2011年10月25日

住宅業における「訴訟」に対するささやかな経験


10月15日付のこの欄で、「大手住宅メーカーは、常に数件の訴訟事件を抱えている」 と書きました。
そしたら、「それは事実か。もし事実だとしたら、どのような訴訟事件を抱えているのかを具体的に提示してほしい」 というお叱りに似た強い意見が寄せられました。
たしかに、私が現役でやっていた時は、大手メーカーの内実を直接各社の役員や社員から聞く機会がありました。
しかし、現役を離れてからは噂話を聞きますが、大手メーカーの担当者から直接聞くことはほとんどなく、どこまでも仄聞に過ぎません。
したがって、「常に数件の訴訟事件を抱えていた・・・」 と過去形にすべきでした。
訂正させて頂きます。
また、私は弁護士ではないので他社の具体例を記述する資格がありません。どこまでも実体験した訴訟とクレームの具体的な事例を報告し、参考に供したいと考えます。

まず訴訟ですが、これは大きく2つに分けられます。
1つは、会社が消費者や第3者を訴える場合。
もう1つは、消費者が住宅会社を訴える場合。

前者の代表的な訴訟が10年前の「雑誌・メーカーハウス佐藤編集長逮捕事件」。
この詳細については、「05年以前の今週の本音」欄の、一番下から5行目の「雑誌・メーカーハウスの編集長逮捕に喝采 ! 」を読んで頂きたいと思います。(日付は2001年9月。ただし、今回初めて気付いたのですが、10,11,12月の2桁の月は2行になり、全体に日付がズレています。早速訂正いたしますが、時間がかかりますのでご了承ください)。
この雑誌が行った犯罪行為とは、住宅メーカー200社を網羅して、各社の設計力、施工力、アフターなどの20項目を、◎◯△▲×の5段階で勝手に評価していたこと。その評価基準が公表されておらず、恣意的な面が非常に強いものだった。某大手住宅メーカーが、他社を叩くために仕組んだ謀略だと言う情報は、早くから流されていた。

17年前に、当時私が所属していた藤和という会社の基礎工事にミスがあったので、全面的にやり直しを行った。ところが、その現場写真がメーカーハウスの編集の手に渡り、いきなり◯が1つだけであとは全て△▲×の評価になってしまった。これでは営業が出来ないと営業マンから悲鳴が上がった。
私は裁判に訴えても徹底的に闘うべきだと考え準備していたが、富士銀から派遣されていた役員が他社並みに年間広告料の支払いを約束したらしい。
その結果、翌月から再び◎と◯とのオンパレードに。
大きな口をきける資格が私にはありません。私の所属していた会社も、組織暴力団に等しい業界ゴロに完敗を喫したのだから・・・。

この組織暴力に、正面から闘ってくれたのがセキスイハウス。
2年間に亘って、組織暴力団のあらゆる中傷や誹謗に対し、一歩も怯むところがなかった。
同社と契約していた優秀な弁護士から、なんでもいいから情報を提供して欲しいと協力を頼まれた時、私の知っている情報のすべてを提供した。だが、残念ながら富士銀の出向役員がどれだけのカネを、どのような条件で支払ったかと言う核心に触れることが出来なかった。藤和と言う会社が、富士銀による放漫経営によって倒産させられていたから・・・。
そして、勇敢に闘うセキスイハウスに同調して、組織暴力排除に積極的に動いた会社としてセキスイハイム、三井ホーム、住友林業の3社が挙げられると聞いた。
住宅産業界が、組織暴力の猛威から逃げられているのは、こうしたセキスイハウスや同業3社の積極的な協力の賜物。そのことを、改めて確認しておきたい。同時にメーカーハウスに手を貸した某住宅メーカーの名を、永遠に忘れてはならない。

そして、住宅業者として常に抱えている難問に 悪徳消費者の存在があります。
わざとイチャモンをつけて、出来るだけカネの支払いをしないで済まそうとする悪徳消費者が大都市には必ずいる。
地方都市だと、その素性はほとんどの人が知っている。したがって地場ビルダーは悪いことが出来ないし、同時に消費者も鼻つまみになる悪い考えを起こさない。
だが、大都市では全ての顧客の素性を洗うことが出来ない。営業マンは、多少素性に疑問を感じても、歩合制の関係で契約を結ぼうとする。
それを防ぐために、絶えずトップが消費者に会い、納得が得られない場合は「縁がなかった」として客を断るしかない。
「消費者にビルダーを選ぶ権利があるように、ビルダーには消費者を選ぶ権利がある」 ということ。

