2011年10月05日

問題は多いが意欲に圧倒された千里展示場の40坪のQ-0.9Wモデル


さつまホームの名前を初めて聞いた。

父親が薩摩住建という会社を興していたが、息子が15年前の1996年に、さつまホームを新規に起業したものらしい。
しかし、最初は羅針盤なし。
1999年にはトステムのスーパーウォールというボランタリーチェーンに加入し、翌年はアキレスボードの外断熱を手掛けている。
2005年から無添加住宅に宗旨替えをしてから伸びた。
そして、2009年には無添加住宅では受注戸数No.1を自称している。
その勢いで2010年に千里総合住宅展示場に初出展。
社員30人というから、立派な地場中堅ビルダー。

木軸工法を選んだビルダーに共通しているのは、木質構造が持たねばならない耐震性と防火性に対する理論不足。「2000年の伝統・・・」という言葉で誤魔化しているのがほとんど。
一方、理論好きなドイツの木質系のビルダー。
地震がなく、隣家が離れていて類焼の心配がない。
このため、16センチ角の太い柱を使い、この柱をいかに腐らせず、長持ちさせるかということに血道をあげて研究。完全に理論武装を成し遂げている。
それは、内装仕上げから外装仕上げまでの全ての建材に透湿性の材料の採用。
それは、見事なまでに徹底している。

まずは内装仕上げの塗り壁。もちろん透湿性。
下地は紙で出来たルナファーザー。
ベバーバリアは、冬期壁内へ湿気を入れず、夏期に室内へ湿気を吐き出すインテロ。
断熱材は木の繊維・ロックウール・セルローズファイバー。
湿式左官の下塗り、中塗り、仕上げ塗装も透湿性。
このため、16センチ角の柱はいつまでも腐ることなく生き続けている。文字通り200年住宅。

夏が乾期のヨーロッパはこれで十分。
しかし、夏が高温多湿の日本では、このように外壁、屋根、床を透湿材で包むと、換気と同程度の湿度が屋根・壁・床から侵入してくる。
つまり、除湿のためのエネルギーが2倍かかる勘定。
そこで、ドイツのインテロの工学博士のMoll社長に、日本ではどの程度の非透湿性の材料が外壁の外側に必要かを計算してもらった。
その結果、最低9ミリのOSBないしは構造用合板が必要との返答。
地震の多い日本では、外壁下地に9ミリ以上の構造用合板ないしはOSBは絶対的に必要。
そして、北海道が考え出した外壁通気層は、これまた必需品。

こんな基本理論も知らず、いたずらにルナファーザーや木の繊維のエコのみを宣伝したり、木の筋交いにこだわるLCCMの学者先生や設計士のエセ・エコぶり。さらにQ値のみにこだわって除加湿を無視している一部のパッシブハウスの人々とは、まともに話をする気がしない。
たしかに、電磁波過敏症の人にはサジを投げるしかない。
しかし、軽微な化学物質過敏症対策やアトピー、花粉症対策の住宅は10年以上前に完成している。
そして、より気密性を高めて計画換気をし、湿度コントロールでウィルスを追放出来る家造りが可能になってきている。
素材だけのエコを叫んでいる時代は、とっくに過去形。

そんなわけで、間違えても昨年までのさつまホームとニア・ミスを犯す可能性がなかった。
ところが、今年の東日本大震災の直前に「今年は本格的に省エネに取り組もう」とさつまホームで決定して、社員が入れ替わり立ち替わりで北海道詣でを始めた。
そして、たったの6ヶ月でQ値0.9W、C値0.3cm2/m2のモデルハウスを完成させた。
もっともこの0.3cm2というC値は四捨五入の数値。正確には0.34cm2/m2だったらしいが、この四捨五入は私が認める。
というのは木軸にしろ鉄骨にしろ、軸組工法で1.0cm2/m2の相当隙間面積を突破するのは命がけ。
Q値だと、カネにイトメを付けなければ、誰でもQ値0.8W〜0.9Wは簡単に達成出来る。
しかし、C値はカネをかけても突破不可能。あの三井や三菱がR-2000住宅から離脱しなければならなかったほど。
したがって、1回で0.34cm2/m2だと、0.3cm2/m2という四捨五入は許される。

