2012年07月05日

2012年上半期 読んで面白かった本ベスト10 (下)


先週上げた123冊の中から選抜したベスト10候補作品、■印が50冊。
その中から、勝手に選んだ独善的ベスト10が以下。
いつものことながら写真の写りが悪いのは、ご容赦あれ。

◆10位 

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住宅・建築関係で期待していた「日本人はどう住まうべきか?」 と「建築の大転換」は残念ながら期待外れ。むしろ古い「ガウディ 建築図鑑」と「可笑しな家」の方が面白かった。 
それでは絵にならないので、住宅・建築の分野から以下の3点をまとめて10位とした。
「この地名が危ない」では、昔の人が最悪の場所だと警告していた福島の地名のところに、こともあろうに原発を建てている。 原発候補地の選定は かなりいい加減な作業だったという指摘が説得力を持って迫ってくる。
「菅があぶない」は、日本の都市の漏水率は世界に冠たるものだと聞いていたが、インフラの老朽化でかなり傷んでいると言う実態に驚かされる。
「日本人はどう住まうべきか」については、2月15日のこの欄で紹介済み。

◆9位

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「キノコの教え」と「タネが危ない」の2つをまとめて9位に。
「キノコの教え」は、6月29日の「独善的週評」に掲載したばかり。 植物は根毛を通じて水分やリン、カリウム、カルシウムを吸収しているが、キノコの菌糸の果たしている役割が大きいという。
木を育てるには、キノコの菌糸なくして語れないということを教えてくれている。
「タネが危ない」を書いた野口氏は、地場で栽培した野菜や穀物の一番成育のよいものからタネをとる、古来の「在来タネ」を専門的に扱っていて、その道では名士。
しかし在来タネは、大きさもマチマチで、収穫の時期もバラバラ。これに対していま流行のF1と呼ばれるタネは、同時期に同じ大きさの野菜が大量に採れ、スーパーなどにもてはやされるし、農家にとっても手離れがよい。このため、ほとんどのタネがF1になってしまった。しかし、在来タネに比べると味も栄養価も落ちる。なんとか在来タネを守ろうという運動の指針書。

◆8位 

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椎名誠というと、多くの仲間と日本全国の海岸や島で焚き火をして、ビールをあおってオダをあげ、海外の辺地を彷徨したりしている人間という印象が強い。
彼の小説も、自分の少年時代、青年時代、特異な子育て方法を面白おかしく書いている私小説で、まともなものだと思ったことがない。
ただ、息抜きの本として、旅行中などに読むには東海林さだお、阿川佐和子などとともに恰好の書。やたら難しいだけで内容のない本よりも、面白いだけで十分に価値がある。
そんな風に氏を評価していたので、まさか椎名誠が新潮選書で、「世界の水問題」を論じる著作を出していたとは知らなかった。
一口に言って、内容はなかなかのもの。 2人の助っ人の協力を得て、きちんと取材している。 それほど気取らず、いつもの軽いノリでの語り口が良い。 近いうちにこの欄で取り上げたい。

◆7位

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高校生向けの科学の解説書とも言える3冊を、まとめて7位とした。
戦後のどさくさの中で、まともな科学の教育を受けておらず、しかも文系の人間にとっては、このような高校生対象のイロハの解説書が結構役に立つ。
環境が専門の安井氏の「化学で何がわかるか」は、どの年代に何が問題になり、どんな発見があったかが系統的に分かり易く解説しているので有難い。
巽氏の「いちばんやさしい地球変動の話」は、今年の1月25日にこの欄で、地震・CO2を語る前に是非一読を! と紹介しているもの。
多田氏の「すごい実験」は、金髪のロン毛先生が、高校生を相手に素粒子物理学を面白く、おかしく教えた講義記録。素粒子「ニュートリノ」を作ったり、検出する機械設備の途方もない大きさにびっくりさせられ、惹きこまれてゆく楽しさは一級品。 昨日発表されたヒッグス粒子の発見で影は薄れたが・・・。

◆6位 

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この著作は、6月5日にこの欄で紹介している。
東日本大震災で大活躍した9人の医師たちの奮闘記録で、昨年の8月30日に出版されたもの。
しかし、9人の医師全部を紹介出来ないので3人に絞ったが、感動的。
医師の活動記録は、これ以外にも数冊出版されており、いずれも心に残るものがある。

◆5位

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経営・経済の分野から3点をピックアップした。 いずれも深い感銘を受けた書で、まとめて5位とした。
まず、1月30日付でこの欄で紹介した「円高の正体」。
「すごく参考になります」というメールをもらって、急いで買って来て読んだ本。 大不況下の日本の円が独歩高を演じているのは、政府と日銀のインフレ目標がアメリカなどに比べて低いからという指摘には思わず拍手をした。
2月10日のこの欄で紹介した「サイゼリア革命」。
私自身がサイゼリアの大フアン。 ただし、レストランとしてではなく、大衆的なトラットリア、あるいは居酒屋 (オステリア)、またはバールとして活用している。 ファストフード・レストランとして新展開を図ろうとしているのには、疑問符が・・・。
4月10日のこの欄で紹介した「アジアビジネス熱風録」。
この本は4年前に刊行され、2年前には文庫本になっていた力作を見逃していたもの。 文春から頼まれてインド、シンガポール、ベトナム、タイ、韓国、インドネシア、中国の7ヶ国を訪問し、現地の生々しい状況を見事に伝えてくれている。4年たっても決して風化していない。

