2012年08月05日

木質PC版 (CLT) のJAS化が予想以上に早いかも?!


さる1日に、東大農学部ホクセイギャラリーで開かれた「木質構造の成長戦略セミナー」で、森林総研の青木謙治主任研究員から、「国産材の3つの技術開発」についての発表があった。
3つの技術開発とは、(1) ツーバィフォー工法への国産材利用の技術開発  (2) 大規模 (含む中規模) 木質構造建築の技術開発  (3) CLT (クロス・ラミネーテッド・ティンバー) の技術開発。
このうちの (1) のツーバィフォーへ国産材を利用する技術開発については、2011年3月5日のこの欄で「開発された国産2×4部材の成果と問題点」 (シンポジウム・講演・展示会のカテゴリから入る) で取り上げている。 したがって、敢えて付け加える必要性は感じなかった。

問題は、(2) の大規模木質構造建築と、(3) のCLTの技術開発。
これについて詳しく書きたいのだが、何しろ有料のセミナー。 高いカネを払って聞きに来ている人の立場を考えると、全てを公開することは出来ない。
ただ、小規模の住宅と大 (中) 規模の建築物では、以下の6点で求められている性能とか強度が異なっている。

◆階高   住宅の場合は、吹き抜け空間では階高5メートル以上を求めることがあるが、一般的には 
 2.5メートルか、高くて2.7メートル。 これに対して大規模建築では4〜5メートル高。
◆床のスパン  住宅の場合は、特殊な例を除いて4〜5メートル。これに対して学校建築は10メートル
 を求めている。8〜12メートルのスパン対応が不可欠。
◆床荷重  住宅の積載荷重は1800 (N/u) に対して、事務所建築の場合は2900 (N/u) と6割
以上の荷重を求めている。
◆モジュール  日本の住宅の場合はほとんどが910mmで、あっても1メートルまで。
 これに対して大規模建築は狭くて1メートル〜1.2メートルが標準。
◆耐火   住宅の場合は準防地域以外では耐火の要求は低いが、3000uを越える大きな建築物や
学校など用途によって耐火要件が厳しくなる。
◆構造計算  2階建ての住宅の場合は、スパン表や所定の壁倍率を用いると構造計算は必要ない。
 しかし、大規模建築の場合は、全てに構造計算が求められる。

この構造計算を容易にするためには、基本的なデーターが揃っていなければならない。
このため、森林総研では以下の3つのプロジェクトが進行中。
●スギ大径木を公共建築に利用するためのプロジェクト。(2011〜2013年)
●国産材を多用した大面積床システムの開発。(2012〜2014年)
●厚物合板を用いた高強度耐力壁・床構面の開発。(日合連との共同開発)

このほかに、下記の2つのプロジェクトも併行して進んでいる。
●早稲田大学を中心とした今年から始まった「木造3階建て学校建築の実大火災実験」
●各団体や学識経験者を網羅した「大規模木造設計情報整備事業」(農水省補助事業)
これらの研究が進み、大規模木質構造建築物が本格化するのは、2年先のことになろう。これを遅いと見るか早いと見るかは、立場によって異なるだろうが、エントリーを志す企業は、今から本格的に取り組まないと間に合わない。

次はCLTの技術開発。
木質構造の中高層ビルへの対応としては、日本ではH型鋼を集成材で耐火被覆するハイブリッド集成材による軸組しか今まで考えられてこなかった。
この具体例として金沢・Mビル、名古屋・丸美産業本社ビル、越谷・ボラテックビルなどがある。
しかし、これは木材を耐火被覆として採用しているため、木肌を見せている。このため、燃え代分だけ大きな材を使わねばならず、価格的には高くならざるを得ない。したがって、このハイブリッド集成材工法が日本で爆発的に普及するとは考えられない。

