2012年03月11日

防火外断熱の本命・ロックウールの新製品登場と問題点


住宅で一番使われている断熱材はグラスウール。
昔は工務店の施工管理がなっていなかったので、大工さんによる気密施工は一部ではハチャメチャ。
このため、よく結露で断熱材が濡れている現場を見かけた。
しかし、いまどき グラスウールの悪口を言う業者は、よっぽど気密施工技能レベルの低い工務店。
松井修三とかカネカなどは、過去の遺物。

そして、最近では高性能グラスウールが標準化してきて、ほとんどの熱伝導率が0.038W。
これを、訓練を積んだ大工さんがきちんと気密施工を行えば、木造の場合だとC値が1.0cm2/m2を切るのはそれほど困難な仕事ではない。
一昔前は、三井ホームや地所ホームなどツーバィフォーの大手がR-2000住宅の基準の0.9cm2/m2を切ることが出来ず、戦線から離脱したことを考えると 隔世の感。
気密性能は、施工を外注している大手メーカーの泣き所。
鉄骨プレハブは0.9cm2/m2どころか、2.0cm2/m2達成するのにヒーヒー言っている。 
遅れている!!
これからは湿度管理がポイントになってくるから、ますます気密施工精度が物を言ってくる。

そして、ロックウールを標準仕様としているところは少ない。
壁とか天井に使われるのはマット状のロックウール。グラスウールよりも価格がやや高めで、熱伝導率は0.038Wがほとんど。
だったら高性能グラスウールでよいということに・・・。
というわけで、私が使っていたロックウールは2階の床の界床だけ。吸音性が良いので採用。
そして、1階の床にはフェルトないしはボード状のロックウールの採用が一般的。

このほかに、北海道では2階の天井裏や外壁に 吹込み用のロックウールが採用されている。
しかも密度が60キロ以上で、熱伝導率は0.036Wというもの。
この現場吹込みの場合は、ベバーバリアの施工を含めた気密工事込みで専門業者に発注される。
この専門業者が存在しているのは、札幌、帯広、旭川などに限定されており、なかなか全国的な拡がりを見せていない。
この60キロ以上の密度を持った吹込みロックウールは、自重で沈下するセルロースファイバーのような断熱ムラによるクレームは一切ない。
つまり、断熱厚のブレと沈下がないため、206の外壁用としては最適。
だが、北海道のような安価で施工精度が高い専門業者が全国的に存在しないため、吹込みロックウールの普及はイマイチ。

さて、ここまでがロックウール普及の第一段階。
本来はもっと普及してしかるべきなのだが、吹込み専門施工業者の育成を 各メーカーとも本気で取り組まなかったがために、グラスウールに比べて足腰の弱さが目立つ。
ところが、充填断熱だけでは足りず、パッシブハウスのように外側に断熱材を付加する付加断熱工法が次第に浸透しはじめてきた。
一方、外側だけに断熱を行う外断熱工法も一時的ブームに乗って普及した。
こうして、再度ロックウールが注目されるようになってきた。

この付加断熱や外側断熱の動きに呼応して、日本ロック・日東紡・ニチアス・JFEロックの4社が、KM
ブラケットによる防火30分の大臣認可をとり、引き続き準防火45分の認定をとっている。
撥水ボードを開発して、いち早く防火外断熱材として対応したのは立派。
しかし、対応は早かったが、KMブラケットの普及率はまだまだ低い。
KMブラケットはどちらかというと木造の付加断熱、外断熱用。
その需要が今まで限られていた。
それとは別に、ドイツでは数年前からRC造の中高層住宅の断熱改修用に、猛烈な勢いで8〜10センチ厚のロックウールの採用が始まった。
単にコンクリートに外断熱を施すだけではなく、断熱サッシも同時に取換えている。
そして、とくに性能が低かった東ドイツの中高層住宅は、見事に変身を遂げてきている。
この情報を熟知していた筈なのに、日本のロックウールメーカーは、なぜこの厖大なRC造の断熱改修需要の発掘に取り組んでこなかった ?

