2011年04月30日

LCCM住宅への疑問  低すぎる耐震性 (上)


LCCM (Life Cycle Carbon Minus) 住宅は、国交省の支援を得て、建築環境・エネルギー・設備に明るい学者先生12人が2年前より研究を始めてきたもの。
そして、建研の庭にデモハウスを今年の2月に完成させ、いろんなデータ取りを行っている。
そして、このLCCM住宅をCO2削減の最有力住宅として、今年の夏ごろから参加企業を募り、大々的に普及させてゆきたいと国交省は計画している。
したがって、前評判と期待は必要以上に高い。
本来は、3月の24日に見学会が開催される予定だったが、東日本大震災発生のため1ヶ月余予定が変更され、さる4月28日に開催された。
だが、公開されたデモハウスには、あまりにも多くの問題点がある。

P1040579.JPG
画面をクリックするともう少しはっきりします

平面図および主要仕様などは上の写真の通りだが、大変見にくいので列記する。
●延床面積   142m2 (43坪)
●構  造   木軸でスジカイ工法 (柱同寸のスジカイを使っている)
●断熱性能   次世代省エネのU地域をやっとクリアーしている中断熱住宅。
●Q  値   1.98WとW地域のトップランナー基準の1.9Wより悪い。
●相当隙間面積 1.2cm2/m2。 鉄骨プレハブよりは良いと言う程度。
●主要仕様
・基  礎   布基礎。 コンクリートを多く使うとCO2が多くなるから、出来るだけ少なくしたと説明者は自慢していたが ?
・屋  根   金属板葺き。多分ガルバニウム鋼板。
・外  壁   窯業系の白いサイディングと、黒く塗った木の羽目板。
・開 口 部   木製のサッシ。浴室などの一部は樹脂サッシ。
        そして、引き降ろしの防虫網のスクリーンが付いていて、その内側に冬期のために枠なしのハニカムスクリーン(引き降ろし式)も付いている。
        さらに、夏の日射を遮蔽するため木製の3枚引きのルーバー引き戸も付いていて、大変な賑やか開口部。
●主要設備   
・エアコン   暖冷房はエアコン。1階は2.8kWの壁掛けが1台。2階には主寝室と子ども室に2.2kWのエアコンが2台。
・給  湯   太陽熱集熱のパネルを搭載しているヒートポンプ併用型。これと、東ガスの家庭用燃料電池も採用。これはどこまでもデータを取るための予備的なもの。
・太陽光発電  8kWというかなりの大型を搭載。蓄電設備はなし。
・照  明   当然のことながらLED照明。
・省エネ管理  HEMS(Home Energy Management System) を採用。

早い話が、空気がきれいな地方都市や田舎、あるいはセカンドハウスで、「夏は、窓を開けて空気を流して、出来るだけエアコンがなくて生活出来る家を作ろう、と言う学者先生方のアイディア一杯の住宅」 というのが最大の褒め言葉。 それ以上のものではない。

P1040536.JPG

まず南面のこの写真を、とくと眺めて頂きたい。
この南面には壁が一つもない。
東西に12メートル余に及ぶ壁面が、1階、2階とも全てサッシで構成されている。
つまり、この南面の外観は構造壁ではなく、余分におカネのかかるプラスのカーテンウォールとして計画されている。
そして、2階の床に当たる部分には、多分120×700程度の一枚物の集成材が渡されているらしい。
完全な吹き抜けだったら、この程度の厚みの梁では台風に対して耐えられるわけがない。
吹き抜け空間ではなく、2階の縁側や階段室があるから、台風には大丈夫という計算なのだろう。

たしかに、古い木造建築では、平屋で4.5尺とか6尺という大きな縁側を持つ家が多かった。
構造壁線は4.5尺とか6尺内側に設け、大貫で支えた。
このデモハウスは、4尺幅の縁側を1階と2階の南面に持っている。
そして4尺の縁側部分は、布基礎から根太をオーバーハングさせている。
もう一度、上の南面写真の下部を見ていただきたい。
3メートル毎に、持ち送り梁を支える束があるのが見える。
この持ち送り根太部分からも外気を取り入れ、空気の流れを良くしてエアコンを使わないようにしょうと言う工夫。
今から25年も前に、高幡の施主がオーバーハングしている2階の床から外気を取り入れ、反対側の壁に欄間の開口を設けて、風の流れを作りたいと熱望したので作ったことがある。
しかし、二夏いろいろ試みてみたが効果がなく、結局は埋めてしまった。
ヒートアイランド現象の起こる東京では、ムダな試みであったことを思い出した。

P1040555.JPG

さて、それでは4尺の内側の耐力壁はどのようになっているのか。
上の写真は、1階の東西の壁に配された柱同寸のスジカイ。
光を入れるため、上部は壁ではなくガラスにして、わざとスジカイを見せている。
光が入るのは良いが、夏の朝や夕方の太陽の熱射はどうして遮るのだろうか。
外側に付けられた細い縦ルーバーぐらいで防げるわけがない。
もっぱら広葉樹の植栽頼り、ということなのだろう。
そして、これと同じスジカイが南面の中央部2.4メートルの幅に入っている。
このスジカイを現しにしたのではさすがにみっともない。そこで、下の写真のようにスジカイ部分のみに壁を設けてスジカイを隠している。

