2012年01月15日

Q値の概算は手計算で十分。 燃費計算は全ソフト不完全。


R-2000住宅が導入された時、どのようにしてQ値 (熱損失係数) の計算をしたらよいのかを、当時名大教授であった坂本雄三先生から教わった。
屋根・天井・外壁・開口部・オーバーハング床・一階床・土間床ごとに面積を出し、木部と断熱部の比率を出してそれぞれ手計算する方法を教えていただいた。
換気に関しては気積を出し、換気回数と熱交換方式によって掛け率を変えた。

この手計算方法をマスターしたので、今でも例えば0.9WのQ値を出すには、外壁性能を向上させた方がよいか、それともサッシ性能の向上か、あるいは換気を変えた方がよりコスト的にベターかを概算する時に使っている。

しかし、設計評価員 (デザインエバレーター) や認定検査員 (インスペクター) を養成するためには、まず 「設計・施工マニュアル」 が必要。
設計・施工マニュアルを作成して、有資格者による丸1日の研修を行い、インスペクターには気密テストを実際に体験してもらい、試験を受けた合格者を登録した。
大臣認定制度というのは、そのような公的な資格者を有していない限り、簡単に 「R-2000住宅認定業者」 とは認められない。
そして、気密検査は自社のインスペクターでの検査は認められず、客観性を保つために、他社のインスペクターの検査に依らねばならなかった。
「Q-1制度」 とか、「パッシブハウス制度」 という民間の任意システムとは根本的に異なっており、文字通りの大臣認定制度。
したがってR-2000住宅は、国内で官学・産業界からも高い評価を得ていた。 

その設計・施工マニュアルには、Q値を導き出す手計算の方法を書いておいた。
しかし、概算計算は手計算で良いけど、申請する書類に添付する計算書をすべて手計算で行うには厖大な作業量が必要。
そこで、「何とかコンピューター化してもらえないか」 と坂本先生にお願いしたら、山内設計室の協力を得て作成してくれたのが 「HERS (簡易熱負荷計算システム) 」。
このHERSを、ツーバィフォー工法だけではなく、一般にも使えるように工夫して発展させたのがIBECのSMASH。
これが現在では 日本の基本。
だが、とっくに元はとったのに、未だに283,500円とはボロ儲け。何を考えているのだろうか ?
せいぜい5万円程度に値下げして、誰でも手軽に扱えるようにすべき。
IBECのいやらしい体質がムキだしのままなのは頂けない。

このSMASHよりも優れているものに、地下室まで計算出来る山内設計のAE-Sim/Heatがある。
しかし、MICRO-PEAK やLESCOMにしても、木軸で比較的多く採用されているQPEXにしても、ツーバィフォー工法に最適のBuilder KQ3.0.0にしても、基本的にはSMASHの焼き直し。

そして、これらのソフトは、いずれも年間燃費が計算出来ることになっているが、インプットされるのは温度だけ。 湿度は等閑視。
したがって、いずれも実生活で得られる数値より大きくかけ離れたものが出現。
つまり、Q値計算はかなり完全に出来ても、それぞれのシステムが導き出す燃費については、ほとんどの人が信用出来ないでいる。
もっと湿度条件を加味し、実態調査を行って、裏付けのあるものに修正して欲しい。

同じことがパッシブハウスにも言える。
パッシブハウスジャパンでは、パッシブハウス研究所が開発したソフトPHPPを、それこそ聖書かコーランのように崇め、これを日本の住宅に強要しょうとしている。
たしかに、ドイツのパッシブハウス研究所の認定を取るには有効なソフト。
しかし、このソフトも日本の住宅の実質的な燃費計算にはほとんど役立たない。

目的はどこまでも、「日本の消費者に、少ない燃費で快適な活を保証すること」 にある。

ともかく、日本の夏の高温多湿と冬期の過乾燥に対する正しい対応力を持っていない高気密高断熱住宅は、日本の消費者の願望を裏切るもの。
LCCM住宅も、消費者を無視した研究者の単なる遊具。
そして、やたらとQ値至上主義になり、Q値計算ソフトが万能であるかのような振舞いはお互いにやめて、もっと実測データで話をしてゆくようにしょうではありませんか。
「実測データを持っていない者は発言権なし !」
これこそが、今年のスローガン。