メーカーが取り組まなかったから、民間の企業がドイツのメーカーと組んで、ロックウールによる外断熱市場の開発に手を出さざるを得なかった。
その一つとして、すでにこの欄で紹介したアルセコ外断熱システムがある。
その施工性に関心があったので、現場を詳細に見学させてもらった。 (2010年7月30日付の前半と、8月25日付の後半を参照されたし)
本来、RC用の需要開発はメーカーがやるべき仕事。
それをサボり、もたついている間に、本命のロックウール以外で耐火認定をとる異業種が増えてきている。
その代表例として2つがあげられる。

1つはネオマフォーム。
防火構造30分で、充填断熱と外張りで2種。
準耐火45分で外張りの1種類の認定を得ている。
なにしろ、熱伝導率が0.02Wとすぐれている。
ただ、ロックウールのように透湿性がよくないので、関東以西では充填断熱材としてウレタンの現場発泡を採用している現場で、断熱性能が不足している場合に採用している例が多い。
ウレタンの現場発泡は、関東以西では専門工事業として確立しており、必要に応じて気密測定もやってくれる。気密性能が簡単に確保出来るので需要が拡がってきている。
北海道のロックウールの専門工事業者に匹敵する存在。
ロックウールにとっては、なかなか手ごわい強敵。

2つはEPS。
EPSは、外側に けい酸カルシウム板を採用し、EPSを挟んで内側に石膏ボードを入れた充填断熱と外断熱で、準防3階建共同住宅仕様の30分防火構造認定を、発泡スチロール協会がとっている。
このEPSも非透湿性のために、一条のi-cube や i-smart に見られるように、充填断熱材としてEPSを用い、さらに不足する分を50ミリ程度の外断熱で補充するという形が多い。
なにしろ熱伝導率が、ネオマ同様に繊維系よりもはるかに優れている。
ヨーロッパでは防火というと専らロックウールの仕事だが、日本ではロックウール協会がもたついていた間隙を突いて、2大強敵が出現してきている。
そして、木造の外断熱としては、ロックウールよりもネオマとEPSの方が前を走っている。

こうした木造用とは別に、RC用でも動きも鈍い。
ドイツでは、アルセコに限らずロックウールを外断熱用として使用する場合は、繊維を横にして使うのではなく、縦使いにこそ最大の特徴が。
繊維を横にして使うと、簡単に押し潰れる。これではボールや、強風で枝や石が飛んできた場合は、外壁が簡単に凹んでしまい、外装材として失格。
どこまでも繊維を縦にして使うしかない。
このため、アルセコの場合は、厚みは5〜10センチと自在だが ピースと言うかパネルの大きさは20センチ×120センチと限定されている。
この小さなピースを施工してゆくのだから、どうしても施工手間がかかる。
なんとか3×9尺タイプの形状にならないかと聞いてみたが、基本的にはムリとのこと。
ネオマやEPSが有利な展開をみせているのは、この施工がネックになっている面もあろう。
いかに性能が良くても、手間暇のかかると 価格面で対抗出来ない。
その危機意識が、日本のメーカーに欠けているように痛感させられていた。

そんな折、オーストリアのヘラクレス社のテクタランの技術を韓国の碧山 (ビュクサン) 社が導入し、札幌の音熱環境社の技術指導で商品化を図りつつあるというニュースを聞いた。
その試作品を、7〜8日にアクセスサッポロで開催するニヘイの「春の木材・建材フェア」に参考出品するという。
何はさておいても見る必要があると飛んでいったという次第。


P1050738.JPG

まず、パネルの大きさ。
それが、上のように2尺×6尺(600×1820ミリ) 。
そして、ドイツ系のロックウールとの最大の違いは、表面に1センチ厚の綺麗な木毛セメント板が特殊な接着剤で接着されていること。
1センチのロックウールと一体化されて、ドイツの4.6倍もの大きなパネルになっている。
この木毛板は通湿性能がよく、木毛板そのものが通気層になるという。
木毛板は不燃材。
だが、ネオマの耐火スパンウォールは、25ミリ厚の木毛板で1時間耐火を鉄骨造でとっている。
意識の切り替えが必要になってくる。
そしてこのパネルを、下から順に上に向けて千鳥張りしてゆく。

P1050732.JPG

これは、展示されていたミニチュア壁。
木毛板のないドイツのアルセコは、20×120センチの密度80キロのロックウールピース。
これは、軽いので接着剤で壁に固定される。(2010年8月25日の記述を参照していただくと、ところどころに接着補修工事を行っているのがわかる)
これに対して、ヘラクレス社の仕様ではタテ上下に20センチ間隔で3ヶ所、横は455間隔に5ヶ所、計15ヶ所を長ビスないしはワッシャー付きファスナーで固定することになっている。
これで、直下型の震度7に十分に耐えられると思うが、どうか ?

