2011年07月10日

2度目の安全神話の崩壊 !  だが原発に変わるものは ?


1度目の安全神話の崩壊は、1995年1月17日の阪神淡路大震災の時。
その丁度1年前に、ロスで震度6.8の地震が起こり、高速道路の桁が落ちると言う信じられない被害が生じた。
また、その年に韓国では聖水大橋の落下事故が起こった。
その時、日本の国交省や学界、土木関係者はこう言い放った。

「地震に対するアメリカの態度が甘いから、高速道路が崩壊すると言う信じられない事故が起こった。韓国の建設業者は手抜き工事が多いから、橋桁が落下する事故を起こした。耐震基準や安全基準が厳しい日本では、このような事故は絶対に起きない。日本の技術力をアメリカや韓国と一緒にしてもらっては困る」 と。

ところが、阪神淡路大震災では高速道路が崩壊しただけではなく、何百メートルにも亘って高速道路が腹を見せて横転するというみっともない姿を見せた。
それは、誰もが想像すら出来なかったほどの哀れな姿。
古い木造の倒壊も多かったが、RC造や鉄骨造の大型建築物の被害も顕著。
「地震国日本の土木や建築物は世界一安全である」 という神話は、ものの見事にうち砕かれた。
とくに、大型の鉄筋コンクリート造建造物に対する信頼感は完全に失墜。

そして、今度の東日本大震災では原発に対する安全神話が崩壊。
最初は、東電の社長も官房長官も、「想定外の津波の被害で・・・」 と言った。
この想定外という言葉は、絶対に許せないと思った。
その思いは私だけでなく、国民全員の共通の思いであった。
東電だけでない。経済産業省も、日本の原子力関係の学者さんも、「原発に関しては2重どころか3重、4重、5重にも安全装置がなされており、絶対に安全である」 と豪語してきた。
「日本の原発の安全技術の高さを、ソ連やアメリカと同レベルで考えてもらっては困る」 と。

それが津波で、非常用ディーゼルの燃料タンクが流されただけで、お手上げ。
燃料タンクが流されない工事費は、それほど驚くほどの費用をかけなくても出来たはず。
21年も前に、NRC (アメリカ原子力規制委員会) が福島原発を視察して、「このままでは非常用ディーゼルの破綻や貯水タンクの故障で冷蔵機関が動かなくなり、炉心熔融につながる」 という報告書を出してくれていた。
それを経済産業省も、学界も、東電も握り潰していた。
当然、自民党も民主党も、その報告は内密に受けていたはず。
知らされていなかったのは国民。事故が起きてから、その事実が明るみにされた。
つまり、想定外というのは寝言で、どこまでも想定内の人災だった。
政府と東電と学界というトライアングルに、国民は完全に騙されてきた。

騙し続けてきたトライアングルに対する不信感は、ちょっとやそっとでは収まらない。
日本では、原発の運転の再開には地元の同意がなくてはならないシステム。
福島原発に対する政府のモタモタした対応を見て、不信感は増幅していた。
自分の県にはこれ以上の原発はいらないと誰もが考えた。
トライアングルが信頼出来ない以上、どんなに補助金が出ようとも、放射能で汚染されてかなり長期間に亘って故郷へ帰れないような事態は絶対にご免。
信頼感が喪失したので新規の原発建設は、世論上で不可能に。
したがって、既存の原発の安全性を高めた上で、一定期間に限り再開するのは許すけれども、寿命が来た時点で廃棄処分にすべきだというのが最大公約数。
今ごろになって、金科玉条のようにストレステストを持ちだすこと自体がおかしい。
その議論は、4ヶ月前から始まった安全性の議論に当然含まれているべきもの。
原発が選挙の争点になるなどと考えている政治家は、大馬鹿者。

ここまで書いて、昨夜のNHKの、「どうする原発」 というスペシャル番組を見ました。
問題だと思ったのは、NHKの解説者を含めて原発反対者が4人で、賛成者が2人。
この人選は納得出来ない。
反対意見の解説者を賛成席に座らせるのではなく、司会者と同じ席に移し、企業家などのやむにやまれない賛成者を選んで3対3にすべきだった。
原発賛成者に無条件賛成者はいない。どこまでも条件付き賛成者。
これに対して即時全面撤退を叫んでいるごく一部の人がいるのは事実。昨夜も参加していた。だが、大多数の日本人は過激派の言論に致命的な欠陥があることを熟知している。
そしてこの番組を見終わった後でも、私は自分の考えに修正を加える必要性を感じなかった。

