2011年07月15日

今ほど日本経済の先行きが懸念される時はない (上)


原発に関する本をまとめて乱読しました。
危機の大合唱はよいが、蒸返しの議論が多く、現時点で必要な情報が少なくてつまらない。
まして、新しいイノベーションを語っているものがない。イノベーションを語れない産業界に未来はない。そういった意味で大変な危機に・・・。

それと、福島原発という人災に対応する菅総理の個人プレー的思いつき発言の連続。
そして、理性なき女性のような激しい感情的なブレ。
無能な機長による判断ミスで、日本経済は災害から離陸することが出来ないどころか、失速して墜落しかねない超危機的な状態に。
本当に恐ろしい。怖い。
戦後、営々として築き上げてきた真珠のような美しい思いやりの国が、一人のならず者によって破壊されようとしている。

そこで紀伊国屋に行って、並んでいた経済関係の中から7冊をまとめ買いした。
●竹森俊平著「日本経済復活まで」(中央公論新社 税込1050円)
●緊急出版・日経新聞編「三度目の奇跡」(日経新聞 税込1260円)
●緊急出版・藤田勉著「震災で日本経済はどうなるか」(日経新聞 税込1050円)
●緊急出版・野口悠紀雄著「大震災後の日本経済」(ダイヤモンド 税込1575円)
●岩田規久男著「経済復興」(筑摩書房 税込1260円)
●竹中平蔵著「日本経済 こうすれば復興する !」(アスコム 税込1000円)
●高橋洋一著「これからの日本経済の大問題がすっきり解ける本」(アコムス 税込1000円)

このほかに下記の2冊も買おうと思ったが、やめた。
今回は経済問題に絞ろうと考えたから。
だが、日経の「緊急出版」の2冊がつまらなかったので、下記を選べば良かったと反省しきり。
●大前研一著「日本復興計画」(文芸春秋 税込1200円)
●長谷川慶太郎・日下公人著「東日本大震災 大局を読む」(フォレスト 税込1260円)
それにしても、7冊で8200円弱。9冊買ったにしても1万円余。
デフレで、経済関係本がここまで安くなっていたとは・・・。
このデフレこそが大問題。

経済学に関してはどこまでも私は門外漢。本来は発言権がない。
ただ私は、個人的に下村治氏の薫陶を受けた。
住宅産業へエントリーするに当たり、氏から数回に亘ってレクチャーを受けることが出来た。
昔の産業人には、同氏からそのイノベーション理論を中心に、徹底的したレクチャーを受けた猛者が多かった。
このため、いつも、「下村氏だったら、この事態に対してどのような処方箋を書かれるだろうか」 と、素人ながら推測する癖がついてしまった。
その素人の推測からして、最初に増税ありきとする菅総理と谷垣自民党の経済政策には、深い疑問を抱かされている一人。
各専門家の意見を読んで、自分なりの考えをまとめてみたいと考えた次第。

まず、竹森氏の著作。これは2部に分かれていて、原発の影響を中心に書かれているが、内容はたいしたことがない。
日経の「三度目の奇跡」は、本誌での連載物をまとめただけのもので総花的でヘソがない。日経新聞のデフレと円高に対する見解には、いつも疑問を持たされている。財務省と日銀の代弁者という印象が強すぎて、残念ながら信頼出来ないでいる。
藤田氏の著作は金融面からの視点はいただけるが、説得力が乏しすぎる。

P1040854.JPG

話題性を持っているのは野口氏の著作。
この著は、下記のダイヤモンドのホームページ上に6章、25回に分けて連載されていたものをまとめたもの。
最初から分かっておれば、わざわざ買わなくても良かった・・・。
http://diamond.jp/category/s-daishinsaigo

正直なところ、野口悠紀雄氏の本はそれほど面白くない。
だが、帯に書かれている挑発的な文句に、つい釣られてしまった。
「復興需要は、経済を拡大させるというケインズ政策とはならない。電力の制約が供給面で深刻なボトルネックとなっているからだ。円高を容認して輸入を図ってゆけば、海外の電力を間接的に購入することができる」

氏の言わんとすることを要約すると次のようになる。
日本経済は「需要不足」に悩まされてきた。しかし、大震災を機に180度転換して今後は「供給面の制約」が問題になる。とくに夏期の電力不足が大きな足かせに。
したがって、以前からの氏の持論である 「製造業はコスト競争力で新興国に勝てないのだから、イギリスの金融やアメリカのITのような付加価値の高い産業へ転換するチャンスに、この大災害を位置づけるべきである」 と説く。
つまり、電力を喰う製造業から、サービス産業へシフトすべしと声高に叫んでいる。
そして、復興財源は増税で賄うのが最も公平、と財務省が大喜びする見解を発表。
また、物づくりをやめれば、円高の方が海外の電力を間接的に安く入手出来るようになる。
円高を阻止しようという動きは、復興投資の妨げになる。そして、円が1ドル50円になっても対応出来る企業と産業だけを育ててゆけばよい。

