2011年04月10日

津波に対する新しい街づくり  一つの提案


やっと仮設住宅の建設と入居が始まった。
ほんの第一歩。
何しろ7万戸の仮設住宅の建設が必要だというのだが、町有地に適地がなく、民間からの借地も思うに任せない。したがって県も着工に踏み切れずにいる。資材確保などもまだまだこれから・・・。
D社がいち早く鉄骨を抑えてバンザイを叫んだという、余りにも世情を考えない目先だけの不謹慎な行動に、流言まで飛び交っている。
仮設住宅で儲けると言う発想は、最初から捨てるべき。
プライバシーのない体育館などに避難している人々に、いちはやく生活の場を提供して行く義務が、それぞれの分に応じて全住宅業者にある。
これは、どこまでも義務。
だが、7万戸の仮設住宅の建設適地を探すというのは、日本のように何筆もの地主が入り乱れていて、しかも登記簿が流され、行方不明者が多いと言う事情では、容易なことではない。
災害対策本部は、そのことをどこまで理解しているか ?!

その上で、次の段階は街をどのように復活させてゆくか・・・という大きな課題に直面する。
今までの、神戸をはじめとした震災地では、文字通り「復興」であった。
倒れたガレキを片づけて、跡に耐震性の高い建物を建て、元通りの街に復元する。
目標がはっきりしていて、誰も疑う者がいなかった。
つまり、土地の所有権に介在せずに復興が果たせた。

しかし、今回の津波で流された跡に、同じ街づくりを行おうという人は、各地方行政のトップをはじめとして誰もいない。
津波が来て、3万人近い尊い人命が失われ、行方不明となっている。
この痛ましい現実を直視し、津波に対応出来るより安全な街づくりを目指すべきだということでは全員の意見が一致。

菅総理は、「漁業関係の作業所だけは海岸線近くに設けるが、全ての住宅は津波の来ない高台に移し、バイオマスをふんだんに使ったエコタウンづくりこそ本命」 と呼びかけている。
この理想論に、反対する者はいない。
正論であるが、日本の山林ほど小規模地主によって土地が細分化されて所有されているところはない。
ともかく、境界すら分からない所が多い。しかも不在地主が圧倒的。
高い山を削ると言う土木作業は簡単でも、その前にやらねばならない地主の確認と承諾、土地の取得、造成と開発、販売価格の決定など、難問が山積。
そして、それぞれの地方都市の条件、街の事情によって、全てがこの手法でゆけるとは限らない。
菅総裁が提唱しているのは一つの手法であって、これが全てということではない。
そこで、なんとか使える手段はないかと考えていた時、オーストリア生まれのマテーペーターさんの発言に大きなヒントがあった。

ご案内と思うが、ヨーロッパアルプスというのは、スイスだけのものではない。
イタリア、フランス、ドイツ、オーストリアが深く関わっている。
とくにオーストリアはチロルをはじめとしてエッツタール・アルプス、ツィラータール・アルプスを抱え込み、急傾斜の山岳地帯を多く持つ森林国。
そして、雪崩とか雪解け水による災害も多発している。
そうした水災害を避けるために、ある人物が◇型状に塚を作って柳の木を植え、その根の力で村を水害から救った事実があるという。
つまり、流れ来る鉄砲水を柳の塚で左右に分けて避ける。
しかし、分けたままでは、力が下流にまで及んでゆく。
そこで、左右に分けた鉄砲水を再び合流させ、そのぶつかり合いで流れの力を削ぐ。
その方法が、津波の引き潮用に使えないかという提案。

先に書いたように、津波で怖いのは引き潮。
たしかに押し寄せる高潮も怖い。
大型船を含めて多くの船が陸に引き上げられて惨めな姿を晒している。
建築物さえ浮かなければ、中にいる人は水面に浮かぶことが出来、呼吸が可能であればその時点で命には別条はない。
ゴーッという強い引き潮が直撃し、木造は家ごともってゆかれたらおしまい。
RC造では壁などをしっかり掴まって流されなかった人以外は、ほとんど助かっていない。
つまり、オーストリアの山の中の柳塚に匹敵する建築物で、引き潮の流れを左右に分け、多くの住宅への直撃を避けることが出来ないかという提案。

