2012年02月26日

早すぎるフラッシュオーバー!?  3階建木造校舎の怪


フラッシュオーバーとは、「爆発的に延焼する火災現象」 のこと。

昔、東大に星野教授という建築火災に関しては神様のような権威者がいた。
その神様が言った。
「木造住宅で、全焼になるかボヤで済むかの差は、火が天井を抜けるかどうかにかかっている。 スギ板などの天井材が焼け落ちると、1000℃近い火が一気に天井裏を走る。 これをフラッシュオーバー現象と言って、火が走った家は助からない。  したがって、天井を不燃化にすることこそが何よりも大切な仕事だ」 と。
そして別の機会には、当時としては大変に珍しかった 「アメリカの建築事情」 を豊富な写真で紹介してくれた。
内装の不燃化で、信じられないほどの厚い石膏ボードがアメリカの高層建築に使われていた。
その帰朝報告を聞いて、「何が何でもアメリカの住宅産業を、誰よりも早く調査してやろう」 と心に誓った記憶がある。

つまり、何十年も前から建築におけるフラッシュオーバー現象が語られており、建築や住宅に携わる人間としては、フラッシュオーバー現象を防ぐことこそが 消費者のために果たさねばならない最低の条件であり、義務だと教えられてきた。
ところが、この最低条件を無視した住宅が、とくに 「自称・エコロジー建築家」 などに今でも多く見られることに、なんとも情けなくなってくる。
「消費者の命と財産を守ることを、本当に真剣に考えているのだろうか?」 と。

私が果たした功績として、故杉山英男先生からは、「ツーバィフォー工法を日本へ導入してくれた第一人者」 と過大に評価をしていただいた。 
しかし、ツーバィフォー工法は裾野の広い産業として、その科学的、合理的なメリットや、プラットフォームという耐震性の高い構造利点を理論的に解析し、全国のビルダーや設計士に手を取るように教えて下さったのが杉山先生である。
1972年にアメリカから呼んできた3人の大工さんが、当時 新大久保にあった建研の庭で、2日間で40坪の住宅を建てあげて見せてくれた。その耐震テストを行い、驚異的な性能値を教えてくれたのは杉山研究室であったし、その時の記録映画に杉山先生も登場して、全国の大工さんやビルダーに衝撃と感動を与えてくれた。
したがって、ツーバィフォー工法が日本に正しく導入出来、木質構造全体に科学的の光を当てたのは間違いなく杉山先生。
日本の木質構造は、杉山先生が切り拓いたと言っても過言ではない。
私はその中の、オープン化という面で働いただけ。

そして、私が果たしたなかで、最大のものは、「ドライウォール工法」 の日本への導入にあると自負している。
アメリカの3人の大工さんによる建て方実演で、フレーミングの生産性の高さが当時の日本の8倍だということが分かった。
しかし、それ以外の内外装工事や電気工事をはじめとした設備工事がどのようなっているかがさっぱり分からない。 絶対に知りたい。
そこで、1ヶ月間アパートを借り、自炊しながらレンタカーでアメリカの現場を10人の有志で見て回ることにした。
その自炊生活の調査旅行で、造作工事にも感動したが、一番びっくりしたのはドライウォール工法なるものの存在。
アメリカでは、全ての住宅やビルデングで、内装下地として天井と壁に4×8尺の12.5ミリの厚い石膏ボードを張り、クギ跡や継ぎ目をテーピングして鏡のように平滑に均し、塗装や吹きつけ仕上げをするドライウォール工法が100%の普及を見せていた。
木目の仕上げが欲しければ、そのドライウォールの上に無垢の木材を張っていた。
これが、アメリカの住宅では火災の発生件数が日本の数倍も多いのに、ほとんどがボヤで済んでいる最大の理由だった。
アメリカの木造住宅では、フラッシュオーバーが起きていなかった。

これは、どえらい発見!!
しかし、口でいくら説明しても誰も分かってくれない。第一吉野石膏のトップも技術者もドライウォール工法のことを知らない。
そこで、プロの映画カメラマンから16ミリ撮影機を借り、操作方法とフィルムの交換方法を教わって、一人でアメリカへ渡り、2週間近くかけてドライウォールの全工程を撮影した。
帰国後プロの力を借りて、20分の映画に仕立て挙げた。
そして、「画期的なドライウォール工法」 というようなタイトルを付け、日本全国のビルダーや建材店に貸し出した。
この映画を見て一番驚いたのが吉野石膏。 同社でも映画を買い上げてくれ、PRに励んでくれた。

この映画の効果もあって、ツーバィフォー工法は石膏ボードで不燃化することが常識となった。
それだけではなく、耐力壁としても加算されることになった。
それだけに、使用するクギの性能も打つピッチも、住宅金融公庫の 「標準仕様」 に書きこまれて、日本でも木造住宅の不燃化が一気に進んだ。
それは、星野先生が考えていた天井の不燃化よりも数段優れたもので、以来ツーバィフォー住宅では全焼の話を聞いたことがない。
ほぼ100%が、酸欠によって自然鎮火している。

