2011年05月20日

驚異の道東ハウス  Q値0.47W住宅が税込51万円/坪 (上)


信じられないことが現実に起こっている。

外観3.JPG

道東ハウス工業(本社・十勝の音更町、藤井末雄社長)は、このほどウルトラ高断熱住宅「サーモス400」の新モデルを江別市に開設した。
本社が十勝平野に立地しているから社名は道東ハウス。
しかし、昨年の売上高約7.6億円の70%以上が道西の江別市で稼いでおり、社長も常時江別に在駐しているからややこしい。
同社は、どちらかと言うと今まではローコスト路線を走ってきた。
それが3年ぐらい前から、ほぼ無暖房住宅と言ってよい超高気密住宅へ進出、昨年は江別で成約した約28棟の1/4がQ値0.7〜0.8Wの高性能住宅になってきている。
Q値が0.7〜0.8Wというと、パッシブハウスと呼んでいい。

パッシブハウスクラスの住宅は、モデル棟として日本各地に存在している。
ことさら珍しいものではなくなってきている。
しかし、1つの市で年間7棟を受注し、その着工に追われていて、「新規の超高断熱住宅の着工は今年の秋以降にならざるを得ない」 というほどの賑わいは珍しい。
つまり、コンスタントなパッシブハウスクラスの受注を抱えている日本で数少ない地場ビルダーの一社であることは間違いない。
同社の「サーモス400」 の第1号モデル棟については、2009年5月10日と2009年7月5日のこの欄で紹介しているので、関心のある方は参照していただきたい。
その第1号モデル棟は、昨年売却された。
そして、今度のモデル棟が第2弾。
これも、1年余後には売却の予定。
この第2弾のモデル棟のすごさは、その熱損失係数にある。
何と算定されたQ値は、日本で初めて0.5Wを切り、0.465Wというから驚く。

ご案内の通りドイツのパッシブハウス研究所は、パッシブハウスの 「熱的条件」 として、次の3点を挙げている。
(1) 床、外壁、天井・屋根の熱貫流率(U値) が0.15W以上であること。
(2) サッシのU値が0.8W以上であること。
(3) 換気の熱回収率が80%以上であること。
したがって、何はさておいて、この3点を中心に新しいモデル棟を点検してみる。

まずは床。
断熱は基礎断熱。
基礎断熱については、GLから底盤までの深さDを記入して計算することになっているが、土間部分については一定の長さ例しか記入されていないので、計算方法が若干不明確。
基礎の外側断熱は100ミリで、凍結震度の関係でD値も深い。このほかに内側にも50ミリの押出発泡ポスチレンフォーム(B3類)が施工されており、土間部分も50ミリのポリスチレンフォームを一体に施工しているだけでなく、多分スカート断熱も行っているはずだから、パッシブハウスの規定はクリアーしている。

断熱1.JPG

次は壁。
構造壁は206で、140ミリの65〜70キロのロックウールがブローイング充填されている。
内地では優れた住宅でも高性能グラスウールしか採用していないので、206の壁のU値は0.289W程度。
これに対して65〜70キロのロックウールを採用しても0.27W程度。
0.15Wを達成するには、外断熱として約110ミリのロックウールを追加する必要がある。
それが110ミリではなく、300ミリもの外断熱を追加している。
前にも書いたように140ミリの親亀が100ミリの孫亀を背負うのではなく、140ミリの孫亀が300ミリの親亀を背負うと言う恰好。
したがって、直下型地震に対する安全性確保には細心の配慮が必要になる。
同社は、9.5ミリ厚の3×9版OSBボードを縦に3枚に割き、これをスクリュークギで一体化して28.5ミリ厚の縦長の板とする。
そして、上下では1200ミリごとに横に同材を支持材として入れてゆく。
これを206の壁に取り付ける。そして、外側にはネットを張り、タイベックを施工し、18ミリの通気層を設けて16ミリのサイデングで仕上げをしている。
サイデングの支持のためにも、28.5ミリ厚の支持材は不可欠というところ。

