2012年09月10日

完成間際の 「さすけ」 邸 i-smart の現場を拝見 (上)


今、住宅関係で、もっとも賑わっているネットをご存じか?
それは「さすけ」というハンドルネームのブログ。
なんと最近では多い日には5000件、少ない日でも2000件のアクセスがあるというからすごい。

http://ameblo.jp/ismart/entrylist.html

これを開いて、最新の「もうすぐ大工工事完了!」や「設備設置中」 を開くと、外観や内装、設備などの写真を自在に見ることが出来る。
書き込みは2011年の6月15日に始まり、これまでに約450日の間に 延べ175回の書き込みがあった。およそ2.5日に1度の割合という勘定。
この間、プラン作りからはじまり、ローン、契約、坪単価、タイル、夢発電、防蟻処理の問題など、都度深い洞察力での書き込みが、多くの消費者の琴線に触れて、アクセスを呼んできている。

したがって、今さらながら一条のi-smart の性能とか、仕様などに触れようとは考えない。
上記のブログを読んで頂くとほとんどの問題点は議論されている。
換気などについて、若干触れたい気はするが、それは別の機会に譲ろう。
私が「さすけ邸」の現場を拝見して特に気になった点が4点ある。
1つは、完成後の各種の測定のために、やたらと配線工事が多いこと。

CD管.JPG

上の写真を見ていただきたい。何10本ものCD管の中に細い配線が詰め込まれている。延べ41坪程度の住宅で、100ヶ所以上で測定を行う計画だという。
私も何戸のかの住宅で、メーカーなどに頼んでいろんなデータを取ってもらったが、いずれもセントラル空調換気の家なので温湿度ムラがほとんどない。
つまり、温度と湿度に関しては完全にバリアフリー。
このため、多くても7〜8ヶ所に測定器をつけた経験しかない。
それよりも、1ヶ所でもいいから長期間に亘ってデータをとった方が、実質的な効果が多かった。
以前、ネットフォーラム欄とこの欄で紹介した hiro 工博の数年間におよぶ室内外の温湿度差をコンピューターで一覧出来るようにしたデータと、各用途別の電気の使用量の推移表。
これだけで必要情報は網羅されており、非常に参考になった。
ともかく、さすけ邸では、それ以上の精密なデータをとろうという計画。
普通の人はそこまではやらない。
そこで、こっそり さすけさんに勤務先を聞いてみた。
予想した通り国立の大きな研究所勤務で、工学博士。
なぜそこまで精密なデータを取ろうと考えたかと言うと、一般の消費者にデータ取りを頼んでも、せいぜい協力してもらえるのが1年だけ。
2〜3年の協力をお願いすると軒並みに断られる。
そこで、所員の何人かが住宅を建てる適齢期を迎えているので、自分たちで理想の快適・省エネ住宅を建て、継続的にデータをとることにしたのだという。
とりあえずは自分の趣味としてデータを取ることにしており、嵩んだ配線費用はどこまでも自己負担というから泣かせる。
痛く同意するとともに、感心させられた。

今から22年前、カナダ政府と日本政府の後援でツーバィフォー協会がR-2000住宅を国家事業として取組んだ時、当時の建設省や建研をはじめ、各大学は積極的に協力してくれた。
しかし、自分の家をR-2000住宅並みの高性能住宅にしようと考えた個人は 建設省にも建研にも、学者先生にも、ダイキンの中にも居なかった。
しかし、それは運動を推進していた私たち地場業者の側にも問題があった。大手住宅メーカーが 気密性が担保出来ないので去って行ったあと、地場の中堅メーカーで全国の需要を受け入れる体制がつくれなかったから・・・。対応出来る地場が、北海道、岩手、仙台、福島、栃木、千葉、埼玉、東京、横浜、群馬に限られていて、中部や関西方面は弱かった。

そうした背景の中で、唯一大学教授でR-2000住宅なみの高性能住宅の建築に踏み切ったのが千葉工大の小峯先生だけ。体験を踏まえた小峯先生の話は内容が重く、大変に教えられるものがあった。 
残念ながら他の研究者はどこまでも机上論。 
カナダとの7回にもおよぶR&D会議で、いつもカナダ側の具体論に対して日本側の発表は実験室での実験段階の域を出ず、実践活動を行っている者からは、意識のすれ違いをヒシヒシと感じさせられた。
その机上論の延長線上に出されてきているのがLCCM住宅であり、HEMS。
それに対して、さすけさん達のグループが目指しているものこそ、私は本物だと思う。
出来る限り協力して行きたいと考えます。

気になった2つ目は、最近のトステムやYKKのサッシを見ればわかるように、枠の見付け寸法が非常に小さくなってきていること。
これは、アルミサッシやアルブラサッシは枠の性能が低く、枠の見付け寸法を出来るだけ小さくしてダブルやトリプルのガラスの面積を大きくした方が、サッシとしてのU値 (熱貫流率) が向上出来ることが最大の理由。
ところが、このサッシメーカー戦略の影響を受けて、サッシの枠だけではなく、ドア枠や幅木、さらには階段室のササラ桁まで薄く細くした方が、モダンでカッコイイという風潮になっている。
建築のデザイン屋さんが、機能を放棄して見た眼の薄さ、スッキリさに走っている。
これは、決して喜ぶべき現象ではない。 
非常に問題点の多い現象だと思うのだが・・・。

