2011年12月20日

海藻や魚を育てるのは鉄。 スギを伐り木造住宅を建て、広葉樹の森に ! 


気仙沼で牡蠣の養殖をやっている畠山重篤さん。
22年前に、「森は海の恋人」 というスローガンのもとに、湾にそそぐ大川の上流25キロ余ある室根山に、仲間の漁師とブナ、ナラ、ミズキなどの広葉樹を植える運動をプロモートして、一躍有名人になった。
高度成長時の農薬や化学肥料の多用などで海に赤潮が発生し、魚や貝の水揚げ量が極端に少なくなってきた。
これを打破するには、山に木を植えて、植物プランクトンを増やすしかないと短絡的に考えて行動したわけ。
そして、それからの2〜3年の間に出版された 「森は海の恋人」 (文春) 「漁師さんの森づくり」 (講談社) 「日本汽水紀行」 (文春) までは読んだ。
大変面白かったが、その後の活動は追跡していなかった。
なぜなら、「森に木を植える活動しかやっていない」 との印象しかなかったから・・・。

今年のエコプロダクツのシンポジュウムの基調講演の一人に畠山氏の名が出ていた。
先の東日本大震災の津波で、養護施設に入っていた母堂さんを失い、養殖の筏も舟も冷蔵庫などの施設も一切失った。
そして、一時は海から魚や虫、鳥などの生き物が一切いなくなった。
海が死んだと考えた。
ところが、2ヶ月もしたら次第に魚が増え、牡蠣の養殖に必要なチッソやリンとともに、大川が室根山からの鉄を運んでくれて、またたく間に海は生き返えった。
その後の復興状況は、NHKテレビなどで紹介されていた通り。

どうせエコプロダクツの展示会場へ行くのだから、ついでに講演会場へちょっと顔を出し、ご機嫌を伺うだけでよいと軽い気持ちで申し込んだ。
正直なところ、期待はしていなかった。
ところが、今回のエコプロダクツの中で、一番面白かったのが畠山氏の講演。
3時間も取材をして回った展示会場のことは、どこかへ飛んで行ってしまった。
著者は、いつの間にか 「鉄」 のことを勉強していて、会場で 「鉄は魔法つかい」 (小学館) という今年の6月に刊行された本を売っていた。それを買って奥付をみたら、3年前に 「鉄が地球温暖化を防ぐ」 (文春) が出版されていた。
知らなかった。

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20年近くも前に読んだ著書には、山に木を植えて植物フランクトンを増やしましょうと言う話だけで、科学的な根拠は何一つ示されていなかった。
ところが、新しい2冊の本には、山に木を植える目的は 海の植物がチッソやリンの消化を容易にするために鉄分が必要だとする化学的な根拠が示されている。
これは、著者が解明したのではない。
アメリカのモスランディング海洋研究所のジョン・マーチン博士が、今から40年前にそのことを解明し、南極海に鉄を撒き 植物プランクトンの発生で魚が育つ実験を行っている。
また、北海道大学水産学部の松永勝彦教授は、北海道の松前から江差にかけての日本海沿岸にコンブなどの海藻が生えなくなり、「磯焼け」 現象が起こっているのは、山の木を伐採しすぎて海に鉄分が供給されなくなったからだと説いていた。
そういった学説の存在を知らなかった。
それを、わかり易く教えてくれたのが畠山さん。

P1050243.JPG

日経新聞社はケチ。
自社が主催、ないしは共催するシンポジウムや講演会での撮影は一切禁止。
大きなカメラを抱えた2人くらいの写真家がバチバチとフラッシュを焚いて回ってうるさい。
ツィッター全盛時代のいまどき、写真撮影を独占しょうという根性がサモしい。どしどし写真を撮らせ、ネットを賑やかにした方が 関心と共感が拡がるのに・・・。
そんなわけで、フラッシュも焚かずに撮った写真なので、写りが悪いのはお許しあれ。しかし、演壇から離れて熱演している畠山さんの熱いハートは 十分に伝わってこよう。

松永教授の理論を分かり易く要約すると 次のようになる。
海の食物連鎖。
まず植物プランクトンや海藻などの植物が増える。
その植物プランクトンを食べることで動物プランクトンが発生する。
その動物プランクトンをイワシなどの小魚が食べ、イワシをカツオやマグロが食べる。
海の食物連鎖の基本は植物プランクトンや海藻などの植物。

植物は光合成をする。
CO2 (二酸化炭素) から炭素 (C) だけを吸収して酸素 (O2) を吐き出す。
地球が誕生した初期の海水には 鉄分とCO2が多く溶け込んでいた。
最初の植物は海の中で育った。
海水の表面近くで光合成をしてチッソ、リンとCを体内に取り入れ、O2 (酸素) を海中へ吐き出した。このO2は含有率が多かった鉄と結びついて酸化鉄となり、重いので海底に沈んだ。
そして、何十億年という海水植物の活動により、次第に海水中の鉄分は少なくなり、海底に沈殿する酸化鉄だけが増えていった。
新日鉄などが原料として輸入している鉄鉱石は、オーストラリアのハマースレー鉱山で露天掘りされたもの。
鉄の含有率65%という高含有率で、この鉱山はかつて海底に沈殿した酸化鉄が造山運動で海底から地上に顔を出したもの。

