2011年02月15日

森からのエネルギー創出  オーストリア・シンポジウム


何しろ朝の10時から夕方の16時まで、昼食をはさんで6時間に及ぶ 「森林とバイオマスと木質建材」 にまつわるセミナー。
この一年間の中で、一番面白かったセミナーと言って過言ではない。
十分に堪能させてもらいました。

P1040145.JPG

第一部は森林技術。
ヨーロッパの山は作業道の整備が進んでおり、大型機械の採用が進んでいると考えていた。
ところが、オーストリアの山林の半分が小規模な個人所有となっており、日本同様に山の傾斜が40度もあるところがあり、条件は大変に厳しい。
このため、北欧やドイツのような大型機械が自在に動き回っているという状態ではない。
それなりに機械化は進んでいるが、日本で採用出来る機械が多くあるのに驚いた。

ただ、企業プレゼンテーションでオーストリアのメーカー名、発表した日本の輸入代理店の名が明記されていたので、帰ってネットで調べればたいがいの資料は入手出来、大まかなことは紹介出来るだろうと考えていた。こ のため、森林機械に関しては細かい質問を行わず、資料も貰わずに帰ってきたのが大失敗。
帰っていろいろ調べたが、的確な情報が得られなかった。
後ほどオーストリア大使館商務部を通じて、細部の資料を入手したい。

まず、最初に紹介されたのがKoller社のオートパワーマスト。
これは架線式集材機の最新バージョン。急斜面における上荷、下荷のりどちらも可能。
2人程度の少人数から集材が行え、最小限度の林道さえあれば山の表土を傷めることもない。
日本の間伐材の処理などにも適しているようだと、素人は感じた。

面白かったのはTS Holz社の木材搬送用シューター。
素材が何で出来ているかが不明。
直径60センチ程度の半円形の長い雨樋のようなものだと考えてもらいたい。
これが大変軽量で、人力で山の斜面沿いに引っぱり上げ、木の幹などに固定する。
そして、間伐された幹をこの樋状のシューターの中に落とせば、簡単に下まで滑り降ろせる。
機械と呼べないようなものだが、これこそ日本の間伐材用としては最適ではないかと考えた。

Konrad社の各種林業機械。
いずれも北欧ではなく、中欧で開発されたもので、日本でも使いやすそう。
ハーベスター、ウッディ、ハイランド、ウッドラィナー、マウンティ、タワーヤーダー、グランドカーリングなど、多彩な種類の紹介があったが、山のプロではないので消化不良。
ただ、見ていて楽しかった。
日本の山にもこうした機械が導入され、生産性が高くなってゆくことを期待したい。

第二部はバイオマス技術。
基調報告者は熊崎実日本木質ペレット協会長。
同氏の報告によると、日本では木質燃料の使用量があまりにも少なすぎる。

        森林面積(M ha)  成長度(M m3)  木質燃料(M toe)
ドイツ       11.1       120       10.0
オーストリア    3.9         31        2.5
日 本       24.9       170        1.4

そして、ヨーロッパにおけるトップ25%のバイオマス燃焼効率の平均は以下だという。
  ボイラー  ペレット   86%
         マ キ    83
         チップ    78
  ストーブ  ペレット   88
         マ キ    73

日本では、木材を燃料として活用する技術が進んでいない。
これは、日本では廃材の利用と言うと、対象は今までは建築用廃材のみだった。
山からの木材の搬出にカネがかかり、実用化されてこなかった。
やっと3000〜5000円で入手出来るようになったが、廃材の中間集積基地が存在しておらず、ここで用途別に仕分けがなされていないのが大問題。
パルプ用、小型ボイラー用、ペレット用、家庭発電機用、発電機用という具合に、オーストリアのように仕分けされないと燃料化されない。

たしかに、ヨーロッパの燃焼機器は優れていて、効率が高い。
しかし、これは機械だけの問題ではない。日本ではチップが悪すぎる。
含水率の高いチップは燃焼効率が低い。
それだけではなく、計画的な設計、設置、運営、燃料の供給という総合的なソフト技術が伴わないと、燃焼はうまくゆかない。
いずれにしてもそうしたプロが足りなさすぎる。
したがって、いくら山に木があっても、バイオマスとして活用されるにはほど遠い。

このあと、バイオマス堆肥づくりのKomptech社、太陽熱ペレット乾燥のCona社、 ペレットやマキストーブ、ボイラーのRika社、Calimax社、Biotech社、Hargassner社、Polytchnik社など延々と説明が続いた。
これには少し興ざめ。もっとペレットの安定供給を急ぐことが先決。

