2012年02月20日

様変わりの木質構造。地場産業の活性化こそ地場ビルダーのチャンス


私は、地場ビルダーの単なる応援団に過ぎません。
それなのに、やたら農林水産業に首を突込んだかと思うと、円高とデフレ批判をしています。
そんな雲の上の理屈なんか、何の役にも立たないと考えるビルダーの方も多くいます。
しかし、地場ビルダーは 地場の産業が活性化しないと、住宅の注文がなくなります。

たとえば、「公務員の給料を引き下げろ」 という強い国民の声があります。
たしかに、民間の賃金はストップどころか、この数年来は引き下がっています。
円高で多くの工場が閉鎖に追い込まれ、失業者が増えています。
また、企業合併によりリストラされた若い人も回りに多くいます。
国家公務員や地方公務員だけが高い給料が維持されており、年金も優遇。
文字通り、「役人天国」 という印象が強い。
したがって、民間並みに給料下げるのがスジだ という意見に賛同したくなります。
しかし、学校の先生をはじめ役人の給料が引き下がれば、ますますデフレが進行し、家を建てる人がいなくなってゆきます。
ですから、役人の給料を引き下げよりも、日銀のデフレ政策をやめさせ、円安にして日本の景気を良くして、民間の賃金をこれ以上に下がらないようにすべきが政策の本道。

ところが、地場ビルダーには政治力がありません。
日銀を動かすなどとうのは、夢のまた夢。
地元の市会議員や国会議員に政治献金をして、これを動かすほどのカネと力と暇がありません。
しかしカネはないけど、施主と一緒になって、ツィッターでも何でも良いから、声を上げてゆくべき。
例えば、学校の先生方とスクラムを組んで、「給料の引き下げよりも円安の推進を!!」 と叫ぶべきです。
つまり、少なくとも100票や200票の地場の声を代表しているのだということを、政治家にアピールして、彼らをその気にさせ、巻き込んでゆくのが本来は大切な仕事の一つ・・・。


さて、すでにネット・フォーラムで紹介済みの2月15日のBSプライムニュースの「森のパワーで震災復興」を取り上げます。

小宮山宏菱総研理事長の出演で、久しぶりにスカーッとした番組でした。
アメリカやカナダに強要され、貿易を自由化したために日本の林業がダメになった、と言うのが林野庁の今までの口癖。
そうではなく、田圃にしても山林にしても、日本の政治家と役所は地主を必要以上に甘やかしてきた。
そして、惜しげもなく補助金をばらまき、路網整備とか機械化、事業の大型化という肝心な仕事を放棄してきた。
このため、諸外国に比べて日本のコメづくり農業と林業の生産性が非常に低く、世界から立ち遅れてしまった。
間伐をやらない地主は、所有権と管理権の放棄とみなして、山林組合に管理権を移行出来るぐらいに法律を改正し、山林の大型化と路網整備を行わねばならない。
その肝心なポイントが、テレビでは抜けていた。
しかし、路網整備と山林の大型化という点で共通認識が出てきたことを多としょう。
この路網整備とか機械化という点では、平地の多いドイツとかスウェーデンとよりも、険しい山が多いオーストリアのシステムと機械が、より日本にとっては参考になる。

そして、東京の山手線の内側 (65Km2) 程度、つまり3つの町に1つぐらいの割合で、海側ではなく内陸側に大型の製材工場を進出させてゆく構想。
単に山の木を間伐し、育て、路網を使って出荷するだけでなく、この製材所で建築材、パルプ材、あるいはバイオマス資材などに加工してゆく。
場合によっては、バイオマス発電や、地域給湯システムも考えられよう。
この構想には大賛成。
というよりは、オーストリアには成功事例がゴロゴロ転がっている。