いずれにしろそんな事情で、海水中の鉄分の濃度は低くなってきた。
日本の河川のリッター当たりの鉄の含有率は0.2mgに対して、北海道の松前から江差にかけての海水は リッター当たり0.1μg (100万分の1グラム) に過ぎない。
何故河川に鉄が多くて海に少ないのか。
海の鉄は酸化鉄となってほとんど沈下したことは見てきたとおり。
しかし、陸地の土は、表面の黒い土を除けばほとんどが赤土。関東ローム層などは数メートル以上もの厚さ。この赤土は火山活動で 空中で鉄が酸化したもの。
鉄が流れ込む河川と海水が混ざり合う汽水域でコンブやワカメが採れる。
河川がないところは、鉄分が少ないので海水植物が育たない。

しかし、鉄が酸化すると大きな粒子になり、植物プランクトンは酸化鉄の粒子を細胞内に採り入れることが出来ない。
そこで物を言うのが森林の腐葉土。
広葉樹の葉っぱの量は大変なもの。これが重なったのが腐葉土。
この腐葉土がフルボ酸をつくる。
降った雨は腐葉土の中を静かに浸透してゆき、フルボ酸と一緒に地下に浸み込み、地下水となって鉄を溶かす。
このフルボ酸は鉄と相性がよい。
鉄が酸素にくっつく前にフルボ酸と鉄がくっついて 「フルボ酸鉄」 となる。
このフルボ酸鉄は植物の細胞に容易に入ることが出来る。
だが、どうやって植物の細胞膜を通過できるのかの理由は まだ分かっていない。
植物の細胞の近くにくると、フルボ酸と鉄とが自動的に離れ、鉄だけが吸収される場合があることが 最近になって分かった。
つまり、フルボ酸鉄のあるところに大量の植物プランクトンが発生し、これが動物プランクトンや貝を育て、小魚や大きな魚を育てている。
これが松永理論。
この理論で、初めて 「森は海の恋人」 の実態が科学的に立証。

日本列島には2級河川を含めて2万1000もの河川が海へ注いでいる。
ところが、全ての河川がフルボ酸を海へ供給しているとは限らない。
スギ、ヒノキなどの針葉樹を密植して、間伐を放棄した山があまりにも多い。
間伐していないので陽が土にまで届かない。このため、下草も生えない。
つまり腐葉土がないから、フルボ酸が出来ない。
したがって、下草の生えていない針葉樹の山は、何の役にも立っていない。
貯水力はなく、細い材木は役立たず。それどころか地滑りをひき起こす。
そして、海からは恋人どころか変人として嫌われる。

そこで、畠山さんは提言する。
東北の国土復興というのは、ダムをつくることではない。
やたらと、鉄骨プレハブの家を建てることでもない。
まず、今ある針葉樹の山林を大幅に間引きすること。
そして、柱材だけではなくツーバィフォー材も曳いて木造住宅を被災地にどんどん建てる。
大幅に間引きした山は、放っておいても下草が生え、広葉樹が育ってきて蘇生する。
腐葉土が生まれ、フルボ酸がつくられる。
そうすると、日本の2万1000もの河川と海水が交わる全ての汽水域でコンブやワカメなどの海藻が育つ。

先に挙げた元北大の松永教授は、今から10数年前に次のように提案している。
「もし、北海道の面積の20〜30%の広さの海域を利用してコンブを繁茂させることが出来れば、日本が放出しているCO2の50%は固定化出来る」 と。
北海道の面積は8万3456km2。
この20〜30%と言うことは約1万7000〜2万5000km2。

これに対して著者は日本の面積は38万km2。
この海辺から沖へ1キロメートルの幅を、ノリシロのようにぐるりと日本を一周すると、その内側の面積は3万8000km2の汽水域となる。
コンブのバイオマスは植物プランクトンの400〜500倍も大きく、CO2を400〜500倍も固定できる力を秘めている。
3万8000km2の汽水域全部をコンブで埋めたら、それだけで日本は放出するCO2のほとんどを固定できる勘定。
もっともコンブは寒流域の植物。
しかし、海水温度が低い冬場を中心に育てれば問題はなく、現に長崎県で栽培が行われている。
これに、山の針葉樹の間伐による若い広葉樹のCO2削減力を考慮すれば、やたらに 「エコだ !」 と騒ぎたてる必要性がなくなる。

なんともユニークなCO2削減案。
私が面白がる理由が、お分かりいただけたと思う。


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