2012年11月10日

本体価格が軽自動車並みの家庭用デシカ!!  普及へ重い足枷?


●トヨタ   ビクシスエポック   79〜122万円
●日 産   オッテイ       105〜170万円
●ホンダ   N Box         124〜146万円
●スバル   ステラ        113〜161万円
●スズキ   アルト        80〜110万円
●三 菱   ek ワゴン      98〜124万円
●マツダ   キャロル       89〜112万円
●ダイハツ  ミライース      79〜122万円

日本の自動車メーカーの軽自動車の販売価格。
いずれも、「数万台以上は売れる」 という想定での価格設定。

ダイキンの業務用デシカは2008年から売り出された。 2009年に家庭用空調機を製造している滋賀工場を訪ねて、デシカ開発担当の堺製作所の藪主任技師から、商品の特徴や除加湿のメカニズムを教えてもらった。 その時、滋賀工場にはすでにモデル住宅が建てられていて、Q値が0.8W〜2.7W、C値が0.6〜2.0cu/uの断熱・気密性能でのデータをとり始めていた。
家庭用デシカに対する期待が嫌というほど高まった。

しかし、そのあと工場の生産ラインを見て、つくづく考えさせられた。
昔は、全てがベルトコンベアで流れていた。 それが、数ヶ所ではあるがセル方式に変わっていた。
家庭用デシカは、当初はこの屋台方式でゆくしかあるまい。
しかし、慣れてくればセル方式で、一人で日に3〜5台生産出来るのではなかろうか。
ということは月に20日稼働とすると60〜100台。年間700〜1200台売らないと工場は軌道に乗らない。
そこで、滋賀工場に主任技師にそっと聞いてみた。
「セル生産でやるとして、年間何台の最低ロットがデシカで必要ですか?」
「そうですね。 最低3000ロットは欲しいとこですね」

私は苦い経験を持っている。
ダイキンが新しく開発してくれた、顕熱交換機によるセントラル空調換気方式に飛びついた。
ダクトを簡単に配することが出来るように関東ギャングネールトラスに掛け合って、下の写真のような平行弦トラスを使って自在にダクトを這わせた。
最初はこのトラスを全面的に使っていたが、次第に北側部分だけで十分だということが分かってきた。
このため、212のTJIと平行弦トラスとの価格差は少なくなり、ほとんどの家庭でセントラル空調換気システムを採用してもらえた。

平行弦トラス.JPG

しかし、ハーティホームのキャパシティは年間50戸。
他社でダイキンの優れたシステムを採用する会社がなく、顕熱交換機はハーティホームのためだけに造られていると言う状態になり、「顕熱交換機を一台造るたびに工場は20万円赤字になるのです」 と愚痴をこぼされる始末。
「その赤字を消費者に転嫁されては困る。システムを開発したのはダイキンだから・・・」 と突っぱねたが、使う側でもロットを気にする必要があることを悟らされた。
そして私なりに、何とか家庭用デシカのロットをまとめたいと動いてみたが、残念ながら軌道が合わず、カラ回りになってしまった。

ダイキンとしても、家庭用デシカの開発に当たっては、このロットのことで真剣に議論していたことは痛いほど分かる。
ダイキンには技術者が腐るほどいる。
しかし、その技術者はほとんどが機械の技術者か、電気の技術者。
残念ながら建築の技術者がいない。
いや、ビル工事に強いから、ビルのことが分かる技術者は、かなりいる。
しかし住宅、中でも木造住宅の設計と工事現場に精通した技術者は皆無と言って良い。
このため、ダイキンは住友グループでありながら、住友不動産ホームや住友林業に食い込んでいない。 もちろん住友グループといってもダイキンは外様に過ぎず、直嫡子ではない。
しかし、この家庭用デシカは住友不動産ホームにとっても、住林ホームにとっても、持ち込み次第では「最大の差別化商品」にすることが出来るので、絶対に売り込まねばならなかった。
それが、ダイキンには出来なかった。
ダクトを簡便に配する「設計・施工マニュアル」 を作成出来るスタッフが、一人もいなかったから。

