2011年12月28日

2011年下半期 読んで面白かった本のベスト10 (続)


さて、この102冊の中から選抜した候補作品が32冊。
その中から、さらに勝手に選んだ独善的ベスト10が以下。
いつものことながら写真の写りが悪いのは、ご容赦あれ。

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◆10位  
設計士の著者によると、最近依頼される設計のうち2割が「おひとりさま」需要だという。
この「おひとりさま」というのは、一般的に独身女性のことを指す。そして、おひとりさまは3つのタイプに大別出来ると言う。
1つは夫に先立たれた未亡人。家や土地の資産があり、趣味や仕事を持っていて改築やリフォームに熱心。 2つはパラサイトシングルが独立する時で、このタイプは非常に派手好み。 3つは経営者やオーナーとして社会的に自立しており、自分の城づくり意欲が高いタイプ。
こうした女性に接しているうちに、筆者はいわゆる子育てを大前提にした2LDKや3DKという今までの間取り作りに 大きな疑問を感じてきている。
もっと最初から夫婦それぞれの個性を活かした家づくりが必要だと提案しており、納得させられる点が多い。久々に現場からの好発信。(独善的週評の8月26日付、305号を参照)

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◆9位
古い小説5冊をまとめて9位とした。
まず高嶋哲夫氏の「M8」は、マグネチュード8の東京直下型の地震を想定した小説。「ジェミニの方舟」は、巨大暴風雨によって荒川の堤防が決壊し、東京が水浸しになるという内容の小説。実際の阪神淡路地震や中越地震、あるいは東北大津波は この小説以上のすさまじいものだった。
江上剛氏の「小説 金融庁」、高杉良氏の「新・燃ゆるとき」は、いずれも企業小説。この代表的な2冊を読み残していたとは不覚。時間がたっても十分に鑑賞に耐えるだけの迫力を持っている。
井上やすし氏の「野球盲導犬チビの告白」は読んだつもりでいたのだが、ページをめくってみたら見落としていたことに気が付いた。意表をついた筋書きと、独自の語り口調が何とも楽しい。

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◆8位 
民主党が作成した来年度の予算を見て、心の底からガッカリした。
アメリカとドイツでは短期国債利回りはマイナス金利だというのに日銀は0.1%を堅持。危機意識がさっぱりない。このため円だけが一方的に高くなり、多くの企業の製品だけではなく農林水産物の輸出も止まっている。
つまり、20年来のデフレ政策と言う呪われた舞台劇を演出してきたのは日銀。それを許してきたのは財務省と時の政府。それを払拭する政策が期待されているのに、予算面では何一つ対策が打たれていない無責任さ。民主党だけを責めているのではない。自民党も、公明党も何一つ対案を用意していない現実が嘆かわしい。
今年の後半読んだ本の中で、しっかりとした経済政策を示していたのは岩田規久男、竹内平蔵と高橋洋一だけ。この3氏とも、増税の必要性そのものは決して否定してはいない。ただ、経済成長が出来るのにその芽を摘み取り、東日本大震災を増税のチャンスとして捉えている財務省と日銀を厳しく糾弾。(10月30日付、今週の本音を参照)

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◆7位
ネット関連の2冊を7位とした。
私が面白く感じたのは電子図書の方。毎年「電子書籍元年」とか「紙の時代の終わり」などと叫ばれ、いつも追いかけられる気持ちで電子書籍関係本を漁り読みしていたが、消化不全。
著者は作家として全然売れない25年前に100万円でワープロを買い、アパートからワシントンポストへアクセス。10時間ほどかかったが「ウォーターゲート・スキャンダル」記事がドサッと入手出来て開眼。11年前にメルマガ「ガッキィファイター」を立ち上げ、以来公開したものを著作化して日本で一番販売してきている。そして、辞書とか技術のPDFは電子書籍の分野だが、それ以外は紙が有利だと説いている。(8月10日付、今週の本音を参照)
スマートフォンについては、私などが解説するまでもない。11月2日OMPが発表した資料では日本の普及率は30ヶ国の中で最低の6%だと発表した。だが、12月6日のSCOREの調査では13才以上の日本の男性は6割強、女性では4割弱も普及しているという。そのうち18〜54才の比率が81%というから、如何に若い人に普及しているかが分かる。
しかしこの著書の内容は、それほど特筆するほとではない。

