2011年04月20日

木造耐震 等級3、等級4、等級5の住宅とは? (下)


●耐震 等級3の木造住宅 (建築基準法の1.5倍)
震度7の直下型地震がきても倒壊しないのは当然で、木造住宅の壁に亀裂が入ったり、タイルが剥がれたり、棟瓦が落下しないようにするには、(1) 強い耐力壁をバランスよく多く配置する。 (2) 2階の床のせん断剛性を高める、 しかありません。

まず、壁から見て行きます。
強い耐力壁というのは、壁倍率で表現されます。
基準法では幅1メートルの壁に1.275kNの水平力を加え、定められた変形以内に収まる壁を、「壁倍率1倍の壁」と言います。
壁倍率2というのは、2倍の水平力を加えても定められた変形内ということ。
壁倍率4というのは、4倍の横からの力を加えても、変形が一定以内。
この1倍の壁というのは、木軸だと厚さ1.5センチの柱幅のスジカイを入れた壁。
ツーバィフォーだと片面に12.5ミリの石膏ボードを4周10センチ間隔、中通り20センチ間隔でボードクギ止めした壁。

耐震 等級1の壁で、壁倍率3倍の耐力壁を使ったとします。
木軸では3センチ厚の柱幅のスジカイをX状のタスキ掛けに入れた壁がそれ。
等級3にするには、その1.5倍の数の耐力壁を設けるか、あるいは壁倍率4.5倍の強い耐力壁を採用するしかありません。
耐力壁の数を5割も増やしたのでは、開口部がほとんどとれなくなる。
そこで、建築基準法に書いてある範囲で4.5倍の壁倍率を得ようとすると、柱同寸法のスジカイをX状に入れて壁倍率を5倍にするしかありません。
こんな面倒なことはやっておれない。
それに、柱の1/2とか同寸という柱を用いると、強い水平圧力を受けると弓のように曲がって面外坐屈を起こして、内外壁の面材を破壊して大問題起こすことが中越地震で判明しました。
スジカイそのものに大問題があるということ。
このため、各資材メーカーが大臣認定を取った面材を併用しています。
しかし、4.5倍の壁倍率を得ることは、木軸では容易なことではありません。

これに対して、ツーバィフォーは4.5倍の壁倍率を得ることは比較的容易。
まず、外壁に構造用合板で1級品の9〜12ミリ厚のものを採用し、4周10センチ間隔、中通り20センチ間隔でCN50という太めクギで止めれば3.5倍が得られます。
そして、内壁に12.5ミリの石膏ボードを同じ間隔で、ボードクギで止めると1倍の壁倍率が。
合計4.5倍の壁倍率。
それだけではありません。内壁も両側から石膏ボードを張ると2倍の壁倍率として計算出来ます。
したがって、木造では木軸だと等級3を得るには、開口部を小さくするなどの細工をしないとなかなか得られないのに、ツーバィフォーは容易に等級3をクリアー出来ます。

それと、ツーバィフォー工法では、原則として当該耐力壁線の1/4が耐力壁でなくてはならず、可能な限り耐力壁線の両端には平行する耐力壁を設けるべき。もし設けられない場合は、片方は直行する耐力壁でもよい、という規定が耐震上大きな効果を上げています。
もちろん、耐震補強をすれば出隅部での2方向開口部も可能ですが、木軸の場合はこうした設計上の明確な縛りがない。
このため、往々にして耐震性の弱いプランが横行しています。
しかし、門型ラーメン構造の出現で、耐力壁がなくても1階にガレージ付きの住宅が可能になりました。
アメリカでは、20年以上も前から重量鉄骨のラーメン構造で、車が2台も入る大きな開口部を設けています。
しかし、日本では今まで異工法のドッキングが許されず、やっと木造の門型ラーメン構造の出現で可能になりました。
しかし、この木造門型ラーメンのメートル当たりの壁倍率は、下記のURLの通り2間もので1.9倍、3間もので1.3倍に過ぎません。いくつか並べて使わないと必要壁量を満たすことが出来ない。したがって、駐車場ならやはりアメリカの重量鉄骨のラーメンが本命だという気もします。

