2011年10月15日

東京パッシブハウスの不可解??  計算値ではなく実測データ報告を!!  


昨日と今日の2日間、東久留米で東京パッシブハウスの構造見学会が行われているので、FAXで申し込み、初日の11時のオープンに合わせて見学をしてきた。なかなかの賑わいで良かった。
施主はこの家を設計したサトウデザインの所長。
施工・監理は、Q-1グループの東松山の夢・建築工房。
ドイツのパッシブハウス研究所の日本における認定5号として、森さんのパッシブハウスジャパンが噛んでいる。

敷地は159.3m2(48.2坪)。 東久留米はほとんどが建ペイ率40%で、容積率が80%。
延べ面積は111.2m2(33.7坪)で、容積率は69%。
木軸+パネル工法というから、4寸の集成柱の間に構造用合板張りのパネルを挟んだものらしい。

P1050125.JPG

P1050123.JPG

しかし、上の写真から分かるように2階の中央南面には8畳の大きな吹き抜け空間があり、しかも小屋裏全体が使えるように全面屋根断熱。このため、実質的な容積率は80%以上と考えてよかろう。
とても33.7坪の住宅ではない。
したがって、この住宅で一番苦労したのが多分 屋根断熱の気密性だったはず。
小屋裏利用のため、木軸の束立てでは用が立たず、210のタルキを使用している。
その210のタルキ間に16キロの12センチ厚のGW2枚をびっしり充填。そして、野路合板の上に9センチ厚のGWを外断熱として施工。そして、多分通気層をとっての屋根下地だと思う。
この33センチ厚の断熱材で、屋根のU値が0.135Wというからご立派。

P1050113.JPG

しかし、この住宅は耐震性の面と夏の冷房と除湿の面で大問題を抱えていると感じた。
設計図書をしっかりと確かめたわけではないので確言は出来ないが、何しろ南面は1、2階とも10Pのうち耐力壁は2Pのみ。
しかも、南面の両端が2Pの開口部で、中央が2間、つまり4Pの開口部。
この開口部は、1階は2.2メートル高で一本引き。2階は吹き抜け空間のため1.8メートル高で幅3.6メートルのFIX。
中央と両端の大きな開口部の間に1Pの耐力壁が各1Pずつあるだけ。
つまり、南面の耐力壁は1/5にすぎない。
これがツーバィフォー工法だと、1/4の規定があるので完全に失格となる。これだけの開口部をとるには、門型ラーメンで固める必要がある。
しかし、門型ラーメンが採用されている様子がなかったので、耐震性は良くて基準法ギリギリというところではなかろうか。
阪神と中越の震度7という烈震の現場をつぶさに見てきた者にとっては、直下型の地震の到来が近いと叫ばれている折だから、東京でのこの構造計画には賛同出来かねる。

それだけではない。
設計士自身のプランだから自由であってしかるべき。ケチをつけるのは筋ちがい。ただ、必要以上に開口部面積が大きく感じた。
おそらく、外壁面積に占める開口部の比率は25%を超え、30%に近いのではなかろうか ?
外壁は12センチのGW充填に、8センチの横胴縁を噛ませての32キロの8センチの外断熱。
都合20センチ厚。
しかし、20センチ厚の外壁のU値が2.33Wというからカネがかけている割には効率が悪い。こんなに手間暇をかけて2.0Wに到達しないのだから、根本的に考え直したくなる。
そして、何よりも問題だと感じたのが350万円以上もかかっているというサッシ。
トリプルガラスを使って平均U値が1.49Wという。
トリプルガラスでこの数値は少し情けない。また、冬期に相対湿度を40%以上にすると1.49Wでは東久留米でも結露を起こすはず。
しかも、採用されているのは寒冷地用のガラスで、η値は0.5以上と感じた。

施主が設計士だから良かった。
私の体験では、普通の施主だったらクレームが続出する可能性がある。
こんなに開口部の比率が大きいのに、日射熱の遮断の考慮が少なすぎる。外側にブラインドが付くならまだ許されるが、ブラインドは内側に付ける予定だという。
この住宅は、真冬の2月中でもオーバーヒート現象を起こすのではなかろうか。
そして夏期のことを考えたら、背筋がゾッとした。
設計士自身がプランし、選んだ仕様だから、夢・建築工房にクレームが投げかけられることは無かろうが・・・。
私だったら、こんな選択は絶対にしない。
施主の嘆き節が耳元に迫ってきて、居ても立ってもいられなくなるから。

P1050116.JPG

しかも、採用しているドイツのPAUL社の顕熱交換機が良くない。
パッシブハウス研究所の試験では熱回収率が88%とまともな性能。
しかし、熱回収率だけで換気を選んではいけない。
商品の性能カタログを何回も精読したが、オーバーヒートした場合に、熱交換をせずに冷たい外気をダイレクトに導入するバイパス機能を、この顕熱交換機は持っていない。
施主が選んだのだから自業自得というしかない。
だが、この熱交換機の選定にパッシブハウスジャパンが絡んでいるとしたら、本来は訴訟の対象となり、かなりの賠償金を支払わされる可能性がある。
住宅性証の瑕疵保証の怖さを、本当にご存じなのだろうか ?
大手住宅メーカーは、常に数件の訴訟事件を抱えているという現実を知って欲しい。

