2011年07月30日

日本は「課題解決先進国」になれるという素晴らしい力作


小宮山宏著「日本《再創造》」(東洋経済新報社 1500円+税)

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最近は、原発や東電を罵ってばかりの本が氾濫している。いくら大声で罵っても、菅総理のように対案を用意せずに、思いつき発言を繰り返しているようでは国が亡びるだけ。
それにしても、電力不足に加えて日銀と政府の無策によるすさまじい円高。
日本の産業は、日銀と民主党政権によって潰されてようとしている。この時期に消費税増税を叫ぶ自民党も同罪。これほどひどい人災はないと書きたいのだが、そんなことより未来に対する洞察が先決。

ご存じのように著者は前東大の総長で、現在は三菱総研理事長。宮城県復興会議の議長を引きうけるかたわら、全国で市民運動として「プラチナ社会をつくるためのネットワーク構想」を発想し、実践中。
いわゆる象牙の塔にたてこもっての評論家ではなく、未来に向けた実践の人。
また、BSフジの論客として わかり易い解説をしているので、知っている人も多いと思う。
著者は自宅を高気密高断熱住宅に建て変え、ハイブリッドカーに乗っている。
その辺りのことは2010年6月25日の独善的週評244号「低炭素社会」(幻冬舎新書) で取り上げているので参考にしていただきたい。

この本を読んで、東日本大震災以来、くすぶり続けていた気分がすっきりと晴れた。
当面の大震災対策や円高対策はもちろん最重要課題。しかし、未来を見つめた基本方針が如何に大切であるかを教えてくれている。
筆者は以前から、日本を「課題先進国」と呼んでいる。
天然資源にも恵まれていないし、環境汚染による被害も発生しやすい。少子高齢化がものすごい勢いで進んでいる。都市の過密化と地方の過疎化問題も深刻。加えて食料の自給率も低い。
しかし、日本が直面している問題は、これからの10年から20年の間に世界各国が直面する大問題。
したがって、最初に課題にぶつかった日本がこの難問を解決出来れば、それこそ そのノウハウを世界へ輸出できる。日本は、単なる「課題先進国」ではなく、「課題解決先進国」になれる、と説く。

そして、面白いのは、「人工物は必ず飽和する」という考え。
戦後の日本を見ても分かるように、まず電気洗濯機、電気冷蔵庫、電気掃除機の急激な需要が起こった。
これはまたたく間に100%の普及を見せ、後は取り換え需要だけとなった。
そのあと、カラーテレビが激しい勢いで普及し、自動車、エアコン、電子レンジ、VTR、パソコン、携帯電話、デジカメなどが続いた。もちろん一番高価な住宅は、早い時期に総在庫戸数が世帯数を上回った。
たしかに、人工物は必ず飽和する。そうなると自動車需要のように、あとは平均12年ごとの買い替え需要しかなくなる。

そう考えると、中国の高度成長がいつまでも続くわけがないことが分かる。
例えば自動車を例にとると、先進国では人口100人当たり50台を保有している。廃車期間が平均12年とすると、新車の需要はアメリカでは100人に5人。日本とフランスは4人。韓国は3.5人でほぼ飽和状態になっている。
中国では2010年に自動車の販売台数が1800万台に達している。100人当たり1.4台。したがって逆算すると後7〜10年で中国の自動車は飽和状態になる。そして自動車だけでなくあらゆる人工物が飽和状態になり、高度成長はストップする。

三菱総研は、09年に「ビジョン2050」を発表している。このビジョン2050は、私の記憶では「再生可能エネルギーだけでは不足するので、「原発と電気自動車がビジョンの両輪」と書かれていた気がするのだが・・・。
筆者はビジョン2050の具体的な目的は次の3点に要約出来るという。
(1) エネルギーの効率を3倍にする。(非化石エネルギーの利用量を3倍にするのではない)
(2) 物質の循環システムを構築する。(徹底したリサイクル社会の構築)
(3) 非化石エネルギーの利用を2倍にする。

このエネルギー効率を3倍にするという場合、2つの側面から考えねばならない。
まずは物を生産する段階でのエネルギーの効率。この面では日本のモノ作りは世界一。この世界一の技術を革新してエネルギー効率を3倍にすることは容易ではない。同じ性能のものを小型化するとかリサイクルするしかない。
もう一つの側面は、生産されたものを使う際のエネルギー。
自動車を例にとると、同じ重さの車でもkm当たりの欧米車の平均エネルギー消費量はリッター表示だと1.8リッター。これに比べて日本車は1.5リッターで20%も効率がよい。
これがハイブリッドカーとなると0.7リッターと61%も効率が上がる。
さらに、電気自動車、燃料電池車となると0.4リッターと欧米車の22%にすぎない。
2050年に人口が90億人になり、先進国並みに2人に1台の自動車を保有すると考えると40億台。
現在の保有対数は10億台でから4倍になる。しかし、2050年に、全ての車の軽量化と電気・燃料電池化が進めば、自動車に使われるエネルギーは現在と変わらない。
もちろん、石炭を燃料とする電気自動車が増えたら、CO2の面では大問題だが・・・。

同じことがエアコンにも言える。
エアコンの原理は、電気ストーブや電気コタツと全く異なる。
エアコンというのは空気中の熱を抽出する時に電気を使うだけ。
冷房時は室内の熱を組みあげて屋外に放出し、冬期は屋外から熱を室内に運ぶヒートポンプ。
このヒートポンプの効率 (COP) が1990年以前は3に過ぎなかった。それが除湿を別にすれば2010年には最高7にまで上げられてきている。
理論的には、エアコンのCOPは43にまであげられる。しかし、ビジョン2050では90年代の4倍の12を目標として掲げている。つまり、エアコンの冷暖房費は、90年代の1/4に下げられるということ。