そして、多くの住宅メーカーが採用した奥の手は、「最終金を払わない限り、絶対に住宅の引き渡しをしない」というもの。
住宅業者に非がある時は、事前によく話し合って解決すべきで、住宅業者に非がない時は、どこまでもこの方針を貫くべき。
ところが、中にはこれを上回るあくどい手段を講じるお客もいます。
ある市の不動産屋に勤めていた若い夫妻。親が農家でタダの土地に分不相応の住宅を建てました。
そして、最初からイチャモンを付けて値切ろうと画策しました。そのイチャモンに対応するため、所長任せにはせずに私も出掛け、夜中の2時過ぎまで話し合ったことは数度におよびました。全てのイチャモンに徹底的に対応したのです。
そして、最終金を払ってくれないので、カギの引き渡しを拒否しました。そしたら、ハリガネか何かで小窓のカギをあけ、そこから侵入して生活を始めたのです。
すぐ飛んで行き、不法侵入を強く諌めました。そしたら、振り払った手が私の顔面に当たり、前歯が2本折れました。
それでも怯まずに新居から締め出し、カギをかけ、早速診療所へ駈け込んで診断書を書いてもらい、それを地元の警察署に提示しました。警察が動いたことで慌てて両親が残金を払ってくれました。
世の中には、こんな悪辣な消費者もいます。
そして、それを見抜けなかった管理システムが問われ、前歯2本を折る結果になったのです。

さて、もう1つの訴訟は消費者が業者を訴えるというもの。
昔は、「訴訟の4つか5つを常に抱えているのが住宅メーカーの勲章のようなもの」 とうそぶく仲間がいたことは事実。
そうして顧客との和解のために、右ポケットに100万円、左ポケットに200万円の封筒を忍ばせ、どちらを出すかの判断を常にさせられていた仲間がいたことも事実。しかし、訴訟の内容を詳しく聞いたことはありません。
私が消費者からの訴訟を経験したのは藤和時代。弁護士が動いてくれていたのですが和解にいたらず、家裁に持ち込まれ、その時点で初めて訴訟の全貌を知らされました。
消費者の話を聞くと、大工さんが墨出しを間違え、2階の一方の壁の長さを1センチ短く施工していました。これは、明らかに大工さんと現場監督の管理ミス。責任はビルダーにあります。
そして、それを発見した施主は、疑心暗鬼からそれ以外にもミスがあるのではないかと訴訟になったという次第。しかし、施主のいうその他の部分でのミスは確認できませんでした。
これは、早い段階で施主の意見や疑問を吸い上げて正しく対応せず、訴訟が起きたら安易に弁護士に任せたという初歩的なミス。
最終的には家裁の調停で和解に漕ぎ付けましたが、この事件があって以来、私は弁護士に問題解決を任せることを一切やめさせました。会社からカネの支給を得ている弁護士は、最初から会社側に立って少しでもカネを値切ることが仕事。これでは、絶対に消費者の納得を得られる存在ではないことが分かったからです。

弁護士を使わずに、どのように客観的に判断するか。
私が採用したのは、「紛争処理支援センター」 を利用するという方法。
もし、会社の行動に不信があったら、施主の方にこの財団法人へ連絡し、担当者から今までの事例を聞いていただくように事前に話をしました。
こちらも疑問があったら、いきなり顧問弁護士に相談するのではなく、財団の担当者にそれに近い事例を調べてもらい、その解決方法を聞く。
つまり、問題点をオープンにして、施主と同じ土俵で問題の解決策を考えることにしたのです。
これだと、お互いに納得出来ます。

こんな事例がありました。
施主が街角で見つけた とある外装タイルが気に入り、そのメーカーと製品番号を調べてきました。
今まで扱ったこともない弱小メーカーで信用出来なかったのですが、施主の持ち込み資材扱いということでそのタイルを設計士は採用しました。しかし、分かっているのはメーカー名と製品番号だけ。
それで発注し、工事が始まったら施主から、「街角で見たタイルの色と施工中のタイルの色が違う」 との電話が入りました。
設計士か施主と街角のタイルと比べると明らかに色が違う。
そこでメーカーを呼んだら、「同じ製品番号でも焼く日によって多少色が変わる」 というのです。大手メーカーと違って、弱小メーカー品にはそんな致命的な欠陥があることが分かりました。
当然、メーカーに一切の責任をとらせることを施主と確認し、念のために紛争処理センターにその対応策の是非を聞きました。
ところが、センターは「一方的にメーカーに責任をとらせることは出来ない」 と言いました。
「現物が現場へ搬入された時点で、製品番号を確かめるだけでなく、色が間違っていないかどうかを確かめる責任がビルダーと施主にもある」 というのです。その確認を怠った責任があるので、「一方的にメーカーに責任を押し付けてはならない」 というのです。
ビルダーとしては大変不満な判定でしたが、施主ともどもセンターの判定に従い、お互いに不信感を後に残すことはありませんでした。

私のホームページのリンク欄に、今でも「住宅紛争処理支援センター」を掲載しているのは、こうした第3者機関の判断に従う方が、下手な訴訟問題を起こすより、ビルダーにとっても施主にとってもオープンで、納得出来ると考えるからです。


posted by uno at 11:05| Comment(0) | 経営・ビルダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。