2011年04月15日

木造耐震 等級1、等級2、等級3、等級4の住宅とは? (上)


木造住宅の耐震性に対する「共通認識」が不足しているように思われる。
木造住宅は、頭が重いほど、つまり1階より2階が大きい家とか、重い和瓦がのっかっている方が1階の耐震性が弱くなる。
杉山英男先生が口癖のように言っておられた。
「耐震性の弱い木軸工法に瓦を乗っけるのは命とり」と。
まず、耐震 等級1以下の住宅にあっては、瓦を取り除くことが先決。

そして、1階と2階の壁の位置がずれている「マクズレ」の住宅とか、1階に内壁が少ない住宅。
あるいは間口が小さく奥行きの長い町屋型住宅は、耐震性がいたって悪い。
こうした住宅を設計する者は、意匠やデザインなどよりも、施主の安全を考えて耐震性を第一に考えたいもの。
テレビの、「匠のリフォーム」 などという番組で、動線やデザインを重視するあまり、著しく耐震性が劣るものを見せられてゾーッとすることが多い。
急いでチャンネルを変えてしまう。
直下型の地震が来て、命を落としから気がついたのでは間に合わない。

いろんな条件を考えると比較が困難なので、ここでは四角に近い矩計型で、総2階の住宅を前提に、耐震性に関する考えを出来るだけ分かりやすく整理してみた。
実物大住宅の耐震試験や神戸、中越の被害実態、個人的な体験に基づくもので、一般消費者の判断の目安になればと発想したもの。
必ずしも科学的とは言えない記述があることは、あらかじめお断りしておきます。

●耐震 等級1以下の木造
建築基準法が改正され、新耐震基準が発表されたのは1981年。
阪神大震災で壊滅的な打撃を受けた木造住宅は、81年以前の基準で建てられた木軸が圧倒的。
それ以降に建てられたものは、一部を除いては倒壊を免れていた。
そして、2000年に建築基準法に性能規定の概念が持ち込まれ、きちんとした構造計算がなされておれば、門型ラーメン構造のように、耐力壁がなくても建築が認められるようになった。
しかし、1981年以前に建てられた住宅で耐震補強がなされておらず、耐震 等級1以下の住宅がまだまだ多い。
そういった住宅が、今度の東日本大震災でもやられている。
震度6弱以上だと、プラットホームを持たない木軸工法のほとんどの棟瓦がズレ落ちる。
そして、古い木軸工法で通し柱が折れた場合は、間違いなく倒壊にいたる。

●耐震 等級1の木造
耐震等級1というのは、震度7とか震度6強の地震がきても倒壊しない住宅。
ただし、倒壊はしないが、スジカイが折れて壁がメチャクチャになったり、造作材が剥がれ落ちたり、フロアが歪んだりすることはあり得る。
木軸工法で、無垢の4寸柱や大きな梁を使っていても、スジカイだけに頼っている住宅は等級1でしかないと考えるべき。
大工さんがホゾ、ミゾを刻んだ場合も、プレカットでやった場合も結果は同じ。
要所を金物で抑えても等級1を維持することで精一杯。耐震性はそれほど上がらない。
つまり最悪でもペシャンとはならず、命だけは助かる住宅だと考えるべき。
したがって震災後の復旧には、それなりに費用を覚悟しなければならない。
建築基準法は、その程度のことしか想定してくれていないと考えるべき。

無垢材のプレカットで、外壁に構造用合板を張り、1、2階の床にも構造用合板を張って「剛」にした場合は、等級は1ではなく2以上になるのではないかという考えがある。
外壁に合板を用いると間違いなく耐震性は向上する。
しかしプレカット工法で、2階床を剛にした場合、それこそ通し柱が剛な床に押されてより折れやすくなる。したがって、耐震強度はむしろ落ちるという意見がある。
この意見は、かなりの説得力を持っている。
したがって、観念的な議論を交わしているのではなく、プレカットの木軸の実物大住宅を2棟建て、1棟は外壁だけに構造用合板を採用し、もう1棟は床も剛にして耐震テストをやるべき。
その結果をオープンにして、全工務店が使えるようにしてゆくことが製材業者の共同責任。

●耐震 等級2の木造(等級1の1.25倍の耐震強度を持つ)
この等級2の代表が、金物工法による集成材の柱・梁を採用し、外壁および床に合板などの面材を使用した木軸。
柱が3寸5分(10.5センチ)角だとあまりいただけないが、4寸(12センチ)角の木軸金物工法は世界に数あるポスト&ビ―ム工法の中でもトップクラスの性能だと思う。
私は高く評価している。
阪神大震災の、木軸工法の大悲劇。 柱に大きなミゾ穴を掘っていたため、ほとんどの通し柱が瞬時に折れて1階が潰れ、多くのお年寄が即死。
大震災以降、通し柱が折れない仕口が真剣に研究された。
その研究成果として開発されてきたのが金物工法。
これで、木軸工法は蘇ることが出来た。
ただクローズド工法なので、似たり寄ったりだが統一性がなく、共通の仕様書が作成出来ない。
価格面でもイマイチなのが残念。
内装ボードの耐力壁加算についても、統一行動が見られず、クローズド工法の欠陥が露呈している。

