2012年11月10日

本体価格が軽自動車並みの家庭用デシカ!!  普及へ重い足枷?


●トヨタ   ビクシスエポック   79〜122万円
●日 産   オッテイ       105〜170万円
●ホンダ   N Box         124〜146万円
●スバル   ステラ        113〜161万円
●スズキ   アルト        80〜110万円
●三 菱   ek ワゴン      98〜124万円
●マツダ   キャロル       89〜112万円
●ダイハツ  ミライース      79〜122万円

日本の自動車メーカーの軽自動車の販売価格。
いずれも、「数万台以上は売れる」 という想定での価格設定。

ダイキンの業務用デシカは2008年から売り出された。 2009年に家庭用空調機を製造している滋賀工場を訪ねて、デシカ開発担当の堺製作所の藪主任技師から、商品の特徴や除加湿のメカニズムを教えてもらった。 その時、滋賀工場にはすでにモデル住宅が建てられていて、Q値が0.8W〜2.7W、C値が0.6〜2.0cu/uの断熱・気密性能でのデータをとり始めていた。
家庭用デシカに対する期待が嫌というほど高まった。

しかし、そのあと工場の生産ラインを見て、つくづく考えさせられた。
昔は、全てがベルトコンベアで流れていた。 それが、数ヶ所ではあるがセル方式に変わっていた。
家庭用デシカは、当初はこの屋台方式でゆくしかあるまい。
しかし、慣れてくればセル方式で、一人で日に3〜5台生産出来るのではなかろうか。
ということは月に20日稼働とすると60〜100台。年間700〜1200台売らないと工場は軌道に乗らない。
そこで、滋賀工場に主任技師にそっと聞いてみた。
「セル生産でやるとして、年間何台の最低ロットがデシカで必要ですか?」
「そうですね。 最低3000ロットは欲しいとこですね」

私は苦い経験を持っている。
ダイキンが新しく開発してくれた、顕熱交換機によるセントラル空調換気方式に飛びついた。
ダクトを簡単に配することが出来るように関東ギャングネールトラスに掛け合って、下の写真のような平行弦トラスを使って自在にダクトを這わせた。
最初はこのトラスを全面的に使っていたが、次第に北側部分だけで十分だということが分かってきた。
このため、212のTJIと平行弦トラスとの価格差は少なくなり、ほとんどの家庭でセントラル空調換気システムを採用してもらえた。

平行弦トラス.JPG

しかし、ハーティホームのキャパシティは年間50戸。
他社でダイキンの優れたシステムを採用する会社がなく、顕熱交換機はハーティホームのためだけに造られていると言う状態になり、「顕熱交換機を一台造るたびに工場は20万円赤字になるのです」 と愚痴をこぼされる始末。
「その赤字を消費者に転嫁されては困る。システムを開発したのはダイキンだから・・・」 と突っぱねたが、使う側でもロットを気にする必要があることを悟らされた。
そして私なりに、何とか家庭用デシカのロットをまとめたいと動いてみたが、残念ながら軌道が合わず、カラ回りになってしまった。

ダイキンとしても、家庭用デシカの開発に当たっては、このロットのことで真剣に議論していたことは痛いほど分かる。
ダイキンには技術者が腐るほどいる。
しかし、その技術者はほとんどが機械の技術者か、電気の技術者。
残念ながら建築の技術者がいない。
いや、ビル工事に強いから、ビルのことが分かる技術者は、かなりいる。
しかし住宅、中でも木造住宅の設計と工事現場に精通した技術者は皆無と言って良い。
このため、ダイキンは住友グループでありながら、住友不動産ホームや住友林業に食い込んでいない。 もちろん住友グループといってもダイキンは外様に過ぎず、直嫡子ではない。
しかし、この家庭用デシカは住友不動産ホームにとっても、住林ホームにとっても、持ち込み次第では「最大の差別化商品」にすることが出来るので、絶対に売り込まねばならなかった。
それが、ダイキンには出来なかった。
ダクトを簡便に配する「設計・施工マニュアル」 を作成出来るスタッフが、一人もいなかったから。

