2011年08月30日

一条の i-smart という黒船にどう対処するか!! (上)


過去の歴史を知らない人々は、ドイツからやってきたパッシブハウスが、「黒船」 だと考えている。

日本の住宅人が最初に 「黒船」 と感じたのは、20年前にカナダからやってきたR-2000住宅であり、6年前の2005年に外断熱推進会議がスウェーデン・ヨーテボリ市から招いたハンス・エーク氏による講演会であった。
長野、東京、京都、札幌で行われた講演会は熱気に包まれていた。
とくに熱く燃えたのは 長野の住宅人。
北海道のようにQ-1をはじめとした各種の高気密・高断熱住宅ズレをしていなかった。
信州大山下恭弘教授と信越BIB社を中心にSAH会 (信州の快適な住まいを考える会) を組織して、地道な勉強会を続けていた 非常にウブな団体。
そこへ、壁厚が40センチもある超高断熱住宅の登場。
ハンス氏は自分のホームページでパッシブハウスという言葉を用いていた。
これを、主催者の外断熱推進会は 「無暖房住宅」 と命名。
ヨーロッパで一般的に使われている 「温水によるパネルヒーテング設備のない住宅」 と言うことで、無暖房機住宅ではあった。
だが、熱交換換気の結露防止のためやたら電力を食うプレ・ヒーテングが付いていたので、無暖房住宅というのは明らかに誇大広告。

ともかく、この無暖房住宅にトライしてみようと、数社が名乗りをあげ、山下研で1年間に亘って詳細なデータが取られた。
これこそが、日本における第2次黒船の始まりで、Q値が1.0Wを切る住宅の誕生の瞬間であった。
しかし、残念ながらこの無暖房住宅は価格が高くて売れず、どこまでも試行建設の域を出ることが出来なかった。
断熱材を厚くすることは容易であった。しかし、価格の安いセルローズ繊維は、厚い分だけ沈下を起こしてクレームの原因になった。
そして、肝心の高性能サッシは入手出来ず、熱回収率が高くてしかも寒冷地でも結露がしないと言う熱交換機は入手が困難。
ハンス氏が採用した結露防止のプレ・ヒーテング付きの熱交換機は、性能、価値とも低いものだった。
つまり、いくらビルダーがその気になっても、肝心のサッシや換気設備の開発が伴わず、無暖房住宅ブームは一過性のものにとどまった。

その後、パッシブハウスはハンス氏のオリジナルでないということが分かり、2008年になって本家本元のドイツのパッシブハウス研究所詣が始まった。
私のパッシブハウス研究所の調査報告は、「今週の本音」 2008年11月10日、15日、20日の3回に分けて掲載しているので、参照されたし。
同じ年に外断熱推進会が同研究所を訪れ、翌年 「日本パッシブハウスセンター」 を発足させている。
そして、札幌の今川建築設計や横浜モデルなどの開発を行っているが、残念ながらしっかりとした地場ビルダーを育成しておらず、その後パッシブハウスセンターは開店休業状態に。
設計陣さえ揃えば、パッシブハウスは普及するだろうという甘い考えが座礁したと言える。
問題は 「設計化」 にあるのではなく、「産業化」 にある。
消費者に納得出来る製品を、納得出来る価格でどう提供できるか、である。

そういった意味で、北海道で着実に産業化の実績を積んできているのがユーロハンズを中心とするビルダーグループ。
ユーロハンズ社は、U値0.8Wと言うサッシの国産化第一号を成し遂げるとともに、旭川や帯広という超寒冷地でも結露がしない熱回収率の高い換気システムを完成させている。
この2つの武器のほかに、札幌や帯広地域では65キロという超高性能ロックウールの吹込みと気密施工を一手に引受ける断熱・気密専門工事業者が育ってきている。
このロックウールは断熱性能がよく、しかも密度が高いので一切の沈下がないすぐれもの。
そして、つくづく羨ましくなるのはその価格。
内地では絶対に信用出来ないような、驚くような価格帯。

このほかに、充填断熱材にプラスする外断熱材として10センチまでなら安全で、タイル仕上げも可能なKMブラケットも存在する。
さらには、トドマツ、カラマツという100%道材による206材やTJIの開発も進んでいる。(2010年4月25日付の今週の本音を参照)
このため、北海道の帯広と札幌地域では、Q値0.8Wクラスの正真正銘のパッシブハウスが、50坪で50万円/坪そこそこで提供されている。
日本のパッシブハウスをリードしているのは、かつての長野ではなくツーバィフォー工法が60%近くを占める帯広地域や、それに準じる札幌地域になってきている。
日本は、北海道から大きく変わりつヽある。

そして、2年前から森みわ女史が、パッシブハウス研究所のソフトPHPP (Passive House Planning Package) に合格したパッシブハウスを、数戸完成させている。
ネットフォーラムでも書いたが、昨年春に一般社団法人・パッシブハウス・ジャパンを立ち上げ、設計事務所や工務店への働きかけを強めているのは心強い。
同女史とは最初から関わりがあり、温熱関係に関心の薄い設計事務所の男性諸氏の目を覚まさすためにも、是非とも大きく成長して欲しい。
しかし、先行している北海道の錚々たるメンバーに比べると、どうしても産業化という実績面では見劣りがする。
やはり、信頼出来る有力なビルダーとのタイアップがカギとなってこよう。

P1040963.JPG

さて、これからの数年間、日本の住宅産業界に最大の影響を及ぼすと考えられるのが一条工務店。
i-cube と i-smart という206の完全プレハブ住宅の販売戸数が、年内には3000戸を越すのではないかと推測している。
もちろん、これは同社の裏付けをとった数字ではなく、どこまでも私の直感による推測値。

先のドイツのパッシブハウス研究所の調査では、本格的にパッシブハウスを売り出したのが1998年からで、2002年までの4年間はほとんど売れなかったと言っていた。
2003年から売れ出し、2008年までの累計では1万5000戸に及ぶだろうと話していた。
したがって、昨年から売り出した i-cube は、最大に売れたとしても、ハイムのシェダンの実績から考えても年間400戸がいいところ。
年間1000戸売れるようになるには、数年かかるだろうと考えていた。
ところが、どこまでも私の推測にすぎないが、発売2年目の今年中に、場合によっては3000戸近くまでゆくかもしれない。

これは、日本の住宅史上では最大のトピックニュース。
とくに、i-smart の伸びが瞠目される。

住宅関係紙誌の記者は、一体何をやっているのだろう。
どこを取材しているのだろう。
とくにリーダー的役割を果たすべき日経新聞記者の動きの悪さが、日本の住宅業界を堕落させている一要因であり、気がかり。


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