2011年08月15日

一条の床冷房体験記  ベストではないがベター (上)


関東以西のW地域の、Q値が0.8W前後の住宅では、「原則として暖房設備が不要。 そして、除湿と遮熱さえしっかり行えば、場合によっては冷房設備も不要」 という仮説をたてている。
しかし残念ながら、この仮説を実証してくれる住宅は、未だに陽の目を見ていない。

そのような考えを持っているから、床冷房などと言う戯言には見向きもしてこなかった。
床冷房だけでなく、パネル冷房計画を話す人にも、「ムダなことはやめなさい」 と単刀直入に進言してきた。
この進言は、今でも正しいと考えている。
ただし、今回の一条の計画には、2つの面で好奇心をそそられるものがあった。

1つは、一条工務店は全ての住宅で床暖房を標準仕様として装備しており、各社の床暖房に比べて格安で、設計及び施工面でも格段の工夫が見られる。
たとえば、和室ではイグサを畳表に用いると、温水熱でイグサが変色してしまう。
このため和紙で編んだ特殊な畳表を開発している。
そして、居室だけでなく廊下、トイレ、浴室の床にも床配管がなされている。
つまり、階段と押入れ以外は全て床配管がなされている。

それなのに、その床配管は冬期間だけしか利用されていない。
4〜5ヶ月間だけの稼働で、後は遊んでいる。
これは、大変にもったいない。
この配管を冷房に使うことが出来れば、個別クーラーが不要になる。
住宅の性能は向上しているのに、配管とクーラーへの2重投資を求めるのは、結果として施主に不要な負担を強いている。
住宅会社としては、不勉強さをモロに曝け出していることになる。
私の提案のように、暖房装置と冷房装置ともに外してゆくのは当面はムリにしても、せめて1種類の装置で冷暖房を兼用出来るようにしたい。
セントラル空調換気システムで到達している成功例に、近づくことは出来ないか ?
なんとかして、クーラーを外すことが出来ないか ?  
ということが主要モチーフに・・・。

と同時に、クーラー レスを実現させるためには、単に冷水を流すだけでは足りない。
除湿換気を同時に行わねばならない。
つまり、クーラー レスと除湿換気という2つの大テーマに取り組んだシステムだということ。
だからこそ、好奇心をそそられたという次第。

このクーラーレスと除湿換気を実現するために、同社はかなり前から長府製作所と組んで試行錯誤を繰り返してきている。
ご案内のように長府製作所は年商500億円前後の中堅企業。しかし、給湯機、床暖房、クーラー、ヒートポンプなど、空調換気に関してはそれなりの実績がある。
先の90%熱回収換気のロスガード90では、一条はダイキンと組んだ。
だが、床冷房では冷水の技術が求められ、床暖房との関係があるので最初から長府製作所とタイアップ。
そして、冷水だけではなく除湿のデシカの技術開発でも、長府の技術を採用している。
そして、付けた名前が 「一条の高効率ヒートポンプ式デシカント常時換気床冷暖房住宅システム」。
ジュゲム ジュゲム ゴコウノスリキレ・・・ではないが、舌を噛みそうなやたらと長い名前が現時点では付けられている。

P1040900.JPG

上の写真が、「ヒートポンプ式デシカント換気・床冷暖房」 の心臓部。
本体は縦横とも80センチ程度で、高さが約1.5メートル。
この中にデシカント換気機能と床冷暖房の機能が詰め込まれている。
そして、上部には除湿された空気を各室へ配る分配機がついている。
全部をオープンにした写真を撮りたいところだが、上部以外は開くことが出来ない。
また、デシカント換気のシステムの解説図も、不凍液を冷暖房するシステム図も公開されていない。
開閉ドアが付いていない大型の電気冷蔵庫のような上の写真を見て、想像力をたくましくしていただくしか、現時点では手段がない。

しかし、これだけではプロは想像出来ても、このシステムを導入したいと考えている消費者には想像のしようがない。
そこで、もう少し私の想像を交えて説明を加えてみた。
このシステムの心臓部に当たる上の写真に、現在のところ 「ロスガード90」 というような愛称名がついていない。したがって私の方で勝手に 「デシカ換気・床冷暖機」 と呼称することにする。
このデシカ換気・床冷暖機写真の、向かって右半分でデシカ換気を行っており、左半分で不凍液を冷暖していると考えてよいようだ。

デシカ換気と言われても、初めての人は理解に苦しむであろう。
お菓子や乾燥食品、粉末食品を買うと、中に必ずシリカゲルなどの乾燥剤が入っている。
その乾燥剤と同じ性質を持った湿度の吸着、離着機能を、通称デシカントと呼んでいる。
よく使われているものに合成ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭などがあるが、このデシカ換気・床冷暖機には新しい乾燥剤が採用されている。 
その素材については、当分の間は秘密。
ロータリー式で、1時間に50回転程度でゆったり乾燥剤が回転する。
外気を導入する35秒前後の時間に、この乾燥剤は外気の湿度を吸収し、残りの35秒前後にヒートポンプでパージする。
このパージの時に以前はかなりの電気を使った。それをヒートポンプで、電気代をかけずにパージしようとしたのがデシカント除湿の仕組み。
そして冬期は逆で、室外へ廃棄する空気の中の湿度を35秒前後で吸着し、ヒートポンプで湿度を室内側へパージする。