非常に乱暴な紹介になったが、氏が言わんとしていることは上記に尽きる。これこそが日本を救う唯一の経済政策だ、というのだ。
これに対して、「はいそうですか」 と素直に頭を下げる産業人は、何人いるだろうか ?
日本が 世界一の物づくりの国から、イギリスのような金融センターとか、あるいはアメリカのようなIT先進国に変われると考えている者は、著者以外に何人いるだろうか ?
英語を母国語としている両国。
海外から優秀な工学系の頭脳を研究生として集め続けているアメリカ。
それに簡単に太刀打ち出来るのだったら、15年前に進めた金融ビックバンで、東京は東洋のロンドンになっていたはず。
金融市場、証券市場における弱い日本の位置付けを考えると、「物づくりをやめて金融へ」 というのは、どこまでも机上の戯言にすぎない。
また、アメリカの無責任極まりない金融工学が、リーマンショックを惹き起したという負の遺産の大きさも考えねばならない。
そして、インドのような優秀な人材の宝庫を持たない日本が、簡単にIT産業の雄になれると考えているとしたら、野口氏は単なる妄想家にすぎない。
日本には、ベンチャーを目指す工学系の若者があまりにも少ない。

私は氏の理論には反対で、日本はどこまでもその器用さと丁寧さという特徴を活かして、物づくりに徹してゆくべきだと今でも考えている。
たしかに、低品質で安物づくりは、これからは新興国に大幅に譲ってゆくべき。
そして日本は、絶えざるイノベーションによって、高性能で高品質で、チャーミングな物づくりに特化してゆくことが不可欠。
現に、今回の東日本大震災で中小企業の工場が被害を受けたがために、自動車産業をはじめとして世界の大メーカーが軒並み生産調整を余儀なくされたではないか。
それだけ独創的な物づくりの能力を日本は持っている。
この物づくり力を、捨てなければならない理由がどこにある !!

たしかに日本の電力事情は、急速に厳しくなった。
この危機に対しても、カッコ付け屋の菅総理などの妨害行為さえなければ、日本の製造業は世界一少ない電力で、世界一の高性能なものを必ず作ってみせる。
かつてのオイルショック時以上の能力を、日本の製造業は必ず発揮する。
野口氏が言うように、中国やインドのCO2を多発している電力に依存した工場で造られた商品を輸入すれば、国内電力の不安は解消されるだろう。
CO2削減と言う大目的から考えても、そんな輸入品を奨励することが正しいことなのか。
そんな輸入品に依存しなくても、日本は十分にやってゆける !!

それと野口氏は、経済学者のくせに大きなポイントを見落としている。
それは、農水産物や林業という物づくり。
物づくりというのは、何も製造業に限ったものではない。
農林水産業も、立派なものづくり。
農産物の風評被害に対する政府の働きかけがあまりにも遅過ぎ、しかも系統的、科学的でない。
このため、大きな風評被害に巻き込まれているのは事実。

また、日銀の金融政策の大チョンボで、必要以上の円高が続いている。
東日本大震災という空前絶後の被害を受けた国の円が、80円を突破するというのはどう考えても異常。
それなのに、積極的に円高へ誘導して50円程度にしたらよいと強調する野口氏。
私に言わせれば国賊以外の何物でもない。
日銀と財務省が実質2%程度の、正しいインフレ誘導政策をとっておれば、円は120円程度で落ち着いているはず。

そうすれば、外国からの輸入木材が極端に少なくなる。
それどころか、適齢期になった杉材がどしどし海外へ輸出出来るようになり、円を稼ぐ有力な働き手になってくれる。
また、農産物や水産物も国際競争力をつけて、日本食ブームに乗って海外のマーケットを大きく開拓してくれる。
東日本の被災地の多くは、本来は海外マーケットの開拓で立ち直ることが出来た。
息を吹き返し、地域経済を活性化できた。
政策次第では大きなチャンスのはずだった。

それを阻害している最大の要因が、日銀の金融政策のミス・リード。
それと、風評被害に対する政府の余りにも悪すぎるフットワーク。
いつも後手に回って、事前の対策が何一つ用意されていない。
危機管理どころか通常の管理能力もない。
この時期に、政権の体をなしていない政府を持っているという日本の惨めさと不幸。

ド素人は、現政権に対する不信感と同じ不満を野口悠紀雄氏に対して持つ。
野口理論は菅総理同様に、日本を壊滅に向かわせようとしていると言う気がするのだが、果たして下村治氏だったら何と言うだろうか ?
それとも野口氏の言うことが、矢張り正しいのだろうか ?


posted by uno at 05:21| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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