2012年10月15日

訴訟されない政府!!  大手に配慮した省エネ見直し案 (下)


ご案内のとおり、「住宅の省エネ基準見直し案」が策定され、10月9日から11月7日まで、下記のパブリックコメント欄で建築主の意見を求めている。ただし、下記欄は閉鎖されたらしく、問い合わせは国交省住宅局住宅生産課 (35-5253-8111,(内線39464,39465,39466) 案件番号155120719) まで。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=155120719&Mode=0

本来だったら消費者だけでなく、地場ビルダーにも声を上げて欲しいとお願いするところだが、意見を具申するには住所、会社名、個人名、メールアドレスが不可欠。しかも2000字以内と限定されている。 もし、会社名を出したら補助金事業等でチェックされるかもしれない。したがって提出するならどこまでも個人名義とならざるを得ない。 私は個人名義で具申するつもりだが、2000字では書ききれないので困っている。
そうしたこともあり、この欄で省エネ基準の見直し案について、私が感じている率直な考えを述べてみたい。勘違いだらけかもしれないが・・・。

◆まずGJ (ギガ・ジュール) 表示と換気の熱回収率の評価
一次計算例.jpg
上図ように、今回は、GJ (ギガ・ジュール) で表示することにしている。
ギガ・シュールというのは仕事量、熱量、電気量を現す単位。 
いままでは主に建築などの大きな工事では用いられてきた単位。したがって、これを用いることは何にも違反はしていない。
しかし、省エネの先進国ヨーロッパではキロワット表示が当たり前。 日本でもキロワット表示が当然だと考え今までやってきた。 ところが、何故か知らないが、「良くないこと」 になるようだ。
環境後進国の日本だけが、なぜ一般消費者に馴染みがなく、役人や学者にのみに都合が良いギガ・ジュールを採用するのか。 その積極的な意義が全く理解できない。
ご存じのように、J (ジュール) は、KJ (キロ・ジュール)、 MJ (メガ・ジュール)、GJ (ギガ・ジュール) と変化する。  KJは1000ジュールで、MJは100万ジュールで、GJは10億ジュール。 理科が苦手な消費者もビルダーも、この単位を覚えないと省エネは語れなくなるらしい。
いまどき、「黙って従え」 という北朝鮮並みの上からの押し付け。

一次エネルギーで見ると 1GJ=277.8kWh。
上の図の東京の120uの住宅の基準消費一次エネルギーは79.9GJ。
こう言われても、ほとんどの報道関係者その数値が適切なのか、大きいのか、少ないのかが分からなかったよう。
79.9×277.8=22,196kWh。 これを120uで割ると185Kwh/u・年 となる。 そこではじめて、日本の東京の一次エネルギー基準は、ヨーロッパの基準 120kWh/u・年 に比べて54%も上回っていることに気付く。
ところが、哀しいことに日本のジャーナリストでそのことに気付いていたのはほんの一握り。
つまり、政府は日本の消費者だけではなく、世界の世論にも日本の基準の低さが指摘されないようにするため、敢えてギガ・ジュールという役人と学者用の基準を採用したのではなかろうか・・・。
これは、どこまでもゲスの勘ぐり。

ついでに、それぞれのギガ・ジュールを読者の皆さんが即座に分かるようにkWh/u・年に翻訳しておきます。
・暖房エネルギー    18.2GJ = 42.1kWh/u・年
・換気エネルギー     4.6GJ = 10.6kWh/u・年
・照明エネルギー    10.8GJ = 25.0kWh/u・年
・給湯エネルギー    25.2GJ = 58.3kWh/u・年
・家電等エネルギー   21.1GJ = 48.8kWh/u・年
・一次エネルギー計   79.9GJ = 185.0kWh/u・年

