2012年07月15日

原発解体ロボット開発の重要性とやっと始まった国民的議論


先月末に、政府の 「エネルギー・環境会議」 は、2030年の将来において、原発依存度を (1) ゼロにする  (2) 15%にする  (3) 20〜25%にする という3つの選択肢を発表した。
この発表に基づいて、昨夜のNHKスペシャルでは21:00〜22:30と1時間半に亘り、いずれを選択したら良いかという専門家による生討論と、消費者の意識調査を行っていた。
なかなかタイムリーな企画であった。 
他の放送局もくだらない番組を中止して、国民的な合意形成に向けてスペシャル番組を放送する義務があることを自覚してほしい。

昨夜の生討論は、なかなか見応えがあった。
その詳細内容を、ここで再現しょうとは考えておりません。
聞いていなかった人は、必ず再放送があると思うので、録画するなりして聞いていただきたい。
その前に、3つのシナリオの概略と、福島原発前の現行計画、2010年の現状数値を下記に確認しておきたい。

           【2030年における原発依存度と他の発電比率など】

原子力政策  原発 再生可能エネ 化石燃料 使用済核燃料 1990年比CO2   高速増殖炉

シナリオ0    0%    35%   65%    全量直接処分   23%減  もんじゅ中止
                                                 基礎研究のみ        
シナリオ15   15%   30%    55%   再処理・直接処分 23%減  もんじゅ5年程度運転
                                            実用化判断運転
シナリオ  20〜25%  25〜30%  50%  再処理・直接処分 25%減  もんじゅ10年程度運転
20〜25                                         実用化前提に運転

現行計画    45%   20%   35%  全量再処理  20年に25%減   同上
2010年現状   26%   10%   63%  再処理工場未完  0.3%減   もんじゅ事故停止


大多数の国民の声は、「シナリオ0」 と 「シナリオ15」 に収斂されると思う。
政府は、来月中に 「シナリオ15」 でまとめたいと考えているようだが、原発の稼働については地元の了解を得ることが日本の場合は大前提に。
大変な被害を受けた福島県は、県民挙げて原発廃止に固まっている。
新潟県知事も、新潟県民も、「いまのような安全確認程度での再開は、許せない」 としている。
したがって、私は素人考えながら 「シナリオ0」 しかないのではないかと、昨年の事故発生の時点から考えていた。
しかし、技術は日進月歩。
2030年までに、トリウム熔融塩炉などの技術開発が進み、現在保管されている約200トンのプルトニウムが、より安全な形で活用出来るようになったとしたら、必ずしも 「シナリオ0」 にこだわらず、「シナリオ15」 も大いにあってよい。
ただし、この半世紀に亘って、学会と官僚、政府は正しい情報を公開せず、国民をだまし続けてきた。そのことへの不信感を払拭するのは容易なことではない。
当面は、「シナリオ0」 を覚悟して、原発廃炉のための技術開発を進めてゆかねばならないのだと考える。

原発を停止した場合の措置として、3つの方法があると言われている。
(1) 完全密閉方式  (2) 遮蔽管理方式  (3) 撤去・解体方式
あの26年前に事故を起こしたチェルノブイリは、完全密閉方式を取られたが、いろいろ問題があったと聞いている。
まして、国土が狭い日本の海岸線に立地する原発では、完全密閉方式はあり得ないと考える。
これはどこまでも素人考えだが、一定期間は遮蔽管理方式を採用し、最終的には撤去・解体方式しかないはず。
アメリカでは、すでに撤去解体方式が採用され、解体された放射物質は広大な土地の一角全部を防水被覆して貯蔵し、放射物質の低い金属などは再利用されている。
そして、日本でも原発の撤去・解体作業が進んでいる。
1966年に運転を開始し、1998年に32年間の仕事を終えて廃炉・解体が決定した東海原子炉第一号機。その解体作業に23年かかると言われている。けれども実際の解体作業は、それ以上の時間が必要とされており、現在進行形。

その解体の実態と問題点を、NHKが半月前に放映していた。
この第一号機は、16.6万KWにすぎないが、ものすごい量の放射物質の貯蔵に頭を悩ませている。
16.6万KWでこの有様。 最近の100万KWの原発の廃炉・解体時に発生するおびただしい放射物質のことを考えると、考えさせられる。
福島第一原子力発電所では、6基とも廃炉は免れないだろう。
それには、最低で40年間の期間が必要。
そして、東海第一号機の解体で、解体には大変な技術が必要だということが判明した。
特殊ロボットの開発が不可避。

井上猛雄著 「災害とロボット」 (オーム社 2300円+税)

P1060194.JPG

福島原発が発生するまでは、原発にロボットが必要だとは全く感じていなかった。
むしろ、災害時のレスキューロボットに関心があった。
この著も、ガレキの撤去、地上探査、水中探査、上空からの探査、宇宙からの探査をはじめとした無人レスキューロボットに、幅広く焦点を充てている。
しかし、福島原発に投入されたロボットとして、原子炉屋内の調査、屋外調査と総量マップ作製、上空からの偵察と被害調査、除染・清掃作業、無人化放水・薬剤散布作業、無人化施工技術にも多くのページを割いている。

ご案内のとおり、福島第一原発に初めて投入されたロボットは、家庭用掃除機でお馴染みだったアメリカ iRobot 社製の 「501 PackBot」。
単に原発用に開発されたのではなく、イラクやアフガニスタンなどにおける偵察や爆弾処理用として3500台以上の納入実績を持っているもの。
詳細な技術的紹介は省くが、2台を投入し、3人のオペレーターの捜査で室内の状況把握と補修作業に大きな力を発揮してくれた。
この PackBot の活躍によって、多くの人々は原子炉管理にはロボットが不可欠だということを知ることが出来た。

そして、iRobot 社に劣らない活躍をしたのが、千葉工大の原発対応版 「Quince」。
これはNEDOの支援を得て8社で共同開発した、「閉鎖空間高速走行探査群ロボット」 を福島原発用に特化して大幅改善したもの。
最大の特徴は、世界一のガレキ走行能力を持っていたこと。らせん階段の昇降も軽くこなしたと言うから心強い。
たしかに、産業用ロボットの分野では、日本は世界一の技術と販売実績を持っている。
しかし、兵士が命を失うような戦場へ派兵しているわけではない。
たしかに、レスキュー用の需要は時折しかない。
常時技術開発を続けて、その製品が売れるというマーケットは存在していない。
したがって高い技術力と可能性を持ってはいたが、今までは宝の持ち腐れ。

そして、今度初めて原発の大量廃炉という問題に直面。
これは単に日本だけに限った需要ではなく、世界的に通用する需要であり技術である。
つまり、これから新設される原子炉を含めて、いずれも40〜60年前後で数百基が廃炉の運命をたどることになる。
その時に、高度なロボットを中心とする廃炉システムの技術を備えている日本に、各国とも依存しなければならなくなる。
原発事故対応のロボット開発ではなく、安全な廃炉システムのための各種ロボットの開発。
これこそ、日本がその手先の器用さを最大限に発揮し、世界に先駆けて開発しなければならないイノベーション。

シナリオ0であれ、シナリオ15であれ、それほど内容は大きくは変わらないと私は思う。
この2つの対比で、やたら口角泡を飛ばすのではなく、冷静に考えて、完全な廃炉システムの開発に産業界と学界は英知を絞っていただきたい。

技術力を抜きにした議論は、決して日本を幸福にしてはくれない。



posted by uno at 17:42| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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