2012年11月25日

インターネット、携帯電話時代の、小中学生の想像を絶する「いじめ」


山脇由貴子著 「震える学校」 (ポプラ社 880円+税)

震える学校.JPG

私の小中学生の時代には、いじめられたという経験がない。
多少意地悪はあったが、根に持つほどのことはなく、私はめったに出席しないのだが同窓会にまで恨みを抱え続けるということはなかった。
2人の子供も、学校へ行きたくないとか、いじめられたと訴えたことはなかった。
多少あったにしても、企業人として仕事に没頭していて、子供の世話は奥方任せ。 それでも、大問題になるようなことはなかった。
したがって、最近のテレビや新聞が報じるいじめの多発と、その陰険さは想像を絶するもので、到底理解出来ないものだった。
ところが、この本の実態報告を読んで、インターネットや携帯電話の匿名での書き込みが、今までの常識を完全に覆していることを、嫌というほど知らされる。

A子ちゃん。
小学校のころは、しょっちゅういじめられていた。
そのため、中学校は絶対にいじめられないようにしょうと考え、皆が行かない遠くの中学校を選んだ。
そして、出来るだけ明るく振舞い、そして率先して他の子の悪口を言うように努めた。
その方がいじめられなくて済むから。
A子ちゃんは、昔のようにいじめられることに怯えていた。
学校では、いつも誰かがいじめられている。
A子ちゃんのクラスでは、友達関係が非常に変わり易くなっていた。グループも直ぐ変わるから、うっかりすると自分がいじられる側に回る可能性がある。
それを避けるために、以前は仲の良かった子をいじめる側に回ることもあった。
最初は、その友達が可哀そうだと思った
しかし、「ウザイ」とか「キモイ」とかは、誰でも言っていること。
それを言わないと、「ノリが悪い」といってこちらがいじめられる。
しかし、悪口を言っているのは意外に疲れる。
友達と話をしている時も、いつ反撃されるかと気を使うので疲れる。
本音が言えないし、メールもちょっと返事が遅れるだけで気まずくなったりするから、いつも気が抜けない。
そして、明るく笑いあっている友達が、匿名で悪口を書いているかもしれない。
本当に気を許せる友達が一人もいない。
このため、A子はいつのまにかいじめの加害者になっていた。
被害者の親が学校に訴え、当面の間の登校停止処分を受けた。
その知らせを聞いて、A子の母親はびっくりした。
「とてもいじめをするような子供ではないと考えていたのに、何が原因で、登校停止処分をうけるほどになってしまったのか・・・」と。

1ヶ月前の10月30日付のこの欄で、インターネットの薬物のような中毒性と、その匿名性という特徴のために、アメリカのほとんどの人々が精神病と言える障害に冒されているという「毒になるテクノロジー」
(ローゼン他著) を紹介した。
日本でも、2チャンネルをはじめとして、匿名による中傷合戦がネット上で延々と続いている。
実名を名乗っての、消費者の住宅各社の情報交換なら非常に参考になる。
ところが、匿名となると、やたら悪口だけが目立つ。1回か2回は その傾向を知るために私もそうしたチャンネルを開いたが、あまりの中傷合戦に2度と訪れる気がしなくなった。
得られる多少の情報に比べ、神経が逆なでされる雰囲気に我慢が出来なくなるから。
したがって、私は思いつきのツィッターや2チャンネルなどは、ほとんど訪ねないことにしている。
しかし、2チャンネル等への投稿マニアは、まさしく「毒まみれのテクノロジー中毒症」に罹っていると言って良かろう。
しかし、2チャンネルでキモイとかウザイのターゲットとして選ばれるのは企業とか有名人。
名誉職の代償と考えられなくもない。
ところが、小中学校で匿名のターゲットにされるのは、どこまでも仲間。 

著者は、インターネットと携帯電話が、子供社会のコミュニケーションを2重にし、今までの対面コミュニケーションで培ってきた信頼関係を失わせる結果になっていると警告している。
多くの子供たちは、「親友にだけは本音が言えない」と言っている。 どんなに親しげに振舞っていても、本音を漏らせばネットで悪口を書かれる可能性が高い。
したがって、子供たちは人と人、心と心の繋がりを信じられなくなってきている。いつも不安に怯え、安心出来る人間関係が築けない。
このため、学校で常にいじめが起こる。 いじめが起こっても、どこにも頼る人がいない。安心出来る仲間がいない。

著しい信頼感の欠如が、クラスの中に「いじめのヒーロー」という歪んだ権力を生む。
加害者であり続けることが、唯一身を守る術である世界。 そこでは常に新しいいじめを考案し、皆を盛り上げてゆかねばならない。そうすることが出来る人間のみが、「いじめられない安定した地位を得る」ということを、子どもたちは学習している。
そして、「いじめのヒーロー」たちは、常に自分の立場を脅かす者が出現しないかを厳しく監視している。ちょっとでも自分に対して否定的な素振りがあれば、今度はその子をターゲットにする。そうしなければ、自分を守ることができないから。
このようないじめ社会で生きてゆくには、その社会に適応するしかない。
つまり、いじめに加担するという、歪んだ「適応」。

ネット社会の匿名性が、小中学校では常に新しいいじめを量産している。
そのいじめは次第に加速化し、劇場化してくる。
屋上に連れて行かれ、手擦りに向かって押されるとか、「死ね!」などと言われたりする。
加速化し、劇場化したいじめは極めて危険であり惨酷。
殴る、蹴る、刃物で刺すという身体的な暴力、恐喝、脅迫もある。社会のルールでは明らかに犯罪。
大人の社会では、当然法の裁きを受けるところだが、学校という名の「聖域」では、先生もそれを黙視している場合がある。

それだけではない。
匿名性を良いことにして、子供が教師に対してあることないことを書き立て、真面目な教師を学校から追放するという悪質ないじめまでが流行ってきている。
その具体例を読むと身の毛がよだつ。
インターネットと携帯時代の匿名性が、あらゆる信頼関係を破壊しようとしている。
それほど、現在の教育の現場は荒んでいる。

貴方のお子さんとお孫さんが、今までの常識では考えられない大変苦しい立場にたたされているという現実を、まず確認する必要があります。
その上に立って、この問題を正してゆくにはどうしたら良いか?
単に担当の先生や校長先生、教育委員会で解決出来る問題ではない。
全ての保護者が学校と一緒になって考えてゆかないかぎり決して解決されない。
筆者の都児童相談所員として、また児童心理司としての数々の経験談からの提案には、心を動かされるものがある。





posted by uno at 08:47| Comment(1) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日本はイジメが多くて酷いですね。
イジメは殺人に等しい重罪。 学校でも、職場でも、最優先で指導するべきことだと思います。
Posted by ケノン at 2012年12月25日 22:43
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。