2011年11月10日

この円高。思い切って日本を出てゆきましょう !?


最近の新聞やテレビで騒いでいるのは、もっぱらアメリカとEUの弱体化による円高とTPPとタイの大洪水。

とくに円高については、毎日 歯ぎしりする思い。
東日本大震災と原発事故で日本は徹底的なダメージを受けた。その上にタイの大洪水の被害が重なっている。それなのに、なぜこんなに急激な円高なのか ?
円高になると輸出産業がやられ、日本企業の海外進出に拍車がかかり、ますます国内の空洞化が進むというマイナス面を強調する議論が多い。
たしかにそれは大問題。
それよりも安くなった海外の商品や農産物がドッと日本へ押しかけてきて、日本経済のデフレ化がますます進行する点を強調すべきではないか。
よく、「TPPへ加入して自由化をすると日本の食料の自給率が低くなる」 と農協とそのお抱え代議士さんが大騒ぎしている。
しかし、円高で安くなった海外の食料品がドッと入ってきていることに対しては、何一つ文句も付けず知らぬ顔。日本の食料自給率の低下には、デフレ政策も大きく影響している。

世界の先進国の中で、この20年間経済をデフレ目標に運営してきたのは日本だけ。
日本だけが経済成長をしてない。これは民間企業がだらしないからではなく、まぎれもなく日銀のデフレ政策で頭を抑えられてきたから。
4%の経済成長がないから、やたらな国債発行増が続き、その結果財務省主導の増税路線へひた走る。
その日銀と財務省に対して、何一つ文句が言えない政府の情けない姿。
このため、この円高でさらなるデフレ化が進み、日本の沈没は加速する。
そうした批判を防ぐために、日銀はポーズとして円高に介入しているが、あくまでも逃げ口上のためのゼスチャーに過ぎない。日銀そのものが恒常的効果を期待していない。
円高還元セールで、「消費者物価が値下がりするから良いではないか」 と喜んではおれない。
賃金がますます下がり、住宅を建てようという意欲がさらに萎えてくる。

今回の円高には、前々回紹介した高橋洋一氏の「マンデル・フレミング理論」 という背景もある。
国債発行が日銀直接引受けではなかったということもあろう。増税という情けない手段しか用意出来なかったが復興需要を見込んでいるマーケットの読みもあろう。
しかし、根本的には「円高」ではなく、2番底が囁かれているアメリカの「ドル安」と、ギリシア、イタリアなどの破綻国や準破綻国を抱えているEUの「ユーロ安」にある。
東日本大震災と原発被害を受けている日本よりも、アメリカやEUの方がより深刻だとマーケットは考えている。
しかし、このユーロ安で、ドイツやフランスの企業が得た利益は、想像にあまりある。

日本の円安を予想していたモルガン・スタンレーのチーフアナリスト ロバート・フェルドマン氏は、
予想が外れた原因を、「今回は円高ではなく、当面は金利を上げられないアメリカのドル安と、ユーロ安によるもの」 としている。
そして、「この円高で日本から企業がどんどん海外へ逃避してゆくので輸出能力が低下し、経常黒字が減ってゆく。このため2012年末には1ドル90円に、2013年末には1ドル100円まで円安が進もう」 と大胆な予想。
この予想を見て、経済のプロでない私はニンマリした。
円が90円とか100円にまで安くなれば、農水産物の輸出は増えるし、国産材の輸出も増える。
単に自動車とか家電、機械だけでなく地域産品の輸出が増え、地方が活気付いてくる。
地方に活力が戻らない限り、住宅業は潤うことがない。
ひたすらに、円が安くなることを願ってきたので、フェルドマン氏のご託宣に舞い上がった。

ところが、文藝春秋の11月号に掲載されていた中沢孝夫福井県立大教授の「中小企業の海外進出 おおいに結構」 という円高特集の中の1つの記述を読んで考えさせられた。
円高は、大企業にとってはデメリットだけではなくメリットもある。
それは、円が強いとM&A・・・・海外企業の買収が容易になるから。
現に大企業はどしどしM&Aを繰り広げている。
これに対して中小企業は、大企業からの一段の値引き要請で苦境に立たされる。
中小企業にとっては、円高は辛いことだけで、何一つメリットがないと考えていた。
ところが中沢教授の論点には、ハッとさせられるものがあった。

ご案内のように、教授は日経新聞の経済部門の書評を担当しており、何度も面白い本を発掘してくれている。大企業よりも中小企業に明るい。
1990年代にはアメリカへ進出した中小企業の実態を追っていたし、2000年代に入ってからはASEANに進出した中小企業を継続的に追跡している。
したがって観念論ではなく、どこまでも実態論を展開。
NHKスペシャル取材班による 「灼熱 アジア」 の報道にも感心させられたが、今から考えるとNHKの取材は表皮的。取材先は10数社に過ぎなかった。
ところが、中沢教授の取材した中小の企業数は1000社にも及ぶというからすごい。
いや、すごすぎる。

