2011年05月25日

道東ハウス  Q値0.47W住宅が坪51万円で出来る秘密 (下)


さて、いよいよ坪51万円の単価に迫ることにしよう。

実は、藤井社長から 「新江別モデルの実行単価を全て公開しても良い。FAXしましょうか」 と言われた。
しかし、あえて断った。
なぜなら、個々の資材や部品の仕入価格、実行単価を知ることが目的ではない。
それを知ったところで、なぜ51万円という坪単価が可能かという背景、つまりシステムが分からない。
私流に分析して自分で納得出来ない限り、全国のビルダーや消費者に納得してもらえるワケがない。

この江別モデルというのは、間口5間、奥行き4間。
ざっくり言えば20坪の総2階建。延べ40坪の住宅。
同社は、ほとんどのR-2000住宅業者がそうであるように、外壁は全て206。
そして、おそらく140ミリの柱芯ではなく、室内側45ミリ、室外側95ミリと、確認申請上では25ミリ外側に広げた大きさで申請しているはず。
つまり、204材で得られる内部空間と同じ空間を206で確保している。
確認申請は柱芯で計算されるから、申請上では0.25坪 (タタミ半畳) 分だけ消費者が得をするということになる。
そして外断熱が厚くなればなるほど、理屈上では消費者がより広い住宅を得ることになる。
ヨーロッパでは、家の広さはどこまでも内則寸法。したがって、壁が厚くなればなるほど、業者の負担が大きくなる。
木軸の場合は、柱が4寸から5寸になれば、若干だが実質的空間が狭くなり、消費者の負担となる。
しかし206の場合は、ほとんどのビルダーがヨーロッパに準じて、業者負担で生活空間を確保している。

一条工務店の札幌・手稲区に建てられた i-cube のモデルは、バルコニーのある内地型タイプ。
総2階の生活空間だけを売っている。
つまり、40坪なら40坪ポッキリだけしか売っていない。
これに対して道東ハウスのモデルは、前のモデルがそうであったように、玄関前に7.5坪の風除室、物置、ガレージが付いている。
北海道では70%の住宅が風除室を持っている。いきなりの冷気を室内に入れないための智恵。
そして、除雪用のスコップなどを納入しておく物置が、玄関脇に不可欠。
そして、直ぐに車に乗れるガレージの要望が高い。
このため、建築延べ面積は40坪ではなく47.5坪となる。

外観2.JPG

風除室.JPG

しかし、この7.5坪のプラス空間づくりには、40坪の生活空間と同じ断熱性能や気密性能が求められてはいない。
したがって、7.5坪をプラスして総建築費を47.5坪で割ると、坪単価は2.5万円ほど安くなり、50万円を切ってしまう。
そこで、この7.5坪の分の総工事費を、「消費税込みで坪22万円」 と勝手に仮定した。
つまり総工事費から165万円を引いて、40坪のQ値0.47Wの生活空間分の建築費だけを考えてみた。
そしたら、40坪の坪単価が53万円強となった。

覚えておられると思うが、i-cube の特別モニター価格は、50坪で53万円だった。
i-cube が40坪だと坪単価はどれくらいになるだろうか ?
10坪小さくなっても、設備機器の数や価格は変わらない。変わるのは構造体、断熱材、仕上げ材、床暖房の面積が若干減るだけ。
したがって、これはどこまでも推定だが、 i-cube は40坪を前提に考えると、坪56万円強と表現せざるを得ないと思う。
つまり、道東ハウスの方が性能比で安い。
さらに、i-cube のモニター価格には、消費税が含まれていない。
また、1.8kWの太陽光発電の140万円の費用も含まれていない。
仮に、道東ハウスの53万円強の坪単価から太陽光の140万円と5%の消費税を引くと、47.3万円となる。
40坪の住宅だと、道東ハウスの方が坪当たり8〜9万円安いという勘定になる。

しかし、住宅の購買意欲は性能や価格だけで決まるものではない。
採用している設備機器、部品などの仕様、あるいはデザインなども大きく物を言う。
藤井社長は、「システムキッチンには定価で200万円のものを採用している。かなり良い仕様だと自負している」 と語っているが、残念ながら私は新しいモデルを見ていないので、コメント出来ない。
しかし、前のモデルを見た時は、シンプルだがなかなかモダンさを感じた。
これについては、各自で確かめていただくしかない。

しからば、40坪のQ値0.47Wの住宅が、1.8kWの太陽光、85%の熱回収換気、2台のクーラー、エコキュート、IHヒーター付きで、しかも消費税込みで どうして坪53万円強で仕上がるのか ?
まず、問題になるのは社員一人当たりの生産性。