北米では、206材などによるプラットフォーム工法で4〜5階建のアパートが数多く建てられ、最近では6階建も出現してきている。
アパートだけではなく、リゾートホテルやオフィスビル、工場建築物にも大型木質構造が多用されている。
しかし、日本とは決定的に異なるのは、木肌を見せずに石膏ボードなどで完全に耐火被覆を行っていること。
そして、その上に、必要とあれば見えがかりにランバーを採用。
木をどこまでも構造用材として採用している点に特徴がある。

このプラットフォーム工法とは別に、最近ヨーロッパで採用されてきているのが木質PC版と言ってよいCLT (クロス・ラミネーテッド・ティンバー)。
このCLTというのは、2センチ以上の厚みのある板を、合板のように繊維方向を交互に5層以上に重ね合わせ、プレキャスト・コンクリート版並の強度を持たせたもの。
これを、床や壁材として採用している。
このCLTは、いずれもオーストリアで生産されており、スウェーデンを皮切りにイタリア、フランス、イギリスなどで10階建の高層建築にも採用され、最近カナダでも採用されて、世界的に注目を集めてきている。

このオーストリア生まれのCLTについては、2011年2月15日の「森からのエネルギー創出」欄 (シンポジウム・講演・展示会のカテゴリから入る) を見て頂くと内容が理解出来る。
ヨーロッパやカナダで採用されているのは、接着剤でティンバーをラミネートしたKLH社のもの。
何しろ、最大長さ16.5メートル、最大幅2.95メートル、厚みは20センチの一体版が工場生産されるので、構造躯体としての強度があるだけでなく、コンクリート版では得られない断熱性能が得られ、ビル建築の省エネ化、脱CO2の面で評価が高まってきている。
ただし、地震のないヨーロッパでは鉛直荷重だけをクリアーすれば良いが、日本では耐震性の面で高層建築の場合には特殊な接合金物の開発が必要に・・・。
もっとも、10階建以上の高層建築ということになってくると、耐震性よりも耐風性がより問題になってくるのだが・・・。 
いずれにしろ版と版の接合強度が大問題となってくる。

日本においてCLTで先行しているのがオーストリアのThoma社。
かなり前に壁倍率7倍という38条認定をとり、日本でいくつかの実績を積んでいる。
Thoma社の特徴は、接着剤を使わずにダボでラミネートしており、シックハウス対策面でも完全な製品。
詳しくは2011年4月5日の「成城学園に出現した驚きの木質PC版工法」(木質構造・林業・加工業のカテゴリから入る) を参照していただきたい。
同社の活躍に注目していたのは限られていた。
日本においてCLTが本格的に注目されるようになったのは、今年の2月6日につくば市で行われた国産スギによるCLTの上部に40トンの荷重をかけて実質5階建の実大耐震実験から・・・。

http://www.integral.co.jp/blog/other/2012/02/06-659

これは1×3メートルの小さなパネルに過ぎず、とても採用出来る段階の製品ではない。
ヨーロッパやカナダで採用されたのは、KLH社の特許品。
したがって、ツーバィフォーのようにオープン工法ではなく、日本で特認を取らない限り採用は難しいと私は考えていた。

安藤先生.JPG

ところが、安藤直人先生から、「多くの集成材メーカーがこの国産スギによるCLTの分野にエントリーしょうとしており、JAS化に向けて予想以上の早さで進行中」との発表があった。
「JAS化が進んでいるということは、オープン化の方向にあるということですか」 と聞いたら、「その通り」 との返事。
KLH社の特許問題とか、接合金物の開発などの関係がどのようになっているかを質さなかったので、先生の発言を100%そのまま受けることは出来ないが、一歩前進と考えてよいようだ。
「ただし、JASに記載されるのは国産スギだけというわけにはゆかない。ヨーロッパ材とか北米材によるCLTも使え、その中にスギ材も入っているという形になるだろう」 とのご託宣。

LVLとCLTによる大型ビルや学校、図書館などの公共建築。 それにプラットフォームによる大型アパート造や養護施設や園児施設など、その耐震性と省エネ性の面から木質構造が本格的に見直されようとしている。
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