さて、この住宅はパッシブハウス研究所が開発したPHPPというソフトで熱負荷計算がされる。
残念ながら私はこのPHPPには疎い。しかし、2年前にこのソフトを分析したhiroさんは、値段が高いのがSMASHの最大欠点だが、内容はSMASHの方が上だとの判断。そして、SMASHを開発した山内設計室のAE-Sin/Heat(Ver.3.0.3)の方がはるかに優れていると結論づけている。しかし、山内設計室にしても除加湿までを含めたソフトではない。
したがってPHPPのソフトは、格別に優れたソフトとは言えないようだ。
ただし、ドイツのパッシブハウス研究所の認定を得るには、黙ってPHPPに従うしかない。
このPHPPは、建築面積や断熱面積、暖房面積の取り方が日本とは異なる。
日本の建築面積は構造芯だが、ドイツは内則寸法。したがって、床面積は日本の111.2m2ではなく、暖房面積は107.3m2となっている。そして、断熱面積は良く分からないが外壁の端まで計算に入れるらしい。そして、パッシブハウス研究所はことさらQ値(熱損失係数)は表示しないという。
ただ、参考までにと表示されたQ値換算が1.3kW/m2kと書かれている。
これを書いているのは朝の5時半。「1.3kW」が疑問だが、電話するわけにもゆかないのでそのまま掲載する。
しかし、私の直感ではこの家のQ値は0.95〜1.0W。
PHPPとは、どこがどう違うのか。その計算根拠が知りたいもの。

そして、この家の暖房負荷は12kWh/m2a (最低室温20℃、床面積はドイツ式で107.3m2として計算)
一方、冷房負荷は13kWh/m2a (最高室温25℃。換気による熱損失は計算せず)
夏期の最大絶対湿度は12g/kg。これは2次エネルギーでは計算せず、1次エネルギーの時のみに加算されるはず。
そうして、Q値が0.95〜1.0W程度のこの住宅の、年間1次エネルギーが120kWhをはるかに下回る99kWh/m2aと明示されている。
この99kWh/m2aには、冷暖房費、除湿費、給湯費、換気費、照明など家電費の全てが含まれているという。
2次エネルギーだと36.7kWh/m2a以下。
凡才の私には、この数字がどうしても納得できない。

たしかに、この家の給湯には太陽熱パネルを搭載しておりガスを併用したヒートポンプ方式を採用している。しかし、今までのQ値が0.9〜1.0Wの住宅での実測データでは、1次エネルギーはどうしても140kWh/m2aを超えてしまう。
したがって、いかにPHPPでシミュレーションされても、疑い深い私などは絶対に信用出来ない。
そして、森さんにお願いしたい。
この住宅が日本におけるパッシブハウス認定の5例目だというならば、いままでの4棟の実際のデータを示してもらいたい。
茨城などはモデルハウスであり、いくらデータを提示されても有難くはない。
少なくとも鎌倉の蓮見邸の実測データを示す社会的な責任が、森さんというかパッシブハウスジャパンにはある。

日本の消費者が一番知りたいのはPHPPのシミュレーション結果ではない。
パッシブハウス研究所のお墨付きでもない。
それを欲しがっているのは設計事務所であり、一部のビルダー。
パッシブハウスというのは、出来るだけ安価な価格で、消費電力が少なくて、快適な生活を消費者に提供することこそが大目的。
この目的を達成するには、ドイツという気象条件の中で開発されたPHPPでの初期のシミュレーションと、日本の実生活の場ではどこがどのように違っているかを明確にしてゆかねばならない。
そして、いつまでもパッシブハウス研究所を絶対視したり、偶像化するのではなく、日本における正しい省エネのあり方を追求してゆかねばならない。

Q値0.82Wの一条工務店の i-smart が、年内に3000棟も売れると言う勢い。
その i-smart に対して、パッシブハウスが本当に価格面でも性能面でも優れているのかを、実証してゆかねばならない。
誰にも一目で分かるデータを示してゆかねば、絶対に消費者の支持は得られない。
パッシブハウス研究所の認定が得られそうだと言われても、私にとっては東久留米の住宅を、積極的に消費者に薦めたいとは考えられなかった。
なぜなら、先に紹介した大阪・千里の40坪のQ値0.9W住宅の方が、実際的な省エネ面ではるかに魅力的に感じたし、多くの消費者が i-smart に惹きつけられている姿を目撃しているから。
パッシブハウスジャパンはPHPPにこだわらずに、日本の実体の中で大きく脱皮してほしいと願わずにはおれない。

P1050121.JPG

P1050120.JPG

そして、東久留米の現場で感心したのは気密性。
夏期の壁内の結露防止のためベバーバリアにザバーンを使用し、ISOVERという気密テープを実に丁寧に施工していた。
このため、C値は0.22cm2/m2という驚くほどの数値。
木軸ではこの数値を達成させることは困難。
実に見事な仕事ぶりに惚れぼれとさせられた。

なお、4.6Wの太陽光パネルを搭載しており、外構工事を含めた総予算が3500万円という。
吹き抜けや小屋裏空間が大きいので、標準的な坪単価で表示することは出来ない。


この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。