ビル用デシカを住宅用に変質させて売り込むためには、ダイキンは2つの大きな準備を始めなければならなかった。
1つは、「除加湿機能付きセントラル空調換気システム」 として、200φのダクトを簡単に設計・施工出来るように、社外の識者を糾合して、「設計・施工マニュアル」 と必要な部品を作成すること。すでに見てきたとおり、これを作成出来るスタッフがいないのに社内だけに拘ったので、いたずらにムダな時間を過ごしてしまった。
もう1つは、どうしても200φでのダクト工事が難しいプレハブメーカーのために、100φのダクトによる「除加湿機能付き換気システム」 を開発し、そのための「設計・施工マニュアル」と部品開発を併行して進めるべきであった。
その2つの開発に、社内に住宅の現場に明るい技術者が不在なのだから、住宅メーカーの技術者を主体性を持たせて参加させるべきだった。
その度量がなかった。

これがなされておれば、この3年間の準備期間に、最低3000のロットは用意出来たはず。
そして、数年以内に間違いなく1万というロットが期待出来たはず。
しかし、9日付の日経新聞では、「年間2000ロット」 を目指すと書かれていただけ。
やみくもに営業マンに各社へ働きかけさせたが、マニュアル一つ揃っていない現状では的を得たサジェスチョンが出来ないので、成果らしい成果が得られなかった。
したがって、「2000ロット」 という、工業製品としては最低限の数字しか発表出来なかったというのが現状。
その結果は、本体だけで軽自動車並みのバカ高い価格になってしまった。

ご案内のように、フォードの最初のT型車は、一定の量産体制に移行した時の原価を考えて、最初に850ドルという低い販売価格を設定した。 当時の自動車の価格は3000〜4000ドルであり、一番安い車でも1000ドルだった。 消費者はフォードの850ドルと言う価格に驚き歓呼した。そして、T型フォードのブームが起きた。
この前例に鑑み、これはどこまでも個人的な見解だが、家庭用デシカの本体価格は50万円以下であるべきだと私は考えていた。5年後に年間1万ロットを売るには、最初の販売価格は可能であれば実質的に数をこなすビルダー段階では30万円台であるべきと考えていた。
そしてこの商品は、住宅用ダクトの実践経験の無い単なる営業マンでは売ることが出来ず、窓口を少数精鋭に絞るべきではないかとも考えた。でないと、家庭用デシカが負担する営業経費がどう考えても高くなりすぎるから。

いずれにしろ、これはあくまでも部外者の妄言。
本体価格が100万円ということであれば、5年後でも2000ロットが精一杯ということになり、かつての顕熱交換機と同様の命運を辿るかもしれない。
あれほど期待したのに、夢物語はあえなく萎むかもしれない。
ともあれ、ダクト工事や空調工事を含めたら、120uの標準家庭でのイニシアルコストがいくらになるのか?
この「デシカホームエア」を売って行くためには、プレスリリースに書かれていた以外の諸点で、消費者はもとより、これを扱うビルダーや工事業者から疑問が出されている。
昨日中に、3人の方から質問を頂き、とりあえず10項目に絞ってダイキンに質問状を提出させていただいている。
おそらく、来週中には返事がいただけるものと思う。
その上で、お互いにもう一度熟慮してみようではありませんか。

posted by uno at 10:04| Comment(1) | 冷暖房と除湿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月06日

本格的自然エネの増加は、投機ではなく投資から !!


