2012年04月25日

省エネのメリットが単にカネだけなら太陽光へ走る!! (中)


カナダで始まったR-2000住宅運動は、暖房費、換気気、給湯などのエネルギー消費量を、紀元2000年までに当時平均平気家庭の1/2から1/3にすることを目的としていた。
例えば50坪で30万円のエネルギー年費がかかっていたとする。それを坪8万円の投資、つまり計400万円の投資で1/3の10万円の燃費に出来たとする。年に20万円の削減。400万円の投資が20年で償却できる。
これが住宅で許される新規投資の最低条件。 20年以内に償却出来ない話には、どんな消費者も乗ってはこない。

日本でR-2000住宅運動をやろうとした時、東京周辺の一般的な年間燃費は40坪で20万円程度。サッシなどの価格が高かったから、当初はR-2000住宅の仕様にするのに坪10万円は余分にかかった。そして、年間燃費は10万円が削減されて半分になるのがやっと。
これだと400万円を償却するのに40年もかかる。
だから最初は、玉置宏夫人など数人の方にしか関心を寄せてもらえなかった。
このため、燃費以外のメリットを並べ挙げるしかなかった。
●花粉が入ってこないだけでなく、空気が新鮮で子供のアトピーの心配がなくなり、治療代が年2万円は浮く ●全館24時間空調換気・除加湿で家族4人の風邪などの治療費が年に2万円助かる ●夏や冬にホテルなどに泊まる必要がなくなり宿泊交通費代が年に8万円は少なくなる ●掃除が週に1回で済み、主婦の手間と電気代が年間2万円は得になる ●冬期の加湿で造作やクロスの暴れや隙間がなくなるので、リフォーム代が浮く ●冬期は身体の芯の寒さがなくなり、夏期は刺すような冷風と熱帯夜がなくなり活動的になれるので、収入が10万円は増える etc…。

それでも許されたのは坪5万円高まで。
そこで、次世代省エネ基準よりも優れた高気密住宅を5年以上も先取りし、花粉対策用住宅として売り出したらバカ受け。
そして、数年後にはサッシなどの量産効果が出てきて、坪5万円高でR-2000住宅が供給出来るようになり、20年間で償却できるようになった。
プラス、上記の燃費以外のメリットが理解されるようになって、R-2000住宅は何の抵抗もなく一般の消費者に迎えられた。
この時に必要とされたデータは、間欠運転に比べて24時間セントラル空調換気運転はどれほど電気代が余分にかかるか? であった。
このため、夜間に電気を切った場合と切らない場合とでは燃費がどれほど違うかを、夏と冬の2回に亘ってダイキンに測定してもらった。
その結果、切った場合は 朝に立上げのフル運転をするのでその電気代がバカにならない。
一方、Q値が1.4WのR-2000住宅では、夜中も時折運転しているだけだから、24時間運転の方がむしろ燃費が少なくて済むということが判明。
このため、全世主に24時間運転を説いた。 ただし、「夜中とかお出掛けの時は、設定温度を1〜2℃下げた方がお得ですよ」 と。
そして、40坪の住宅での年間電気代は、当時は家電のCOPが悪くセントラル空調換気代を含めて13〜18万円というところが相場だった。

そこへ、セキスイハイムのQ値0.99W住宅が飛び込んできた。新住協のQ-1運動とともに。
ただし、新住協のQ-1は暖房費だけを目的にしていたし、「実質性能値がQ-1ではないものでもシミュレーション値で次世代基準の何分の1かの暖房費であればQ-1と呼んでよい」 との、消費者を無視した工務店志向型の独善的な面が見られる。
フェアの時、関東地域の数社のモデル棟を見て歩いたが、R-2000住宅の厳しさに比べるとはるかに性能と技術基準が低く、チェックシステムのなさに、正直なところ呆れた。

しかし、その次に飛び込んできた無暖房機住宅とかパッシブハウス住宅は、単に暖房だけのシミュレーションではなく、ある程度の科学データと実績の裏付けを持っているので、注目させられた。
無暖房機住宅の場合は、信大構内に建てた実験棟と2つのモデル、1つの実生活棟のデータを、信大・山下名誉教授が、下記以外の茅野の介護施設も含めて各誌に発表されている。

http://passivehouse.jp/images/081102_yamashita.pdf#search=`信大山下名誉教授`

もし、上記が開かなかったら、「長野県での無暖房住宅の挑戦と展望」 から開いていただきたい。
これには4例が記載されているが、実際に人が住んでいるのはQ値が約1.0WのI邸のみ。
しかも冬期は18.3℃での連続運転で、年間冷暖房費が40.7MJ(11.3kWh)/u と言われても、これをそのままデータとして活用してよいかどうかは疑問。
しかし、初めて取られた年間の実生活のデータなので、大切にしたい。ただ、それ以降の実生活データが示されないのがさみしい。

ユーロ.jpg
北海道では、帯広の環境負荷低減住宅協が数戸の住宅でかなり正確なデータを取っている。
しかし、表示されているのは上記のように1種換気と3種換気の差だけで、非常にもったいない。

西城.jpg
また、3年前に西城産業が発表したQ値約0.6Wの住宅では、かなり多面的な調査を行っている。
だが通年の資料を入手していないので、何とも寸評出来ない。

