2011年03月25日

「楽観なり日本農業の未来」 永田農法創始者の予言


「永田農法」 という言葉を聞かれた方も多いと思う。
私も何回となく聞いていたが、どうしたことかこれまで一度も著作に触れるチャンスがなかった。
たまたま時間潰しに寄った新宿の本屋でこの著書を見つけた。
永田照喜治著「それでも食料自給率100パーセントは可能だ」 (小学館新書 720+税)

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この本は、小学館発行の月刊誌「本の窓」に今年の1月まで連載されていた対談「日本を変える正しい農業」をまとめたもの。
当然のことながら、永田農法を実践している各地の、コメからはじまって野菜から果物にいたる農業実践者との対談集なのだろうと思って読み始めた。
ところが、収録されている14対談のうち、農業実践者はたったの3人だけ。
残りの11人は実践者ではなく、各界の論客を集めている。
クレヨンハウスの落合惠子、農林省お役人の鈴木憲和、早大環境塾教授の原 剛、料理長の野崎洋光、無洗米の雑賀慶二、サカタのタネの坂田宏、セブン&アイフードの塙昭彦、住友化学部長の水野達男、2月25日のこの欄で紹介した「水」のジャーナリスト橋本淳司、トヨタ自動車顧問の岩崎正視、ロボット工博の宮本悦郎と、実に多士済々。
しかも、各氏とも著者のことはよく知っていて、話が弾んでいる。

これは、まずいと思った。
永田農法が何かを知っていないのは、どうやら私だけのよう・・・。
急いで出版物を調べたら、昨年の暮れに下記が出版されていた。
永田照喜治著「奇跡の野菜  永田農法は進化する」 (東洋経済 1500円+税)

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この最新版を買って読み始めたが、今までの活動を総括するような本で、項目は綺麗に並べられ整理されているが、動機とか経緯が良く分からない。
そこで図書館巡りをして古い著作を漁った結果、3冊ばかり入手出来た。
その中で、飯田辰彦氏が企画・構成した下記が一番永田農法を知るには適していた。
永田照喜治著、飯田辰彦企画・構成「美味しさの力」 (PHP研1998年刊 1429円+税)

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著者は1926年、熊本・天草生まれというから、85才の高齢。
ところが、日本だけでなく世界各国を飛び回っていて一向に疲れを覚えないというから、年齢だけで人を判断するのは愚。
神戸大の経済学部卒で、ブラジルに渡って農場をやるつもりで南米銀行に採用が決まった。
ところが母親に泣きつかれて天草へ引き戻された。
しかし、ブラジルの夢が捨てきれず、段々畑の岩山で様々な果物や野菜を作った。
と言っても、農業を学んだわけではないので理論も技術もない。最初は全てが勘。
そのうちに、肥えた平地で出来る野菜やミカンよりも、荒れた岩山で採れる野菜やミカンの方がずっと美味いことに気がついた。
岩をツルハシで砕いて畑にし、肥料は糞尿を水で割った極々の薄いヤツ。
専門知識を持っていたらこんなバカな真似はしなかったろう。
素人だから岩山の作物のおいしさを素直に受け止められた。
そして、石コロ畑の味の良さを知った著者は、母親に内緒で平地の田んぼを売り払い、進駐軍からのお下がりのブルドーザーでドンドン岩を砕き、山畑を開墾していった。

その時、偶然にも「砂栽培」で知られる九大の福島栄二先生の智己を得て、石コロ栽培の理論づけが得られた。
そして先生から、「有機肥料を使わず、チッ素、リン酸、カリの化学肥料の液肥だけでミカンが栽培できるかどうかを試して欲しい」 と頼まれた。
以来10年間、化学3要素の液肥だけで3ヘクタールのミカンを育てた。
効果はてきめんで、糖度15〜16度の甘いミカンが毎年実った。それだけでなく、土に堆肥をすき込んで栽培するよりも3倍も速いスピードで木が成長した。
この時、不織布の技術が開発され、その開発にも若干携わっていたので、それをミカンの木の下一面に敷き、除草剤を撒かずに除草するテストも行った。
草が生えてこなかった。
この不織布は価格が高いので普及はしていないが、永田農法の基礎の基礎がこうして出来あがった。

このあと福島先生から、「今度は砂栽培で大々的な実験をやって欲しい」 と依頼され、二つ返事でOK。
この計画には東大をはじめ各大学の専門家も協力し、福島教授の朋友の北川住電工社長が音頭をとり、興銀の中山頭取、日本触媒の八谷社長、三井不動産江戸社長、松下幸之助氏らが積極的な支援部隊に。
とりあえず10ヘクタールの実験農場が成功し、2年後には50億円を投下して2500ヘクタールに拡張する準備を進めていた1968年9月に、大型の台風が鹿児島を襲った。
災害対策は万全で、潮風の塩害はスプリンクラーが流してくれるはずだった。
ところが、何者かが停電用の予備貯水池とスプリンクラー配管をつなぐパイプを切断していた。
このため、世紀のプロジェクトは40時間停電で致命的な被害を受け、あえなく幕引きとなった。
この計画が地元の怨嗟で妨害されていなかったら、今ごろ日本の農業は大きく変わっていたであろう。
ただ著者は、このプロジェクトに携わったことによって多くの智己を得、その後の氏の活躍に結びつけている。

