2011年05月05日

LCCM住宅への疑問  意外性なき設備機器 (中)


LCCM住宅は、その設計に当たって、@温熱環境シミュレーション A風環境シミュレーション B光環境シミュレーション とCイニシャルCO2の検討を行ったという。
しかし、肝心の耐震と防火のシミュレーションがすっぽり抜けている。
木質構造のプロが加わっていないことが、このLCCM住宅の最大の欠点であることは、前回書いた通り。柱同寸のスジカイに震度7、あるいは1000ガルという水平力が加われば、このLCCM住宅の何枚かのガラスは簡単に破損してしまうであろう。

そして、@温熱環境はQ値が1.98Wに過ぎず、世界的に見ると高断熱ではなくて中断熱に過ぎない。
そして、気密性能は中気密以下。
Bの光環境は、夜に関してはLED照明を採用している。だが、こけはもはや常識となって、珍しくはない。ただ、昼に関しては、無理やり採光を採るために構造躯体の柱とスジカイをガラス越しに晒している。これが、耐震面や防火面でどのような問題があるかについては、ほとんど議論がなされていないように感じられた。
そして、このLCCM住宅の特徴は、唯一 A風環境シミュレーションにあると言えると思う。
夏に、家の中に風を通すために、開口部や室内空間、排気空間に対してかなりの投資が行なわれている。
その大きな投資に見合うだけのCO2の削減が図られ、同時に入居者にとって本当に快適性が得られるかどうかがポイントになってくる。
真の快適性が得られないなら、誰が何百万円も余分に投資して耐震性の劣る住宅を買おうと考えるだろうか ?

この風環境の問題こそが、このLCCM住宅の唯一の特徴。
それを、積極的に評価するか否かで得られる答えが違ってくる。
私の答えは、投下資金に対して得られるものが少ないと感じるので評価はいたって低い。その具体論については、次回にまとめたい。
その前に、このLCCM住宅の設備について、簡単に触れておきたい。

まず、太陽光発電。
これについてはかなり大型の8kWを搭載している。
8kWの太陽光を搭載すると、普通の43坪くらいの高気密高断熱住宅だと、黙っていてカーボンがマイナスになる。
何も、わざわざLCCM住宅のように、風を通すために小細工を施す必要などない。
そして、東日本大震災の後で問われているのは、太陽光発電の売電ではなく蓄電。これについての提案がないのが寂しい。
なお、屋根勾配が低くて、太陽光発電を撮影することが出来なかった。
下の写真はカタログを複写したもの。
したがって、写りがはっきりしない点はご了承いただきたい。
そして、屋根の両端から軒先にかけて凹状に配されているのが太陽光発電。
そのへこんだ部分に配されているのが太陽熱集熱機。

P1040594.JPG

2年前、東電・デンソー・矢崎総業は、太陽熱のソーラーと深夜電力を併用・エコキュート合体の 「太陽熱集熱機対応型エコキュート」 を共同開発し、発表した。
原発の促進を大前提に考えると、深夜電力を使って給湯をするのが消費者にとっては一番メリットがある。何しろ昼の1/4の電気代で給湯が図れるのだから、多少余分にお湯を使っても罪悪感などない。むしろ電力会社に協力しているのだという優越感の方が大きい。
このため、各家庭で給湯に使っているエネルギー量は、日本はイギリス、アメリカに次いで高い。
つまり日本人は、お湯でCO2のムダ使いをしている。
これを、太陽熱集熱器に置き換えれば、80%は再生可能エネルギーに置き換えることが出来る。
したがって、私も何社かに提案したが、太陽熱集熱器にかかる40〜70万円の余分な支出がネックになって採用してもらえなかった。
それを、原価意識が低く、もっぱらCO2の削減を考えているLCCM住宅では、無条件で採用されたまでのこと。

P1040547.JPG

このLCCMデモハウスでは、太陽熱集熱対応型エコキュートの外に、東ガスの家庭用燃料電池・エネファームも備えている。
家庭用燃料電池は、発電量よりも発熱量の方が大きい。したがって、給湯が主な目標で、2種類の給湯システムを付ける必要は全くない。
東電と東ガスのメンツを立てて両方を揃えたということだろうが、このためにCO2削減という面、メンテナンス面、耐震面で大きな疑問点を残してしまった。
寒冷地では、貯湯槽は必ず室内に設置する。そうでないと、失われる熱ロスがあまりにも大きい。
しかし、関東以西では、夏場の貯湯槽の放熱の処理が大きな問題になってくる。
その対策にいろいろ智恵を絞らされているのに、LCCM住宅では能天気に外部に出したまま。
しかも、外壁に寄せて固定するということをやっていない。
これでは、震度6強の直下型地震が来たら、間違いなく上の写真の全ての室外機が転倒してしまう。
実際に、今度の東日本地震でも、多くの被害が出ている。
とくに高価な家庭用燃料電池の転倒による被害は大きい。
それなのに、耐震性に対する一切の配慮もなく、こうした室外機を晒しものにしている設計者のコモンセンスには、どうしても疑問符がつく。

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このLCCM住宅の冷暖房は、COPの高いエアコン。
1階には2.8kWが1台。

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2階には、主寝室用空間に1台、子ども室用空間に1台と2台。
合計3台。
このエアコンは、ほとんど使わないが、万が一のために設置したと言いたいのだろう。
しかし、私の常識でいうならば、43坪の家に合計7.2kWの室内機を設置するというセンスを疑いたくなってくる。

なお、換気に関しては、排気棟の中に排気専用機が取り付けられているらしい。
その詳細を聞いたが、説明者は明確に答えてくれなかった。 取材力不足力を嘆くしかない。

そして、HEMS (Home Energy Management System) という省エネ管理システムが採用されているということだが、これについても詳しい説明が誰からもなかった。
おそらく、室温状態や居住者の有無によって、エアコンの稼働調節を主に考えたものではないかと推測している。
これはあくまでも推測にすぎないから、7月7日に東京・金融公庫のすまいるホールで開催される 「認証シンポジウム」 で確かめていただきたい。

いずれにしろ、LCCM住宅の設備関係は、計画段階では画期的だったかも知れないが、現段階ではありふれた陳腐な設備機器ばかりで、意外性は皆無。
ヨーロッパでの、すさまじいまでの設備機器やサッシ関連のイノベーションを目撃している者にとっては非常に物足りず、イノベーションの不足を痛感させられた。
つまり、すべてが常識の範囲内。
しかも、室外機は転倒の危機にさらされたまま。
これでは、ヨイショのしようがない。

残された関心事は、風環境。



posted by uno at 06:04| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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