先週11月2日 (金) のBSフジのプライムニュースは、「縮小する日本社会にどう対処してゆくか」 という内容だった。 内容そのものはそれほど面白くなかった。 問題提起した京大松下名誉教授の問題提起が薄っぺらで、議論に耐えられるほど練り上げられていなかったから・・・。
ただその中で、現在の日本の再生可能エネルギー政策に対する 出席者3氏の意見は、非常に批判的で参考になった。
要約すると、日本の再生可能エネルギー政策は、手っ取り早い投機的な要素の強い太陽光と風力発電に偏重しており、「本格的な投資を必要とする地熱発電とか、バイオマス、あるいは小型の水力発電などを 実質的にないがしろにしている」 というもの。
この批判論には、なるほどと肯かせられた。
本来だとメモに取るところだが、たまたま来客があったので聞き流しに。
「明日になって、ハイライト・ムービーをネット・フォーラム欄で紹介すれば良いはず」 と安易に考えたのが間違い。

このハイライト・ムービーというのは実質1時間半の番組を、前後編を合わせても30分ぐらいに縮小される。 
テーマが 「経済成長のない縮小社会への対応」 だから、「日本の再生可能エネルギー政策の矛盾を突く」 という議論は本題から外れたオマケの発言。 そこで編者は、折角の面白い発言を 思い切りよくバッサリとカット。
メモが無いので、誰がどのような発言をしたかが定かではない。しかも、一杯やりながら聞き流していただけだから うかつなことは書けない。 
このため、プライムニュースの紹介ではなく、どこまでもプライムニュースに触発された私個人的な考えだということで読んで頂きたい。

600日前までは、つまり1年8ヶ月前までは、日本のエネルギー問題とCO2を削減するために、日本はあと原発を9基増やして、全電力に占める原発の比率を50%にまで高めることが不可欠。 このことで政府も、学界も、産業界も一心不乱の努力を誓いあっていた。
学術会議で、諸先生からその目的と意義を滔々と述べられ、反論すれば国賊扱いされない雰囲気だった。 つまり、原発が主力になるのだから、深夜電力を如何に活用するか。また、五月の連休時などの電力を、どうして消化して行くかということが緊急問題だとして、学会で報告されていた。
こうした発表に対して、ある学生から、「本当に日本は原発一本ヤリに舵を切っていいのでしょうか。便所の無い高級マンションと言われている原発。その基本的な問題について、何一つ解決策が用意されていません。 原発の安全神話について科学的な解明をするのが学術会議の仕事。その仕事をやらないままに、過去の戦争と同じように玉砕を強要していいのでしょうか」 と言うような疑問が出されたが、建築学会を含めた学術会議の諸先生方は、誰一人まともに答えようとはしなかった。

学術会議を、このように原発推進一本ヤリにまとめ上げた影の功労者は、間違いなく経産省。
経産省のもとに国交省も農林省も環境省も、ひれ伏していた。
つまり、原発の開発さえ推進すれば、日本は化石燃料から脱皮することが出来るし、CO2の削減と言う国際的な約束事も果たせる。 
再生可能エネルギーというチマチマした発電に力を入れても、せいぜい3%程度のエネルギーが改善されるだけ。 そんなことに力を分散させるよりも、原発に絞りこんでいった方が効率的で、国際公約も遵守出来る。 まさに一石二鳥ではないか。

こうした国家としての基本方針が認められていたので、新しいエネルギー投資はもっぱら原発に集中していた。石炭のガス化発電とかバイオマス発電の試みもなされていたが、あくまでもサイドビジネスという位置付けでしかなかった。
まして、百億円単位の投資が求められる地熱発電は、経産省の意向で、この20年来は完全に封印されてきた。
一頃は、太陽光発電では、日本は世界のトップを走っていた。これは、シャープや京セラの技術開発が優れていたと言うよりは、経産省の補助金が大きく物を言った側面が強かった。
その経産省が原発一本に絞りこみ、太陽光などを歯牙にもかけなくなり、一切の補助金が打ち切られて日本の太陽光産業は、落日の道を歩み始めた。

この時に、東日本大震災が起こり、こともあろうに福島第一原発がメトルダウン。
絶対にあり得ないことが、この技術大国・日本で起こった。
そして、いろいろ調べて見ると、安全神話はいろんな事実の隠ぺいの上に構築されていた。 原発立地では動員された地震学者のいい加減な同意書で建築されていた。 そして、アメリカなどからの津波危機の忠告を、日本の政府と電力会社は意識的に無視してきた。
そんな現実が告発され、原発は安全とは言えない構築物であり、それを管理する保安委員会と運用する電力会社の組織のいい加減さが白日のもとに曝け出された。
そして、経産省をはじめとする政府と電力会社は、完全に国民の信頼を失った。