何回も紹介していることだが、ツーバィフォー協会が行った2階建と3階建の2回の火災実験と、私の仲間が行った2回の火災実験では、窓を閉めて薪にガソリンをかけて火を放っても、7〜8分間で酸欠によって必ず鎮火してしまった。
火災実験だから、どうしても燃やさねば実験にならない。
そこでサッシを開けて、新鮮空気を注入してやってやっと実験が継続できたという次第。
3階建て住宅の場合は、天井に張る12.5ミリの石膏ボードを2枚にすれば、所定の防火性を達成し、天井が抜けるフラッシュオーバーが避けられるということが明確になってきている。
これが、木造建築の常識に。

ところが、情けないことに、住友林業を中心とする木軸業者は、こうした木造不燃化の良き見本がすぐ脇にあるのに、本格的に不燃化に取り組んでこなかった。
たしかに、内装の下地材として安い9ミリの石膏ボードを採用することが一般化した。
塗り壁下地ざいとしてのラスボードも普及した。
しかし、その石膏ボードはどこまでも内装の下地材でしかない。
これを構造耐力壁として加算してもらう努力を、木住協は何一つやってこなかった。
これほど見事な職務怠慢も珍しい。
耐力壁として認可されるには、8寸とか9寸の間柱ではダメ。最低1寸3分に切り替え、石膏ボードも12.5ミリにする必要がある。
そして、いい加減のクギを 適当な間隔に打つのではなく、金融公庫の標準仕様書に明記して、指定されたGNクギを指定間隔に打てば、耐震性と防火性が一気に向上する。
石膏ボードの壁が、耐力壁として加算することが出来る。
ところが、木住協をはじめとした木軸の業界団体は、新住協を含めてこの一番大切かことに取り組んできていない。
サボってきている。
これは、消費者に対する裏切り行為といえるのではなかろうか。

そしてこれは、阪神淡路の大災害から生まれた金物工法にも言える。
たしかに、通し柱が胴差の部分で簡単に折れることはなくなり、1階で生活しているお年寄りが即死する危険が画期的に少なくなった。
しかし、防火に対しては、他の木軸と同じで甘い。
「金物工法による場合は、ツーバィフォーと同等の火災保険料ですみますよ」 という謳い文句をつくり、意識の低い工務店や大工さんを説得してゆく必要がある。
そうすることによって、金物工法は耐震性と防火に強い木軸工法の本命になり得る。
こうした運動を主導する猛者の出現を切望したい。

そして、その延長線上で校舎や保育園、公民館、図書館などの公的建築を考えて行くべき。
つまり、木造で公的建築を建てると言うことは、完全な不燃化を図るということに外ならない。
多くの幼児だけでなく、小学生や中学生、高校生や大学生、あるいは多くの市民を火災の危険から守らねばならない。
つまり、フラッシュオーバーが起こらない木造を開発して行かねばならない。
それが、メインテーマ。
ところが、ネットフォーラムでMMMさんが紹介してくれたように、JNNの映像では着火2分後にフラッシュオーバーを起こしている。

残念ながらこのニュースは既に削除されたらしく、アップしません。
そこで、国土技術政策総合研究所の公開されている写真を掲載します。

http://togetter.com/li/261835

この写真でも、2分後に窓ガラスが破れています。

そして、8分後には3階まで完全に火の手が回っています。
この段階で、消防を開始しても、倒壊しないだけで、この校舎は使い物にならないだけでなく、学童の安全な避難が大変に困難だったでしょう。
つまり、こんな木造だと、校舎としては絶対に使ってはならないものです。

そして、20分後にフラッシュオーバーになったと言っているようです。
これは、学問的に正しいのでしょうか?
私の経験では、ガラス窓が抜けた2分の時点でフラッシュオーバーと呼ぶべき。
窓が抜けると、人命を安全に救出することが不可能だから。

こんなに早くフラッシュオーバーを起こすには、特別な工夫を凝らさねば不可能であろう。
長谷見雄二早大教授は、木造建築が如何にダメなものであるということを立証するために、特別な装置を用意されたとしか考えられません。

石膏ボードで必要な耐火被覆をし、普通の職員室でやたらに空気が入ってこない区切られた部屋であれば、着火後2分で、あれほどまで見事なフラッシュオーバーは起こらない。
もし、あの校舎に小学生がいたとしたら、4分後には煙に巻かれ、8分後にはパニック状態になって階段室へ殺到し、多くの児童が転倒し、半分近くが死傷したのではなかろうか。
それほど悲惨な災害を起こすしたであろう実験。
何のために企画されたのかが 怪???

あの世から、星野先生と杉山先生が、「何も学んでないこのバカどもめが・・・」 と長嘆息されている声が聞こえてくる。

それと、木造住宅だけでなく、RC造の断熱リフォームに最適な、画期的防火断熱外壁材が、今年の春から発売される。
詳細は後日に発表する予定だが、そういった動きを国交省も林野庁も把握しておくべき。


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