2011年06月15日

LVLが拓いた木質構造の大きな可能性 !!!


故杉山英男先生が口癖のように言われていた言葉がある。
「これからの研究の中心は木構造ではなく木質構造である」と。
つまり、無垢の木材だけでつくる建築物が木構造。
エンジニアリングウッドと呼ばれる木質構造材で今までになかった建築空間を構成してゆくのが木質構造。

このエンジニアリングウッドには、お馴染みの合板、OSB、集成材、TJIのほかにLSL、PSL、CRT、LVLなどがある。
LSLというのは削片を原料とした配向性パーティクル製材で、通称テンパーストランド。
PSLは単板を原料とした配向性パーティクル製材で、通称パララム。
CRTというのはクロス・ラミネーテッド・テンバーのこと。
集成材が、どちらかというと幅の狭い木片を重ねて梁などに使うのに対して、幅の広い板を重ねて厚い面材を作るのがCRT。
私流の表現では木製PC版。
オーストリアのKLM社はこの木製PC版で10階建の建築実績をヨーロッパで持っている。
何しろ厚さ50センチ、幅2.95メートル、長さ16.5メートルの形状のものまで可能というから、いままでの木質構造の概念を突破している。
そして、今年の4月5日にこの欄で紹介したオーストリアTHOMA社のピアウッド。接着剤を使わずに木のネジのついたダボで板を重ねて17センチ以上の厚い構造用面材を作っている。
電磁波や化学物質過敏症患者で、自然素材を求めている人々にとっては、それこそ涙が出るほど嬉しい素材。
日本では壁倍率7倍の認定を得て、着実に地歩を固めている。

ただしこのクロス・ラミネーテッド・テンバーには、残念ながら日本では未だにJAS規格がない。
したがって、ピアウッドのように個別に認定をとらない限り建築用材としては使えない。
農林行政が、新しい木質構造の需要開発を妨げている。
急いでJASを制定して欲しい。
その制定までのとりあえずの間、日本でCRTに変わる厚い面材として注目され、国交省・林野庁の支援を得て技術開発が進められてきたのがLVL。
2年間に及ぶLVLの技術開発の成果が、さる13日に新木場タワーの1階大ホールに、ゼネコンをはじめ関係者300人を集め、4時間半にも及ぶ講演会が盛大に開催された。

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写真は来賓挨拶する林野庁渕上和之木材産業課長

この講演会は、東大農学生命科研の安藤直人教授が基調講演。
同じく東大農学生命科研の稲山正弘准教授が「LVLの構造材としての利用拡大の技術成果」を話した。
このあと、東大生産技研の腰原幹雄准教授が「LVLの防火開発」、森林総研の宮武敦氏が「LVLの仮囲い」、北総研林業試験所の大橋義徳氏が「国産LVLを用いたI-joist」と技術開発の成果を報告し、それぞれ聞かせた。
これらの全ての報告をここで紹介する気はない。
なにしろ、私を含めて日本ではLVLがそれほど住宅や建築関係者浸透してはいない。
基本的な認識すら欠けていると思う。
そこで、安藤先生と稲山先生の話を中心に、LVLの現状と今後の展開に絞って書きたいと思う。

安藤先生の話は何回か聞いている。
稲山先生の話も過去に2回聞いていた。しかし、いずれも特殊な「木構造」にまつわる話ばかりで、「木質構造」に関しては疎いのではないかと考えていた。
これは、私のとんでもない誤解で、稲山先生は「木質構造」面でも卓越しておられることを知り、嬉しくなった。

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LCCM住宅の開発には、木質構造のプロである安藤先生と稲山先生が加わるべきであったと、今さらながら痛感させられた。
LCCM住宅が、木質構造という面からの検証が加えられていたならば、現在のような実用性の乏しいものにはならなかったであろうと悔やまれる。


さて、LVLは Laminated Veneer Lumber のこと。
つまり、単板のべニアを積層した木材。
このランバーという面が強調され、根太や梁などの軸材としてのみ日本では考えられ、使われてきた。
構造用LVLは25ミリ以上の厚みで含水率は14%以下。
そして、この25ミリ厚を構成するべニアの層数によって等級が分けられる。
・特級   12層 (1層の厚 約2.1ミリ)
・1級    9層 (1層の厚 約2.8ミリ)
・2級    6層 (1層の厚 約4.2ミリ)
つまり、木材を薄く剥いでゆく。そしてフェノール系樹脂で接着してつくる。
そして、外側から2枚目のべニアはクロスバンドにすべしとJASに書いてある。
繊維方向を両外側から2枚目だけ、つまり全体の中の2枚だけを直行層とすべきというもの。

私が良く使っていたのは38ミリ厚の根太。 あるいは90ミリ厚の梁として。
つまり、セイの方向にべニアが並んでいるので強度がある。
大きなスパンが求められる床根太とか大きな鉛直荷重がかかる大梁には採用せざるを得なかった。
ところが、海外ではLVLとしてだけではなくLVBとしての使用が増えてきているという。
Laminated Veneer Board
つまり、べニアを積層したボードとしての使用が増えてきているということ。
LVLは、べニアを積層してゆくのだから1200ミリの幅の製品が可能。
しかも、長さもかなり自由。