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◆6位 
中国に関する著書は腐るほど出版されている。
その中で、中国政府の要人とも関係を持ち、中国で一番有名な日本人。テレビや新聞で引っ張りだこの27才の著者が書いた「内側から見た中国」 は大変に客観的で、参考になる。(今週の本音、11月25日・11月30日を参照)

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◆5位
今年上期の直木賞受賞作品で、テレビドラマでもお馴染みの企業小説。
主人公は宇宙科学開発機構のエンジン開発の主任という特異な経歴の持ち主。
しかし、その開発したエンジンが正しく作動せず、打ち上げは失敗。追われるように開発機構を去り、従業員200人の父の会社を受け継いだ。
水素エンジンの特許を取っており、同社のバルブシステムはすばらしいものがある。その会社を乗っ取ろうとする大手企業や、三菱重工と思われる会社に翻弄されながら生き残る中小企業の姿を描いている。本来は面白いテーマだが、正直言って主人公に人間的な魅力が感じられなく不満。
優秀な技術者だということと、中小企業の資金繰りの苦しさなどが書かれてはいる。しかし全然切実感を持って迫ってこない。私の知っている中小企業の経営者はもっと大変で、それこそ血の小便をする思いを何回も経験している。
国の研究機関育ちの主人公には、逸話となる失敗談が無さすぎる。こんな優等生の中小企業物語は、読んでいてもつまらない。面白さだったら9位に挙げた各小説の方がはるかに上。この作品は良くて10位がいいところ。
でも久々の企業小説に直木賞が与えられたという点を買って、あえて5位にランクアップ。

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◆4位 
東日本大震災に対する支援本はいろいろある。
中でも、福島原発事故に関するつまらない本が巷に溢れている。「原発反対」とさえ叫んでおれば、正義の味方であるかのように振舞っている見苦しさ。
そういったマガイモノが乱立する中にあって、この著の70%を占めている3月11日から5月31日までの「カマタ・フクシマノート」は、感動的で圧倒される。
諏訪中央病院の名誉院長である著者は、「チェルノブイリ連帯基金」 を設立して、過去20年間に94回もの医師団を派遣しており、医療機器や医薬品の支援にいたっては14億円に及ぶと言われている。
福島をはじめとした東北各県に対する医療関係者などの人的な支援や暖かい物資面の支援には頭が下がる。
ブログをつなぎ合わせた著書だが、高く評価したい。(11月11日付の週刊書評を参照)

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◆3位  
ウォシュレットが発売されたのが今から31年も前の1980年。
そして、実際に開発に取り組んだのは発売より15年も前からのこと。
つまり外部の執筆者が、46年前の担当者を隈なく取材して回って書いた本だと勘違いをした。
ところが、書いたのは現役のウォシュレット生産本部長。
筆者が便器の開発に取り組んだのは1993年からというから、ウォシュレットが発売されてから13年も経っている。
つまり、本当に担当した人々の苦心談を聞いてまとめたものではなく、生産部に伝わっている伝聞を拾い集めて書いているだけ。
これは筆者を責めるよりは、「ウォシュレット開発物語」 との題名を付けた朝日新書の編集部の非常識さを責めるべきだろう。「偽るのもいい加減にしろ」 と。
筆者が生産本部長としてやったことは、ウォシュレットに関しては単なる改善だけ。
それよりも、ネオレストとかタンクレスの便器の開発こそが著者の仕事。
そういった点で、朝日新書の編集部には文句が山ほどあるが、TOTOのすさまじいイノベーションの努力にはうならせられる。
住宅メーカーやサッシメーカーなどがモタモタしている姿を見るにつけ、同社の技術開発力の底の深さには拍手を送りたい。なお、新年6日付の週刊書評で取り上げる予定。