この工場で生産されるのは、主としてスギ、ヒノキを使った建築用材。
しかし、必ずしも今までの3.5寸角、4寸角、5寸角の柱材を中心に考える必要はない。
木材を冬期の11月から3月中旬までに伐採し、一年以上かけて自然乾燥するという芸当は、こうした大型工場には馴染まない。
やはりKD材 (人工乾燥によるキルンドライ材) が中心になってこよう。
国産のスギを使ってツーバィフォー材、針葉樹合板、トラス、TJIなどを生産し、その強度を試す実験は林野庁の予算で実行済み。
木軸とツーバィフォーの壁工法の利点を取り合わせた耐震性の高いオープンな工法が、共有財産として出来ればベター。
そして、学校建築などの公共建築への用途を拡大して行くには、防火面での建築基準法の改正が不可欠に。
また、集成材をはじめとした各種のエンジニア・ウッドの生産も欠かせない。
場合によっては北欧のように、完全な防腐処理を行った上で橋梁などの土木需要にエントリーするイノベーションを、各工場で共同開発してゆくこともあり得よう。

そして、現在の日銀によるデフレ政策の方針転換による円安が進めば、日本の林業は間違いなく輸出産業として成立する。
私は経済の専門家ではないので大きなことは言えませんが、今から5年前には日本のスギ丸太を買いたいという中国人が殺到していた。
関東のツーバィフォー仲間も、道材を本格的に仕入れたいと考えて行動を開始した。
小泉内閣の経済改革の余波が残っていた2007年7月には、円は124円もした。
この円安が、国産材ブームを引き起こした事実を忘れてはならない。

しかし、同年8月にはサブプライムローン問題が表面化して112円に。
そして08年3月には100円の大台を割って95円に。
しかし、この時も日銀は動かなかった。
そして、榊原英資元財務官をはじめとした経済評論家の「円高容認論」が一部にあって円高が続き、民主党政権になったら、榊原氏などによる円高容認論がさらに幅を利かした。
民主党は、完全に財務省の管理のもとに置かれた。
デフレ克服、円安という大目標が脇に置かれ、消費税の増税が大目標になってしまった。
そして、リーマンショックにより09年には85円を切り、10年には82円、11年10月31日には75円とつるべ落とし。
これで日本の産業は、ハチャメチャに。
その責任は、財務省と日銀と民主党政権にある。

今年の1月30日のこの欄で紹介した安達誠司氏の「円高の正体」にある、為替レートは、「各国の予想インフレ率」 で動くということが正しければ、アメリカは2%のインフレ目標を建てているのに対して、日銀はやっと1%目標を提示したばかり。
これでは良くて85円前後がせいぜいだろう。
日銀が2%以上の目標を立て、円を増刷すれば90円から110円になろう。
そうすれば、間違いなく林業だけでなく、果物・野菜、魚を含めて日本の一次産業は第六次産業として世界に闊歩出来る。
その視点からの指摘が、残念ながらテレビでは不足していた。

いずれにしろ、林業と木質構造に対する環境は様変わり。
ところが、正直なところ業者の意識がこの大変化について行っていない。
ビルダーだけではなく設計事務所も、住宅だけにこだわっている時代ではない。
貴方の企業が、この一年間に今までのOB以外の顧客を獲得しているだろうか ?
もし、獲得していないとしたら、貴方は時流を読んでいないことになる。
もっと広い視点で、木質構造を捉えるべき。
養護施設や保育施設など、グランドが拡がっている。
それに必要な設備などを準備して臨む時。
可能性は、ある意味では無限。
必要なことは、大まかな構造計算力とともに木質構造の全体系を身につけること。
その上で意識革命と技術革新を進めること。

そして、小宮山氏は住宅業界に対して強力な支援を行ってくれた。
それは、建築基準法に建築物の断熱・気密性能が書きこまれていない点の指摘。

化学物質過敏症などに対処するため、0.5回転/時の機械換気を義務化することが建築基準法に書きくわえられた。
しかし、断熱や気密の基準は、未だに全建連などの鼻息を伺っていて、住宅局は推奨基準にとどめており、建築基準法上の必守義務とはなっていない。
つまり、業者の方を見ていて消費者の方を見ていない。
住宅局に根付いているメーカー志向型の典型。
これを、消費者志向型に変えるべきという小宮山氏の指摘は、正に頂門の一針。
皆さんも、声を上げてください。

なお、同日のテレビで放映された慶応大学伊香賀研の、高気密高断熱住宅がもたらす健康面への影響調査については問い合わせ中。
土日にかかったのでデータが入手出来ないでいますが、出来次第紹介します。
多くの人にとっては、至極当然のデータではありますが・・・。


posted by uno at 11:14| Comment(0) | 木質構造と林業・加工業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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