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写真は、かなり以前に安藤先生がフィンランドのオール大学の建築中の木質構造ドームを撮影したもの。このドームの直径は400メートル以上で、LVLの梁のセイは1メートル以上もある。しかも集成材のようにアールに従って曲げ加工する必要はない。幅広のLVLをアールに従ってカッテングしてゆくだけで簡単に造られていたという。

ということで、90ミリとか105ミリ、あるいは120ミリ厚の厚板だと、そのまま構造材として壁に使えるではないかという発想が生まれてきた。今までは横架材としてのわき役しか果たしてこなかったが、
ここではLVLが主役に踊り出るということになる。

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壁としての使用方法には2種類ある。
1つは図のように1〜2階を通し壁として使用する方法。
この場合は1〜2階の壁線が揃っていて耐震性が強い。
この壁の強度試験をやって見ると、ちょっとやそっとのことでは破壊しない。ほとんどの場合、足元にダブルにホールダウン金物を並べて入れても、壁がいかれる前に足元が破壊してしまう。
このため、今までのホールダウン金物ではなくコ型の新しいホールダウン金物を開発している。
もし、図のように120ミリ厚の壁で、コ型の金物で今までの2倍近く足元を固めることが出来たら、この構造の住宅は5メートルの津波の引き潮にも耐えると思う。
この技術開発プロジェクトは、2年前に始まったので津波対策を目的にしてはいない。
だか、津波対策用の木造住宅としては、最高のものが得られたのではないかと独りでガッテンをした。

もう1つは、各階ごとの8〜9尺の壁。
この場合のモデルとして、構造設計の手引きで用意されている図では基礎がH型鋼を横にして使うようになっており、アンカーと型鋼との接合は安心出来るが、型鋼と壁との接合は長いクギが簡単に引き抜ける構造になっている。
残念ながらこのディテールには、絶対的に納得することはできない。
そして、2階の床外周もH型鋼を横にして回すディテールとなっている。
これも全て引き抜けで、クギがせん断に効いていない。
プロがやった仕事とは考えられない。
ツーバィフォーのように2階床をプラットフォームとするか、KLM社の床構造を勉強すべき。
引き抜きで厚板を保持しようなどという発想は、誰が何と言おうが認めるわけにはゆかない。
したがって、プラットフォーム型壁構造については、どこまでも未完成品として対処してゆく必要がある。
それと、90ミリ以上の厚板として使用する場合、直行層のクロスバンドが、いままでのように両外側から2枚入れるだけで良いのかどうか。
JASの見直しも併せて行う必要があるという。

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そして、床構造で面白いのはLVLで造るストレスキンパネル。
写真のように上下のフランジをLVLとし、455ないしは600、あるいは910ピッチにLVLのウェブを入れたパネル。
これは、ウェブのセイの大きさやピッチによっても異なるが、6メートルから9メートル以上のスパンを飛ばすことが可能になる。
これは工場で完全にボックス化することが理想だが、現場で上下のフランジの施工は現場施工も可能だとしている。
そして、必ずしも下のフランジにLVLを使わないT字型の現場施工の場合のスパン表も用意している。
どうしても大スパンが求められるところでは、ボックス型の採用が望ましい。
しかし、それほど大きなスパンが求められない時は、価格面からT字型になることは大いにあり得る。そのスパン表を用意したことは有難い。

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そして、究極の技術として公開されたのが、壁に厚板を用い、ストレスキンパネルで構成する門型ラーメン構造。
今までの門型ラーメン構造は、門型を構成するためには平行方向にある一定幅の壁が必要だった。
ところが、直行する厚板壁が全て構造壁として使える。
そこに上図のように幅のあるストレスキンパネルを施工する。
そうすると、平行する一切の壁のない門型ラーメンが出現出来る。
間口の狭い住宅の耐震性がこれによって担保出来る。
もっとも、厚板壁の足元を固めるという仕事を最優先に考えねばならない。
そういった条件はつくが、これは画期的な構想だと思う。
しかし、残念ながら構造設計の手引きには、その解説やスパン表が掲載されていない。
発表出来る資料の有無を事務局に依頼しているが、現時点ではまだ返事を得ていない。

最後に、全国のツーバィフォーや金物工法を採用している仲間のビルダーに告げたい。
今回の一連のLVLによる木質構造の技術開発には、大変興味深い内容が含まれている。
ツーバィフォーや金物工法の今までの常識を破るアイデアや技術が詰まっている。
そして、まだまだ完成した技術体系とは言えないが、これをこなしてゆけば今までになかった住空間が創造出来る。
まさに、木質構造時代の本格的な幕開けと言っても過言ではないと思う。
是非とも研究対象として取り上げられることを祈念します。




posted by uno at 15:16| Comment(0) | 木質構造と林業・加工業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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