2011年07月06日

あまりにも太陽熱を無視してきた「ニッポン」


★昨日掲載した家庭用一次エネルギーの数値に関して、大きな間違いがありましたので、お詫びして訂正させていただきます★


太陽光発電が売り出されたのが今から20年前。
当時は1kW当たりの定価が200万円もした。3kWで600万円。
揚水発電の原価が20万円/kWと言われていたから、10倍もする高価な発電単価。
通産省が3kWで200万円ほどの特別補助金を付けてくれた。しかし、どこまでも抽選制。
当たれば考える人もいたが、外れると誰も太陽光を搭載しようとは考えなかった。

当時、私が所属していた藤和・加藤社長と、シャープ・森取締役の了解を得て、当時としては画期的だったQ値2.0W程度のSEA(Save Energy, Amenity)という高気密・高断熱住宅に限り、太陽光発電3kWを無料で搭載することを発表した。これをSEA-Zと呼んだ。
もちろん、無料の条件として、該当者は通産省の補助金の当選者とした。
そして、工事費の値引きは一切なしとした。
つまり、シャープに200万円を値切ってもらい、藤和としても200万円の大サービスをする。
といっても、当時は10%前後の値引きは当たり前。 200万円を値引いても、なんとか採算がとれる見積書を最初から提示していた。
その200万円の値引き額を事前に表示したまで。

ところが、この商法は大きな反響を呼び、あっという間に50棟の受注を得た。
当時、セキスイハイムのソーラーも本格化しておらず、1社で太陽光住宅の50棟の受注を獲るというのは想定外の出来事。
以来シャープは、低性能住宅に太陽光の販促をかけても意味がないことを悟り、高気密・高断熱住宅のビルダーに絞って販促を展開した。これは優れた戦略だったと思う。
しかし、私は一年目で懲りてしまった。
なぜかと言うと、通産省の抽選に外れる人が続出し、生産計画が建てられなかったから・・・。
通産省の賭博的な政策に振り回されて、真っ当な事業計画が建てられないという苦渋。

そうした折、シャープの担当課長から朝日ソーラーの林社長に会って、藤和の戦略を説明して欲しいとの強い依頼があった。
現在では、「ソーラー」というと、誰でも太陽光発電のことを考える。
しかし、20年前は、ソーラーというと太陽温水器のことを指していた。
40〜60万円程度の太陽温水器を屋根に取り付け、月々のガス代を省く。
この太陽温水器が、バカ売れをしていた。
そのトップメーカーが朝日ソーラー。
西田敏行を使ったテレビコマーシャルで、行け行けドンドンの破竹の勢い。
林社長も、ハングリー精神で叩き上げたベンチャーの雄としてもてはやされていた。
しかし、伝わってきていた朝日ソーラーの実態はひどいものだった。
多重債務に悩まされているような男を町田の大きな一軒家に集め、今日はここ、明日はあっちとクルマで運び、一定のブロックをローラー作戦で徹底的に飛び込み訪問をさせる。
そして、言葉巧みに契約書に印を捺させる。
早い話がマルチ商法そのもの。
その親分に会うのだから、正直言って気乗りがしなかった。
だが、目黒の本社の社長室で会った林氏は、表面上は大変な紳士。
最後には玄関まで見送ってくれた。

その態度に後にトヨタホームが騙されて、同社と代理店契約を結ぶという歴史的な大チョンボを犯すことになる。
私が林社長に会ってから2年もしない時点で朝日ソーラーホームが誕生し、その翌年には予想されていた通りに朝日ソーラーのセールスマンが逮捕者され、朝日ソーラーのマルチ商法は瓦解。
この瓦解で、日本における太陽熱運動も見事に瓦解した。
以来、日本では誰一人として真剣に太陽熱の活用を唱えた者はいない。
いや、居るには居たが、消費者が相手にしてくれなかった。
太陽温水器のマルチ商法というマイナスイメージが、人々の脳にこびりついていたから・・・。

そして、今から10年前の01年の5月に、新商品・エコキュートの発売が開始された。
これは画期的な開発だった。
原子力発電を前提に考えると、深夜とか5月の連休時の電力利用の減少が大問題。
原子力発電は簡単に止めることが出来ない。一年中運転させねばならない。
したがって、人々が電気を使わない時に電気を使用してくれる商品がどうしても欲しい。
その電力メーカーの期待に応えてくれたのがエコキュート。