P1040553.JPG

この柱同寸のスジカイの壁倍率はたったの3倍。
これが、南面では両端に耐力壁がないだけではなく、全体の1/4.4を中央部のたった計7倍のスジカイだけで支えている。
もっとも最南面のカーテンウォールを受ける両端に、45度に突き出た壁はあるが、1,2階とも開口部で縁が切れていて、それほど過剰な期待は出来ない。

P1040567.JPG

確かに、北側は開口部も小さく、内壁にも小壁が多いので、東西面の耐力壁を多く設けることは出来る。
しかし、耐力壁というのは、バランスよく配しなければ意味がない。偏心率を忘れてはならない。
こんな木造住宅が、神戸や中越地震では軒並みに倒壊していた。
神戸のスジカイは細いものばかり。そして、スジカイよりも先にあっという間に通し柱が折れた。
これに対して豪雪地川口町で用いられていたスジカイは4寸とか5寸の半割りが圧倒的に多かった。6センチから7.5センチもある厚いスジカイ。
これは強い圧縮強度が加わっても折れていない。弓のように曲がって、クギを弾いて面外へ飛び出し、内壁を破壊していた。外壁は、構造用合板を用いた住宅のみが震度7の烈震に耐えた。
その恐ろしい姿が、LCCMデモハウスを見ていたら、まざまざと脳に蘇ってきた。

案内していただいたK先生に、「この住宅の耐震等級は何級ですか ?」 と聞いた。
「残念ながら2等級には達していないのですよ・・・」
先生は、小さな声で答えられた。
私は、等級3以下の住宅は認めない。
最低でも等級3以上は確保するのが業者の責任だと信じている。
私が提供してきた住宅は、全ての現場を回って目で確かめ、問題があればカネがかかっても修正し、等級3以上にしてきた。
そうでなければ責任がとれない。
木軸の多くのビルダーが、金物工法に変わってきているのは、業者としての社会的な責任を自覚してきているから・・・。

それなのに、東日本大震災の直ぐ後で、このように耐震等級2にも届かないLCCM住宅を、国交省の推薦住宅として推進してゆこうという考えには、絶対に納得出来ない。
いまどきスジカイ住宅に拘っている者は、そもそも建築家として失格者。
木造で行こうと決めたのなら、なぜ庶民住宅の実態的に明るい木質構造の先生に積極的な参加を求めなかったのか ?
それを求めず、環境関係の先生方だけで造ったから、今度の東日本の大津波に遭遇したら、一番先に潰れてしまうようなLCCM住宅しか出来なかった。
諸先生方は、万が一の瑕疵保証責任を果たされた経験がない。痛い目に遭っていない。
CO2の削減だけを考え、基礎工事の大幅な手抜きを率先して行い、それを自慢している。
小細工で、多少はCO2が削減出来たとしても、耐久性がなくて寿命の短い住宅は、結局CO2を多く排出すことになる。
LCCMデモ住宅を見て、正直なところ怖くなった。
こんな住宅は、タダでも住みたくないと私は本気で思った。

もっとも、屋根がガルバニゥム鋼板で軽く、家具や生活物資が持ち込まれておらず、人が住んでいなかったので、今度の震度5強には耐えたかもしれない。
しかし、被災者に悪夢を呼び起こし、不安感を掻き立てる住宅を国の施策として推薦することは、絶対にやめてほしい。
再興日本のデモ住宅としては、あまりにもひ弱で情けない。
もっともっと力強い、耐震性能4等級以上の住宅が出現してきている。
それだけの木質構造の技術力が、日本には育ってきている。

もし、震度7の直下型の地震が来て大きな被害が出たら、どこかの国の電力会社の社長や官房長官のように、「これは、想定外のことでした」 と弁明するつもりではあるまい ?
国民の生命と財産の確保という大使命を、もっと真剣に考えて欲しい !!!



posted by uno at 09:58| Comment(2) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
新型の仮設住宅ですか?

この程度なら、素人の私でも、2,3時間あれば描けます。フリーソフトをダウンロードして、、、

国の仕事に関わる者は、無私の心を持って、
国の将来を想い、仕事をするべきです。
Posted by ひねくれ者 at 2011年05月03日 09:25
鵜野日出男さん  田原です。

ご無沙汰です。

震災の調査等でばたばたしています。

もし、宜しければ当方の構造設計した事例を当方のサイトで
見て頂き、見学したいのがあれば御案内致します。

構造計算書と構造図(おそらく見たことも無い様な図面です)を御見せ致しますので。

当方では、構造デザインとしてかなり工夫し
木造の可能性を引き出した住宅や店舗等を構造設計しています。
Posted by 田原 at 2011年05月07日 09:13
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