10月8日の一般公開に先立って、3日に記者発表があると聞いた。
そこで、専門誌の人間を装って、発表会にもぐり込んできたという次第。

このモデルハウスには、特別に感心した点が4点と、問題点が4点あった。
感心した1つは、モデルハウスの延べ床坪がたったの40坪と言う点。
今まで、「大は小を兼ねる」ということで、最低でも55坪以上の住宅が多い。私が開発してきた20点でも最低が55坪で、大きなものだと80坪以上。
この業界の常識に挑んだのが若きチャンピオン新留社長。
40坪という限られたスペースで、はっとするトキメキを感じさせるのは至難の業。
自らアスリートと自称するだけあって、身こなしも軽く高いバーを飛び越えた。
2つは、工業デザイナーのムラタ・チアキ氏を住空間づくりに参画させたというバカ勇気。
氏のインテリアコーデネィトには、特別なものはなくて平凡。
しかし、1階からイスを追放し、アグラ、ゴロ寝の生活を演出するため、キッチンの床を30センチも下げたのにはびっくりさせられた。今までになかった低い目線の空間づくり。それだけ空間が大きく感じられて絶妙。
3つは、オーバーハングの円形の周り階段。
4つはU値が0.8Wで、η値が0.316のサッシと熱回収率90%の顕熱交と1台のエアコンとのドッキング。

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まず、外観。
4間×5間の総2階+屋上庭園の箱型ブッキラボウ。よく言えばシンプル・モダン。

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玄関を入ると、20センチの段差がついた板の間のワンフロアー。
そして板の間の奥に、高さ50センチ高程度のI型キッチンとつくりつけのテーブルが見える。
近づいて見ると食卓は掘り炬燵式になっており、床がそのままイス変わり。
そして、5人から6人でホームパーティが出来る広さを持っている。

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キッチンの床はテーブルに座る床より50センチ程度低くなっている。このため、板の間に座わっている人との目線は同じ。見降ろさないのがなんとも素晴らしい抜群のアイディア。
流し台の下に見える白い金属。両手が一杯でも、足で踏めば蛇口の水が止まる仕組み。

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この家にはスリッパは似合わない。板の間の床と天井とも23℃。キッチンの床だけが22℃。
秋だから良いが、素足と座布団の無いお尻の23℃はやや冷たい。
内と外を区切っているのはU値0.8W、η値0.316の一本引き戸。
屋外でも低い卓袱台で座る生活。 だが、これはどうだろうか?

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右か内壁で、廊下の左の下部は開口。上部は全面的に広い収納。表面が漆塗り仕上げとはさすが無添加。
この廊下の左突当たりが洗面室で、1階で唯一のドアがついている。

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外側にはみ出た周り階段が秀逸。コアの部分は円柱の鉄板を刳り抜き加工をして、段板の留め具を熔接。
しかも、オーバーハングさせているので振動で壁の漆喰が剥離する心配がない。
長い一本ものの手すり加工といい、大変にお洒落でオープンな階段室。

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2階はワンルームで仕上げていた。2人だけの家族の設定。
浴室、洗面、トイレともヒノキの無垢。天井面の一部をガラスにした採光が憎い。
ベッドも特注で低い。

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屋上はFRP防水で、家庭菜園も可能。

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換気は90%熱回収の顕熱交換機。R-2000住宅でしごかれてきたので、浴室からの24時間排気の顕熱には信頼感。この換気配管に、夏場と冬期は天井埋め込み式のクーラー1台の通風がドッキング。

最後に、気になる4点。
1つは軒の出のない木の板の外装仕上げ材。防蟻も兼ねてそれこそニッコーのガラス液浸透加工が欲しい。
2つは幅木もない漆喰の汚れの処理。私には住みこなせないという圧迫感が・・・。
3つは木質構造面のアンバランス。最低0.6cm2/m2の気密性担保には根本的な検討が不可欠。
4つは羊毛断熱材の0.042Wという熱伝導率の低さと、除加湿機能のアップ方法。

とはいえ、最近見た住宅の中で、もっともワクワクするアイディアが40坪の空間に詰め込まれていた


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