とはいっても、おおよその省エネ性能を知るには、Q値を知らねばなりません。
そして、関東以西の住宅ではガラスのη値が大きな比重を占めてくる。
オーバーヒートした場合に、換気のバイパス機能が重要になってくるが、それよりも日射熱取得率がより問題に。
いままでスウェーデンなどから輸入されていたサッシのような、0.7というようなガラスでは話にならない。
そういった点を踏まえて、「仙台以南のQ値は0.8W〜1.0W  絶対湿度は8〜10グラム」 という提案をした。
現時点では、この提案は非常に有効だと考えます。

そして、「その0.8W〜1.0WのQ値は、具体的にどのような仕様であるのか」 との消費者からのメールがあったので、フォラム欄に概算の結果数値だけを書いた。
そしたら、その簡易概算方式を知りたいと言う仲間からの電話があり、下記の4枚の資料をFAXした。
残念ながら、PDF化する機器を持っていないので、写真で撮ったものしか掲載できず、詳細が分かりにくい点はお許しあれ。

P1050406.JPG

まず、プランは上図のように間口5間で奥行き4間の総2階建、延べ40坪 (132.5m2) の住宅。
しかし、実際に建てる場合は、芯より45ミリしか206の壁を内側に入れないので、芯々での表示だと40.6坪 (134.14m2) となり、m2当たりのQ値は若干だがよくなる。
なお、このプランには機械室とダクトの配置が書き込んでないが、それらを全面的に考慮している。
私がQ値計算をする時や価格比較をする時は、原則としてこの図で作業。
ただ、北海道では玄関ドアを2重にする必要があり、その場合は1階の玄関だけを余分にふかすことで切り抜けている。

P1050408.JPG

非常に見難くて申し訳ないが、これがQ値1.0Wの時の最も価格が安くて標準的と考えられる仕様。
サッシのU値が1.0Wで、換気の熱回収率80%。
ただ、換気の計算はBuilder KQに準じているが、系統的にこのソフトを勉強しなかったので間違いがあるかも・・・。
断熱材は、今年から生産されるであろう0.032のロックウールを前提に考えている。
天井根太は206で、木の部分が10%。断熱部分の比率が90%で、断熱厚は200ミリ。

外壁は断熱厚が140ミリで、窓マグサを含めた木部の比率が23%、断熱部分が77%。
本来は、この外壁とは別に2階の床の部分を別途に計算しなければならないのだが、私は概算計算の場合は界床面積も外壁の中に含めている。
一般には、2階床部分の断熱の方が外壁よりも厚いので、プラス側になるからとの判断。

1階床は大引き方式で206。これも木の部分を10%にしているが、本来だと12%程度にすべきなのだろう。

この仕様だと、R-2000住宅に比べて増えたのは天井断熱厚とサッシだけ。換気は若干性能アップしているがそれほど価格的に大きな影響がないはず。
R-2000住宅に比べて100〜120万円高 (坪当たり2.5〜3万円高) 程度で収まり、一般消費者にとっても非常に取りつきやすい性能と価格だと考えます。

P1050410.JPG

これは、外壁を206ではなく204に落とし、KMブラケットを使って60ミリの外断熱で仕上げようと構想したもの。
ただし、JFEの60ミリのロクセラムが実質的に入手困難になっていると聞いているので、単なる机上プランで終わる可能性も高い。
ただし、100ミリ厚は入手が出来るので、北海道の一部では今までの206のグラスウールの充填断熱方式をやめ、204の充填とKMブラケットによる100ミリのロックウール外断熱、つまり計190ミリ断熱で飛躍的に外壁の性能を向上させようとする動きが出てきている。
Q値0.7Wを狙う必要がある北海道では注目すべき動き。
だが、仙台以南では価格的に考えても必ずしも本命とは言えない。

P1050412.JPG

それよりも手っとり早いのは0.028のウレタンの現場発泡の採用。
この断熱材の公表価格は高いが、通気層を取っての充填断熱だから防火面ではほとんど問題はない。ただし、石油系断熱材を使うことに対してはいろんな意見があるのは事実。
しかし、気密性能が飛躍的に高まるという点も踏まえた性能面と価格的な面から、検討するだけの価値はある。
そして、サッシのU値0.8Wになり、換気の熱回収が90%になり、天井断熱厚が変わるだけだから、R-2000住宅に比べて坪4〜5万円弱高、40坪で150〜200万高で抑えられるはず。

私は、一条工務店の床冷暖房+長府製作所のデシカ機能をつけた i-smart と同価格か、それよりも安い価格でQ値0.9Wのセントラル空調換気+除加湿システムの住宅が提供出来ない地場ビルダーは、これからは生きて行けないと考えている。

今年はその厳しい条件を、何としてでもクリアーする準備の年だと考えます。

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