2011年05月10日

LCCM住宅への疑問  湿度を無視した机上論 (下)


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上の写真を見れば分かるように、縁側の途中から45度の角度で壁が外側へ開いている。
これは、出来るだけ南面の開口部をより広く採りたいと言う意図。
しかし、こんなに開口部が広いと、当然のことながら真冬の1、2月でもオーバーヒート現象を起こす。
その点を質問したら、「その時は窓をあけるなどして調節します」と、あまりにも非科学的な解答。
この一番外側の窓は、風が入るように引き違いになっており、ウッドの断熱サッシ。
U値が記載されておらず、オーバーヒートの答えに呆れて、U値を質問する意欲を失ってしまった。これはどこまでも推定だが、2.5W程度だと思う。
当然のことながら断熱だけが目的の低品位のガラスで、遮熱性能はないと考えるべき。

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その内側には、枠の中にネットスクリーンが内蔵されている。
上部に収納されているのを、手で引き下げるもの。つまり網戸として機能する。

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その内側に、ダブルハニカムのハニカムスクリーンが内蔵。
これも上部収納で手動。レールが付いていない性能の低い仕様。

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その内側に、3枚が連結して開けられる木製日射遮蔽ルーバー戸が入っており、これこそがLCCM住宅の最大の売り。
階段室の脇も、ルーバーで覆われる。

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そして、縁側と居室空間を仕切る部分に、部分的に木のルーバーをあしらったガラス戸。

つまり、冬期はルーバーを出来るだけ格納して太陽を目一杯入れる。
オーバーヒートをしたら、窓をあける。
そして、夜はハニカムスクリーンを降ろして熱損失を出来るだけ抑える。だが、当然ガラス面に結露が生じる。その結露対策について説明者に聞いたが、満足な返事がもらえなかった。
ウッドサッシに生じる結露問題は、それほど簡単な問題ではない。

一方、夏期は外側のウッドサッシを開け、スクリーンを降ろす。
そして、南面全体をウッドルーバー戸で囲う。
そして、縁側と居室のガラス戸も出来る限り開放する。つまり、外からの風を全面的に呼び込もうというのだ。

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写真を撮るのを失念したが、縁側の一部はスノコを入れて床下からも空気の流入を促進出来る。
そして、ほとんどの空気は直接居室へ入るが、1階の天井に取り付けられたダクトも通気口となっていて、流れを誘導している。

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さらに、1階の東西の窓の下には、写真のような通気口を持った特製の、造りつけ長椅子がセットされており、ここも通気を担当している。

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2階には、主寝室側と子ども室側の2ヶ所に排気塔がある。
これは、スクリーンで塞ぐことが出来る。
「その場合の室内の換気がどうなるか ?」
また「この通気塔の中に換気装置が付いているというが、どのような種類のもので、性能値はいくらか ?」と聞きたいと思ったが、いくつかの質問に対する説明員の答えにげんなりして、聞く気力が失われてしまった。

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住宅の北側に設けられた2つの排気塔。
サッシが2方向に設けられており、風向きによって自動的に開閉出来るのだろう。
そのためにも Home Energy Management System が必要になってくる。

以上、大まかに説明したが、これだけでは十分に理解していただけない。
新建築は、5月号の住宅特集でこのLCCM住宅を大きく取り上げ、小泉雅生先生の解説でWeb動画を連動企画している。
下記のURLから直接開ければ良いが、もし開かなかったら、各人でネット検索をしていただきたい。

http://www.youtube.com/watch?v=RqM55H9Jq1Q


家の中に風を通すことで、出来るだけ冷房運転時間を短縮しようという試みは、評価すべきだと思う。
特に、今年の夏は冷房運転での電力不足が懸念されている。
肝心の生産活動が制約され、通勤地獄を起こしたのでは、日本の再生がおぼつかなくなる。
このシステムを採用することで、大きな効果が期待できる高緯度や軽井沢などの高地で比較的乾燥な地域では、積極的に採用すべきだと思う。
しかし、残念ながら私が商圏としてきた東京・横浜・所沢を中心とした首都圏では、これだけ南面に5枚もの建具を設け、排気塔に投資するなら、それこそQ値が0.9W以下の超高気密・高断熱住宅にして、精度の高い除加湿機能を備えたデシカ換気に切り替えた方が、イニシァルコストもランニングコストも節減出来ると本気で考えている。