現在稼働している原発は、関西電力の大飯原3号炉と4号炉の2基だけ。
それで、今年の夏を乗り切ったということで、「原発がなくてもやってゆける」 という無責任な意見が出はじめてきている。
しかし、おんぼろ火力発電を総動員しての一時的な危機の克服に過ぎず、オイルとガスの購入費の急増で日本の電力原価は急速に高騰に転じている。
そして、CO2は出しっ放し。

安全性に問題がある原発の再稼働は、認めてはならない。
しかし、今すぐに全ての原発を停止させられるとか、2030年までに全ての原発を停止させられるということは、とてもじゃないが出来ない相談だと私は考える。
つまり、原発に匹敵する省エネ化が次世代省エネ議論をみても遅々として進んでおらず、代替出来る再生可能エネルギー産業が育っていない。
2030年までに、せめて原発20基分に匹敵する新エネルギーが育っていないと、安易に原発を廃棄したことを悔やむことになろう。
それにもまして、原発廃炉には膨大な技術開発が必要。
その膨大な人材確保の見通しもなく、イノベーションの準備も全く揃っていない。 とくに若手技術者の参入がほとんどない。
原発問題は、運転を停止しただけで済む問題ではない。 原発廃炉までには最低で40〜50年はかかるし、使用済み燃料の廃棄までに要するとてつもなく長い時間が必要。 そして10万年間も埋設する地下の立地予定地の見通しは全くない。
決して稚速に走ることなく、それこそ日本の英知を結集して考えていただきたい。

前書きが長くなりすぎた。
経済学的に投機と投資はどのように定義されているかは知らない。 
投機も投資も利益を得る目的で、事業、土地、証券などに資金を投下する点では同じ行為。
ただ、素人の印象としては、アメリカの金融資本に代表されるように、投機というのは短期的に利益を上げる利ザヤ稼ぎなどを目的としている行為に見える。 今期利益が挙げられない経営者は、能力がないと見なされ、首になる。したがって、どうしても短期的な利益追求に走らざるを得ない。
一方、製造業とか鉱業や農業は、工場や設備、鉱山、農地に投下した資本を回収するには、どうしても長期的な視点が求められる。今日投資をして、明日から利益が得られるというものではない。投下した資本の回収には、10年と20年かかることを覚悟して投資をする。
私が言いたいのは、自然エネルギーへの投下資本の回収は、長期視点に立たない限り、国民の利益と敵対するということ。

今年の7月に発表された、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」。 この制度そのものに反対する者はいまい。 誰もが、新しい投資に対して、ある程度の電気代の費用負担は覚悟している。
しかし、資源エネ省の言っていることが、正しいと感じている人は少ない。
例えば、太陽光発電で10kWの発電所をメガソーラーの名で作ったと仮定する。
この建設費は325万円とエネ庁は認めてくれている。さらに10kWの運転維持費として年間10万円は認めてくれている。そして、年間買上価格として48万円としたら、10年間で元がとれ、あと10年間で380万円の利益がでる。それをエネ庁が保証してくれている。
リスクのない投資。 これは、投機そのものではなかろうか。

これが、例えば10kWではなく、1000倍の1万kWであれば、イニシアルコストもランニングコストも最低で30%は安くなるだろう。 そして、国産ではなく中国産の安いパネルへ必ず走る。 そうすれば、投機資本は5〜7年間で完全に回収出来、残りの13〜15年間で40〜50億円強は、濡れ手にアワで儲かる計算になる。
メガソーラー一社の儲けのために、各世帯は最低で100円ずつ電気代が高くなる。 これが50社だと5000円以上。 しかも20年間の間に1000社になるとすると、20年後から20年間に各世帯の年間の負担は2万円以上にもなるのではなかろうか。
つまり、自分の家でいくら節電しても、メガソーラーへ20年間継続して高い電気代を払わねばならないという悔しい勘定になる。 現にそれに近い形がヨーロッパに出現して、大問題になっているではないか。

