2012年07月30日

再生可能エネ全量買取り制度(FIT)の高価格を白書が指摘


今年の7月から始まった風力、太陽光、バイオマスなど 「再生可能エネルギーの全量固定価格買取り制度」(FIT)。
「その買取り価格の妥当性の検証が必要だ」 と27日に閣議決定した2012年度「経済財政白書」に書かれていると読売新聞や日経新聞が報じた。
7月から実施したばかりの新しい制度。
たしかに買取り価格は高すぎる。 私などは即座にイチャモンを付けたが、まさか経済財政白書で 「価格の妥当性の検証が必要」 と書くとは考えてもいなかった。

実は、先月号 (7月号) の月刊誌・WEDGEに、注目すべき記事が掲載されていた。
新幹線の中などで読まれた方も多いと思うが、「買取り価格は高すぎる」 という内容の小特集を組んでいた。
早速紹介したいと思ったが、発足したばかりの新制度にヨコヤリを入れることになり、私の考えは 「偏向しすぎている」 と捉えられると思って自重した。
しかし、政府自身が 「価格の妥当性の検証が必要だ」 と言いだしたのだから遠慮はいらない。
菅前総理や孫ソフトバンク社長などの言うなりに任せていたら、日本の大多数の消費者は悲惨なことになる。 そのことをこの機に検証したい。

WEDGEの小特集には、FIT推進派の梶山恵司 富士通総研主任研究員と、慎重派の朝野賢司 電中研主任研究員の二人とも、日本の買取り価格に疑問を投げかけている。
つまり、推進派にしても慎重派にしても、ドイツの失敗例を見ていると日本の買取り価格の間違いを指摘せざるを得なくなる。
まず、推進派の梶山氏の批判に耳を傾けよう。

氏は、買取り制度が正しく機能するには、@発送電の分離、A系統への優先接続などの条件が着実に整備されて行かねばならず、B透明性の高い価格決定メカニズムの構築が不可欠だ、と指摘。
ところが、調達価格等算定委員会が決めた価格案はドイツに比べてやたらに高いだけでなく、ドイツのようにコストや稼働実績になどの詳細なモニタリング調査を行っておらず、消費者に負担を強いるものになっている。

買取り価格.JPG

上の図は、日本とドイツの買取り価格比較。(1セントを1.2円で計算)
まず、最も量を稼ぎやすい風力発電の場合、ドイツは約11円。これに対して日本の価格算定委員会が決めた価格は2倍の22円。
太陽光の買取り価格は、ドイツはメガソーラーと家庭用では分離されている。
メガソーラーが21.5円なのに対して、家庭用は29円と優遇されている。
ところが、日本ではメガソーラーが家庭用に便乗した形で分離されておらず、ドイツの倍近い40円 (消費税込みで42円) となっている。太陽光パネルは国際価格となっているのに、日本がドイツの倍近いというのは納得できない。
また、バイオマスの買取り価格は発電規模により異なるが、日本で今回参考にした5000キロワットの場合は、ドイツが9円なのに対して日本は3倍以上の32円。

このように、日本の価格算定委員会が高い価格を設定したのは、コスト分析が非常に甘く、業界の言い値 (コスト+利潤) をそのまま飲んだから・・・。
再生可能エネルギーの最大の特徴はバイオマスを除き燃料費が不要なこと。つまり、発電コストは資本費と維持管理費。建設コストを如何に低く抑えるかにかかっている。
このため、ドイツでは研究機関や民間コンサルタントが、建設コストや稼働実態について徹底的にモニタリング調査を行い、モジュール、インバータ、架設台、配線、設置費、接続許認可費などの性能と内容、価格をしっかり把握している。
ところが、日本ではヒアリングの際に提出された業界団体の資料を鵜呑みにし、補助金の実績に対する実態調査も行っていない。つまり、コスト内訳の資料もなく稼働率の記載もない。
また、補助金の対象実態はデモ用発電というものが多く、実用性に欠けるものが多い。したがって結果的に業界に甘く、一般家庭や企業の負担は非常に重いものになった。
このままでは下図のドイツのように、大きな買取り負担額が累積されてしまう。

負担額.JPG

再生可能エネルギーが、これからの基幹電源になってゆくには、発電コストが化石燃料と同等にならねばならない。このことをグリットバリティというが、太陽光、風力、バイオマスのそれぞれが、グリットバリティのロードマップを持たねばならない。
補助金による再生可能エネルギー分野には、建てることが目的化して屍が累々と山積。
買取り制度の場合は、建設費は自前で調達し、買取り価格が低くするために建設費を抑え、メンテナンスに工夫を凝らすことが求められる。