住宅業に携わって以来、一貫して唱えてきたことは、「一人当たりの年間売上高を最低で7,000万円、出来たら1億円近くまであげることこそが住宅業で成功する条件」。
この生産性を抜きにして、住宅業を語るのはナンセンス。
仮に、一人当たりの売上額が7,000万円としよう。
そして、総合住宅展示場へ出展していたとする。
その場合、もし粗利が25%だったら、一人当たりの粗利は1,750万円。
展示場を含めた間接経費は、直接人件費の2倍はかかる。つまり、全社員の平均給料は粗利の1/3の範囲でしか払えない。年間580万円がリミット。
これが、粗利が20%だと平均給料は467万円が限界。
しかし、一人当たりの売上高が9,000万円で25%の粗利があれば、平均750万円の給料で人材を集めることが出来る。30%の粗利だと900万円。20%だと600万円。
この法則で住宅メーカー各社の売上高と社員数を見ると、おおよその経営内容がわかる。

道東ハウス江別の社員は7人。
社長は営業支援を兼ねながら、設計支援と積算業務を受け持っている。
営業担当は2人。 
その営業支援を兼ね、外注の構造設計以外の設計業務を担当する設計士が1人。
現場監督が2人。しかし、1人は主にリフォーム担当。
他に事務が1人。
これで、一人当たりの年間売上高が8,000万円。
同社は総合住宅展示場には出展していない。
新しいモデルハウスは固定したものではなく、1年程度で売ってしまう。基本的には分譲住宅と考えてよい。
また、広告宣伝費は年に200万円程度と少ない。
このため、粗利の1/3ではなく、半分を人件費に充てることが可能。
一人当たりの売上高が8,000万円ということは、粗利が15%であったとしても平均600万円までの人件費が払えるという勘定になる。

それと、内地に比べて職人さんの人件費が安い。
同社の場合は、準社員として8人の大工さんを抱えている。
原則として2人1組で、新築が3組、リフォームが1組。
江別の大工さんの平均日当は15,000円。
だが、準社員の大工さんは福利厚生費などがかかり、17,000円になっている。
つい最近まで、職人さんは冬期には失業保険をもらって遊んでいた。
しかし、ビルダーにコンスタントな受注力がついたことと、冬期のコンクリート打設が可能になったことで、通年施工が当たり前になってきている。
つまり、大工さんは内地に比べると単価は低いが、住宅の高気密・高断熱化で寒冷地手当が不要になり、生活費がそれほどかからず、安定化している。

もう1つ注目しなければならないのは大工さんをはじめとして職人さんの生産性の高さ。
2人クルーの大工さんは、アメリカ並みの現場施工で、建て方で2週間、ボードと造作で2週間、そのほか流しの取付けなどの雑工事で1週間。
つまり規模の大小はあるが、1棟を平均1.3ヶ月で仕上げ、年間9回転している。
パネル化しないでのこの効率が、物を言っていることがわかる。

さらに北海道では、道の長期優良住宅の基準として、「北方型住宅ECO」 を採用している。
相当隙間面積(C値) が1.0cm2/m2。
熱損失係数(Q値) が1.3Wと、いずれも関東エリアの2倍以上。
このため、その性能に見合う建材や部品の開発が進み、量産効果が出て来て、内地より安く入手出来る環境が生まれつつあることを忘れてはならない。
つまり、北海道では全ての新築住宅が、R-2000住宅並みになってきている。
C値が2cm2、Q値が2.7Wとユルフンでさえオタオタしているプレハブメーカーや、全建連の遅れた工務店群とは丸きり違う。
ちなみに、道東ハウスのC値は0.4〜0.5cm2だという。
気密性能に関しては、Q値の多寡に関係なく、パッシブハウスに準じる基準で統一している。
この割切りこそ、全ての地場ビルダーに求められているもの。

パッシブハウス並みの高性能を担保しながら価格を引下げるという仕事は、個別の単価を弄ることではない。
システム的な取組の結果だということが、分かっていただけたと思う。

それにしても、札幌と言う道では最大の消費地を隣に抱えているので、道東ハウスには生産性をさらに高めるチャンスがあると痛感した。
その具体的な手段とは ?
それは、毎日開けてみたくなるように、ホームページを充実させること。
うまくゆけば、ホームページが営業マン2人分の仕事を稼いでくれる。生産性がさらに上がる。
それなのに、北海道のビルダー各社は、いずれもWeb対応が遅れている。
このWeb対応策の追求こそが、Q値の追求以上にトップが腰を据え、情熱を傾注しなければならない最大の課題。
トップが直接タッチするか、それとも部下や部外者に委嘱するかは別にして・・・。



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