私のラフな計算に間違いがあることを切望する。
私が言いたいことは、メガソーラーに有利なエネ庁の固定価格買取制度は、かつて土地に群がった金融資本と同じバブルを演出することになるのではなかろうか。 菅前総理や孫ソフトバンク社長を潤すことはあっても、日本国民を決して潤してはくれない劇薬ではなかろうか。
posted by uno at 06:51| Comment(1) | 太陽光・太陽熱・風力ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月30日

パソコン、携帯電話、スマホが惹き起す精神の病


ラリー・D・ローゼン他著「毒になるテクノロジー  iDisorder」 (東洋経済社 2400円+税)

iDisordet.JPG

次の場面を思い浮かべて欲しい。
◆仲間と交流を深めるサイトSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス) で、嫌味を言われた若
 者が、侮辱的な表現でやり返したので、激しい罵倒合戦が数日間も続いている。
◆大学に向かっていた学生が、キャンパス間際の駅で携帯を忘れたことに気付き、1時間目の授業を欠
 席するのを承知の上で、自宅へ携帯電話を取りに戻る。
◆会社員の夫が、家族での久しぶりの外食の席なのにテーブルの上の携帯電話から目を離さず、妻や
 子供から話かけられても、上の空の返事しかしない。
◆母親が夕食の支度が出来たと何度も声をかけるが、ゲームに夢中になっている11歳の息子は、その
 声が聞こえないないかのように画面にクギづけになっている。
◆慢性的な足の筋肉痛を覚えている女性が、同じ悩みを持つ人が集まるインターネットで情報を得て、
 通風やガンにかかっていると思いこみ、大量の情報を印刷して病院に持参し、医師に病状を訴える。
◆試験勉強をしている高校生が、無自覚のうちに教科書を数行読んだかと思えば、SNSチャンネルを覗
 き、iPodの音楽を聞き、テレビの番組に見入る。この動作を延々とくりかえしている。
◆若い女性が、フアンの女優が主演するテレビドラマに影響されて、完璧なスタイルを手に入れようと
 過度のダイエットに走る。
◆映画館で上映が終わって明るくなると、観客が一斉に携帯電話を取り出す。そうかと思えば帰りの電
 車に乗って周りを見渡すと、ほとんどが携帯電話やスマホを覗きこんでいる。

アメリカの精神衛生研究所の最新の統計データによると、アメリカ人の46%は生涯のうちに一度は何らかの精神的な疾患を患っているという。
子供や若者が不安神経症やADHD (注意欠陥/多動性障害) などの疾患に罹る率も同じほど高い。
テクノロジーが悪だというつもりはない。
テクノロジーは人々の健全な暮らしに大きく役立っている。だが、往々にしてそのテクノロジーが 自分で完全にコントロール出来ない状態になってきているのは、まぎれもない事実。
このようなテクノロジーやメディアの過剰な利用によって生ずる精神的な疾患の症状や兆候を、筆者らは
「iDisorder」 と名付けた。 Disorder (障害) という言葉に 「 i 」 を付けた造語。

◆自己愛性パーソナリティ障害   SNSという名のナルシズムなメディア・・・・私、私、私。
アメリカの精神医学会は、自己愛性パーソナリティ障害 (NPD) を「成人期の初期に始まり、様々な局面で称賛を求め、共感が欠如した広範な傲慢さのパターン」 と定義している。
そして次の特徴のうち、5つ以上が該当する場合は、自己愛性パーソナリティ障害を持つ者とされている。
(1) たとえば十分な才能や業績がないのに、優れていると認められることを過剰に期待する。
(2) 限りない成功、権力、才気、美しさ、理想的な愛の空想にとらわれている。
(3) 自分は特別でユニークな存在であり、特別な人にしか理解されず、その人々とのみ関係すべきだ 
   と信じている。
(4) 過剰な称賛を求める。
(5) 自分の望は叶うはずだと、特権意識を持っている。
(6) 自らの目的のために、他者を利用しようと搾取的。
(7) 他者の感情や欲求を認識する共感力が欠如している。
(8) 他者を嫉妬し、また他者から嫉妬されていると思いこむことが多い。
(9) 傲慢で、不遜な行動や態度を示す。

