用されてきつつある。
そして、戸建て住宅の認証制度も2008年より始まっている。
ところが、昨年末までに認証を得た住宅はたったの16件。
これは「総合」という点に比重があり、立木の伐採有無などが重視され、
建築そのものの評価項目が2〜3割程度を占めるにすぎない。
したがって5万円を払って認証を得てもその省エネ性能が高く評価されず、
施主にとっても施工業者にとっても実質的な効果と魅力が皆無だから。

ところがLCCM住宅の認証制度は、
この不評なカスベの戸建て住宅認証制度の延長線上で考えられているような気がする。
単なる衣替え、名義変更に過ぎないのではないかという懸念・・・。
つまり、根本的なイノベーションが見られない、
次世代省エネ基準を大前提に考えているようなものでは、
どんなに美しい着物を着せ替えても、中味の魅力が増すわけがない。

発表されている内容でとくに問題だと考えられるのは、
住宅の快適さと健康性を無視していると思われる点。
相対湿度を考慮せずに、
温度だけで24時間稼働のセントラル空調換気システムと、
個別エアコンの部分間欠運転とのCO2の排出量をシミュレーション比較して、
2.2kWの間欠運転の個別エアコンの採用を推奨している。
相対湿度を無視して「夏は28℃の設定温度で生活しましょう」と言うのは、
日本の国民に熱帯夜による不眠ストレスを強要するもの。
大都市で、絶対湿度が13g以上の熱帯夜の場合は、
風を入れようと窓を開けたとたんにムーツとする高湿に包まれて不快になる。
寝付かれなくなる。
CO2を削減するだけなら、
かつてのコタツと扇風機だけでの生活を奨励した方が、
はるかにベターということになる。
  
世界の先進国で、
セントラル空調換気システムをスタンダード仕様として採用していないのは日本だけ。
個別エアコンの間欠運転のエネルギーに若干プラスした費用で、
除加湿を伴った室内環境をどう提供してゆくかという課題こそ、
学界と産業界に与えられた大きな命題ではなかろうか。
それから逃げようとしているLCCM住宅では、
イノベーションが全く期待できず、
絶対に国民の支持は得られないと考えるのだが・・・。

そして、使わない時にクーラーをON、OFFするために、
30〜50万円もするHEMSというホームエナジーマネージメントシステムや
百数十万円もする蓄電用HEMSの設置を義務化しようと考えているように感じられる。
Q値が1.0W以上の高性能住宅だとクーラーのON、OFFは不用。
5〜6万円の多回路モニターで十分に使用電力の「見える化」が可能。

経産省、国交省、環境省を網羅した
2020年度からの住宅省エネ義務化に向けたロードマップ案が発表されている。
この中で、LCCM住宅がどれほどの役割を果たすかを見極めてから、
対策を考えても遅くはないと思う。
http://www.mlit.go.jp/common/000128830.pdf

魅力の乏しいLCCMのモデルハウスにこだわることなく、
全国に新しく誕生してきつつある革新的な住宅の、
生きたデータを積極的に採用して欲しい。
そして、LCCM住宅が、
省エネ化をサボっている大手住宅メーカーと国交省に
免罪符を与えるものでないことを切に願うのは、
私だけではあるまい。

101209-LCCMモデル住宅見学会案内.pdf



posted by uno at 10:44| Comment(1) | CO2と環境 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

こんな時だからこそ、生きてる内に思いっきり楽しんでおきたい…
不謹慎なんて言うなよな!いっちまったら何もできないんだから…(´・ω・`)
http://dz613r7.glinds.info/
Posted by 備えあれば憂いナシ!! at 2011年03月22日 07:23
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