http://www.mongata.com/mongata/tech.html

そして、木軸に対してツーバィフォーが耐震性の面で決定的に強さを証明しているのが床剛性。
故杉山英男先生に2回も壁に合板を張った実物大住宅の引張試験をしてもらいました。
いずれも強度があり過ぎて試験装置の方が故障。建物が倒壊するまでに至りません。
そこで、ナイスから依頼があった時、合板でではなく106のスジカイ入りで試験をしました。
スジカイには押される圧縮側→\と、引っ張られる側→/があります。
先生の門下生の学生さんと話した予想では、まず引張側のスジカイのクギが抜けることから徐々に破壊が始まるのではないかということでした。
ところが、5トン、6トンと力を加えていっても、ミシミシ鳴るだけで一向に壁は変形しません。
そして、ある瞬間《ドカーン》という大きな音がして、圧縮側と引張側のスジカイが同時に破壊してしまいました。
つまり、プラットフォームという盤が、水平力を全ての壁とスジカイに伝えていたのです。
木軸だと東風が吹けば、東側に直行した壁だけで頑張る。
ところが床のせん断剛性が強いと、全ての壁が一緒になって支える。
お神輿状態で、全員が一丸となって水平力に対抗して担いでいることが立証出来ました。

ツーバィフォーの床せん断剛性に対して、軸組の火打ちを入れたものは約1/5強程度。
火打ちの変わりに合板を張ったものでも一体床構造でないので1/3程度と言われています。
単に壁倍率を高めるだけでなく、2階床のせん断剛性を高めるということを同時に行わないと、木軸の耐震性を高めることは難しい。
しかし、やたらと床剛性を強くすると、通し柱が2階の胴差しの部分で折れて倒壊してしまう。
そして、この床剛性の問題は、何も木軸だけに限って事ではありません。
阪神大震災では中層の重量鉄骨造が大きな揺れで壁のALC版の4隅が欠け落ちるという大損傷。
2階建の軽量鉄骨のアパートのスレート系の小型パネルは、ほとんどが損傷していました。
軸だけで水平力に対抗するというのは、なかなか大変なことです。

そして、ツーバィフォーがコンスタントに等級3であるためには、前回書いたように壁は一体化して構成されていること。床合板は千鳥張りを守ること。吹き抜け空間は必ず206の通し壁で構成すること、という約束ごとを守ることが不可欠。
とくに杉山先生は、水平力が伝わらないことで、吹き抜け空間についてはかなり悲観的な見方をされていました。
しかし、私はアメリカの現場で206の通し柱を使い、屋根トラスと野地合板で一体化している現場を多く見てきたので、現場でバルーン構造を作る場合は十分に等級3になり得ると確信しています。
一階パネルと2階パネルを重ねる吹き抜け空間づくりは、杉山先生ではありませんがが、強い口調で「絶対に避けるべき」と言うべきでしょう。

●耐震 等級4の木造住宅 (建築基準法の1.75倍)
品確法では、耐震等級は3で打ち止め。
その理由は、すでに書いたように、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の大きな建造物では、これ以上の耐震性能を担保出来ないから。
だから、等級3さえとっておれば後は天災。破壊したら消費者に泣いてもらうしかない。
国の保証機関も、それ以上は保証してくれない。
しかし、中越地震では、地場のビルダーは身を削って補修工事をしていました。
だが、震度7、2500ガルという直下型の地震で失われた気密性は、残念ながら元に戻りません。
失われた省エネ性は完全に回復出来ず、表を走る車の騒音に悩まされます。
気密性の回復は不可能に近い。

そこで、気密性がやられない等級4という住宅を簡単に入手出来るオープンな手法はないかと、かなり前から仲間と議論してきました。
NPO法人北海道住宅の会は、最初は206(14センチ角)の通し柱を2間とか3間ごとに立て、その間に206で組んだ壁を入れて行くという構想を持っていました。
これは、何も珍しいことではありません。札幌のヨシケン1級建築事務所がかなり前からツーバィシックス工法の名で堂々とやっている。
2間とか3間ごとに集成材の606の通し柱があるから、パネル化しても、通し柱にクギ打ちするので一体化する。そして、通し柱にまたがる構造用合板は後で、現場施工とする。
窓マグサを兼ねた412の胴差しと406の敷桁は、金物工法で通し柱をそれほど傷めずに取り付ける。
小屋裏3階を全面的に使う場合は410の敷桁とする。