第三部は木質建材。
基調報告は中村勉工学院大教授。
環境省のエコハウスづくりなどの20例の報告があったが、あまり面白いものが少なかった。
ただ、小学校13万m2のうち、木質構造は2.3%にまで落ちている。
面積制限も撤廃される見通しで、これからは学校建築をはじめ公共建築の木質構造化が進んでゆくであろうという報告には、ほっとさせられた。

P1040187.JPG

次に発表したKLH社の、ヨーロッパにおける中高層建築への木質構造材のチャレンジは注目された。
5年前に、スウェーデンで5階建ての中層マンションが、KLH社の木質構造で建てられているというニュースを得ていた。
そして、オーストリアを訪れた際には戸建て住宅を視察した。
これは、省エネ性ではあまり感心しなかった。
KLH社の木質構造の特徴は、クロスラミナーパネルにある。
木材の繊維方向を縦横交互に変えて厚くラミネートしてゆく。
そして最大厚は50センチ。
これで最大長さ16.5m、幅2.95mのパネルが出来る。
プレキャストコンクリート版の木質版と考えたら分かりがいい。
この大型の木質クロスラミネートパネルで、壁と床を組んでゆく。
耐震性はコンクリートのプレキャスト版以上にあり、ヨーロッパでは防火認定もとっている。
このため、写真のようなフランスの6階建のオフィスビルの建築も可能。
日本で耐震テストを行い、イタリアで10階建も可能になってきている。
ただ、残念ながら日本の構造認定をとっていない。
したがって、当面は一般工法として採用出来ない。

P1040190.JPG

これに対して、日本の耐震テストで壁倍率7倍という認定を取っているのがThoma社のピアウッド。
これは25年前に日本へやってきて、日本を好きになったマテーペーターさんが、13年前に長野・原村に設立した 自然の住まい社 が日本での認定をとったものらしい。
従業員が1人で、ホームページで今までの実績を見ると10棟強と推定される。
http://www.shizennosumai.com/
一人で会社を起業したというベンチャー精神を高く評価したい。
この構造の特徴は、トウヒ、モミ、マツ、ブナなどの板を、KLM同様に縦横をクロスに合わせたもので、接着剤を一切使わず、写真のような木のダボで緊結してパネル化している点が特徴。
接着していないために板と板の間に少し空気層がある。
このため、熱伝導率は0.13Wではなく、0.1〜0.09Wらしい。
この5層以上のウッドパネルを壁、床、天井に使う。
なにしろ壁パネル厚が170ミリ、床パネル厚が212ミリという。
おそらく、日本の木質構造に比べて2倍〜3倍の材積を使っている計算になる。
このため、温水ソーラーによる高性能住宅に仕上げると坪単価は100〜150万円になるという。
したがって、戸建て住宅としてみれば広がりに限界があるが、中層建築物や学校建築物としての展開が期待出来る。
なお、パネルとパネルとの接合方法を確かめなかったが、スクリムテックジャパンの接着剤併用の金属ダボ構造のことを考えると、これまた木の大きなダボで可能になろう。
新しい木質構造の一つとして、面白い存在であることは間違いない。

P1040193.JPG

最後に紹介するのがSpechtenhauser社のウッドサッシ。
主な製品はドレーキップと一本引き兼内倒し窓。オール特注品。
ドレーキップは日本でもお馴染みだが、一本引き兼内倒しというのは初めて。
残念ながらその金物は見ることが出来なかった。
そして、オーストリアには日本板硝子の傘下に入ったイギリスのピルキントン社の工場がある。
ここからU値が0.5Wから0.6Wのトリプルガラスが簡単に入手出来るらしい。
このため、アルミクラッドのウッドサッシのU値が最良のものだと0.8Wという。

いずれにしろ、オーストリアからのオーダー品の船便となると70日以上はかかるだろう。
しかし、マテーペーターさんも、ビルキントン社のトリプルガラスを使うと言っていた。
日本の関東以西で使う場合は、断熱性よりも遮熱性能の高いガラスを使う必要がある。
その点を訊ねたが、納得出来る解答は得られなかった。
しかし、サンゴバンに続いてビルキントン社のガラスが日本へ上陸してくるということになると、旭硝子の焦りはますます募ろう。
日本板硝子は、このビルキントンの高性能ガラスさえ日本へ持ってこれないでいる。
日本の住宅メーカーは、それだけだらしないという証拠。

それにしても、ヨーロッパのイノベーション力にはすごいものがありますね・・・。
と同時に、先のEUの会議でも痛感したことですが、ベンチャー企業の活躍が素晴らしい。
日本は大手住宅メーカーだけでなく、多くのビルダーさえもが補助金待ちの姿勢に堕しているし、建材メーカーには新しい開発意欲が見えない。
こうした姿に接していると、イノベーションのある国の勢いに、圧倒される思いがします。

これこそが、最大の印象!!!



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