教授によると、日本の中小企業数は44万社。
2009年の時点で海外へ進出した企業数は1万8000社。そのうち製造業は8400社で、その半数強は中小企業だという。
つまり、日本の中小企業の1%以上がすでに海外へ進出しているということになる。
その中小企業の平均的な実態は、最初は一緒に進出した日本の大手企業本社の下請け。
しかし、日本での厳しい条件下を勝ち抜いてきただけの力を持っている。
2年もたつと、現地労働者をきちんと研修教育し、ほとんどの企業が技術移転をスムーズに行っている。
当然言葉の問題があるが、コミュニケーションを積極的にとろうという意欲と意思があれば、言葉の障壁はそれほど大きくはない。
現地の労働者も、必死になって日本語を理解しょうと努力してくれる。
その結果、今までの本社の下請けだけに依存するのではなく、自力で現地メーカーとの取引を開始してきている。
この現地メーカーには日本企業が多い。この場合は、何一つ障碍になるものはない。
それ以外に、欧米系のメーカーとの取引も始まる。

海外との新規取引となると、何と言っても問題になるのが信用。
しかし、海外に進出している「日本企業」ということが、そのまま信用力になっている。まじめな日本人の技術力に対する信頼は想像以上に高い。
そして、海外メーカーとの取引でも言葉はそれほど障碍にはならない。
専門用語だけで、技術者の理解は進む。
問題は価格と納期だという。これさえきちんと守れば、自力で大きくなってゆける。
そんな会社が、非常に増えてきているという。

教授が中小企業のトップに取材したところでは、海外へ進出しない理由としてあげたものは下記だという。
国内の雇用を守りたいと言うのはどこまでも表向きの言いわけ。
面倒な思いをして海外へ出なくても、なんとか現状を維持してゆけそうだというのが大部分。
しかし、先行きの不安から進出しなければならないと考えている中小企業が多いが、リスクがあまりにも大きいことと、中心になる人材がいないという理由で躊躇。
海外へ進出に求められる情報面や資金面、現地での雇用相談や指導に当たってくれる組織も次第に出来あがってきている。面倒な地元の紙幣による賃金支払いや資材購入を支援してくれる地元銀行。いざという時の補償を地元銀行に行なう政府の支援システムもなんとか出来つつある。

次の4つの条件さえ揃えば、中小企業は海外に進出すべきだと教授は説く。
1つは、どこへでも飛び込んでゆく勇気があること。
2つは、伝える経験知と技術を持っていること。
3つは、異なる環境に適応出来る好奇心を持っていること。
4つは、現地とのコミュニケーションを図るため、現地語を覚えようとする意欲をもっていること。
つまり、内向きであってはならない。
日本での経験を持っていて、現地に飛び込もうと言う意欲があるかどうかがカギ。

そして、教授は次のように書いている。
海外に進出した中小企業で、全ての雇用を海外に移した例はない。
海外活動を深めれば深めるほど、日本で高付加価値の技術開発を進める必要が出てくる。
今までの技術ノウハウだけでなく、管理のノウハウを高めることも求められる。
このため、海外へ進出した中小企業の日本における雇用は増大している。
そして、進出した企業に聞くと、口を揃えて 「もっと早く進出すべきだった」 と異口同音に言うという。
日本企業に対する信頼が高いのだから、自信をもって進出すべきだと全員が口を揃えて言っている。

それだけではない。
「円高の今こそ、海外へ出るチャンス。今だと、1億円要する費用が8000万円で上がる !!!」
円高メリットは、大手のM&Aにしかないとした私の考えは大きな誤り。
中小企業にとって、「海外へ進出するなら、円高の時をねらえ ! 」 という新格言が生まれてきている。

私ども住宅業界は、円高というと海外からの資材輸入増や海外研修旅行しか考えてこなかった。
「東南アジアに持って行ける 除湿力が高くて涼しく、イニシァルコストもランニングコストも安い住宅を開発しょう」 などと考えたこともない。
どこまでも国内だけを考え、地場需要に徹してきた。
寒冷地は、それだけで大手との差別化が図れる。しかし、関東以西の高温多湿地用の差別化システムはまだ完成していない。
それを完成させれば、それぞれの国に見合ったローコスト高性能住宅の展開も夢でないかもしれない。

野菜や果物農家、あるいは鮮魚はすでに海外マーケットへ進出している。
円高とかTPPを、農協のように内向け保身の狭い視野で考えるのではなく、日本人の意識を外向きに切り替えのチャンスにすべきかもしれない。
円高は、外向き発想でないと絶対に対処出来ない。
そんな考えを持たされたほど、中沢孝夫教授の文章は胸に突き刺さった。


posted by uno at 08:16| Comment(0) | 海外情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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