津波の場合は、合流による力の減速まで考える必要はなかろう。
とすると、避難棟を兼ねたRC造を幹線道路沿いに、計画的に配置する。
肝心なことは、その幹線道路計画と避難棟の形状。
今までの道路は、津波のことなど考えずに、自然発生的に造られてきた。
引き潮対策用街づくりにあっては、まずランドプランニングの根幹をなすのが幹線道路計画。
ところが、日本には本格的なランドプランニングをやった経験のある建築家が不在。
津波は、いつも大きいとは限らない。
常に15メートル高に対応しょうと考えると、予算は天文学的になる。
中には、小さな津波もあろう。
どれだけ内陸に侵入したとしても、引き潮がそれぞれに左右に分けられる工夫が必要。

それと、建築物の形状が大問題。
今までは、学校建築にしろ、病院にしろ、ホテルにしろ、眺望を主に考えたためにほとんどが海岸線に平行した形で横長に建てられている。
このため、津波の寄せ潮と引き潮をまともに受け、浮遊物の集積場と化している。
建築物だけのことを考えると、これからは海岸線に直行する形、つまりT字型に配置した方がはるかに安全。
しかし、オーストリア山中の柳塚の役目を果たしてもらうには、◇状に配置してもらうことが不可欠。

P1040475.JPG

そうしたことを考えて作成したのが上図。
断っておきます。
津波の大きさによって、どの程度の角度が引き潮の流れを左右に分けられるかと言う流体力学を踏まえて書いた図ではない。
また、ある程度の長さがないと、左右に分かれない。
その長さも定かではない。
どこまでも、コンセプトを理解しやすいように描いた素人の走り書き。
これによって、木造住宅に対する引き潮の力が削がれ、あっという間に木材のガレキの山化する現象から救えるのではなかろうかという提案。
そして、これを実現するには、それこそ後藤新平の時のように、被災地再開発法という特別立法の裏付けと住民の理解がなければ、それこそ画餅に終わってしまう。

ともかく、今までの面剛性の弱い木造や軽量鉄骨造の軸組工法では、こうした引き潮対策をとったにしても、それほど有効性がないかもしれない。
つまり、建てる木造住宅には技術的な規制が必要になってくる。
最低限の条件として、床、壁、天井を合板で固めたモノコック構造でなければならない。
そして、土台と壁はホールダン金物で完全に緊結していなければならない。
また、1階の壁と2階床、2階壁とも太い金物で緊結していなければならない。
もちろん、2階壁と小屋の緊結も重要。
つまり、完全な箱として機能する木造でなければならない。
ちょっとした衝撃に、ペシャンとならないものでなければならない。
そして、出来ることなら、基礎はなるべく高床でありたい。
そうすれば、地形にもよるが、今度のように街全体が更地同様に引っ剥がされることはないはず。

P1040476.JPG

上の図は、山を削った高台住宅の場合と、要所々々に避難棟を兼ねた引き潮対策を行った街づくりのイメージ。
柳塚の要となるRC造は、いざという時の避難棟を兼ねていることはお気づきの通り。
そして、これはどこまでも叩き台。
総合的な予算や、力学的な面での検討は一人では出来ない。
多くの専門家がチームを組んで検討すべき事項。
必ずしも高台方式にこだわらなくても、いろんな智恵を集めれば、今回のように木造がまたたく間にガレキの山化しない方法もありますよ、という提案。

ただし、図には戸建て住宅を配したが、高齢化が進んだ地域では、小さな家で良く、タウンハウス形式とか、グループホーム形式が主流になると思う。
そういった立地は、それこそ高台を選ぶべきであろう。

ともかく、木造のガレキの山から脱出する方法に、お互いの智恵を出し合いましょうよ。



posted by uno at 05:17| Comment(1) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今回の被災地域が将来的に世界的に注目される、津波に対するモデル都市として生まれ変わる事を切に願います。
Posted by 通りすがり at 2011年04月13日 09:39
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