2012年08月30日

グッドマン社を買収した世界一の空調業者・ダイキンのこれから


8月29日の日経朝刊の1面トップが、「ダイキン、グッドマン米社を買収」。

2010年に、アメリカのキャリア社、ヨーク社、トレー社を抜いて、空調事業で世界のトップに立ったダイキン工業。
しかし、アメリカの上位3社を追い抜いたのはダイキンだけではなかった 。
2011年には中国の珠海格力電器と広東美的電器もアメリカの3社を抜いて、それぞれ2位と3位の位置を獲得している。
なにしろ、年間の新設住宅着工量が1000万戸と言われている中国。
かつて150万戸とか200万戸と言っていた日本やアメリカに比べても桁違いの着工量。それだけにエアコンの需要も大きい。
格力電器一社のエアコンの生産量は日本全体の需要の3倍に近い2000万台と言われている。

日経の資料では、2011年の売上高はダイキンの1兆400億円に対して2位の格力電器が9500億円で差がたったの900億円。
3位の美的電器は8000億円だから2400億円開いており、4位以下のキャリア社とは3400億円以上開いている。
そして、年商1600億円のグッドマン社の売上高がダイキンにプラスされると、ダイキンの売上は1兆2000億円となり、2位以下を2500億円以上引き離すことになり、当分トップの座は安泰。
しかし、一頃の勢いが失われたとはいえ、中国の1000万戸の需要から目を離すことは出来ない。
また、ダイキンは2009年に格力電器に対して日本国内で販売する50万個のインバーターエアコンの生産委託をはじめとして5項目で協業することで合意。
エアコン技術の核とも言えるインバーターの技術移転で、中国市場におけるダイキンの比率が今以上に高まることはあるまい。
とするならば、生産金額でダイキンが世界のトップで居られるのは、あと2〜3年程度のことかもしれないという気がする。

P1060341.JPG

もっとも、同日の日経に掲載されたように、ダイキンのマーケットは上図のように世界全体に広がっている。
そして、今度のグッドマン社の買収によって、米州のマーケットが大きく伸びる。
1兆2000億円をエリア別に分類すると、おおよそ下記の比率になる。
  日  本     32%
  米  州     21
  欧  州     17
  中  国     16
  ア ジ ア      9
  オセアニア   2.5
  アフリカ他   2.5
つまり強い円で、M&Aが続けられる以上は、簡単に首位の座を明け渡すことはないという意見。
一方、必要なことは売上高ではなく、技術力だという意見も多く聞かれる。

ダイキンという会社が大阪で設立されたのが1924年。ラジエーターのチューブのメーカーとしてであった。
エアコンを初めて生産したのが1951年。当初は業務用エアコンに特化していた。
馬力に換算すれば2〜120馬力が業務用エアコン。
そして、業務用セントラル空調機となると40〜数百馬力。
この数百馬力のものをチラーとかターボ冷凍機と呼ぶ。これを堺工場で生産していた。
私がダイキン工業と関わりを持つことになったのは、0.8〜2.5馬力までの家庭用エアコンを滋賀工場で生産するようになってから。
しかし、当初のダイキンの家庭用の個別エアコンは、特別に優れた機能を持っていなかった。ナショナルでも三菱でもよかった。

ただ、私が属していた会社は、関東地域でいち早くQ値が1.4W、C値が0.9cu/uという高断熱・高気密のR-2000住宅に取り組んだ。 
そして、高性能住宅だと1馬力とか2.8kWという性能は不要だということを知った。
そこで、「0.5kWのエアコンを開発してほしい」 とダイキンに頼んだ。
そしたら、「いくらでも生産出来ます。しかし、需要が限られ、手造りになるために価格は2.8kWよりも50%も高くなります」 と言われて断念。
そして、考えたのが当時8〜10帖用として使われていた3.5kWのエアコンで、30坪の1階全部を賄えないかということ。それには、ダクトで各部屋に必要な換気量と空調された空気が送れるということが大前提になる。
そこで、ダイキンの越谷にあった倉庫で、実大規模のダクトを配して、3.5kWの個別エアコンで、各部屋に必要な換気量と冷暖房された必要空気量が送れるかどうかという実験を行ってもらった。
結果はOK。
それに気を良くして、さらに前向きに取り組んだ結果、80坪以上の大きな家でも5〜8kWの空調機1台で十分だということが分かってきた。 そして、個別エアコンよりも動力の方が、ランニングコスト面で有利ということも明らかになった。こうして、再度堺工場にご支援を得た。