ここで、いくつかの基本的なことを確認しておきたい。
●日本人が不快と感じる温度は26℃以上であって、25℃以下だと相対湿度が90%を超えない限り、そ
れほど不快とは感じない。
●そして、相対湿度が26℃を超えても、相対湿度が60%弱以下であれば、それほど不快とは感じない。
 つまり、絶対湿度が12.5グラム以下であれば快適と感じる。
●同じことで、27℃の場合は、相対湿度が55%弱(絶対湿度12グラム)以下であれば快適。
●28℃の場合は、相対湿度が48%(絶対湿度11.8グラム)以下であれば快適。
●29℃の場合は、相対湿度が44%(絶対湿度11グラム)以下であれば快適。
●30℃の場合は、相対湿度が40%弱(絶対湿度10.5グラム)以下であれば快適。

今年の夏の冷房の設定温度を28℃に抑えようということが、運動として叫ばれている。この場合の相対湿度が50%(絶対湿度が12グラム)以下であれば、生産性は落ちない。
しかし、相対湿度が50%を大きく上回ると、人々のストレスは溜まり、生産性は著しく落ちる。
同じことで、ヒートアイランド現象に直撃される首都圏の場合は、熱帯夜でほとんどの人が熟睡を得ることが出来ない。
健康を壊し、命を縮める。

こうした条件下で、通風のメリットとは何か ?
それは、風に当たることによって体感温度が低く感じられること。
秒速1メートル近い風があれば、26℃が25℃に感じ、相対湿度が高くても気にならない。
ただし、28℃で相対湿度が65%であれば、通風で27℃に感じてもその場合の快適相対湿度は55%弱であるから、どうしても冷房運転を行うということになる。
この冷房運転のためには風の流れを全て止めなくてはならず、しかも15.2グラムの絶対湿度を28℃の快適絶対湿度13グラムにまで下げるには、かなりの時間の冷房運転が必要になる。

しかも、強調したいのは、LCCMで採用しているクーラーは、温度を下げる点では優秀なCOPが高いだけの機器しか選んでいない。
除湿能力の高い、排気によるドライ運転機能を持ったクーラーを除外している。
これは、どこまでも湿度を無視し、温度管理だけでCO2の削減効果を上げようとする短絡的な机上論に基づいているから。


私は、4年前の07年に7月15日から9月23日までの延べ70日間の早朝の屋外の温湿度を調べたことがある。
測定時間は、朝の6時から7時の間。
この全ての記録を公開してもよいが、やたらとスペースをとるだけ。
そこで主だった点だけを列記する。

●早朝で温度が24℃以下の日は7月に8日。8月はなし。9月に7日。
 つまり、一夏で早朝24℃以下の日は15日で、55日は朝から25℃以上。
●絶対湿度が13グラムを下回った日は、7月2日。8月なし。9月は3日。
 つまり、湿度が低くてクーラーを止めても快適な日は、一夏70日のうちたった5日。65日は要除湿。
●8月一ヶ月の早朝の平均気温は26.9℃で、相対湿度は76.1%。絶対湿度は17グラム弱。
 これでは夏、窓を開けることは絶対にムリ。
「やたらに除湿費がかかるだけの犯罪行為」 と言っても過言ではない。

このデータから判断して、東京に住む私はLCCM住宅を入手したいとは毛ほども感じない。
LCCM住宅を、「湿度を無視した机上論」 と決めつけたくなる理由が分かって頂けるものと思う。
4年前の数字でこのありさま。
暑かった昨年の夏のデータを記録していたら、もっとすごいことになったと思う。

今年の夏に、再び記録をとってみたいと考えています。
そして、家庭用デシカの開発が、関東以西の消費者のために、より早まることを祈念してやみません。



posted by uno at 11:29| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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