その後、老人大学、精神病院、ねむの木学園などで家庭菜園のノウハウを積み、アンデス高原で発見されたトマトの原生種からヒントを得て、最小の水と液肥で美味しい野菜や果物を作りだす永田農法を完成させてゆく。水やりを出来るだけ少なくするため、あえてハウス栽培とし、旬を夏ではなく冬にして糖度が高くて水に沈む完熟のトマトを売りだした。
肥料と水の少ない完熟トマトは腐らない。
トマトだけでなく、少ない肥料と水で育てた野菜は色が薄い。緑の野菜は健康に良いと言うのは大嘘。
本当の健康な野菜は薄緑色だと、20年も前に見抜いて書いている。
昨年の11月26日の 「独善的週間書評」 の中で、日経プレミアム社の、河名秀郎著「ほんとの野菜は緑が薄い」を取り上げた。
読んでいるうちに、これは自分で考え出した理論ではないという気がしてきた。
このため、「この著書で書かれていることの半分は正しいが、科学的に100%の信頼を寄せることは出来ない」 と最後に注釈を付けておいた。
案の定だった。 河名氏は永田農法をパクっていた。

そして、野菜やコメが腐るか腐らないかという小学生並みの実験をやっただけ。
牛が糞の近くの緑の濃い草を食べないということは、著者と著書名を忘れたが数年前に出版された農業関係の本にも書かれている。
そんないくつかの問題点を見抜けなかった日経プレミアムの編集部は大変に情けない。
もちろん、疑問は持ったが永田農法のパクリだと直ぐに指摘出来なかった私も、情けない点では同列。
それだけではない。
日経プレミアムに続いて東洋経済が 「野菜の裏側」 を出版したし、朝日出版は 「Natural food」 を出版している。
こうなると、出版界というのは2匹目、3匹目のドジョウを狙っているコソドロ集団。あまり信用してはいけない集団だと言うことが分かる。
と同時に、「ナチュラル・ハーモニー」 という会社からは、一切野菜を買わないことを提案したい。

話が大きく脱線した。
永田農法の真髄については、単に野菜や果物だけでなく、コメづくりや鶏卵づくりにも活用されている。
そして、有機農法そのものに大きな疑問があるということ。また、ヨーロッパのブドウ造りでは大変な量の農薬が使われていて環境悪化の根源だということも分かってくる。
そういった細部については、是非とも著書を読まれ、著者の貴重な体験を通じて学んで頂きたい。

随分とまわり道をしたが、今日の主題である日本農業の未来に対する著者の楽観論の根拠を述べよう。
筆者は、まず日本が作る農作物は鮮度がよく、安心できて美味しくなければならないと強調。
つまり、有機肥料含めて余分な肥料や水を与えてはならない。
水も肥料も作物が欲しがる分しか与えないと作物は飢餓状態になり、懸命に根から養分を吸収しようとして活性化する。野生の力を蘇らせて、強健で、風味豊かで、栄養価が高く、防腐剤をかけなくても腐らない野菜や果物になる。
これを食べる人間は、健康なエネルギーが得られる。
農薬は必要最小限に抑える。
こうすることによって、野菜や果物も輸出産業になり得る。

農作物の中で、輸出産業として大きく期待出来るのがコメ。
筆者は、平地の田んぼではなく棚田を利用して、山田錦という特上の酒米づくりに成功している。
本当に美味しいコメは酒米としても、輸出米としても十分にやってゆける。
著者は触れていないが、私はコメづくりに関しては、肥料も農薬も全く使わない岩澤信夫氏の不耕起農法が本命だと考えている。
第一に田を耕さないから、アル・ゴア氏が指摘するようにCO2の発生が抑えられる。
そして、永田農法と同じで、イネの根を丈夫にすることに最大のポイントを置いている。根が張ったコメは冷害などの天候変化にも強く、美味しい。
減反などやらずに、このコメを世界へ輸出して行く。

それともう一つの柱として進めるのが、山間地を利用した牛や豚の放牧。
日本の国土の70%は山林。
この山林を利用して高知・南国市で放牧に成功している酪農家がいる。
20ヘクタールの山林に40頭のホイルスタインを放牧している。50度もある急傾斜だが、ヤギのように身軽に元気よく飛びまわっているという。
ヘクタール当たり1〜2頭に抑えると、牛はストレスを感じなく元気に乳を出す。そればかりではなく、糞尿によって環境が破壊されることもない。
森林と放牧のダブルメリットが追及出来る。

そして、農家人口の高齢化によってこれからますます農業人口の減少が続く。
人口統計によると、日本の農業従事者の数はアメリカの200ヘクタール当たり1人に対して、15年後には日本は300ヘクタール当たり1人となる。中国は0.5ヘクタール当たり1人だから生産性が丸きり違ってくる。
著者は、やる気のない人はリタイアしてもらっていい。
やる気があり、国際競争力をもった精鋭部隊が大規模農業をやれば、世界一の生産性になり、食料の自給率は100%も可能と楽観している。

しかし、コンピューター制御による管理技術は高めなければならないし、蒔種や草刈り作業のロボット化も進めなければならない。
現在研究が進められているロボット化というのはGPS (グローバル・ポジショニング・システム) 。
簡単に言えば、カーナビに利用されている全地球測位システムを利用して、畑の隅々までロボットに24時間働いてもらおうというもの。
とくに、農業作業の中で辛いと言われてきた草刈り作業をロボットに一任しようという研究。
20年前から計画され、やっと実用化の段階に辿りついたという。

こうした、大規模農業と平行して、ドイツのクラインガルデンという20〜30坪単位の市民農園を、全ての都市生活者に与えてゆく。それだけで自給率は10数%あげられる。
日本列島は北から南へと長い。
いろんな季節ごとに収穫が可能である。
永田氏の発想は、農業の産業化にほかならない。



posted by uno at 07:26| Comment(3) | 食品と農水産業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
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Posted by 金儲け at 2011年07月02日 03:53
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