つまり、個別エアコンよりもセントラル空調換気の方が 風量が1/3〜1/4程度と少なくて済み、風が直接身体に当たらないので快適。しかも全館に温度差がない。つまり、うたたねしても家の中で冬期も夏も、風邪をひく心配が皆無。
その上、ダイキンが除加湿機能を付加してくれたので、花粉や排気ガスの心配がなくなっただけではなく、ダニ・カビの心配も一切なく、ウィルスも発生しない。今までにない健康で、満足度の高いセントラル空調システムが完成。
そして、このシステムを私共の会社で独占的に囲いこもうとは考えなかった。その効率的なダクト・システムを含めてオープンに公開してよいとダイキンに伝えた。
しかし、当時のダイキンには、この素晴らしいシステムを一般化するだけの力がなかった。

ダイキンは、創業者の取引関係から住友銀行のグループとされてきた。
住友グループには、住友不動産と住友林業という有力な住宅メーカーがある。
しかし、住友不動産は新築よりも「そっくりさん」のリフォームがメイン。また、住林は木軸がメインで、両社ともに北米のセントラル空調換気システムに関しては 無関心。
木軸、鉄骨プレハブともに梁の関係でダクト工事がことのほか苦手。
唯一、ツーバィフォーをメインとする三井ホーム、三菱地所ホーム、東急ホームの3社だけがセントラル空調換気システムに熱心。住友不動産ホームとは格段の差。 とくに地所ホームは、全棟セントラル空調換気システムを採用している。
しかし、三井ホームには東芝という三井グループがついており、地所ホームには三菱電機がついている。そして、東急ホームにはデンソーが・・・。
このハンデのため、ダイキンが開拓出来たのはハーティホームとスウェーデンハウスの一部のみ。

ただし、ダイキンがいち早く除加湿機能付きのセントラル空調換気システムに取り組んだ効果が、個別エアコンの「うるる」と「さらら」として結実し、個別エアコンでは大きな差別化を果たしてきている。
その延長線上に、開発されてきたのが業務用デシカ。
この業務用は、現在のところダイキンの独壇場。
そして、今秋からいよいよ住宅用のデシカが滋賀工場で生産される予定だが、正直言ってもたついている様子・・・。
その理由は単純。
業務用はRC造が圧倒的。コンクリートを隙間なく打つので、断熱性はともかくとして気密性は十分に確保されている。
除加湿をコントロールするには、この気密性能が大きく物を言う。誰が考えてもスカスカの家では効果が薄い。

ところが、住宅の大手メーカーは、いずれもこの気密性能が大の苦手。
鉄骨プレハブは見事なまでのスカスカ。隙間相当面積は2cu/uを出すのがやっと。
このため、年内に新しく決められる省エネ基準でも、諸先生方は大手プレハブメーカーのご機嫌を伺い、国交省の意向も汲んで気密性能を棚上げしょうとしているとの噂も・・・。
これは、何も鉄骨プレハブに限ったことではない。 木軸メーカーも、肝心のツーバィフォーメーカーも、1cu/uのC値が保証出来ないでいる。
あれほど力んでいた地所ホームや東急ホーム、三井ホームがR-2000住宅から撤退しなければならなかったのは、0.9cu/uという気密性能を担保出来なかったから。
つまり、施工という現場工事を工務店に外注している大手企業には、気密性能を担保する力がない。
気密性能を消費者に保証出来るのは、自社に施行部隊を抱えている直施工業者だけ。
つまり、R-2000住宅で実績の持つ企業か、ドイツの0.3cu/uと言うパッシブの厳しい基準を厳守出来る工務店など、最近力を付けてきている一部の地場ビルダーに限られる。