なぜなら、ウッドサッシの場合は、断熱性能と耐震・耐火強度を上げるにはある程度見付け面積を大きくし、ケーシング枠で周りを囲まない限り納まってくれない。 このため、ウッドサッシはメタボでダサイという風評が 一部の建築屋から出されてきている。
何回かの火災現場の跡地調査や防火実験に立ち合って、私はアルミサッシ枠やアルブラ枠、樹脂枠よりも、ごっついウッドサッシ枠の方がはるかに防火性能に優れている事実を目撃している。
少しぐらいカッコ悪くても、アルミクラッドされたウッドサッシを採用することが、直下型震度7の地震が予想されている東京では、防火対策から考えて絶対的条件だと信じている。
よほど敷地に余裕がある場合と過疎地以外では、この考えを捨ててモダンと呼ばれる薄さに走る愚は避けたいと願っている。 
この考えが、どこまで消費者に納得いただけるかどうか・・・。

そして、さすけ邸では高さが1200程度のサッシの前板までもが薄くて貧弱な形状に変わっていた。
前板は、時には小さな花瓶などが載せられる余裕のある存在だった。その前板の余裕のある機能が放棄されてタテ枠よりも短くなっていたのには、うら寂しい。
長期間の使用では、必ず問題が発生してくると思う。 しかし、当面は使い勝手よりも見た目のデザイン、スッキリ感が最優先されたのだろう。

このサッシの見付け面積の薄さが、最近は内部のドア枠や幅木、階段室のササラ桁にまで影響を及ぼしてきている。

ケーシングなし.JPG

上の写真は、玄関と台所との堺にある壁。
壁上部に、1階での唯一のクーラーのドレーン管が見えている。 
2×4の壁を2重に組んで、各種の機器の司令塔と小物置場になっているのは、なかなかのアイデェアであり、細工。
そして、ドア枠はどこまでも薄い。
小さな戸当たり部分に、ゴム系のパッキングがついているのはさすがだが、こんな薄い枠では反ったり狂ったりするのではないかと心配になった。

枠の欠きこみ.JPG

しかし、心配はご無用。
枠の厚みは正確に計ったわけではないが20ミリ程度はあり、石膏ボードが回る範囲が上の写真のように欠きこみがしてある。
10ミリ程度の薄い枠に見えるが、欠きこみで細く見えるだけで、実際には20ミリ以上はある。
しかし、10ミリ程度の見えがかり枠だから、今までのようにトメ加工をするわけにはゆかない。上下枠の出を少し短くした突きつけ方式を採用。
これだと、冬期の過乾燥でも、ケーシングのトメ部分の離れが目立たず、クレームになることが避けられるという配慮によるのだろう。
しかし、アメリカでは、ケーシング付き枠付き内部ドアの施工は、一人前の造作大工だと、誰がやってもヶ所当たり3分間しかかかっていない。
何回タイムスタディをやっても、10ヶ所のドアを1人の造作大工さんが30分間でこなしている。

それなのに、ケーシングを排除したこの薄さ万能主義の横行は、大工さんの仕事を難しくし、現場作業量を大幅に増やして生産性を落としている。石膏ボードを薄い枠ぴったりに加工する作業は、ことのほか難しく、時間がかかるはず。 誰か、タイムスタディをやってくれませんか!?
古い人間と笑われるかも知れないが、私は欧米のケーシング付きの枠にこだわりたい。
それが嫌な人は、買ってもらわなくても良いと思うのだが、甘すぎる判断だろうか・・・。

細いササラと幅木.JPG

ササラ桁と幅木も薄くなった。
ササラは今までは30ミリはあった。それが20ミリ程度になっている。
芯々910ミリだとこれでも良いが、階段室は1200ミリを求める消費者も多い。
その場合は、どう対処するのだろうか?
また、幅木はもともと薄かった。
裏に反りをふせぐために欠け込みがはいっていたが、それでも10ミリ程度だったろうか。
そして、高級住宅だとセイの大きなものを採用した。
幅木と回縁は豪華な木の造作材を求めたのは昔の話。
今は、木を隠す方がカッコ良いと考える若手が増えてきた。
鉄骨プレハブとマンションの薄くて短い幅木で、名刺が1枚入るだけの隙が空いているものが良いとものだという価値観に毒されてきている。

幅木の入隅.JPG

厚さがせいぜい6〜7ミリ。高さが50ミリ程度。
これでは出隅、入隅をトメ加工で納めると、冬期はクレームの続発となる。
そこで、プラスチックの部材が開発され、マンション住まいの人間には何の抵抗感もなく受け入れられている。
「スマートでカッコいいじゃん」と。
しかし、欧米の木造住宅を見慣れてきた者にとっては、「文化として許してよいのか!?」 と野暮なことを言いたくなる。
しかし、ほとんどがマンション育ちの世代。
ことさら「木の文化」 などと騒ぐ方が、日本ではおかしいのだろう。





posted by uno at 05:52| Comment(0) | ゼロエネルギーハウス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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