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◆2位  
これは、8月5日付の今週の本音の「腸を鍛えればメタボにもガンにもならない新学説」で取り上げている。(カテゴリ「病気と医療」からアクセス)
その時に書いたことだが、ガンや健康食などに関しては、私は5人から学んできたし、これからも学んでゆきたいと考えている。
その5人とは、「免疫学」の新潟大・安保徹氏。  「帯津病院」の帯津敬三院長。 「醸造学」の小泉武夫氏。 「粗食のすすめ」の幕内秀夫氏。 「断食と体温」の石原結實氏。
この5人の意見は基本的に変わらず、少しずつ視点が異なるだけだと考えていた。
ただ、石原氏の「朝食無用論」と「断食の薦め」には違和感を持っていた。幕内氏が唱えるように粗食と腹8分目は良いが、朝食抜きと断食は頂けないはず。
しかし反論しようにもこちらは素人。学術的な裏付けがあるわけではない。
そこへ、待望の6人目として登場してくれたのが丁宗鉄氏。
漢方的な見地からも今までの考えの正しさを立証してくれると共に、筋肉としての腸の大切さを理解させてくれた。
それだけではない。膵臓は日に何リットルもの膵液を作っている働き者。 食事時間になると いつも大量の消化液を準備して待っていてくれる。
それなのに食事を抜くと、溜まりに溜まった消化液が溢れ出し、自分の胃や腸を消化してしまう。
胃潰瘍の原因になるから食事を抜くことは絶対にダメだと諭している。
ただし、毎日2食主義者で規則正しい朝飯抜きなら問題はない。膵臓はそれに合わせて消化液を生産する。 時折抜いたり、断食はダメだと厳しく指摘。
この外にも腸は筋肉で、鍛えれば鍛えるほど丈夫になると教えてくれている。
腸を鍛えるには、穀物やコンブ、野菜などの繊維類を沢山採り、きちんと運動を続けること。消化の良い甘い飲み物や脂類は腸を弱くする大敵。
目からウロコの貴重な学説。

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◆1位  
「鉄は魔法使い」 の存在を知ったのは、20日付の今週の本音で書いたように 12月15日のエコプロダクツの記念シンポジウムの会場。
そして、買い求めた本の著者歴に、3年前に 「鉄が温暖化を防ぐ」 が出版されているのを知り、慌てて取り寄せた。
温暖化に絡んで、アメリカや日本で盛んに 「藻」 の研究が行われているのは知っていた。
短期間に藻を急成長させ、その藻から燃料を取り出し、将来は飛行機まで飛ばそうという構想。
一番優れている藻を探し出すことが出来、後は価格的な問題のみがネックで、技術的な問題はほぼ解決していると伝えられていたもの。
その研究は、藻を燃料として使うことが目的。
コンブやホンダワラ、アマモ、アラメ、カジメなどの海草・海藻類が熱帯雨林並かそれ以上のCO2を固定化する力を持っていることには一切触れていない。

今から10数年前に、当時北大水産学部の松永勝彦教授は、「もし、北海道の面積の20〜30%の広さに相当する海域を利用してコンブを繁茂させことが出来れば、日本が放出するCO2の半分程度は固定化出来る」 という学説を発表していたという。
この海草・海藻の育成に欠かせないのが鉄。
カリフォルニアのモス・ランディング海洋研究所のジョン・マーチン所長は、今から22年前の1989年から海洋プランクトンと鉄に関する壮大な実験を開始した。
多面的な研究の結果、この所長は、「植物プランクトンが海の生物を養うだけでなく、地球の気候に大きな影響力を及ぼしている」 ことに注目した。 そして、プラスチックの瓶に汚染されない海水と藻を入れて実験した結果、「海洋植物プランクトンの発生を少なくしている唯一の原因は鉄不足にある」 との 「鉄仮説」 に達し、それを<ネイチャー>に発表した。
彼は93年に死去したが、彼の仲間が95年にガラパガス諸島の近海の5マイル四方の海域に3日間に分けて445キログラムの鉄粉を撒布。
その結果プランクトンは85倍に増え、2500トン以上のCO2を吸収出来たと発表した。
それがマリンスノーとして海底に沈んだこともある程度確認された。

著者は森に広葉樹を植えるのは、その落ち葉の腐葉土がフルボ酸をつくり、降った雨によって土の中でフルボ酸鉄という植物プランクトンや海草、海藻が細胞の中に吸収しやすい鉄とくっついて植物プランクトンを発生さ、魚介類を育てるからだと説いている。
この鉄と海洋植物とCO2とが密接な関連を持っているとの学説が、今後どれだけオーソライズされて行くかは分からない。
ただこの2冊の本は、トップに挙げるだけの十二分な価値があるものと信じている。


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