私が三菱総研と深くかかわっていたのは10年前迄で、残念ながら小宮山氏とは会っていない。
相手が多忙な身なのでこれからも面談出来る機会はないだろうが、氏はヨーロッパと異なって日本の住宅では高温多湿の解決こそが最大の課題だ、とこの著の中でも触れている。
超高気密高断熱住宅に実際に住んでみて、冬期の加湿と夏期の除湿の必要性を身に滲みて分かってきたのであろう。
したがって、ダイキンの家庭用デシカが開発され、それが納得出来る性能を持っていたならば、いの一番に筆者に報告したいと考えている。

国交省が薦めようとしているLCCM住宅。 それを筆頭に、高温多湿で超過密な日本の都市で、通風による自然換気がベターだとする考えが、日本の建築家の中にはあまりにも多い。
実際の消費者の声も聞かずに、机上で捏ねあげた通風方式を、パッシブという美名のもとに消費者に押し付けようとしすぎる。
LCCM住宅に至っては、そのために200万円以上の初期投資を消費者に求めている。
理論的に可能なCOP 43には届かないにしても、日本の産業界が努力すれば半分の21には届くかもしれない。
冷暖房だけだったらビジョン2050の12という数値で、通風をとらなくても目的は達成される。COP12のエアコンで、日本の冷暖房費は現在よりも半減される。

私がデシカにこだわるのは、その除加湿能力。
試作機では、冬期は23℃で相対湿度が50%、という絶対湿度9グラムを軽く達成している。
そして、夏期の絶対湿度も8〜9グラムに制御できている。
ということは、肌荒れさえ気にしなければ、30〜32℃の設定温度で、相対湿度が30%台での生活が可能になる。日本の夏を爽やかに過ごすことが出来る。
日射遮蔽に配慮したQ値が0.8〜0.9Wの住宅だったら、暖冷房費はほとんど不要に。
こういった創造型のイノベーションの必要性を、筆者は強調している。

経済用語に「ポーター仮説」があるという。
環境の規制がある程度強化されることで、企業のイノベーションが促進されるという理論。
たしかに、70年代に厳しい環境規制を導入した日本やドイツで企業の生産性が上がった。 79年の排ガス規制をした日本版マスキー法が 日本車の競争力強化につながった。
しかし、このポーター仮説が有効なのは、当該産業にイノベーションの余地がどれだけあるかどうかにかかっている。エアコンとか給湯機には理論上イノベーションの余地は大きかった。
同じように住宅では、サッシや換気、除湿に関しては理論的にも実際的にもイノベーションの余地は大きい。
その大きさを知ろうとしていないのが日本の住宅メーカーであり、サッシメーカー。
この本を熟読して、大いに反省してもらいたい。

(2) の循環システム。
鉄鉱石から鉄を作るのと、鉄のスクラップから鉄をつくるのとでは、理論的には鉄鉱石から鉄を作るのに要するエネルギーはスクラップからの27倍かかるという。
しかし、全てをスクラップからという訳にはゆかない。不純物が混入すると生産性が落ちるものがある。たとえばビールなどのスチール缶。純度の高い鉄だと、金型を使って平板に一度圧力をかけるだけで簡単に缶ができる。スクラップだとそうはゆかない。
同じことで、ボーキサイトからアルミを作り出すのに要するエネルギーは、スクラップから作るエネルーのなんと83倍ものエネルギーが、理論上必要になるという。
リチウム電池などもしかり。
こうした循環システムを軌道に乗せるには、最初の商品開発の段階から取り外しが容易になるような設計がなされていなければならない。
循環システムを軌道に乗せることが出来れば、エネルギーの使用が極端に減らせる。

(3) の非化石エネルギーを2倍にするというテーマ。
現在、全世界の一次エネルギーの80%を石油、石炭、天然ガスの化石資源に依存している。
非化石エネルギーはたったの20%。うち原子力5%、水力5%で、植物由来の薪などのバイオマスが10%。
化石燃料を減らすにしても、代替資源は核エネルギー、太陽エネルギー、地熱しかない。
原子力は過渡期のエネルギーとして、安全の上にも安全を確かめて使ってゆくしかない。
太陽に由来する太陽光や風力発電では、日本ではそれほど大きなものを期待出来ない。太陽電池は心配が絶えない。
そこで著者は、赤道近くの砂漠に海水を引きこんでの藻を育成する事業を提唱している。

その提案も面白いが、私はNHKが今年の5月7日に「サイエンスZERO」で放映した「サハラ砂漠に太陽光発電基地をつくれ」という構想の方がはるかに面白いと思う。砂漠の砂でシリコンをつくり、全ての砂漠をシリコンパネルで覆う。そして送電ロスのない超電導ケーブルで全世界を繋ぐと言う構想。
http://www,nhk.or.jp/zero/contents/dsp345.html

紙数が尽きた。大変興味深い内容のうち、私が関心の深いイノベーションに絞って書いたので、著者の本意が伝わっていない。やはり買って読んでもらうしかない。


posted by uno at 15:26| Comment(2) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
家庭用のデシカ、早く発売されるといいですね。楽しみです。
Posted by たかちゃん at 2011年07月31日 01:22

尺八してもらったけどありゃたまんねーな!!
ジュパジュパ凄い音させながら吸いつかれて、30秒で発射しちまった(笑)
しかもオレ、女にお任せして寝てただけなのに5マソも貰った件wwww
http://dorkyqp.jp.takaoka.mobi/
Posted by 吸引力の変わらないただひとつの… at 2011年08月02日 16:51
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