これに対して、今年の3月に発表された今川設計が厚別に建てたQ値が約0.5Wの住宅の、11年3月〜12年2月までの年間暖冷房費が、今年は大変な寒さだったにもかかわらず15kWh/ua で上がっているのが注目される。

http://imagawa-k.jp/2012/03/201112.html

なお、この住宅では単に冷暖房費だけではなく熱交換気、各室の温湿度のデータをとっているので、実生活がなされているのなら それらの数値も一緒に発表していただけたらと期待したい。

北関東のQ値0.9Wのセントラル空調換気システムのY.S邸。この精密な年間暖冷房・換気の消費電力の記録は、今週の本音・09年11月17日に掲載してある。
24時間全館運転で07〜08年は23.64kWh/uで、空調機を再熱ドライに変えた08〜09年は24.14kWh/uで、冷暖房・換気では十分に所定の範囲内に納まっている。
関東以西では、Q値が0.9Wであれば、全館24時間運転であっても、冷暖房・換気の消費電力は25kWh/u以内で上がることを実証してくれている。

いままで、パッシブハウスないしは準パッシブハウスでいろんなデータが発表されているが、私が最も信頼しているデータは北関東のhiro邸のもの。
ブログ・今週の本音で2008年8月5日から25日まで、延べ5回に分けて報告しているので、時間のある人は再読を。
そのエキスを抽出すれば下記のようになる。
hiro-1.jpg
まず、温度とりで、室内外の温湿度を3年間以上に亘ってパソコンに入力。
上は、その厖大なデータのほんの一部に過ぎない。
冬期のデータは07/12/23〜08/1/16日までの20日間。(メモは間違い。スキャンで短くなりました)
この20日間に、赤い線の外気温度が夜間に零度以下になった日が17日もあるが、室温は24℃設定で、1,2階とも22〜23℃をキープしている。
そして、青い線の室内相対湿度はほぼ40%前後を維持している。

夏期は08年の7/6〜7/31日までの20日間。(このメモも間違い)
室温は1、2階とも27〜28℃で推移しており、相対湿度は 最初は高いが、7月13日ごろから40%を切っているのが目に付く。
このように、hiro邸は夏期の高温多湿と冬期の過乾燥からの完全脱出に成功。
24時間セントラル空調換気・除加湿コントロールを見事にやり抜いている。
ハーティホームはR-2000住宅でこの難問に挑戦したが、hiro邸ほどには成功しなかった。
それは、Q値とμ値に対する考えが甘かったからだと気付かされた。
R-2000住宅のQ値は1.4W。
これに対してhiro邸のQ値は ダブルハニカムをカウントして約1.0W。 実質的には1.06W前後というところであろう。
そして、μ値を小さくすべく努力している。
hiro-2.jpg
それでも、冬期の設定温度がやや高いことと、湿度管理を行っているために年間暖冷房費は6万7000円。換気や給湯費を入れて10万9000円。
この数字は必ずしも正確なものではないが、一応の基準値と考えてよいはず。
hiro邸は3.14kWの太陽光を搭載している。そして、年間11万円は稼いでいる。
したがって、セントラル空調換気・除加湿+給湯費は、全て太陽光が賄ってくれている。
そして、3.14kWではなく4kWを搭載すれば、全ての電気代を賄ってくれる。別に42円でなくても。
したがって、大手住宅メーカーは、住宅性能は次世代省エネ基準に据え置いたままで、太陽光に走っている。この傾向は容認して良いのだろうか?

さて、上の電気代を 深夜電力などを考慮して、パッシブハウス研究所の言うように年間kWh/uに置き換えてみたのが一番下の数字。
二次エネルギーで46.9kWh/uと大きい。
hiro邸の公称床面積は約138u。
しかし、20uの大きな吹き抜け空間と小屋裏機械室を持っているから、実質的には160uと考えてよい。もし、その数値で割れば40.5kWh/uとなる。
冷暖房・換気だけでは27.2kWh/uということになり、Q値を0.9Wにすれば25kWh/uを下回ってくれるものと推定される。
原発による余剰な深夜電力が次第に少なくなってゆくことを考えると、やはり太陽光よりも太陽熱給湯を考え、関東以西でのQ値は、R-2000住宅の1.4Wではなく、0.8〜1.0Wにして行くべきなのではなかろうか。
その上で、不足する分を太陽光に対する適切な投資で、必要な分だけを搭載して行くと言うのがどこまでも本筋だと考える。
しかし、一次エネルギーを120kWh/u以内に納めるのは至難の業。 可能ではあるが坪単価が異常に高くなってしまう。

このhiro邸のシステムに対して、今秋市販を予定されているダイキンの家庭用デシカは、どの程度の能力を持っているのだろうか?
多くの人がその内容を知りたいと願っているはず。
だが、発売予定は今秋というだけで、まだ多面的な検討が加えられている段階らしく、詳細は教えてもらえない。
ただ、何人かの仲間は、業務用の250m3のデシカを据え付けて、データを取り始めている。
ご案内のように、一昨年の夏から昨年の夏まで、S邸では500m3の業務用デシカに光触媒機能を付加してダイキンにデータをとってもらった。
その厖大なデータから、30枚余のデータを見せて頂いたが、どこまでも「部外秘」 ということで、発表は一切差し控え中。

しかし、業務用デシカの能力は公知の事実。
その性能は、限りなくhiro邸の数値に近いということだけは言ってもよいと思う。
ただ、空調換気を含めたトータルのkWh/uがどうなるか。 また、価格がいかほどになるかについては教えてもらえない。
あと暫くは、我慢すべきよう。

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