2012年01月25日

最先端の地球変動学。 地震・CO2を語る前に是非一読を!


巽 好幸著「いちばんやさしい地球変動の話」 (河出書房新社 1500円+税)

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第一線を退いたので、日に平均2冊以上の本を読む時間ができた。
この一年間も 手あたり次第に読んできたが、その中で最も感動したのがこの本。
理系の人々は、最新の情報を入手されて地球が誕生して46億年来の大まかな地球変動史のことはご存じのことだろう。
ところが、文系の私などは30年前に読んだ岩波書の井尻正二・湊正雄著 「地球の歴史」 と 「日本列島」 以外の情報は、部分的にしか持っていない。この20年来のすさまじい科学の進歩から置いてきぼりをくってきた。
それでいて、CO2削減とか耐震性とかを叫んできたのだから、「盲目 蛇に怖気ず」 だった。
さて、最初にお断りしておかなければならないことがある。
この著書は226ページだが、要点は20点以上もあって、とても全部は紹介出来ない。
したがって、私が特に感動したほんの一部に絞って取り上げる。
詳細を知りたい方はご一読を。 
難しい最先端の科学を、私のような科学音痴にも分かりやすく説明してくれており、やたら面白いことは保証出来る。

まず著者は、TBSラジオ番組で安住伸一郎アナウンサーと対談した時、「私を含めてほとんどの人は、地球の中心はドロドロに熔けたマグマで出来ていると考えていますよ ! 」 と言われ、ある程度は覚悟していたが、その程度の知識しか与えられていない現実にショックを受けた、と書いている。
恥かしい話だが、私も地球の中心はドロドロに熔けた鉄で出来ており、地表に近づくに従って冷えて堅い岩石になっているのだと考えていた。
そして火山とか温泉は、地球の芯近くの高熱で溶けた岩石がマグマ溜まりをつくり、それが時折噴火したり、周辺の水を温めて温泉になっているのだろうと考えていた。
ところが、いきなり下図を示されて目からウロコ。
これはどのようにして調べたかと言うと、病院でX線を使って身体の断層撮影をするように、X線の変わりに地震波を使って地球内部の組成や温度を調べたもの。

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地球の半径は約6400キロ。
そのうち芯から3500キロが中心核で、表面の地殻はたった5〜50キロに過ぎず、残りの2850〜2895キロがマントル層。
この3500キロの中心核がすべて高熱で熔けた鉄だと私は考えていた。
ところが芯から1300キロの範囲は鉄とニッケル合金の固体だという。
固体であるということは、中心部の温度が低いということ ?
とんでもない。何と5500℃だという。
そんな高温で、鉄とニッケル合金が熔けずに固体であるためには、数%以上の原子番号の小さい、軽い元素が混じっていないと辻褄があわない。
しかし、どんな元素が何%混じっているかは、現時点では不明。

その固体の外側にドロドロと液体化した鉄とニッケル合金の液体がある。
この部分が熔融状態の液体であると分かるのは、S波が伝わらないから。
そして、鉄の融点から考えて、地上から5100キロの地点の温度が5500℃で、マントルの深部にあるとポストペロブスカイトと呼ばれる鉱物層の境の2900キロは3800℃だという。

さて、地表から5〜50キロの範囲を地殻 (平均厚10キロの大陸地殻と 6キロ厚の海洋地殻がある) と呼び、それから2900キロまでをマントルと呼んでいるが、このマントルが地球の体積の何と83%も占めている。
このうち深度400キロまでは橄覧岩 (かんらん) から出来ている。 この橄覧石は、宝石名をペリドットと呼ばれている緑色の宝石。
それが400キロを過ぎると圧力がかかって構造そのものがコンパクトに変貌してスピネルという鉱物に変身する。このスピネルはイギリス王冠の中央に真紅に光り輝いている宝石。
これが、670キロを過ぎると圧力でペロブスカイトという電気抵抗がゼロで、強力な磁石の材料として期待される高温超伝導物質鉱物に変身。
さらに2700キロを過ぎると先に挙げたポストペロブスカイトという鉱物に変わる。
つまり、岩石の組成が異なるのではなく、同じ鉱物が圧力の差によって、われわれが宝石と呼んだり、夢の物質と期待しているものに変質しているだけ。
それにしても、まさしく宝庫。
こういう事実を知らされると、宇宙開発にカネをかけるのも良いが、もっともっと地中開発にカネをかけるべきだという気がしてくる。

さて、この堅い鉱石で出来たマントルは粘り気がなく、不動のような気がする。
ところが、マントル下部の中心核との境界点の温度は、なんと3800℃もある。
熱が伝わる形は、「輻射」 と 「伝導」 と 「対流」 があることは、温熱設計が必須条件となってきた全ての建築屋にとっても常識になってきている。
しかし、堅い鉱物で出来ているマントルが対流を起こすとは想像出来にくい。
瓦や板岩でバーベキューをすると、伝導だけで十分に熱が伝わり、鉄板がなくてもバーベキューが出来る。
しかし、マントルの上部と最下部では3000℃近くもの温度差がある。
これだけの温度差がある上に、マントルの厚さは2900キロ近くにも及ぶ。とてもバーベキューに使う薄い板岩とか瓦と同列に扱うわけにはゆかない。 
つまり、伝導だけで済むわけがない。
マントル自体が対流しているという。