消費者にとっては、太陽温水器よりはイニシァルコストが高い。しかし、安い深夜電力を利用しているので、ランニングコストはガスを利用したよりは安い。
たしかに、太陽熱を利用した方がより安く、地球にやさしい行為だということは分かる。
しかし、CO2の削減という面から、これからは原子力発電が中心になって行かざるを得ない。
ということであれば、深夜に余っている電力を積極的に活用することが国益にも叶う。
電力メーカーの、オール電化住宅というけたたましい宣伝活動が開始された。
かくて、日本では太陽熱利用が完全に棚上げされ、エコキュート一筋でツッ走った。

この結果、日本ではドイツのパッシブハウス研究所が言うような、家庭における年間一次エネルギーの使用量が120kWh/uで上がるということは新築家庭では不可能になった。
一次エネルギーを120kWh/uであげるためには、二次エネルギーを44kWh/uで収めなければならない。
日本ではこれがとても難しい。なぜなら日本の住居は夏暑く、冬は寒い。
このため、肩までお風呂に浸かって、血のめぐりを良くしないとストレスが発散せず、疲れが抜けない。
ドイツのミュンヘンで60棟も並んでいる戸建て住宅の展示場を見た。
いずれも日本のプレハブに比べると超高性能住宅ばかり。それなのにバスタブがなくシャワーのみ。
宿泊したホテルでも、浴槽が付いていたのは1ヶ所だけ。
つまり、ドイツ人はシャワーだけで済ませている。
このため平均家庭の年間給湯二次エネルギー消費量は7kWh/u程度。
ところが、日本人は毎晩のように風呂に浸かる。
しかも、定価の1/3程度の安い深夜電力を使っているから、給湯代そのものは大変安い。
シャワーだけにするなどとは夢にも考えたことがない。
お湯につかって身体を温めることは健康生活に欠かせないですよ、と全てのお医者さんが言っている。
このため、標準的な世帯での給湯の年間二次エネルギーは、ドイツの2倍以上の15〜20kWh/uにも及んでいる。とくにエコキュートの場合は、単価が安いからと使いすぎる傾向がある。
これを一次エネルギーに換算すると41〜55kWh/uとなる。
一次エネルギーを120kWh/uであげるには、残りの67〜79kWh/uで暖冷房、換気、照明を含めた家電、コンピューターの全てを賄わねばならない。
これは、とてもじゃないが不可能。
なんと120kWh/uの34〜46%を給湯だけで浪費している勘定だから、無理もない。
このほかに、日本にはドイツにない夏期の冷房負荷を加算しなければならない。
ドイツは夏期の相対湿度が低いので、直射日光さえ遮れば大変に爽やか。冷房も除湿も不要。

2年前に、ネットフォーラム欄でhiroさんと議論した結果、「日本の家庭では年間一次エネルギーを120kWh/uに抑えることは不可能」 という結論が出た。
つまり、エコキュートと冷房運転を前提にした場合は、「日本の標準家庭ではパッシブハウス研究所が唱えている120kWh/uを達成することは出来ない。最低でも一次エネルギーは140kWh/uを越してしまう」 ということになった。
そんなことはない。「現に、森みわさんの鎌倉パッシブハウスは、パッシブハウス研究所の正式な認定を得ているではないか」 という意見があろう。
あえて反論をする気はない。
これはどこまでも私とhiroさんの推定だが、パッシブハウス研究所は鎌倉の家の給湯に関しては、ドイツの標準家庭に準じて7kWh/u程度で計算をしているのだと思う。
また、ドイツのパッシブハウス研究所で私が会った博士は、残念ながら冷房負荷に対する知識が疎かった。日本の高温多湿の夏は博士にとっては想像外の世界。彼はスペインの夏に対する対応策しか持っていなかった。
森みわさんの挙げ足をとろうというのではない。
「ドイツの建築家は、日本の条件を理解する能力に欠けている」 と言いたいだけ。
そして、私は2年前から120kWh/uというパッシブハウスの呪文から、意識的に脱却した。
いや、現実を見れば、脱却せざるを得なかったというのが正解。
ただし、日本がエコキュートではなく太陽熱での給湯を多用するようになり、高効率な除湿システムが普及するようになれば、再度120kWh/uを見直す時期が来ると思う。
しかし、それは5年以上先のことになろう。