いずれにしても、役所へ提出する書類はGJ にするのはやむを得ぬにしても、消費者と打ち合わせとか業者の打ち合わせは今まで通りkWh/u・年 で行くことにしましょう。 国際的に通用しない尺貫法をメートル法にしろというのなら話は分かるが、国際的に通用しているkW法をGJ 法に切り替えろというのは役人と学者の傲慢さ以外の何物でもないという感じ・・・。 堂々と併用してゆきましょうよ。 それにしても国交省というのは、厄介な仕事をやたらと増やしてくれますね。

次は、換気エネルギーの消費量。
東京の120uの住宅の換気エネ消費量を4.6GJ と決めた根拠は、120u×2.4m×換気回数0.5回×余裕率1.1を乗じ、比消費電力:0.3W/(m3/h)と設定して求めたもの。
しかし、この4.6GJ で分かるのは学者先生だけ。 私共住宅屋はこれにわざわざ277.8を掛け、120uで割って一次エネルギーを算出し、それを2.73で割って二次エネルギーを出さないと建築的に理解出来ないようになっている。
つまり、4.6GJ というのは、上記で紹介したように一次エネルギーでは10.65kWh/u・年 であり、二次エネルギーでは3.9kWh/u・年。
そして問題なのは、欧米各国では換気の性能・・・・つまり熱回収率を大きく問題にしてきている。
それなのに上の図からは、日本では換気運転に必要とするエネルギーだけを問題にしていて、熱回収問題はネグレクトしているかのように感じられる。
たしかに、換気の熱回収は総熱損失量の中に含めるべき性質のもの。
しかし、太陽光エネルギーほどではないが、90%を越す熱回収率を実現するには設計担当者の意識付けが非常に大切。
したがって、機械換気に要するエネルギー量とは別に、回収されるエネルギー量を設計的に評価出来るものにしていただきたいと熱望したい。

◆小住宅に対する配慮
床面積比.jpg
120u以下の小さな住宅を、ヨーロッパのように一律 u当たりの kWh で評価するのは たしかに酷な面がある。
現に鎌倉のパッシブハウスの場合は、100uに満たなかったので、年間一次エネルギーが156.7kWh/uとなってしまった。
この鎌倉パッシブハウスを上図の低減率で暖冷房、換気、照明、給湯だけを減じて計算してみたら、約145kWh/uとなった。 この低減率が正しいかどうかは別にして、一律にu当たりで論じるのではなく、住宅の規模によって減ずることは、それなりに評価したい。

◆Q値からU値表示に変えるのではなく、両値の併用こそ!!
外皮.jpg
R-2000住宅でカナダの資源エネルギー省が言っていたのは、床面積当たりの熱損失ではなく、外皮からの熱損失。
2000年までに、カナダの新築住宅の外皮全体の断熱性能R-20以上にして、家庭で使うエネルギーを1/4にしょうというものだったことは、前々回に紹介済み。
カナダではフィートでR値を表現しているため、これを当時のK値 (Kcal) で表現するには4.88/20=2.44Kcalとしなければならなかった。 そのK値がU値に変わったので、カナダが言うところのR-20の平均外皮性能は0.284Wということになる。
しかし、これでは消費者にもビルダーにも理解してもらえないので、例えば東京エリアだと外壁のU値は0.29W以上、天井のU値は0.19W以上、床のU値は0.3W以上で、サッシのU値は2W以上にしなさいというふうに定めた。
今回の基準の見直しで日本がやろうとしていることを、25年も前にカナダがやっていた。
つまり、上図右にあるように総熱損失率を外皮面積で割った数値、それがR-20だった。
さて、これから 総熱損失量/外皮面積 に移行するのは良しとしよう。
問題はその平均U値をどのように定めるかである。
パッシブハウスのように床、壁、天井の外皮を0.15W以上にし、サッシは0.8W以上にするのか。それともカナダのR-2000住宅のように0.284Wとするのか。
あるいは、日本ではサッシを含めて外皮全体のU値を0.4程度とするのか。
また、気密性能と換気の熱回収をどのように位置づけるのか。
その肝心のことを棚上げにしてQ値が良いとか、U値が優れているという議論は噴飯もの。