P1050741.JPG

そして、木毛板と木毛板の継ぎ目には、接着剤付きのグラスファイバー入りのネットが張られて繋がり、下塗りされる。

P1050740.JPG

ロックウールの繊維方向が、縦方向だということがよくわかる。このため、木毛板の上に乗ってもビクともしなければ、野球のホームランボールが当たってもカスリ傷一つ生じない。

P1050743.JPG

出隅部分は、コーナービートで処理される。
ここから先のモルタル工事は、ドイツのアルセコなどと全く変わらない。

P1050735.JPG

そして、ガラス繊維入りのメッシュを全面的に張ってゆくのも同じ。
開口部の4隅は、メッシュを2重張りするのも同じ。

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メッシュは、国産にしろ 輸入物にしろ、自由に入手出来る。

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P1050747.JPG

開口部の内側にもメッシュが張られ、下塗りと上塗りがなされてゆく。
モルタル厚は5ミリで、この上に塗装仕上げ。
いずれも透湿性の高いセメントと塗料が、日本で自在に入手出来る。
したがって、木毛板を施工した後の資材や部品は、その性能をとくに問わねば日本で全て揃う。ただ、経年変化を考えたデータが、揃っているかどうか ?

ここで、強調しておかなければならないことがある。
木材を産出しない韓国では、木毛は全て輸入品に頼っている。オーストリアのように、無料の木の根っこから木毛セメント板を作るわけではない。
そのために碧山は、木毛セメント板に変わる画期的で安価な素材を開発し、その見本を見せてもらうことが出来た。
これは、特許取得前ということなので、部外秘ということで詳細内容はお伝えすることが出来ない。
あのサムスンにしてもビュクサンにしても、日本の建材メーカーに比べると驚くほど技術開発力が進み、ハングリー精神に溢れている。
その新商品の発想のユニークさに、思わず脱帽した。
サラリーマン化した日本の企業は、このままでは韓国に完全に追い抜かれてしまう!?

いずれにしろ、今回展示された商品の競合相手はネオマの準耐火45分外張りであり、EPSの準不燃3階建ての30分防火構造。
この前のCLTの耐震実験にしろ、3階建て木造校舎の火災実験にしろ、本命のロックウールがドイツのようにきちんと対応していないから、他業界から急追を余儀なくされている。

P1050749.JPG

とりあえずは両面木毛板でサンドイッチのように処理した製品が、断熱基礎用としてスタートを切ることになろう。
これは消費者に歓迎される新需要開発。
しかし、本命のRC造用の断熱改修用や、木造の断熱改修用と新築用システムとしては、まだまだ改良の余地がある。

私の方で、次の条件で概算をしてみた。
206でU値0.036Wのロックウールを天井20センチ、壁・床14センチに施工する。そして、開口部のU値は1.0W。換気で90%熱回収出来たとして計算したら、延べ40坪の住宅のQ値が0.94W。
これを206ではなく、204の壁にして、7.5センチのエコ・ラメラ・ボードで付加断熱したらQ値は0.88Wとなる。
206の壁にするのではなく、204プラス75ミリの付加断熱の方が性能的に有利。

そして、問題は防火性能。
アルセコは100%ロックウールなのに、EPSと同じ30分防火しか認定されていない。
新システムでは、木造で最低 準耐火45分以上の認定が無条件 ?
RC造では防火構造の認定が不可欠。
まず、防火の高いハードルを越えねばならない。
そして、次は価格。
アルセコの場合は、2年前の時点で消費者価格が1.2〜1.3万円高/m2になるかもしれないという話だった。
新システムが45分以上の耐火を取得し、消費者価格を8000〜9000円/m2 程度に抑えることが出来れば、かなりの展望が期待出来る。

はたしてどこまで辿りつけるか。
音熱環境社は、今までテクニカル・アドバイザーとして技術力を発揮してきたが、これからは総合的なマネージメント能力が厳しく問われることになってこよう。
それを、オールロックウール業界として 支援策を用意できるかどうかも、問われているのだと思う。

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なお、昨日書いた文章では、「ネオマ耐火スパンウォール」60分が、木造にも採用できると勘違いしていました。
仲間から注意を受け、内容を書き換えました。
不注意を、深くお詫び致します。


posted by uno at 16:09| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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