2012年08月15日

代替がない!  2030年に原発比を15%にするのは困難? (上)


住宅業界の皆さま。
工事関係者は、全員がお盆休みのことと存じます。
しかし、営業関係者はお盆も正月もないはず。
人が休んでいる時に働いて、世の中少し暇になったらのんびり休みましょう。
暑い日が続きますが、英気を養われ、元気にご活躍されることを祈念いたします。


さて、経産省・資源エネルギー庁新エネ対策課は、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度について」 という43ページにも及ぶ説明書を7月付で発表。 紹介するのが遅れたましが、ご参考に。

http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/dl/120522setsumei.pdf

この5ページを開くと、2010年で年間約10,000億kWh の消費電力のうち、化石燃料、原発、再生可能エネルギーの占める比率が下記のとおりとなっている。(再生可能エネルギーとは、水力と太陽光・太陽熱、風力、バイオマス、地熱、海洋エネルギーなど)
それを2030年に、@原発をゼロ、A15%、B20〜25%にした場合のそれぞれ比率の概算案が政府から提示されている。「国民の皆様は、どちらを選びますか?」 と。
                           
          (2010年実績)      ………………(2030年の選択)………………
                         原発ゼロ  原発15%  原発20〜25%
化石燃料        59.3%        65%     55%      50%
原  発         30.8%         0%     15%    20〜25%
水  力          8.7%         9%      9%       9%
他の再生可能エネ   1.2%         26%     21%    21〜16%

さて、話を分かり易くするため、約10,000億kWhの電力需要を、全て100万kWの原発で賄うと仮定すると、一体何基の原発が必要かを試算してみました。
原発は24時間、365日働くが、稼働率が80%とすると1基で年間約70億kWhを発電する。
ということは、143基あればことが足りる勘定。
再生可能エネルギーを1%増やすということは、100億kWhの発電量が必要だということ。
当然のことながら、再生可能エネルギーを16%増やすということは1,600億kWhの電力量を新規に増やすことであり、100万kWの原発だと23基に該当。
同じことで21%増やすことは2,100億kWh増やすことで、100万kWの原発30基の新設に匹敵。
26%増だと2,600kWhで、100万kWの原発37基に相当する再生可能エネルギーを、新規に求めねばならない。

大多数の人は、今度の福島原発事故で、経済産業省をはじめとする日本政府、大学の諸先生、東京電力などに対する信頼感を失った。 このため、2030年には原発がゼロでやってゆけるのであれば、そうありたいと願っている。
それには再生可能エネルギーで、100万kWの原発37基分の発電の可能性を立証しなければならない。その立証なしに感情論で「原発ゼロ」を叫ぶのは、菅直人や鳩山由紀夫と同様に経済音痴のボンクラで、無責任野郎でしかない。

そこで、まず一番身近な水力から見てゆきます。
2010年で8.7%を占めているから、2030年には1.3%は増えて、簡単に10%になるという気がする。
1.3%は130億kWhであり、100万kWの原発2基分くらいに相当。
あの黒部第4ダムの最大出力は33.5万kWで、年間発電量は10億kWhと言われている。1.3%増やすと言うことは、クロヨン規模のダムを13ヶ所も増やすのと同じ。
先のエネ庁の「固定価格買取制度について」の12ページを開いて見てください。
中小水力としてカウントしているのが200kWから3万kWまで。
1.3%増やして水力の比率を10%にするには、2〜3万kWの水力発電所が数十ヶ所も新設しなければならない勘定。
「ダム不要論」 が唱えられている昨今、2030年に9%に到達するのがやっとではなかろうか。

とすると、2030年に原発をゼロにするには、太陽光、風力、バイオマス、地熱で、100万kWの原発37基分。 原発の比率を15%にするには100万kWの原発30基分を増やさねばならない。
そんなことが、本当に可能なのだろうか。
私は不勉強で、この可能性を精査した記事を見たことがない。
自分の分かる範囲で調べてみることにしたが、間違っていたらお詫びします。
乞う ご指導を。

まず、一番可能性が大きそうな地熱発電から・・・。
今年4月17日の資源エネルギー庁の発表数字によると、日本の地熱資源量はアメリカ、インドネシアに次いで世界で3番目に多く、2347万kWにもおよぶという。この数字は、100万kWの原発の20基分に相当する。資源が少ないと言われている日本だが、さすがは火山大国だけのことはあると自慢したくなる。
しかし、実際に地熱発電で活用されているのはその2.3%の53.6kWにすぎない。

◆世界の地熱資源量トップ8と地熱発電設備容量と活用率
順位  国  名     地熱資源量(kW) 地熱発電設備容量(kW) 活用率(%)
1   アメリカ        3000            310          10.3
2   インドネシア     2780            120           4.3
3   日  本        2347             54           2.3
4   フィリピン        600            190          31.7
5   メキシコ         600             96          16.0
6   アイスランド      580              58          10.0
7   ニュージーランド   365              63          17.3
8   イタリア         327             84          25.7

