2011年10月10日

本当に日本は、全熱交を採用して良いのだろうか ?


今年のジャパンホームショーで、やたらに目立ったのが全熱交換システム。
初歩的なことだが、熱には たとえば電灯や電熱器などから出る乾いた顕熱と、浴槽の湯気のように湿気を含んだ潜熱の2つがある。
前者の乾いた熱だけを交換する換気装置を顕熱交換機と呼び、湿った潜熱までもまとめて交換するのを全熱交換機と呼ぶ。

今から20数年前、カナダの官民研究機関が総力を挙げて研究開発したR-2000住宅。
日本でのQ値は1.2W〜1.4Wだったが、当時としては画期的な技術レベルの住宅だった。
単に省エネだけを問題にしたのではなく、室内の空気質を徹底的に調査研究し、化学物質に対する基本的な取組み方法を教えてくれた。また、換気に対する研究も本格的で日本の官学産界に換気に対する基本的概念を教えてくれた。
ただ、残念ながらR-2000住宅を本気になって勉強したのはツーバィフォー業界などに限られており、その基本概念が日本の隅々にまで行きわたっているとは言い難い。

R-2000 住宅がまず問題にしたのは給気。
給気は、主寝室と地下物置が36m2で、それ以外の各室は18m2と規定。
そして、この給気量が確保されておれば、第1種であれ 第3種であれ 問わない。
もっとも最近では、省エネ面から世界的に第3種換気がげきげんしてきているが・・・。
そして、排気に関しては、「台所、浴室、トイレを中心としたダーディゾーンから24時間排気を行わねばならない」 と規定。
第3種換気は、スウェーデン方式もこの排気規定を忠実に守った。
問題になったのが熱換気を行う第1種換気。
台所、浴室やトイレの湿気を帯びた空気まで熱交換すると、湿気には臭いや細菌までが紛れ込んでいるので、生活臭と細菌の拡散問題を起こす。
排気を台所、浴室、トイレなどのダーディゾーンからの24時間排気を原則とすると、当然のことながら全熱交は使えない。
したがって、「熱交換機は全熱交換機を用いてはならず、必ず顕熱交換機にすべし !!」 と高らかに謳った。

この大原則を理解していなかった当時の松下精工の自称「博士」という大バカ者が、「R-2000住宅には全熱交が最適である」とカナダでの宴席で発言し、全員から大顰蹙を買った。
以来、心ある人々は松下精工の全熱換気装置を敬遠してきた。 これは賢い選択。
「バカ博士を飼っている松下精工は信用してはいけない」 と。
だが、松下精工は、その後においても無知な工務店に全熱交を売り続けた。
その後、精工はナショナル本体に吸収されたが、日加の学界や心ある産業人からはナショナルの換気が見直されることはなかった。

このほかに、台所の換気も問題になった。
台所の換気扇を回すと当然のことながら室内が負圧になる。したがって、換気扇の排気と同量の給気を確保しなければならない。この給気のことを「メークアップ・エアー」と呼んでいた。
当初のカナダの現場を見ても、このメークアップ・エアーはかなりいい加減なものだった。
日本でも台所に特別サッシを取り付けたりしたが、なかなか解決しなかった。
そのうち、ダイキンのセントラルシステムでは、換気扇に連動して台所の給気を増やす工夫をしてくれてなんとか解決が図られた。
やがて、使用しない時の気密性を担保しながら、ショートサーキットをしない優れた同時給排システムが開発せれてきて、やっと日本ではメークアップ・エアー問題は解決した。

それと、もう1つ重要な指摘がカナダの研究者から発表された。
それは、「熱交換の外部の給気口と排気口は、可能な限り別の外壁を用いること。 もしどうしても別の外壁を利用出来ない時は、最低2メートル以上間隔を開けること」。
つまり、給気口を東の壁に設けて、排気口は北壁にしなさい。もし、どうしても同じ北側の壁にしか給排気口を設けられない時は、最低2メートル以上 左右に離しなさい。 そうすれば、排気した汚れた空気が給気に紛れる心配がない。
ところが日本の換気メーカー各社は、未だにこの最重要な提言を無視している!!!

数年前、空調学会の席上、看護婦さんか女医さんかは分からなかったが、女性から深刻な問題提起があった。
「熱交換機を入れたら、病原菌が拡散するようになってきた。どう対処したらよいでしょうか」 と。
心ある先生方は、その原因が給気口と排気口が並んで設けている日本の換気メーカーのマニュアルそのものにあることを十分に知っている。中には無知な先生もいるが・・・。
だが、学会として日本の換気メーカーに正しい指導と警告を行ってこなかった。
こんなバカなことを許してきた大御所の存在を知っているので、火の粉がかかるのを怖れてどの先生も口を閉ざし、正しい助言を行わなかった。
こうした例は、他の木質構造学会などにも存在している。未だに在来木軸の間違いを糺す勇気を持っていない。官学会と言うのは大変に保守的な存在。

その後、カナダのVan EE社製の「臭いが移転しないロータリー式全熱交」 が日本へ持ち込まれた。
早速モデルハウスで使って見た。 ところが浴室で臭気を発するとたちまち全館に臭いが移ってインチキだということが判明。 
また、2年前にスウェーデンからアルミ製素子のロータリー式熱交換率90%という全熱交が日本へ持ち込まれた。その数字の表示がかなりいい加減なことと、臭いの移転に関して実際の住宅での実験をやっていないので採用しなかった。
全熱交換機は、臭いと細菌の拡散という点で、致命的な弱点を持っている。