日本で実際にR-2000住宅を運用してみて、U値だけでは北海道と東京などの実態的な差が分かりにくいという問題が生じてきた。 そこで坂本雄三先生が、上図左の総熱損失量を床uで割るQ値という概念が世界で幅広く使われていることを教えてくれた。
この概念は、U値よりもはるかに消費者にとっても、ビルダーにとっても その住宅の性能実態像を理解するには手っとり早かった。 この概念は、ヨーロッパをはじめ広く世界各国で使われていたので、あっという間に日本全国へ拡がった。
Q値表示を止めて、何もU値一本に絞らねばならないという理由は、どこにも見当たらない。 
それなのに、それを強行しなければならないというのには、何か特別な理由があるからではないかとゲスは考えざるを得ない。

おそらく、あまりにもQ値の概念が普及してしまって、大手のやっているトップランナー方式のQ値がやっと1.9W。 消費者の目からは、「こんな程度でモタモタしているくせに、スマートハウスと声高に叫んでわれわれを騙そうとしている。本当に日本の大手住宅メーカーはけしからぬ」 と言う声が次第に大きくなってきているせいだと推測する。
国交省は、「地域の中小工務店のことを考えると、いろんな面で妥協的な数値しか示すことが出来ないでいる」 としきりに工務店を楯にとって弁明している。
だが、実態は大手プレハブメーカーが、気密性能が出せないので省エネ規制から気密性能を外させたばかりではなく、今度はkWh を外して GJ にし、さらには目の上のタンコブであるQ値を外して、世界と比較しにくいU値にしたいとの意図が見え見え、と言えるのではなかろうか。
ともかく、「これからもU値とともにQ値も使ってゆく」 ということを、皆で実行して行こうではありませんか!!

◆合理化という美名のもとに、λ値やη値の手抜き
日射遮蔽.jpg
そして、温暖化が進んで北海道や東北でも、夏の日射遮蔽性能が問題になってきている。
いや、Q値が1.0Wを上回る優れた住宅にあっては、寒冷地でも冬期の日射でオーバーヒート現象が起こっている。性能の良い住宅を造ったがために新しいクレームを抱えて四苦八苦して、最低条件として換気にバイパス機能が求められているビルダーもいる。

ところが、目一杯力んでもQ値が1.9Wしか供給できない低性能の大手。
低性能住宅では、λ値やη値の計算は面倒くさい。V地域まではλ計算は外して欲しいと国交省に頼みこんだ。 断られてモトモトの発想だったのだろうと思う。
ところが、役人がどのように学者先生を口説いたかは知らないが、大手の言い分が満額通ってしまった・・・としか考えられないのがこの項目。
それを 「熱性能基準の合理化」 とは・・・・・盗人の猛々しさ、と言う以外の何物でもない。

ともかく、国交省と大手住宅メーカーは、日本の消費者を徹底的にバカにしている。
「何をしても、国交省が消費者から訴訟されることは、日本では絶対にあり得ない」 との奢り。
こんな輩を相手にしていたら、相手のペースにはまってこちらがおかしくなるだけだから、無視。

消費者に全棟気密測定を行って、最低0.5〜0.6cu/uの気密性能を保証して行きましょう。
そして、U値やQ値ではなく、実生活のデータで月々のエネルギー支出を極力少なくして行く。
また、λ値やη値だけではなく、オーバーヒート現象を無くし、24時間全館空調換気システムと除加湿管理で、快適な夏と冬を消費者に過ごして頂く。
それには、出来るだけ国交省などの補助金事業を当てにしない。 当てにしている大手を、消費者が実質的に排除してゆけるように、こちら側が力を付けて出来るだけ低価格で提供する。 
苦しいけど、消費者に本当に安心して喜んでもらえる道は これ以外にはないようです。




posted by uno at 09:16| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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