北米では、早くから5ミリ以上も厚い鉄製のポスト&ビーム用の金物が開発されてきていた。
しかし、この金物は現しで使うので、軽量鉄骨のCチャンよりは耐火性能が良いと言ってもタカが知れている。また、美観上も使いたいという代物ではなかった。
ところが、日本で開発された金物は、木の内部に取り付けられる。
火事に遭遇しても、燃え代を計算すると簡単には脱落しない。構造的にかなり安全。
また、最近ヨーロッパではマグネットを用いた金物が開発されてきているが、地震のことを考えると日本の金物工法に軍配が上がる。
門型のラーメン構造と併せて、世界に誇ってよい。

しかし、この金物工法は、どこまでも柱を中心に考えている。
鉛直荷重(積雪や自重、人や荷物などの積載荷重) だけを考えるなら、6尺(364センチ)間隔に柱を入れるだけで十分。
しかし、内外の下地材や仕上げ材のことを考えると、3尺間隔に管柱を入れた方がよい。
そして、ボードをクギ止めするために1.5尺間隔に間柱を入れねばならない。
この間柱は、構造強度には関係ない。 ただ、石膏ボードやサイデングなどのクギ止め用。
これに対して、ツーバィフォーでは12.5ミリの石膏ボードは壁倍率として計算される。
ツーバィフォーの耐震性能が等級3に格上げされているのは、石膏ボードが壁倍率に加算されていることが大きい。
実際に石膏ボードを張って実物大実験をやったら、「壁倍率は、8倍はあるね・・・」と故杉山英男先生をうならせた。
木軸工法では石膏ボードは壁倍率にカウントされない。
石膏ボードの厚さは9ミリで、クギの性能や外周部のクギ打ち間隔の規定もない。
そして間柱の見つけ寸法は3センチもあれば上出来で、ひどい現場では2.4センチ以下のものを見かけることがある。
このため、木軸の石膏ボードは、どこまでもクロス仕上げの下地材にすぎない。

P1040492.JPG

間柱が細いために、合板にしても石膏ボードにしても、上図のように原則として柱間隔に張らざるを得ない。
ということは、開口部周辺部と出隅部では必ず45ミリ程度の細い端材を使わねばならない。
内部空間の出隅の部分も細い石膏ボードを配さねばならない。
この細い石膏ボードが、震度6強とか7に襲われると剥がれたり、そこから亀裂が入ったりする。
ひどい時は、造作材までが一緒に剥がれていた。
構造的には問題がなくても、中越地震ではこうした石膏ボードに絡むメンテナンス工事に地場ビルダーは振り回されていた。

これに対して、ツーバィフォーは狭い廊下に付いているドア周りでも、必ず石膏ボードを刳り抜いて使う。細い材だけを継ぎ足しで使うことを禁じている。
北米の長い経験で、細い石膏ボードを使うと、長い年月の間にそのジョイント部分が問題を起こし、クレームになることを良く知っているから。
当然、腰の弱い石膏ボードだけを刳り抜いても外部開口部回りの亀裂は防げない。
外部に用いる構造用合板やOSBも刳り抜くことが不可欠。
合板も、細い端材を振り回すことはやらせない。
こんな小さなことの積み重ねが、金物工法の耐震 等級2と、ツーバィフォーの等級3の違いになっている。

当初、ツーバィフォーはアメリカの現場に学んで、現場を《工場》としてとらえ、CPMによる現場管理技術の向上に努めた。
しかし、金物工法の登場で、木軸の現場の生産性が著しく向上した。
分譲の現場ならいざ知らず、注文住宅の分野では金物工法に対抗するためにもツーバィフォーのプレハブ化が不可欠となってきた。
日本の道路事情は、アメリカとは大きく異なる。
4間とか5間という大型のパネルを運ぶことが出来ない。
ツーバィフォー工法にあっては、どんなに長い壁であっても、一体壁として起こすことが、カーベントリーの大原則として教えている。

P1040481.JPG

上の写真は、30年以上も前にロスで撮ったものを複写したものでボケている。
30メートル以上に及ぶアパート建築の長い壁を、9人の大工さんが一気に起こしている。
合板を張ったのでは、いかに力持ちのアメリカの大工さんでも起こせない。
したがって、合板は後張り。
そして、2階の床や野地合板は、必ず千鳥張り。
吹き抜け空間は206のバルーンフレーミング、つまり通し柱構造とする。
そうすることによって、ダイヤフラムが完成する。
一体のモノコック構造となる。
こうした約束ごとを守ってこそ、ツーバィフォーは間違いなく等級3となる。

だが、頭つなぎや合板が切れていて、一体化していない壁パネルが散見される。
床合板や野地合板が千鳥張りでないものも目立つ。
これらは、明らかに公庫の標準仕様書から逸脱している。
枠組壁工法とは呼べないものだと思う。
204材や206材を使っていても、構造的には金物工法より劣るものがあることを知らねばならない。
場合によっては、等級2よりも低いかもしれない。



posted by uno at 08:52| Comment(0) | 木質構造と林業・加工業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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