つまり、金物工法の利点を活かしながら、金物工法の弱点である床剛性と細い間柱による面材の割り付けの不十分さをカバーし、石膏ボードを壁倍率に加算して行ける道が開ける。
管柱が少なくなるので、材積面でも有利。
同時に、ツーバィフォーの壁パネルの一体化しないという大欠陥も防止してゆける。
外壁を206にしてゆくというのは、これからの省エネ化を考えれば不可欠の条件。
R-2000住宅で多くのビルダーが経験済みで、一条工務店のi-cubeも同じ方向を辿っている。
国産材による206材の生産見込みも立ってきている。
そして、内壁は204材で十分。
1階床は大引き束立てで、204ないしは206に29ミリの合板張りでよい。
寒冷地は床下断熱のため210も選択肢。
価格的にも技術的にも難しいことは何もない。
高性能サッシの問題と、除加湿機能付き90%熱回収装置が完成すれば、日本は温暖地においてドイツの暖房だけを考えた省エネ住宅よりも、面白い展開が可能になります。

木軸パネル壁.pdf

木軸パネル床.pdf

ただ、私の提案で変わっているのは2階の床。
210のTJIでは4550ピッチのスパンは難しい。このため、マイスターをはじめとして多くのビルダーでは212のTJIを標準仕様として採用としています。そして、ダクトが走る北側部分の床だけは平行弦トラスを採用して、ダクト配管を容易にしようとするもの。
これはハーティホームで実証済みで、価格的にも驚くほどのことはありません。
平行弦トラスの入手が困難なところは、302ミリの213のTJIを採用するのも一案。
これだとウェブに200ミリの穴をあけることが可能でダクトの配管が容易。南側の飛ばせるスパンも大きくなる。
こうした仕様が可能な部材がそろってきているので、高性能サッシの入手という難問以外は、ほとんど障碍が取り除かれつつあると考えてよいでしょう。
あとは、ビルダーの決断を待つだけ。

そして、等級4という以上は、壁倍率が実質的に5.5倍は欲しい。
オープンなツーバィフォーの場合は、いくら工夫を凝らしても5倍以上の壁倍率は認めてもらえない。
正式に5.5倍を名乗るには、個別認定をとるしかない。
しかし、われわれビルダーの場合は、高い壁倍率を取得して材料を販売することが目的ではない。
実質的な性能を担保して、消費者に安心を売ることが目的。
具体的にどうしたらよいか。
先に報告した国産スギによる12ミリ合板の実験結果が、1つの方向を示唆してくれています。
オール・スギによる12ミリ合板を使い、4周にCN50クギを5センチピッチで打ち、中通りを20センチ間隔として試験を行った。
その結果、壁倍率は5.61倍と出た。
この数値をそのまま認めてくれるわけがない。
今までのラワンの1級合板による4周10センチ間隔で3.5倍。
針葉樹の方がクギの保持力が上で、5センチ間隔ということを考えると、5倍は無理としても4.5倍の壁倍率は堅いと思う。
それに内壁の石膏ボードを加算すれば、実質5.5倍。

それで3X9合板を作り、なるべく帯金物に依存しなくても、1階と2階が緊結するようにしたい。
2階の床をTJIとLVL、平行弦トラスというエンジニアウッドで構成すれば、根太の収縮による被害も大幅に軽減される。
ただ、この3X9合板はどうしても現場施工となるので、いままでどおりの3X8合板方式を採用しても良い。
3X9は、より安全にするための1つの提案。
そして出来れば1階部分の合板はもう少し長めのもので、出来たら2枚張りで処理したいところ。
それが可能であれば、床と壁との一体化は大幅に進む。
しかし、こみはあくまで希望としておく。

●耐震 等級5の木造住宅 (建築基準法の2.0倍)
この等級5に要する壁倍率は、7倍以上が必要になります。
この夢のような住宅が、既に日本に存在している。
4月5日付のこの欄で紹介した「成城に出現した驚きの《木製PC版工法》」がそれ。
これは壁倍率8倍という驚異的な認定を取得している。
木造で、PC版以上の耐震性を持っている。
基礎との緊結方法に更なる工夫を凝らせば、木造で津波対策の家となる可能性も秘めている。

木造の耐震 等級5は、決して夢物語ではない。
日本の木質構造の諸先生方とメーカーは、国産材での木造のPC版工法の開発を本格的に検討すべき時期に到達していると考えるべきでしょう。



posted by uno at 08:26| Comment(0) | 木質構造と林業・加工業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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