◆4位 

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江上剛のこの小説は、3年前に読んだことがある。
ところが、どうしたことか最初に書かれていた鈴木商店の金子直吉社長の話を聞き、人となりを見抜いて、三井銀行頭取の主人公・池田成彬が鈴木商店への融資を打ち切る決定を下すところ。 それと、慶応大学へ入学したのだが福沢諭吉の「巧言令色も時には必要」という演説に憤慨して、会場から去ったこと程度しか記憶に残っていなかった。
ところが、今回読み返してみて、明治、大正、昭和の激動の中を、三井財閥のトップとして嘘をつかず、改革を断行するとともに、後に日銀の総裁、大蔵兼商工大臣として軍部と対峙しながら国家財政の健全化を目指した骨太の「硬骨漢の人生ドラマの美しさ」を知らされた。
一体3年前に、何をネボケていたのかと「我、猛反省せり」という結果に。
偽装報告をしたり、カジノへ会社のカネをつぎ込んだりしている最近のポリシーなき経営者。 それに対比して信念をもった実業家であり、政治家でもあった池田成彬。 その波乱万丈の生き様を 見事に描ききった力作。

◆3位

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この題名と著者名を見ただけでは、読みたいと言う食指が起きない。
1章と2章を読んだ時点では、正直なところ投げ出そうと考えたほど。
ところが、3章の「世界中から技術指導の要請を受けているカテーテル先進国・日本」から にわかに面白くなり、あっという間に読み終えた。
心臓外科医のことは、海堂尊氏の小説などで知っていた。しかし、カテーテルで心臓病を治す技術は日本が世界一で、しかも一人の「神の手を持つ天才医師」が存在するのではなく、その技術を広く公開し、若き技術者をスーパードクター軍団に育てていた。
それを成し遂げたのが、1999年に豊橋ハートセンターをオープンさせた鈴木孝彦氏であり、仲間の加藤修氏。
どこまでも患者の立場で発想し、実際の治療現場を海外を含めた4000人のプロに公開するなど、その技術力と教育力にはほどほど感心させられる。このため全国から有能な人材が集まってくる。その幹部の1人の活動を見ると、年の半分は世界20ヶ国を飛び回っての技術指導。残りの3ヶ月は国内の医療機関へ出張というから驚く。08年には名古屋に、09年には岐阜にハートセンターを立ち上げている。
7月13日の「独善的週評 351号」でこの著を取り上げる予定。

◆2位 

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明治維新という時代に、500を越える企業の設立に関わった渋沢栄一。
「明治維新の日本の近代化という奇跡は、渋沢栄一なくしてはあり得なかった」 と言われているが、これは決して誇張ではない。
あのピーター・ドラッカーも、渋沢栄一を研究して東洋の小さな島国に過ぎなかった日本が、何故急速に近代化が出来たのかという謎を解き、ニッポンのファンになっている。
「実家の仕事を通じて10才台で経営感覚を身につけていた渋沢は、フランス語を学んでヨーロッパの先進的なシステムを学び、これを理解し、古い日本人が持っていた潜在的能力を引き出して新しい企業群を創り上げていった。 彼の最大の功績は、一身にして立案者と実行者を兼ねて事業を推進したこと。 彼には思想家と言う素晴らしい側面と、数字が読める行動家という側面があり、それを結合させるという類まれなるユニークな才能があった」 と述べている。
渋沢栄一伝は、私も今まで数冊は読んでいる。
ところが、この著作が優れているのは、渋沢が民部公子のお供をしてフランス渡った時、どのようにして先進国のシステムの全体像を学ぶことが出来たのか、という点に焦点を当てている点。
その結果、今まで誰も書いていないサン・シモン主義者の「株式会社、銀行、鉄道」という三種の神器を、「ベンチャー・キャピタルで産業を興こそう」とする考えをフリュリ・エラールから学んだからだ、と解明している。
何しろ、この本は算盤篇と論語篇で延べ960ページにも及ぶ。
渋沢が設立に関わった500を越える会社とは、 @資本主義のインフラに関わるものとして銀行、各種取引所、交換所、保険、陸運・海運、土木、水道、電気、燃料がある。 A外国製品の国産化に関わるものとして紡績、織物、鉄鋼・製鉄、製紙、セメント、レンガ、ガラス、化学肥料・薬品、造船、汽車製造、製革、製糖、ビール、精肉、乳製品がある。 B流通・サービス業として商社、通信、新聞、印刷、ホテル、不動産、広告、デパートなど、ほとんどの産業が網羅されている。
この外にも一橋大学、共立女子大学や帝国劇場、養育園の開設にも骨を折っている。
渋沢が三菱を興した岩崎弥太郎のように私欲が深かったら、厖大な資産を築いたであろう。また、資本主義の必要悪として投機は認めたが、自らは投機に一切手を出さなかった論語の人。
この著作は、産業界で働く全ての人に読んでいただきたい。本来はトップに推挙したい久々の名著。

◆1位 

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この著は、つい最近の6月25日にこの欄で紹介したばかり。
渋沢栄一を1位にするか、ローマ法王を1位にするかで迷ったが、現役のイノベーションの方を高く評価すべきだとの結論に・・・。
ともかく、ベンチャー企業のトップにも見られないような大変な意欲と好奇心。それと類まれな情報発信力と常識にとらわれない改革力。 それを、田舎の地方公務員の臨時職員が持ち続けていたというから、どの企業にあっても改革は出来ないことはない。
是非とも再読いただいて、貴方の会社で、貴方が「ローマ法王に米を食べさせる男」になっていただきたい。




























posted by uno at 07:45| Comment(0) | 半年間の面白本ベスト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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