2012年03月25日

北海道の先進プロジェクトに学ぶシンポジウム


さる23日、住宅金融公庫のすまい・るホールで、「北海道のリーデングプロジェクトに学ぶシンポジゥム」 が10:30〜16:30までの長丁場に亘って開催された。

主催は北海道関連諸団体。 共催が国交省。 後援として建研や省エネ機構、リフォーム推進協など。
これがよくわからない。
北海道は、国交省や建研などのいい加減な省エネ基準をほとんど無視して、Q値が長期優良住宅の1.6Wではなく、1.3Wの 「北方型ECO住宅」 を発表して実績を挙げてきている。
その結果、次世代省エネ基準の普及率は75%と日本一。
外壁厚が200ミリ平均に近づいており、トリプルサッシの普及率も37%。
ともかく、どの数字をとってみても、日本の最先端を走っていることには変わりがない。

その、素晴らしい実績を国交省が認め、国交省の予算で北海道にお願いして全国行脚をやってもらおう、という内容の企画だったら納得出来、賛同出来る。
「住宅というのは非常に地域性が高い。したがって、今までのように国交省の本省が音頭をとって、全国一律の規格を作成し、それを地方に押し付ける時代は終わった。これからは、北海道のように、より先進的なプロジェクトを地域の主導のもとに進めてほしい」 ということであれば、双手を挙げて賛成する。
「さすが国交省。大人になったものだ・・・」 と。

しかし、話を聞いているうちに、どうもそうではないらしいことに気付かされてきた。
本年度で終わる 「長期優良住宅先導事業」 が如何に効果的な施策であったかを、PRするためのシンポジウムらしい・・・。
この「先導事業」 は本年度で終わるが、長期優良住宅事業は継続される。
それならそれで良いのだが、北海道の先導事業として紹介されたリフォームの履歴を記録し、保管するという 「R住宅システム」 は、改築される性能に対する基準が明確でなく、消費者にとって費用対効果が分かりにくい。
また、マンションの外断熱による改修システムの2例は、いずれもEPS50ミリの断熱材による改修であった。上階への類焼問題は解決しているのだろうか?
やはり、ドイツのようにロックウール100ミリ厚による1時間防火左官仕上げが本命ではないか ?
さらには、その効果の調査がしっかりしておらず、外気温度など条件の違う日1日だけの温度測定しかなされておらず、資料としては余りにもお粗末。
年間を通じたデータがないようでは、説得力を持っていない。

それよりもお粗末だったのが巽京大名誉教授による 「長期優良住宅先導事業の成果と課題」 という1時間に及ぶ特別講演。
この先導事業が、「200年住宅として各方面から注目された」 と演者が自画自賛していたのはあまりにもいただけない。
本当に200年住宅と呼ぶにふさわしいものは皆無だったと言うのが私の記憶。
サイデングやタイルを全部剥がさないと取り換えられない寿命が30年程度のサッシを使った住宅を、ヌケヌケと200年住宅などと言った罪の方が、功よりもはるかに大きい。それに200年住宅というからには、先の東日本大震災に照らしても、一般的に耐震性が不足している。
そして、先導事業として選ばれながら、ほとんど普及していない事業の多いこと。
反省の弁が一つもなかったことに、呆れ果ててしまった。
反感を買っただけの、つまらない講演。

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最後の、「低炭素住宅の将来像」 というシンポジウムだけは聞かせる内容がいくつかあった。
北海道の武部建設、岐阜の金子建築、熊本のエコワークスがそれぞれの地域における活動報告を行った。残念ながら、その報告内容には取り上げて述べるほどのものはない。
ただ、各社の本音が面白かった。
武部建設は、「新築が少なくなってきて、価格競争が厳しくなってくるばかり。長期優良住宅の補助金があるうちはいいが、これがなくなった時、本当にいい商品で消費者を惹きつけてゆけるかどうかが課題になる。大工を育て、環境と雇用を守る闘いはこれからが本番」 という発言には考えさせられた。
今の工務店や住宅メーカーは補助金漬け。ひたすらに口を開けて補助金頼み。自ら需要を開発してゆこうという意欲が余りにもなさすぎる。
R-2000住宅は、公庫の割増融資もなければ補助金もなかった。しかし、先進的なビルダーはR-2000住宅に特化して、自分で需要を開発してきた。その時に比べると、あまりにも補助金依存の体質に対して強い疑念を感じさせられる。

金子建設の、「円高と経済の低成長が続くとすると、海外へ石油などのエネルギー代を払わなくても済む家づくりがやはりポイントになってくる。年金生活でもやってゆける家づくりこそが、これから重要になってくる」 との意見には同感。
エコワークスは、「九州だと、Q値が1.9W程度の住宅で、家電も含めて5kWの太陽光があれば、なんとかゼロエネルギーが達成可能ではないかという感触を得てきている。しかし、夏の日射取得などについてはまだまだやらねばならないことがあるし、消費者の住まい方の改善指導も重要なポイントになってくる」 という発言は、問題はあるが一つの方向を示していた。

これらの報告のあと、建研の澤地氏より次のような総括発言があった。
北海道が、高気密高断熱住宅で果たしてくれた役割は、大きく言って4つあると私は考えている。
1つは、通気層を含めて壁内結露問題に解答を用意してくれたこと。
2つは、木軸工法の気流止めという気密性能に成果をあげてくれたこと。
3つは、高性能サッシの開発とその普及に貢献してくれたこと。
4つは、パッシブ換気を含めて、換気全体に問題を提起してくれたこと。
しかし、北海道は如何にして暖房費を減らすかという問題に特化しており、暖房費が少ない地域では北海道仕様がそのまま通用するわけはない。
それぞれの地域で、一番エネルギーの消費の大きいものからやっつけて行くと言うことこそが、省エネとCO2削減のポイントであるということを忘れてはならない。

北総研の鈴木氏は次のように言った。
家庭でのエネルギー消費の増加は、吹き抜けなどの居住空間が大きくなったということを忘れてはならない。
しかし、北海道を見ていると、地方へ行くほどコストが高くなっている。
それと、高齢化による平均年収の減少が、これから大きな問題になってくる。
さらに、国内需要だけを考えていると、需要の縮小に伴いメーカーの新製品開発力が落ちてくることが懸念される。建材メーカーがどのようにグローバル化してゆくかにも、大きな関心がある。

このように、それぞれからもっともな発言はあった。
しかし、高温多湿の温暖地のことを問題にしながらも、誰からも除加湿問題に対する発言は一つもなかった。
先進国の中で、日本こそがその立地条件からして、率先して夏期の高温多湿問題と冬期の過乾燥問題に取り組む必要がある。
それなのに、もっぱら温度だけを問題にして、湿度を度外視している日本の建築学会の いびつさと幼児性は、一向に改善されていない。

そういった面で、物足りなさの残るシンポジウムであった。


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