さて、原子力発電の安全神話が覆って、日本ではますます家庭用太陽光発電が注目されようとしている。
かつてのような200万円/kWではなく、現在では4kWまでだと44〜50万円/kWと、1/4以下の水準になってきている。
そして、搭載する太陽光発電のパネルの数が多ければ多いほどkW当たり単価が40万円を切り、場合によっては30万円近くまで下がっている。
太陽熱パネルで給湯を行おうという動きは、大手住宅メーカーには見られない。
ただ、燃料電池を併設しているところは、燃料電池が発電機というよりは発温水機という性格が強いから給湯はそれに依存。
それ以外は、現時点でも原発の深夜電力に依存する考えから一歩も抜け出ていない。

P1040829.JPG

そんな折だったので、菊池隆・堀田善治著 「太陽熱エネルギー革命」  (日経プレミアムシリーズ、税込914円) が出版された時、待っていましたとばかりに買って読んだ。
ところが、この本で問題視している太陽熱とは給湯のことではなく「太陽熱発電」。
太陽光だと日本でも発電が可能範囲だが、太陽熱発電となると、適地は赤道に近い砂漠地帯にしか可能性がない。
ドイツか中心になってつくったデザーテック財団。これはサハラ砂漠に建設する太陽熱発電をヨーロッパへ送電して使おうと言う構想。
そのアジア支部代表に選ばれた筆者が、中国・モンゴルのゴビ砂漠。あるいはインド北西部・パキスタンなどのアジアやオセアニアの砂漠に大規模太陽熱発電を建設しようと呼びかけているもの。
内容を読んで、正直なところがっかりした。

これだったら、NHKのサイエンスZEROが今年の5月7日の放送で取り上げた、「サハラ砂漠に太陽光発電基地をつくれ !」 の方が、はるかに夢がある。

http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp345.html

上は、その概略を解説したもの。
詳細を知りたい方は、直接NHKに当たっていただくしかない。

なにしろ、砂漠の砂からシリコンをつくって発電する。
毎年売り上げで得たカネで、常に2倍の投資を発電のために行う。
その発電した電気の送電ロスをなくするために、直流による超電導での送電技術を開発する。
地球上の全ての大陸の砂漠で発電し、全世界に直流超電導送電網を敷設して一体化する。
そうすると、いつもどこかの砂漠で太陽熱で発電しているから、いつでも発電が確保される。
そして、送電ロスのない超電導の直流送電技術が日本で確立しつつあるから、蓄電しなくても世界の需要が賄える。
送電ロスが、限りなくゼロに近いと言うのが何とも魅惑的。
このシステムだと、30年後には100ギガワットの発電と送電が可能だという。

菅さんのチマチマした話より、この方が私にとってははるかに魅力的。
日本の最先端技術が縦横に活かせる。
個人的な意見だが、日本は太陽熱給湯にもっと力を入れ、家庭用光発電はソコソコにして、超電導送電のイノベーションに賭けるべきだと思うが、如何。


posted by uno at 14:21| Comment(1) | 太陽光・太陽熱・風力ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
良く分からないのですが‥‥、
太陽熱温水器は屋根に降り注いだ太陽光のエネルギーを給湯(または暖房)に使いますが、このエネルギーを住宅の一次エネルギー利用に含めることはしません。
一方、太陽光発電で発電し、それでエコキュートを動かして湯沸かししたりエアコン暖房に利用したりした場合、一次エネルギー利用に含めるのでしょうか?

この扱いの違いがどうも理解できません。違うのは単に投資効率だけで、それを熱として使おうが電気として使おうが、大きなお世話ではないでしょうか。電気に変換して使った場合にのみ一次エネルギーにカウントするのは、評価としてアンフェアな気がします。
気持ちは分からないでもないですが。
Posted by ZED at 2011年07月17日 18:16
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