ダイキンの井上会長の新居には、手造りの家庭用デシカが入っていると聞いている。会長の奥さんはことのほか大満足しているとの話も聞いている。
ただし、井上会長邸の気密性能がどの程度で、デシカが求めている最低の気密性能はどの程度のものかは現時点では明確になっていない。
そして、トップの優れた決断が、営業マンへの応援メッセージとして、具体的に貢献してくれていない点が、何とももどかしい。
ここに、ダイキンの最大の悩みがある。

もう1つの悩みは、業務用で指定している断熱材を巻いた200φのダクトを簡単に配することが可能な設計技術者と、それを確実に施工できる住宅用の工事屋が、全国的に存在しないこと。
「ダクト設計と施工マニュアル」 を作成出来るスタッフも不在。
ダイキンには英語と中国語を喋れる技術屋が、最近では腐るほど居る。
しかし、その技術屋はほとんどが電気屋か機械屋。
建築の現場に明るい建築屋があまりにも少ない。エアテクノの一部に若干いるが、限られている。
このため、マニュアルの叩き台を用意したいと考えているが、簡単に出来ないのが泣き所。

業務用では、吊り天井に関して東日本大震災で構造体との揺れとの共鳴が大問題になった。だが、ダクトを配する場所はビルだと確実に確保されている。
そして、ヨーロッパでは、住宅にはセントラル暖房はあってもセントラル冷房は今までなかった。
夏期は乾燥期なので、外ブラインドで日射遮蔽をすればことが足りた。
このため、最近になって地球温暖化対策として求められてきたクーラーも、個別エアコンで対処出来ている。
日本も、アジアも個別エアコンで暑さをしのいできた。
ところが、北米大陸では 個別エアコンはモーター・イン・ホテルぐらいにしか採用されていない。
約10年前に、北米へ赴任する工学博士に、「セントラル空調換気システムでないと絶対に北米のマーケットは開拓出来ません」 と口を酸っぱくサジェスチョンさせていただいた。
残念ながら現実はその通りに推移し、ダイキンは北米住宅ではプアなマーケットしか入手していない。

そういった意味で、今回セントラル空調換気専門業者のグッドマンと提携したことは、ダイキンにとっては非常に大きな意義を持っていると私は考える。
というのは、住宅用デシカ換気の除加湿のメリットが、高温多湿のフロリダ半島などで全面的に認められると、爆発的な需要を掘り起こして、それが契機となって日本へ逆輸出が起こる可能性が非常に高いと考えられる・・・。 その爆発にこそ、ダイキンは全力を傾注すべき。
ダクト工事が当たり前の北米では、除加湿のメリットが消費者に理解されれば、家庭用デシカはあっという間に普及する。ただし、気密性能がどの程度になるかという点で若干の危惧はあるが・・・。

そのことを見越して、すぐに動こうとしない日本の工事外注業者に対する働きかけを、一切やめた方がいいと私は考える。
ムダな費用がかかるだけで 成果は期待できない。
気密性能が出せないヘボ業者に、わざわざ頭を下げて人海戦術で回っても意味がない。
やる気のない者は追わない。
直施工の地場業者と前向きで意欲的な消費者のみを対象にして、エリアと人員を絞り込んだ軽装のスタッフとギリギリの生産コストでのデシカ販売作戦に切り替えるべきではなかろうか。
そして、地味に設計・施工マニュアルを作成し、設計と施工業者を育成してゆくべき。
そしたら、数年以内に、フロリダ半島あたりからすごい反応が届き、日本でも一大ブレークが必ず起こる・・・というのが、部外者人間の無責任な感想。

昔から、「果報は、練って待て」 と言うではないか!!


posted by uno at 20:48| Comment(0) | 冷暖房と除湿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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