これに対して慎重派の朝野氏は次のように主張している。
FITは、その普及に最大の目的を置いているので、再生可能エネルギー事業を 「出来るだけリスクの少ない投資にしょう」 と投資家のわがままを聞き入れている。
これでは、努力してコストを引き下げようと言う企業意欲を失わせることになる。
コストが安くなると、買取り価格の切り下げという形で反映される。
ということは、事業者にとってコスト削減という基本的なインセンティブが働かない。
つまり、全家庭や企業の負担を最小限にして行こうとする意欲が発揮されない。
官僚好みのぶったくり制度になりかねない。

ドイツでは、国民の負担が想定以上に膨らみ、その運用に苦慮している。
当初の買取り価格を高く設定したため、太陽光発電でバブルが発生した。
投下資本は7年ぐらいで回収でき、後は企業努力をしなくても確実な利益が保証される。
このため投機資本が太陽光発電に殺到し、導入実績が目標値を大幅にアップするという導入ラッシュ現象が連続して発生した。
この導入ラッシュ現象により、ドイツは2011年だけでFITの負担総額は1兆3600億円にも及んだ。
一世帯当たりの月額負担額は約1000円と推計される。年間では約1万2000円。これは各家庭の電気料金の20%に近い。
この負担額の半分は太陽光に費やされてきた。それなのに、総発電量に占める太陽光の割合はたったの3%にすぎない。
つまり各家庭は、年に3000〜4000円を投機家の口座へ払わされている勘定。
ドイツのシュピーゲル誌は、「太陽光は、ドイツの環境政策の歴史で、もっとも高価な誤りである」 と批判している。

筆者は、ドイツの太陽光から学ばねばならぬ大きな2つの教訓があると言う。
1つは、国内の市場が拡大しても、必ずしもそのマーケットを国内メーカーが獲得出来るとは限らないということ。
ヨーロッパ各国のFIT拡大で全世界のFIT累積生産量は08年の1900万kWから11年の9200万kW以上へと、3年間で4倍以上に拡大している。その中で中国と台湾の生産シェアは08年の30%から11年の74%へ拡大している。
そして、ドイツのQセルズ社という太陽光の名門企業は、今年の4月に倒産し、多くのドイツ人が職場を失った。
2つ目の教訓は、買取り価格の改定頻度を上げて費用の抑制を図っているが、大きな駆け込み需要が発生して目的が果たせていないこと。

駆込み需要.JPG

上図を見ていただきたい。
ドイツでは09年から今年の4月まで、都合5回の買取り価格の切り下げを行っている。
しかし、投機慣れした需要は、価格切り下げ直前に駆込み導入を行い、需要を先喰いしてしまう。
このために、10年と11年の2年間は、長期年間目標の2倍にも及ぶ太陽光が搭載され、家庭の電気代の負担は想像を大幅に越えるものとなった。
つまり、ひとたび投機の対象となった場合、政府と国民は完全にカモにされるということ。
再生可能エネルギーの拡充という美しい言葉の裏に、食い物にされている政府と正直者の家庭と企業があることを忘れてはならない。

こうした教訓の上に、朝野氏は買取り価格の改定は、バブル発生が予想されたら1年毎とか半年毎ではなく、1〜2ヶ月で改定すべきだと説いている。
そして、買取り価格は法律で決まっているからと、コスト+利潤で設定するのではなく、導入目標値から設定した方が合理的だと主張。
そして、再生可能エネルギーの普及が本当に日本経済の成長に寄与するのかを、再検証すべきだと提言している。 割高な再生可能エネルギーの普及に国民の所得が奪われ、モノが買えないことによる不況を、真剣に考える必要があると説く。
実際にドイツでは「導入され過ぎたFIT」と「費用負担の増大」に困り、買取り価格の低減を急いでいる。
言い換えれば、導入を抑制さえすれば費用負担、ひいては経済への悪影響が避けられる。
日本は、やたら導入量ばかりを優先させるのではなく、出来るだけ少ない国民負担で、より多くの電力供給を得ると言う、効率化の観点から買取り価格を設定すべきだと結論づけている。

最後に、両氏の考えに私の感想を付け加えるならば、日本では原発で減った電力は直ちに再生可能エネルギーの拡大に向かうのではなく、シェル・ガスや石炭のガス化などにより、CO2が少ない効率的エネルギーを採用する方向へ向かうだろうと考えられる。
これは、決して再生可能エネルギーを否定しているのではない。
イノベーションの伴わない再生可能エネルギーは、いくら太鼓や笛で囃しても絶対に増加しない。
シェル・ガスの開発には、ベンチャー企業の画期的なイノベーションがあったことを忘れないでいただきたい。必要なのは、再生可能エネルギー分野でのイノベーション促進策にほかならない。






posted by uno at 05:58| Comment(1) | 太陽光・太陽熱・風力ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
タリフは、導入後自然エネが普及するに従って下がるのが普通で、そのことを考慮すると現時点でのドイツと日本とを比較して買取価格が2倍高いという分析はあまり意味を持たなくなるのではないでしょうか。
Posted by at 2012年11月30日 21:53
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。