この結果は、ざっと手計算してみても壁のU値は0.07W強となる。
パッシブハウス研究所が唱える0.15Wの2倍の性能を持っている勘定。
つまり、如何に江別市が札幌より寒いといったところで、ここまでやる必要は理論的にはない。
藤井社長は、「実際のお客の要望は206プラス206で、280ミリ断熱が圧倒的に多いのは事実」 と言う。それで十分だと思う。
280ミリの熱伝導率0.036のロックウールの充填断熱材だけで、U値は0.13Wをクリアーする。
つまり、パッシブハウス研究所のお告げを上回っている。
孫亀が親亀を背負う必要はことさらない。
だが、今までの仕様を引き継いだ結果、Q値が0.465Wと、日本の住宅史上最高値となった。

次は天井。
これがまたすごい。
外観写真を見てもらえば分かるように、2階の天井がやたらと高い。
これは、通常の2階建の上に206で高さ1200の天井を組んでいるからだという。
なぜ、そんな1200という高さを付け加える必要性があるのか ?
「600ミリ厚、30キロのロックウールブローイングを施工するためと、小屋裏の通気をとるため」 というのが藤井社長の返答。
現物を見ていないのと寒冷地仕様の細部がわからないのでコメントは出来ないが、ともかく600ミリのロックウールのブローイングには文句なしに降参。
ざっと計算しても、U値は0.06W台とパッシブハウスの定めの約2.4倍程度。
これは、オーバー・スペックと言うべきではなかろうか。

2重サッシ4.JPG

次はサッシ。
このモデル棟の立地は準防火地域。
このため、外側にはアルミのペアサッシサッシが入れられ、内側にトステムのインプラのペアが入れられている。
つまり、準防火をクリアーするため、主要なところには2重にサッシが入っている。
その2つのサッシを入れたことで、冬期の結露問題がどうなるかは、年を越さないとはっきりした結論は得られない。
そして、「おおよそのU値は1.0W程度ではないか」 とのこと。
なにしろ、サッシを2重に入れての熱貫流率のテストはなされたことがない。
したがって、どこまでも推定。
また、準防規制から外れるところは一部トリプルガラスを採用している。
このため、サッシに関してはパッシブハウス研究所の 「0.8W」 には及んでいない。

換気1.JPG

次は熱回収換気。
採用したのは日本電興のアイレ AVH-85。
道東ハウスでは、このアイレだけでなく、すべての熱交換機は床下空間に設置している。
このアイレは、ローヤル電機にOEM生産をさせているもので、商品としてはお馴染みのもの。
全熱交換機で、熱回収率は85%。
トイレからも熱を回収するが、エレメントが紙繊維のため、浴室の排気は別系統になっている。
したがって、85%という熱回収率には疑問符がつく。だが、パッシブハウス研究所の80%はなんとかクリアーしている。

エアコン.JPG

このほか、この新モデルはオール電化住宅で、給湯にはエコキュートを採用し、料理はIHヒーター。
Q値の性能がやたらに良いので、専用の暖房装置を初めて除外。
何しろ、冬期でもオーバー・ヒートするほどで、ほぼ無暖房で過ごせる。
それだけに夏期の遮熱が問題となることが予想され、主要な開口部の室外側にブラインドの設置を計画している。
そして、念のために暖冷房用のクーラー2.8kWを1、2階に1台ずつ備えている。

なお、このモデルは一番上の外観写真を見れば分かるように、1.8kWの太陽光発電を備えている。
内地では、一般にシリコンパネルは屋根面に設置する。
しかし、北海道では屋根面に設置したシリコンは、雪と氷に覆われて、太陽熱で解凍するまでにはかなりの時間がかかっている。
このため、同社では冬期のことを考えて、あえて南面の壁上部に取り付けた。
日射角度が低い冬期は、この方がトータルで考えるとはるかによいとの判断。
ただ、夏期の場合は、屋根搭載よりは発電量が若干落ちることが予想される。
また、このモデルは真南を向いておらず振れているので、冬期の午後2時以降は太陽光がほとんど当たらない。
そのため、1.8kWのシリコンパネルは設置したが、実際の発電量はどれくらいになるかは、データ待ちというところ。
いずれにしても、このモデル棟の1年後の詳細データが今から待望される。

そして、このQ値0.465Wのオール電化住宅の設備機器だけでなく、消費税までを含めた坪単価が、何故51万円で出来るかという最大の疑問解明は、次回としたい。



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