ビル用デシカを住宅用に変質させて売り込むためには、ダイキンは2つの大きな準備を始めなければならなかった。
1つは、「除加湿機能付きセントラル空調換気システム」 として、200φのダクトを簡単に設計・施工出来るように、社外の識者を糾合して、「設計・施工マニュアル」 と必要な部品を作成すること。すでに見てきたとおり、これを作成出来るスタッフがいないのに社内だけに拘ったので、いたずらにムダな時間を過ごしてしまった。
もう1つは、どうしても200φでのダクト工事が難しいプレハブメーカーのために、100φのダクトによる「除加湿機能付き換気システム」 を開発し、そのための「設計・施工マニュアル」と部品開発を併行して進めるべきであった。
その2つの開発に、社内に住宅の現場に明るい技術者が不在なのだから、住宅メーカーの技術者を主体性を持たせて参加させるべきだった。
その度量がなかった。

これがなされておれば、この3年間の準備期間に、最低3000のロットは用意出来たはず。
そして、数年以内に間違いなく1万というロットが期待出来たはず。
しかし、9日付の日経新聞では、「年間2000ロット」 を目指すと書かれていただけ。
やみくもに営業マンに各社へ働きかけさせたが、マニュアル一つ揃っていない現状では的を得たサジェスチョンが出来ないので、成果らしい成果が得られなかった。
したがって、「2000ロット」 という、工業製品としては最低限の数字しか発表出来なかったというのが現状。
その結果は、本体だけで軽自動車並みのバカ高い価格になってしまった。

ご案内のように、フォードの最初のT型車は、一定の量産体制に移行した時の原価を考えて、最初に850ドルという低い販売価格を設定した。 当時の自動車の価格は3000〜4000ドルであり、一番安い車でも1000ドルだった。 消費者はフォードの850ドルと言う価格に驚き歓呼した。そして、T型フォードのブームが起きた。
この前例に鑑み、これはどこまでも個人的な見解だが、家庭用デシカの本体価格は50万円以下であるべきだと私は考えていた。5年後に年間1万ロットを売るには、最初の販売価格は可能であれば実質的に数をこなすビルダー段階では30万円台であるべきと考えていた。
そしてこの商品は、住宅用ダクトの実践経験の無い単なる営業マンでは売ることが出来ず、窓口を少数精鋭に絞るべきではないかとも考えた。でないと、家庭用デシカが負担する営業経費がどう考えても高くなりすぎるから。

いずれにしろ、これはあくまでも部外者の妄言。
本体価格が100万円ということであれば、5年後でも2000ロットが精一杯ということになり、かつての顕熱交換機と同様の命運を辿るかもしれない。
あれほど期待したのに、夢物語はあえなく萎むかもしれない。
ともあれ、ダクト工事や空調工事を含めたら、120uの標準家庭でのイニシアルコストがいくらになるのか?
この「デシカホームエア」を売って行くためには、プレスリリースに書かれていた以外の諸点で、消費者はもとより、これを扱うビルダーや工事業者から疑問が出されている。
昨日中に、3人の方から質問を頂き、とりあえず10項目に絞ってダイキンに質問状を提出させていただいている。
おそらく、来週中には返事がいただけるものと思う。
その上で、お互いにもう一度熟慮してみようではありませんか。

posted by uno at 10:04| Comment(1) | 冷暖房と除湿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大変興味深く読ませていただいています。

イニシャルで100万で買って、そのまま30年使えるならいいのですが 15年後にかいかえろ といわれると・・・  そのころ 高気密、高断熱が当たり前になりっていて、同様の製品が安くなっていたらまだいいですが・・・  書かれているように逆の可能性もあり・・・
そのあたりの保守についてどう考えているのかダイキンに聞きたいと思っています。
Posted by つかやん at 2012年11月14日 23:44
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