この資料から判断するならば、日本は地熱発電に特化して、100万kWの原発20基分を稼げば良いではないか、という気になる。
ところが下記の本を読むと、地熱発電というのはそんなに簡単に開発出来ないことが分かる。
江原幸雄著 「地熱エネルギー ―地球からの贈り物―」(オーム社 1600円+税)

P1060284.JPG

著者は九大名誉教授で、NEDOの地熱開発委員会の委員長、国際地熱協会理事、前日本地熱学会長を兼ねていた名士。 大分の大岳発電所や八丁原発電所などで数々の実績を積む一方、世界各国からの留学生も受け入れてきている。
日本で地熱開発が注目されるようになったのは、1970年代に襲われた2度にわたるオイルショック。
石油代替エネルギーの開発を目指して、当時の通産省が音頭をとって、「サンシャイン計画」という名のプロジェクトが、太陽光、石炭液化、水素、地熱発電で進められた。
地熱探査技術や掘削技術。 特にプラントの心臓部であるタービンでは、現在でも世界の70%のシェアを日本の富士電機、三菱重工、東芝が握っている。
また九州電力の子会社である西日本技術開発は、地熱の開発・資源量調査、掘削工事の設計・施工管理、地下資源・設備の維持管理などで一貫したコンサル体制を構築して世界を相手に仕事をしている。
このように、地熱の技術開発の面では日本は世界に誇る蓄積を持っている。
それなのに1994年以来、18年間に亘って日本の地熱発電設備容量は横ばいのまま・・・。
その原因は3つあった、と著者は書いている。

1つは地熱発電の高いコスト。
オイルショックが起こった時、多くの企業がサンシャイン計画に飛びついた。しかし、オイルの価格が下がってくると、地熱発電はコスト的にそれほど魅力がなくなってきた。
地球は高温の塊。 深さ6370キロの中心部は太陽の表面温度と同じ約6000℃。
地球の体積の99%は1000℃以上あり、100℃以下の部分は表面に近いたった0.1%だけ。
しかし、現在の技術では深く掘って高い地熱を直接採り出すことは出来ない。
現在用いられているのは、断層などを伝って雨水が地下に浸みてゆき、火山などのマグマなどで200℃〜300℃以上の高温化した熱水と蒸気が溜まっている地下1000〜3000メートルにある地熱貯留層に生産井を掘る。
生産井を上昇する間に熱水が沸騰して、蒸気が発生する。
その蒸気と熱水をセパレーターで遠心分離して蒸気だけをタービンに送って発電する。
熱水はそのまま還元井で地中へ戻される。この地熱発電の仕組みを「シングルフラッシュ」という。
また、フラッシャーと言うタンクの中で2次蒸気がつくられタービンを回す「ダブルフラッシュ」という技術も開発されている。
その外に100℃程度の温泉水に水より沸点が低い媒体で加熱してタービンを回す「バイナリー発電方式」も採用されてきている。

P1060292.JPG

しかし、一番問題になるのは持続可能なサステイナビリティ。
試験井で1本2億円、生産井だと5億円もかかる。したがって、出来るだけ多くのkWを発電したがる。
探査の精度が低く、5kWの設備を設けたのに持続可能な数値は3kWで、設備が遊休化したり、蒸気を取り過ぎて「減衰」するという開発リスクから なかなか脱却できない場合が多い。
著者はE=E0 を維持することが地熱発電の基本中の基本だと強調している。
これを厳守しておれば、温泉業者が懸念しているような、源泉が枯れるという懸念も払拭される。
技術がかなり進んだとはいえ地熱発電には「掘って見なければわからない」という賭の要素がある。
このため、出力3万kWで建設コストが約200億円かかる地熱発電よりも、1基3000億円かかるが100万kWを発電できる原発に走ってきた。 これが18年にわたる地熱発電の開発停滞の原因。

このほかに、地熱発電の好立地点の82%が国立公園内にあることと、先ほど触れた温泉業者の反対運動が地熱発電の前に障碍として横たわっている。
しかし、環境省は国立公園問題に前向きだし、著者が力説するように全業者がサステイナビリティということを最重点に考えれば、温泉問題も解決させられる。
資源エネ庁の固定価格買取制度では12ページを見ればわかるように、地熱発電業界は ほぼ満額の回答を得ている。特にIRR (投資に対する収益率) では地表調査、調査井の掘削など地点開発に46億円程度かかることと事業化に結びつきにくいところから13%という特別枠の設定を行っている。

しかし、現在18ヶ所ある地熱発電のうち最大規模が大分・八丁原の11万kWであり、3万kW以上のものは7ヶ所しかない。
資源エネ庁は2347万kWの資源量のうち2030年までに600万kW、つまり100万kWの原発6基分ぐらいは建設されると予想しているらしい・・・。
だが、WEDGEの編集部ではコストやリスクから考えて、「せいぜい100万kWの原発1〜2基程度にしかならないのではないか」 との業界関係者の声を6月号に集録している。
これだと、37基どころか30基も、23基も危ない。
posted by uno at 06:50| Comment(0) | 太陽光・太陽熱・風力ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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