そして、自分がこの病気に罹っているかどうかを判断する40項目のテストがある。そのテストの点数が20点以上の場合に対処方法が開発されてきている。
・テクノロジーからの情報インプットを適度に調節し、出来るだけ自然の中で時間を過ごす。
・SNSとは本来意見の交換や交流を楽しむもの。頻繁な書き込みに一喜一憂していると相手を傷つける。
・電子的コミュニケーションは、生身の人間を相手にしていることを常に忘れてはならない。
・送信や投稿のボタンをクリックする前に、「私」ばかりを主張していないかを確かめる。
・メールなどは身振りや表情、抑揚などが伝わらない。勢いに任せず、読み返して表現を和らげる。
・健全な人は友達や家族を大切にしている。結びつきの弱い人とのコミュニケーションを減らす。

◆強迫神経症   24時間365日の強迫観念的なテクノロジー・チェック。
ワイヤレス・モバイル・デバイス (WMD) は、外出先でも使える便利なものだが、反面常に携帯を覗かないと落ち着かない強迫観念に取りつかれる。 マナーが失われ、心の世界を破壊する大量破壊兵器になりかねない。 
つまり、僅かな時間でもWMDを見ないと、何かを逃がしたような感覚に陥る人が増えている。 常にチェックせずにはいられない強迫観念にとりつかれた経験のあるアメリカ人は90%にも及ぶ。
メディア利用に関する不安の13項目からなるチェックリストが開発されている。 もし3項目以上が該当したら、ハイテク機器の過度な使用を控えるしかない。

◆依存症   スマートフォン、SNS、携帯メール中毒。
テクノロジー中毒になり易い性格として、衝動的、刺激追求、精神病質、社会的逸脱などが挙げられている。良く考えずに行動し、強くて楽しい刺激を追求し、攻撃的でルールに従おうとしない傾向がある。
一般的に、中毒行動は自尊心の低さと関連がある。 自尊心が低いと自分に対する良くない評価を過大に気にするようになる。 自尊心は、インターネットに費やす1週間の時間とインターネット中毒と大きく関連している。
インターネットの匿名性を利用して、無力感を一時的に忘れることが出来る。 インターネット中毒は、薬物中毒とよく似ており、多くの人がなり易い。
これを避けるには、外へ遊びに行く。植物を育てる。スポーツをする。良書や新聞を読む。囲碁や将棋などコンピューター依らないゲームをする。などがあげられる。

◆躁鬱性障害   浮き沈みの仮想世界の共感と躁鬱。
インターネットテクノロジーに関わることで、鬱や躁の症状に似た兆候が現れるのは明らか。
躁鬱性障害 は、人口の4%が発症し、アメリカの平均発症年齢は25歳。
躁の特徴は、 ・長期間続く高揚感、多幸感。 ・過度におこりっぽくなり、動揺が激しく神経過敏の興奮状態。 ・早口で喋り、気がコロコロ変わる。 ・すぐ気が散る。 ・目標指向の活動が増える。 ・落ち着きがない。 ・睡眠時間が短い。 ・自分の能力を過信。 ・衝動的に派手な散財、セックス、向う見ずな投資などに走る。

これに対して鬱の特徴は、 ・長期間続く不安や空虚感。 ・以前は楽しんでいたセックスなどへの興味を失 う。 ・疲労を感じ動作が緩慢。 ・集中力がなく決断が出来ない。 ・落ち着きがなく怒りっぽい。
 ・食事、睡眠に変化。 ・自殺を試みたりする。
ともかく、ミディアを多用するほど症状が進行する。
ともかく、躁鬱症と判断されれば、専門家に相談して、薬と心理療法で手当てする以外にはない。