前鳩山首相が25%のCO2の削減を叫んだので、昨年秋にそれに対応する中長期のロードマップが作成され、排出量の試算がなされた。それを年末の日本学術会議シンポジウムで発表された。
ここで、その細かい内容を追認するつもりはない。ただ、議論のとっかかりとして利用するだけの価値がある。
昨夜、発表されていた資料とは異なるが、まず2009年度の発電量比率と発電コスト比較をまず確認しておきたい。

          全体に占める比率     発電コスト
・LNG          30%         5.8〜7.1
・原発          29          4.8〜6.2
・石炭          25          5.0〜6.5
・水力           8          8.2〜13.3
・石油           6          10.0〜17.3
・太陽光  (太陽光と風力で)2            46
・風力                      10.0〜14.0
・合計          100%           

この中で、放射能保証や最終処理問題までを含めると原発の価格は10円もするというのが常識になってきつつある。今まで安いと言い続けてきた原発価格を大きく見直す必要はある。

それよりも問題なのは、今までのCO2の25%削減で描かれてきた筋書きを、全面的に見直さなければならないこと。
まず、今までのロードマップを簡単に見てみよう。

             (2005年)        (2020年)        (2030年)
・世帯数         5038万         5357万         5242万
・原子力発電容量 4885万kWh(2010年) 6143万kWh      6806万kWh
                         (新増設 9基)       (新増設14基)
・エコキュート      70万台         3700万台        4680万台
(普及率)         (1.4%)        (69.1%)         (89.3%)
・燃料電池         0万台         100万台         200万台
(普及率)         (0.0%)         (1.9%)         (3.8%)
・太陽光発電       144万kW       5000万KW     10,100万KW
 (1戸当たり3kW)     (48万戸)        (1667万戸)      (3367万戸) 
・太陽熱温水        61万kl         178万kl        282万kl 
(1戸当たり400l)     (153万戸)        (455万戸)        (705万戸)
・バイオ燃料        0万kl         200万kl         200万kl

さて、まず問題になるのは原発。
その容量は20年には9基新設して5357万kWとし、30年にはさらに14基新設して6806万kWとしていた。稼働率が20年で85%として5222万kW、30年には90%として6125万kW。
これが、実質稼働基が20年は20基で2000万kW、30年は10基で1000kWと仮定すると、20年では4143万kW、30年では5800万kWの発電を他の自然エネルギーで埋めなければならない。
台風や落雷の多い日本では風力というのはそれほど期待できない。
温泉好きの日本人が地熱発電に大賛同して、原発の穴を埋められると考えることはムリ。
CO2 25%削減という案に合わせるため、太陽光発電を05年比で20年には35倍の5000万kW、30年には70倍の1万100kWとしている。
これは、辻褄合わせの作文にすぎないだろう。

仮に、私が仮定したように20年の原発の稼働が実質20基に過ぎず、太陽光の発電量が原発50基分になったとしたら。
さらに、30年には原発の稼働が実質10基で、太陽光の発電量が原発100基分になったとしたら、全体の発電量の調整は大変に難しいものになる。
そして電力料金は、20%近い上昇は避けられないと思う。
そして、前回指摘したように原発の深夜電力を利用するエコキュートは、今までの30年には90%近くの普及をみせるという計画を大幅に見直して、太陽熱による温水システムの普及に方針を切り替えることが必要になってくる。
個人住宅に対する太陽熱の普及率は日本がトップ。
菅さんは再生エネルギー特別措置法さえ通れば、簡単に原発から再生エネルギーへ転換出来るように考えて延命策を講じている。
だが、日本の個人住宅への太陽光の普及は、ロードマップ以上はムリ。
もし、強行しようとするなら、中国などから安い太陽光が日本の市場へ乱入し、ドイツ同様に日本の失業率が高まり、海外への工場移転は加速的に進むであろう。
そんなイロハの常識が菅さんにはない。

原発の代替エネルギー問題は、菅さんが考えるほど安易な問題ではない。
原発安全神話の崩壊の前に、民主党への期待神話、とくに菅総理に対する信頼神話が先に崩壊しているという事実を、真剣に受け止めて欲しい。
といっても、これは無い物ねだりにすぎないか・・・。嗚呼。


posted by uno at 09:35| Comment(0) | 太陽光・太陽熱・風力ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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