対流というのは、暖房機を見ているとよくわかる。暖められた物質が軽くなって上昇し、逆に冷やされた物質が重くなって落ちてくる現象。
マントルの対流は、Q値が2.7W、C値が2.5cm2/m2という一部の鉄骨プレハブ住宅の空気のように、グルグル対流しているわけではない。年に数センチしか動かない。
しかし、地球規模での動きはわれわれの想像を越える。
年に数センチでも、40億年の間には地球表面の赤道を一周した計算になる。マントルの対流距離では4周もしている計算になるという。

さて、このマントルの動きと地震などを起こすプレートの動きを、私は混同していた。
東日本大震災で、日本列島は4つのプレートが交差しているという解説を嫌というほど聞かされた。
中部から東北の日本列島が乗っているのが 「北米プレート」。
中部以西の日本列島が乗っているのが 「ユーラシアプレート」。
そして、中部以東北の北米プレートの下に潜りこもうとしているプレートが 「太平洋プレート」 で、中部以西のユーラシアプレートの下に潜りこもうとしているのが 「フィリピン海プレート」。
太平洋プレートがつくられるのはハワイ島の海嶺。
ハワイの火山は、マントルの対流の上昇部分に位置している。このため海嶺から平均厚さ6キロの 「海洋地殻」がつくられる。

この海洋地殻はマントルより軽い。
1立方メートルのマントルの重さは3.2トンに対して海洋地殻は3トン。そして大陸地殻は2.7トン。
この大陸地殻の話も面白いのだが省略。 ともかく海洋地殻が軽いのでマントルの上に乗っかってマントルとともに動く。
しかし、全てがマントルの動きにオンブしているとは言えない。
海洋地殻は長い時間に次第に冷えて重くなる。そして、北米プレートなどの下に潜りこんで、マントルの中に姿を消してしまう。
プレートが冷えて重くなるので、潜りこむ勢いで全体の海洋地殻を引っ張る。その力で海嶺が出来、新しい地殻がマントルから供給されるという学説もある。
そして、潜り込む時の角度によって、そのプレートが新しいか古いかが分かると言う。
太平洋プレートは千島から北日本にかけては40〜50度の角度で潜り込み、伊豆・小笠原では60度と、ほぼ垂直に近い急な角度で潜り込んでいる。
これは、太平洋プレートは2億年前に誕生した最も古いプレートの一つだから。
これに対してフィリピン海プレートは1500万年前に出来た新しいもので、潜り込む角度は15度という低さだという。
この角度の差が、どれだけ地震や津波に影響を及ぼすかは分かっていない。

地球では、1年間に25立方キロのマグマがつくられており、その7割が海嶺域で、2割が沈み込みの域でつくられている。
地球上には800の火山があるが、そのうちの100は日本列島に集中している。
これは、北海道から東北、伊豆・小笠原、にかけて年に10センチ弱という世界でも最も速い太平洋プレートの沈み込みがあるから。
沈み込むプレートは水を含んだスポンジ状態。それが圧縮されるから水が吐き出されて、マントルに吸い込まれる。そうするとマントルの粘着力が高まって、一緒に引きずりこまれる。そうすると細かい説明は省くが深さ100キロのプレートの直上にマグマが溜まって火山前線に沿って火山がつくられている。
これにともなって、いろんな種類の温泉も湧く。そのメカニズムの説明も省略。

さて、皆さんもテレビで、深海掘削船 「ちきゅう」 号活躍の話を見られたことがあると思う。
深海の科学的な掘削は1960年代からアメリカを中心に行われてきた。
この研究によってメタンハイドレード、地下生物圏、海底巨大火山の発見などが行われ、この著書もその成果に基づいて書かれている点が多い。
しかし、当時の掘削船は海底下2000メートルまでしか掘れなかった。
ところが、2003年から始まった世界20ヶ国が参加する国際深海発掘プロジェクトに、日本は2005年に新しい掘削船 「ちきゅう」 を投入した。
このちきゅう号は5.7万トンで130メートル高の掘削ヤグラを備えている。
そして、最大の特徴は海底下7000メートルまで掘削し、試料を採取する能力があること。
すでに紀伊半島沖の南海トラフトでいくつかの掘削を行い 成果を挙げているが、いよいよ地震断層そのものへの掘削も開始されようとしている。 南海トラフト以外の日本海溝や相模トラフとでの掘削も計画されている。
これによって、下盤プレートと上盤プレートの固着域などの解明が大きく進もう。

そして、次はいよいよマントルへの挑戦。
海洋地殻の平均厚は6キロと書いた。
ちきゅう号は7キロの掘削能力を持っている。
海洋地殻下のマントルは橄覧石という緑色の宝石で出来ているとも書いた。
その宝石掘削へ、いち早く日本が取り組むことになる。
琉球海溝や伊豆・小笠原海溝には銀や希少金属の埋蔵量も多いと聞く。
筆者はそれらのプロジェクトを推進している海洋研究開発機構のディレクター。

この本を読むと、最新の地球変動のワクワクする情報と知識が得られる。
そして、CO2問題や地震の問題を、改めて広い視点で捉えることが出来る。
騙されたと思って、一読されたし。


posted by uno at 05:52| Comment(0) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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