◆ADHD (注意欠陥、多動性障害)   テクノロジーが注意力を奪ってゆく。
ADHDはアメリカの3歳から17歳の子供520万人も罹っており、全体の8.4%にも及ぶ。
その典型的な症状は、 ・宿題や仕事で不注意のミスが多い。 ・細かいところまで注意が及ばない。
 ・作業に集中することが困難。 ・離しかけられても耳を貸さない。 ・指示に従わず仕事を完成出来な  い。 ・計画的行動が出来ない。 ・長時間の努力が精神的に出来ない。 ・必要な道具をなくする。 
 ・直ぐに気が散る。 ・日常的に忘れごとが多い。 
こうした中で、もっとも重大な事故を起こす可能性が高いのが、運転中の注意力の低下。 とくに、運転中の携帯電話の使用による重大事故が続発している。

このADHD症の対応には時間が必要。 ・気が散る原因を出来るだけ身の回りから排除する。 ・テクノロジー休暇を設ける。 ・気が散る対象を把握する。 ・ストレスの原因と度合いに注意する。 

◆コミュニケーション障害   対面と対面しないコミュニケーションとの段差。
電子的なコミュニティ手段として初登場したのが電話。これが社会に浸透するまでには20年かかっている。社会の新しい習慣として根付くにはそれほどの時間が必要。
しかし、その後の電子的コミュニケーションに普及は早い。携帯電話は当初は高価過ぎて、小型化するまで時間がかかり、普及に12年かかったが、インターネットはわずかに4年。インスタント・メッセージは4年、ブログは3年、SNSはさらに短期間で日常的なコミュニケーション・ツールになった。
コミュニティ・テクノロジーの増加は、オンラインで他者との交際の場を広げ、新しい友人づくり、知り合いを増やすことを容易にした。 しかし、直接会ってコミュニケーションをとる機会が少なくなり、円滑な人間関係が失われていったという面もある。

コミュニケーションが苦手の人は、対人恐怖症、社会的パーソナリティ障害、内向的な人、人付き合いが苦手など様々だが、共通しているのは対面型コミュニケが苦手だということ。
それが、まずコミュニケーションのやり方を最初から学び直し、作法を理解するとテクノロジーのおかげで簡単に出来るようになっている。 画面を介することで対面型よりもリラックスしてコミュニケーションが行える。
しかし、仮想空間でコミュニケーション能力を高めても十分ではない。オンラインで身に付けた技能を現実社会で実践してゆく努力が伴わないと、障害を取り除くことは出来ない。

このほかに、◆心気症  ◆摂食障害/身体醜形障害  ◆総合失調症  ◆覗き見趣味 などをとりあげている。
ともかく、パソコン、携帯電話、スマホなどの新しいテクノロジーが、さまざまな神経疾患に類似した兆候や症状をひき起し、既存の症状を悪化させてきている。
この本には、その具体的な事例をいくつも取り上げており、この問題の深刻さを知らされる。

著者は特に次のことを強調している。
子供が成長して、スマホやタブレットを与えたり、コンピューターの前に座らせる時がきたら、必ず毎週15分でよいから家庭や社会でのテクノロジーの役割について子供と話し合いの場を設け、信頼関係を築くことが非常に大切。 子供の年齢に合わせて言葉を選び、親が1分間話したら。子供の話を5分間聞くことが大事。
それと、子供と信頼関係を築く上で大切なことは、週に3回から4回 家族で食卓を囲むこと。
子供との信頼関係の上にテクノロジーに関する約束事を決め、子供が破った時は最低1日 スマホやコンピューターを没収する。
そうした訓練を子供のうちから身に付けさせることによって、テクノロジーの毒を自動的に排除してゆけるようになる。


posted by uno at 11:11| Comment(2) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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