当然のことながらシステムとして全熱交とならざるを得ない。
そして、問題はその除湿のキャパシティ。
残念ながらこの数値が現時点では発表されていない。
したがって、このシステム全体を、現時点で評価するわけにはゆかない。

一方、不凍液を冷暖するシステムは、写真の左半分に納まっていると考えられる。
暖房だけだと深夜電力の安い料金を利用してタンクに貯湯しておけば、比較的安い価格で暖房を行うことが出来る。
しかし、深夜電力を利用して氷を作り、その冷熱で冷房を行うとなるとその製氷に要する費用とスペースはバカにならない。
したがって、採用されているのはヒートポンプによる冷暖房システムであって、それ以上のメカニズムを持っていると考えるにはユニットが小さすぎる。
しかし、これはどこまでも私の推定であって、機械をこじあけて見ないことには分からない。

P1040896.JPG

さて、冷暖房された不凍液は、一定の温度でこの分配パイプから全館へ循環を始める。
デシカント換気が肺機能であるとするなら、これは血液を循環させる機能。
この日、この体験棟での不凍液の設定温度は23℃。
早速、靴下を脱ぎ、素足でフローリングの温度を確かめてみた。

P1040899.JPG

写真のように、フロアーの表面温度は24.2℃。
私のきたない素足が見える。
さて、この24.2℃の温度が、身体にどう伝わったか。
私は比較的暑がり屋。
したがって、素足で1時間以上居たが、冷たいとは感じなかった。違和感がなく、足が痛くなることもなかった。
しかし、私の経験からいうと、女性の中の多くが23℃では冷たく感じるはず。
これはどこまでも当てずっぽうの予想にすぎないが、一般に好まれる不凍液の設定温度は24℃でなかろうか・・・。
となると、フロアーの表面温度は25.2℃程度。

ちなみに、不凍液の設定温度が23℃の時のタタミの表面温度は25℃。
これだったら、誰も違和感なく生活出来ると感じられた。
もっとも、フロアーを素足で歩くなどというのは私ぐらいしかおらず、ほとんどの人がスリッパで生活するとなれば、不凍液の設定温度は23℃で良いのかもしれない。
ただし、この体験棟にスリッパが常設されていたのは、いただけない。
靴下のままで、出来れば素足で体験してもらうべき。
そこまで気が回らないと、一流のプロとは言えない。

P1040895.JPG

さらに参考までに書いておくならば、フロアーの表面温度が24.2℃の時、上の写真のように吹き抜けになっていた2階天井の表面温度は28℃で、1階の天井の表面温度は27℃程度だったと記憶している。
メモするのを忘れたので、この記憶は間違っているかも知れない。
言いたいのは、高気密高断熱住宅の場合は、とくに床暖房の時は吹抜け空間の天井と1階フロアーの温度差はほとんどない。
これに対して、床を冷房している時は、どうしても2階の天井と冷房体の1階のフロアー間では4℃程度の温度差が生ずるのは、必然と言える。

P1040892.JPG

さて、問題となる室内の温湿度。
床から約70センチのところに置かれた温湿度計は、写真のように26.5℃で、相対湿度は58%であった。

この数字をどう読むか、である。



この記事へのコメント
鵜野様

一条で家を建てた者として新ロスガード?については非常に興味を持っています。
私も近隣のモデルハウスが床冷房に対応に改造されたということで見学させてもらいましたが、その上での認識と今回の鵜野様の記事の内容に齟齬があるようです。

不凍液の冷却、加温までロスガードで行っているとの推測ですが、それは違っていませんか?
従来の床暖房同様に外部の室外機で冷却していて、ロスガード部はあくまでも除湿だけの空気の制御しか行っていないと思います。
担当営業の話ではモデルハウスを床冷房対応にする際に行ったことは、床冷房対応の室外機の交換、ロスガード本体の入れ替えそしてドレインパイプ(外部への排水)の追加などの作業であり数時間で対応できたということです。
ドレンから除湿した排水が出てるとすれば私は夏季の除湿においては、デシカ方式すら使ってなくコンプレッサーによる除湿がメインかなとすら思っているくらいです。
その証拠というか、フィルター部のフタを開けて手を入れてみるだけでかなり冷気を感じます。

もちろん担当営業も何も知らされていないということで、まったく推測の域を脱していないのですが将来我が家のロスガード90が新型に置き換え可能になりより快適になればとよいなと思い、新技術に目を光らせています。(笑)
Posted by たね at 2011年08月17日 13:31
冷たい空気は下に降りてくるので、床暖房を使い、冷たい空気を上昇させるのは理解できますが、床冷房となると冷気が床に溜まって足だけ寒い状態になりそうな気がします。
Posted by at 2011年08月19日 23:52
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。