ところが5年前に、一条工務店がダイキンに熱回収率90%の全熱交換機を開発してくれと依頼した。
これが、今年のジャパンホームショーに展示されていたダイキンのベンティエールであり、一条の商品名「ロスガード90」。
一条が全熱交換機を希望したのは、日本の夏期の潜熱の大きさを解決したいと考えたからだと思う。顕熱だけではなく潜熱も併せて交換すれば、夏の冷房負荷が少なくなると誰でも考える。
もちろん一条は臭いと細菌の拡散を怖れ、トイレと浴室は局所間欠運転とした。
それでも一条の場合は救われていた。 それはトイレと浴室の床も床暖房をやっているので、24時間排気がなくてもトイレと浴室が暖かく、冬期のヒートショックが避けられたから・・・。
だが、局所間欠運転を行うと、給排気のバランスが崩れ、室内が大きく負圧になる。
玄関のドアの開閉が困難になり、引き違いサッシは引き込む空気で泣き出す。
つまり、余分な花粉、排気ガス、土埃を吸い込むことになる。
このため、間欠運転の時間は自動的に短くなり、夏期には浴室の床や壁にカビが生える。

仮に20坪の総2階建で、延べ40坪の住宅があったとしょう。
この住宅の気積は約330m3。
その気積の半分が毎時入れ替えられるとすると165m2。
このうち2つのトイレから各20m3が排気され、浴室から40m3排気されるとすると合計80m3。
なんと165m2の半分がトイレと浴室からの排気となる。
このトイレと浴室からの排気が24時間連続運転を前提に計画されているのに、実際には局所間欠運転と言うことになると、この家の換気量は基準法で定められている気積の1/2ではなく、1/3から1/4という極端な換気不足住宅になる。
空気質が汚れ、CO2の多い空気を吸わされている不健康住宅の見本で、瑕疵物件。
それともトイレと浴室以外で1/2の排気計画がなされておれば、排気過多の浪費住宅。
いずれにしても、局所間欠排気には、このような致命的な欠陥がある。
そして、浴室やトイレ、台所でのカビの発生を防ぐには、カナダの研究者が言うように24時間連続排気が原則。 この大原則を、かつての松下精工のバカ博士のように、日本の換気関係者は意識的に等閑視しているのではあるまいか !?

ところで、90%熱回収するというベンティエールを3年前に、一条工務店の了解を得て3台使わせてもらった。冷房負荷が少なくなるのではないかとの期待を込めて・・・。
ただし、一条とは違ってセントラル空調換気システムの一貫として採用。
つまり、トイレ、浴室からも24時間排気を行うことにし、熱交換機に入る直前の排気側のダクトの中に光触媒を入れて臭いと細菌を除去。
全熱交換機を使用しながらもカビとダニの発生と言うクレームを追放。

しかし、この90%という全熱交換機の効能は期待したほどのものはなかった。
つまり、多少冷房負荷に効果があったにしても、全熱交には肝心の除加湿能力がない。
このため再熱ドライ機能を持っていない空調機では、室内の設定温度を25℃に設定しないと蒸し暑くて生活が出来ない。
25℃の設定温度では寒くて痛い。とても爽やか空間と言う訳にはゆかない。
このため、動力の空調機を再熱ドライの機種に変更しなければならなかった。
えらく遠回りをさせられたが、私の結論は 「換気は90%の顕熱交換機でよく、それに除加湿機能と2kW程度の空調機能さえあればよい」 というもの。
もうベンティエールは2度と使おうとは考えない。もちろん、他社の全熱交換機も・・・。

今年のジャパンホームショーで目立った全熱交換機。
ダイキンのベンティエールの開発を機に、日本では全熱交の開発ブームが起きてきた。
30日のこの欄でも触れたが、現在の日本の全熱交換機のエレメントをリードしているのがテクノフロンティアとレンゴーが共同開発した素子。
昨年までの展示ではその素子の秘密が分からなかった。
しかし、今年はテクノフロンティアがそのベールを脱いでいた。

P1050034.JPG

上の写真はその一部に過ぎないが、全熱でありながらトイレなどの臭いに関しては問題を解決しており、イノベーションが感じられるもの。
しかし、浴室からの24時間排気と除湿を可能にしてくれない限り、給排気のバランス問題から使いたいとは考えない。
この素子を使ったローヤル電気と、マーベックスの全熱交が展示されていた。
ローヤル電機から全熱交換機を導入しているトステム。スーパーウォールなどでの浴室のカビやダニに対するクレームをどう処理しているかが、他人事ながら気になる。
私個人としてはマーべックスの方が面白く感じたが、カナダの技術者が提示している基本的な問題を解決していない以上、使いたいとは思わない。

もう一社、ダイキンがベンティエールを出展していた。会社として売ろうという力が入っているようには見えず、ビル用ではともかくとして住宅用としては分配機能が貧弱で、とても食指が動かない。
このほか、インヴェンターも展示されていたが、学会の発表でその性能に大きな疑問符が付けられたらしい。この件は別の機会に取り上げたい。

換気に関しては、今でもカナダのR-2000住宅を上回る理論体系が発表されていない。
ドイツのパッシブハウス研究所では、換気に関する研究が行われた形跡がほとんど見えない。
ともかく、夏期の高温多湿問題の解を諸外国に求めることは出来ない。
日本で、自力で解決を図ってゆかねばならない。
日本では、夏場の潜熱の熱交換を考えるよりは、住宅の気密性を良くして外部湿度の侵入を防いでゆくことが大きなカギ。
そして次は、室内の空気中の湿度を如何に安価に除去するか。
そこにR&Dを傾注して行くべきだと思う。

なにしろ素人の換気談議だから、間違いも多いと思う。是非ともネットフォーラム欄なりメールで指摘していただきたいとお願いします。


posted by uno at 07:36| Comment(1) | 空気質と換気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
小さい事務所だといろいろガセ叩きされるな 香梨奈のほうが
Posted by かしゆか 私服 at 2013年07月17日 18:23
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